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やめたげてよぉ! もうライフはゼロよ!

「いや、そうじゃないけど、だって……あれ、本当にだいじょうぶなの?」


 軽く青ざめながら指を差すハロウィーの視線を追うと、もはやぴくりとも動かなくなった男子たちを、なおもフルボッコにするイチゴーたちの姿があった。


「ちょっやめろ! 男子たちのライフはもうゼロよ!」


 つい、某国民的人気アニメの名言を口にしてしまいながら俺が止めると、イチゴーたちは一斉に動きを止めた。


「お前らいつまでやっているんだよ!?」


 すると、みんな不思議そうに首――は無いので――体を傾げた。

 メッセージウィンドウが更新された。


『ブチのめせっていわれたのだー』

『じかんやていどのしていがなかったっす』

『ますたーのしじがあるまでぶちのめしつづけた』

『ブチのめす、にはころすといういみもふくまれるかのうせいがあるー』

「人を殺しちゃ駄目だろ!」

『だめなんだぁー』


 みんな、知らなかったとばかりに顔を見つめ合った。


 ――なんだろう。人工知能って自分で考えて行動できる半面、常識が不十分なのか?


 思い出してみれば、イチゴーも最初、俺が命令しないと貴族の人たちから攻撃されっぱなしで、逃げようともしなかった。

 AIは頼もしい半面、ちょっと危ういものを感じる。


『やりすぎらしいのだー』

『そうなんすね』

『ちりょう』

『やくそうぬりぬりー』


 一応、五人の命に別状は無いらしい。

 茂みをかきわける音に意識が向いたのは、俺が新しいロボット三原則を考えようとした時だった。


『ますたー、きれいないしをひろったのです』


 ちっちゃな足でちょこちょこと歩いてくるのはゴゴーだった。

 そういえば、戦いの時にいなかったな。


 ゴゴーが手に光る赤い石をストレージに入れてくれると、俺はウィンドウの表示に目を丸くした。


 炎石――×1


「これ炎石じゃないか。レア素材だぞ」

「えっ!? 火炎魔術の力が入っているっていうあれ?」


 ハロウィーも口に手を当てて驚いた。


 本来、火炎魔術とは人の魂から生成されるエネルギー、魔力を炎に変換したものだ。


 世の中にはその魔力を大量に蓄積した有益鉱石、魔石が存在する。


 けれど中には、魔法石と言って最初から魔法の状態で魔力が蓄積された稀少鉱石も存在する。


 さらに、魔法石は魔力を流すだけで特定の魔法に変換してくれる。


 その一つが今回の炎石だ。


 ――魔法石は魔法アイテムの材料になる。それこそ、炎石なら炎の力を宿したヒートソード、みたいなのが作れる。


 未だ使用不能の再構築スキルへの期待を高めつつ、俺は無視できない事実に気が付いた。


「そういえばゴゴー。なんで素材探しなんてしているんだ?」

『ヒマだったのです』


 なぜか、むふんと偉そうに胸を張るゴゴー。


「いや、俺は戦うように指示したよな?」

『ひとではたりていたのでゴゴーはいらないのです』


 ――命令を無視して勝手に遊ぶって、どんだけマイペースなんだ……。


 自分の意思で動く自律型ゴーレムは、命令以上のことを考えて実行してくれる半面、こういうデメリットもある。


 でも、そこは可愛い人間味だと思うのでご愛敬だ。なでてあげたい。

 俺はゴゴーの自由奔放さに呆れるも、ハロウィーは鈴を転がしたような声で笑っていた。


「ふふ、本当に子供みたい」


 言葉の通り、その表情は小さな子供を愛でるお姉さんのように優しげだった。


 ——ハロウィーって弟や妹いるのかな?


 小さな弟や妹たちの面倒を見るハロウィーを想像すると、すごく様になっていた。


「そういえばハロウィー、さっき俺に何か言いかけていたよな?」


 確か「あのね、もしよかったら、わたしと――」と。

 でも、ハロウィーはハッとすると、両手を左右に振って慌てふためいた。


「な、なんでもないよ。だいじょうぶだいじょうぶ」


 本当は気になったけれど、俺はおとなしく引き下がった。

 もしかしたら、本当にくだらないことだったのかもしれないし。


『ますたー、たまたまにやくそうぬるー?』


 見れば、五人の男子たちはズボンとパンツを脱がされ、下半身丸出しで打ち捨てられていた。


 ハロウィーが悲鳴を上げながら背を向けた。


「塗らなくて良し!」


 俺は全力で叫んだ。


   ◆


 しばらくして、俺とハロウィー、そして五人の足をつかんで引きずるイチゴーたちは学園に帰還した。


 集合場所に集まった生徒たちは、俺らを見るなりぎょっとして青ざめ、ざわついた。

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