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貴族に戻る方法は?

 するとその姿に、ハロウィーは妙になごんでいた。


 ――これもゴーレム効果か?


「えへへ、明日はわたしのクラスと合同でダンジョン実習だから、そうしたら二人でチーム行動しようね」

「ああ。それにしても機嫌いいな?」


 昨日からハロウィーは終始上機嫌で、ずっとこんな感じだった。


「え? それはやっぱり、チーム組めたから。ほら、わたし友達いないから半ばあきらめていたっていうか」


 ちょっと恥ずかしそうにはにかみつつ、ハロウィーは何かを誤魔化すようにまくしたててくる。


「なるほどな」


 ——さりげなく悲しいことを……。


 美少女でもボッチになる哀しい世界。

デリケートな話題に、深入りはためらわれた。


「そ、そういえばラビって貴族科に友達いなかったの? 会えなくて寂しくない?」

「いたぞ。けど平民になった俺とはもう会わないほうがいいだろ。あいつの邪魔になる」


 目をつぶり、幼馴染の顔をまぶたの裏に浮かべた。


「ラビ! ッッ……!?」


 すると、本人の声までしてきた。


「ラビ、呼ばれているよ?」

「え?」


 目を開けて見上げると、見慣れた金髪碧眼美人が顔をこわばらせていた。


「あ、ノエル、久しぶりだな」


 いつも凛とした表情の彼女だけど、今日は妙に戸惑って見える。

 ノエルの青い瞳はちらちらとハロウィーに向けられている気がする。それとも、ゴーレムが気になるのだろうか。


「ちょうどいいや。ハロウィー、こいつがさっき言った俺の友達のノエル・エスパーダ子爵令嬢だ。領地が隣同士で五歳の頃からの付き合いなんだ」

「俺?」


 俺の一人称を一瞬気にしてから、ノエルは表情を改めた。


「いかにも。私がラビの幼馴染の、ノエル・エスパーダだ」


 ノエルがいつもの毅然とした態度に戻る一方で、ハロウィーは肩を跳ね上げた。


「あっ! やっぱりノエル様でしたか!?」

「なんだ? ノエルのこと知っているのか?」


 ハロウィーは大きく頷いた。


「うん。わたしの実家、エスパーダ領だから。何回か見たことあるの。王立学園に来る時も、随伴させてもらったよ。ていっても馬車は別々だし、エスパーダ領から入学する子供はみんな一緒だからノエル様は覚えていないと思うけど」

「いや、そういえば三年前、貴君を見た気がするぞ。だがしかし、我が領民が……」


 ノエルは首を傾げ、何かに耐えるような顔をしてからハロウィーに詰め寄った。


「ハロウィー、貴君はラビとはどういう関係なのだ?」

「ふゃっ!?」


 領主の娘に詰め寄られて、ハロウィーは緊張した面持ちで肩を縮めた。サンゴーを抱きしめる腕の間隔も、ますます狭くなる。


『きもちぃのだー』


 ――よかったな。サンゴー。


「えと、昨日、正式にチームを組みました。ラビに誘われて」

「ラビに誘われただと!?」


 ノエルはテーブルに手をついて前のめりになって、ハロウィーはたじたじだった。


「ッッ、いやそれよりもッ」


 ノエルはぐるりと首を回して、俺を睨んできた。


「どういうことだラビ? 二年生のクラス分けがチームごとなのは貴君も知っているだろう? 貴君は二年生も平民科確実なのだぞ」


 ハロウィーがハッとした表情になる。

どうやら、ノエルに言われて彼女も気づいたらしい。


 だけど、俺は努めて冷静に返した。


「どういうこともなにも、最初からそのつもりだよ。考えてもみろよ。俺は父さんから実家を追放されて貴族籍を剥奪されているんだぞ? どうやって貴族科に戻るんだ?」


「それは! だな……例えば一年生の内に大きな功績を立ててそれを手に復帰を嘆願するとか!」

「大きな功績って例えば?」


 言いよどんでから答えを絞り出したノエルに即答すると、また彼女は言葉に迷った。


「う……テストで一番を取るとか……」

「お前俺の成績知っているだろ?」

「ならば、戦武祭などの年中行事で優勝するとか……」

「俺の実力じゃ厳しいって。上級生のトップクラスの実力は知っているだろ?」


「それはそうだが……」

凛とした眉を八の字して声からは力が抜けるも、まだ納得はしていないらしい。


「個人戦は全滅。チーム戦やクラス対抗系は優勝しても俺の功績かどうかなんて証明しようがないだろ。というか元貴族だからってみんなから煙たがられているし、ハロウィーが組んでくれたのでさえ奇跡なんだ。そもそも、学校の行事に優勝したからって貴族に復帰させてくれるもんなのか?」


 俺の正論に、ノエルはすっかり肩を落としてしまった。

 ノエルの提案は、自律型ゴーレムスキルをフル活用すれば可能かもしれない。


 けれど、それを言ってしまえばハロウィーにいらない気を遣わせてしまう。


 いつか貴族に戻る。

 その目標は変わらない。


 だけどそれは王立学園を卒業した後、何か別の方法でだ。


「なら私も貴君とチームを組む!」


 眉を引き上げ、ノエルは謎に語気を強めた。


「科が違うだろ科が。それにノエルの腕なら貴族科でも引く手あまただろ?」

「私にあんな外見目当ての者たちと組めと言うのか?」


 ノエルは凛とした美貌を崩して、ジト目で俺を見下ろしてくる。むしろ、睨み下ろしてくる。


「なら、女子だけで組んだらどうだ?」

「人の話を聞いていたか? 外見目当ての者たちと組めと言うのか?」


 ――え? それって……。


 頭の中で、百合の花が満開になった気がする。

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

金髪碧眼美少女女騎士が幼馴染、ラビってもしかしなくても勝ち組ですよね。

余談ですがノエルはクリスマスという意味です。

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……ではメイとかイースターとかそんな子が……
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