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幼馴染キャラ登場

 ラビたちがダンジョンから学園に向かっている頃。

 王立学園貴族科二年生の教室では、今日も放課後の恒例行事が行われていた。


「このノエル・エスパーダ。再び先輩方と同じ学び舎で学べることを光栄に思うと同時に、最上級生から最下級生になった自覚を持って己を律する所存。今後もご指導ご鞭撻のほど、よろしくお願い致します」


 そう言って会釈をするのは、輝く長い金髪をポニーテールでまとめた、白い肌と碧眼の美しい絶世の美少女だった。


 背は高く、手足はスラリと長く陶磁器人形のように均整が取れている。

それでありながら、出るところは出て、引っ込むところは引っ込んだ、メリハリのある体つきをしている。


 コルセットでもしているように細くくびれたウエストとは相反するように、大きく膨らんだバストとヒップは、王立学園の制服越しでも男子たちの目を惹きつけずにはいられない。


 今も、周囲から集まる男子たちの視線は、彼女の美貌よりも胸に集まっている。


「うん、殊勝な心掛けだね。流石は子爵家、弁えている。一部の下級貴族の中には、高等部に上がっても最上級生気分が抜けずに挨拶に来ない不届き者もいるのに感心だよ」


 椅子に座ったまま、横柄に対応するのはラビと同じ黒髪で、顔立ちもラビを不遜にしたような男子生徒だった。


 フェルゼン・シュタイン。

 ラビの兄であり、シュタイン家の次期当主だ。


「そういえばラビにはきちんと進級後のあいさつ回りをするよう言い含めておいたのだけれど、実家を追放されて平民に落ちるなんて、アドバイスが無駄になったよ」


 フェルゼンの言葉にやや表情を硬くしてから、ノエルは目を伏せた。


「ラビ……弟殿については、残念に思います」

「まったく、不出来な弟を持つと苦労するよ」


 迷惑そうに声を上げてから、フェルゼンの視線はノエルのバストに集中した。

 彼女が顔を伏せているため、自分の目線がバレないと思っての行動だろう。


「だけど君は気にせず、これからも我が家と付き合ってくれたまえ。何より僕たちは幼馴染じゃないか」


 語尾が上機嫌な理由を察しながらも、ノエルはあくまで礼節を重んじた態度を崩さなかった。


「お気遣い頂き痛み入ります」


 そう、定型文を返してから、ノエルはその場を去った。


 自分が教室を出て、ドアを閉めると同時に、男子たちの声がざわついた。

 品性を欠いた反応は無視して、ノエルは足早にその場を立ち去った。


 これで、付き合いのある全先輩生徒への挨拶回りは終わった。

 もう、放課後の彼女を縛るものは何もない。


 ――ラビ、ようやく君に会えるぞ。


 はやる気持ちを抑えきれず、高鳴る胸の鼓動を感じながら、ノエルの足は早歩きを通り越して、駆け足になっていた。


 貴族科の生徒にしては少し品を欠くも、そんなことを気にしている余裕は無かった。


 彼女が向かうのは貴族科校舎と平民科校舎を繋ぐ、中央棟だ。

 彼はきっとそこにいる。

 貴族科時代もそうだった。

 放課後、あの場所で何度も同じ時を過ごした。


 理不尽に実家を追放され、平民に落とされ、知り合いのいない教室で、きっと寂しい想いをしているに違いない。


 ――会いに行くのが遅れてすまない。だけどラビ、これからは私が一緒だぞ。


 友のため、愛のため、少女は流れるような金髪をなびかせひた走った。


   ◆


 ダンジョンから帰ってきた俺は、平民科校舎と貴族科校舎の間のカフェで、ハロウィーとお茶をしていた。


 話題は当然ダンジョンについてだ。


「というわけでイチゴーたちがいきなり地下二階層のフロアボス倒しちゃってさ」

「へぇ、大活躍だったね」

『がんばったのだー』


 ハロウィーは膝の上に乗せたサンゴーをなでまわした。


 ——丸い体でよく落ちないな。


「そういえばフロアボスって倒したら特別なアイテムが手に入るんじゃなかったっけ?」


 サンゴーをむぎゅっと抱きしめながら、ハロウィーは疑問符を浮かべた。


「あぁ、質のいい魔石が手に入ったよ」


 俺はストレージからビー玉のような物を取り出した。


 魔石。

 大量の魔力を内包した鉱石であると同時に、大量の魔力を溜め込める鉱石でもある。


「これをイチゴーに配合しようと思う」

「どうなるの?」

「魔石の魔力を使って一時的に身体能力を上げられる。強敵相手の奥の手だな」


 俺は足元のイチゴーを抱き上げた。太鼓のように丸くて太いけど、軽いので持ち上げるのは簡単だ。


 ただし、膝の上に乗せるとなかなかの存在感である。

 それからシステムウィンドウを操作して、イチゴーに魔石を配合した。

 すると、俺の膝の上でイチゴーはむむんと謎のポーズをキメた。


『パワーアーップ』


「これでイチゴーは魔石の魔力で大幅な身体強化ができるようになったぞ」

「へぇ、イチゴーすごいね」


『すごいのー。えへんー』


 膝の上で、イチゴーはお腹を突き出した。

 本当は胸を突き出したいに違いない。


「ニゴーとサンゴーも早くもらえるといいね」


 ハロウィーの言葉で、俺はニゴーがジッとイチゴーを見つめていることに気が付いた。


 ――うらやましいのかな?


「次、魔石が手に入ったらニゴーにも配合してあげるからな……どうした?」


 ニゴーは何も言わず、ジッとこちらを見つめたまま、動かない。そしてメッセージウィンドウに一言。


『ひざのうえ』


 ――そっちか……。


 相変わらずの隠れ甘えん坊ぶりに、俺はニゴーも膝の上に乗せた。

 左膝にイチゴー、右膝にニゴーという横タンデム式で、俺は二人の頭をなでまわした。


 丸い体が落ちないよう、重心に気を配るのを忘れない。

 すると、イチゴーがニゴーに抱き着き始めた。


『なかよしー』

『やめよ』


 するとその姿に、ハロウィーは妙になごんでいた。


 ――これもゴーレム効果か?


――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

 イチゴーがニゴーにだきつくさまを想像してほっこりできるかどうか。それが心の綺麗さを表していると思います。

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