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男性人気エグイな

「以前は二位から少し上の首席だったが、今では二位から大きく離しての一位だ。それに、業腹だがこの試合、私は負けるつもりだ」

「えぇっ?」


 彼女の口からは絶対に聞けないであろうセリフに驚愕した。


「驚くな、業腹だと言っただろう。相手は公爵家のご令嬢だ。勝って父上が睨まれるよりも、程よいところで負けて機嫌を取ったほうが良いだろう。もちろん、カリバーは使わない。私とて貴族だ。その程度は弁えている」


 幼馴染がオトナ過ぎて、俺はお店に続けて自分が恥ずかしくなった。


「ノエル、かっこいいな」

「汚れただけだよ。そうだな、もしも身分なんてものがなくなれば、こういうこともなくなるのかな?」


「え?」

「世迷言だ。ただ、最近は平民でいることを選んだラビの気持ちがわかる」


 そう言って、ノエルはクールにフィールド中央へ向かった。

 タイプの違う金髪碧眼の美少女がそろうと、観客は大いに盛り上がっていた。


 身分も性別も問わず、みんな二人に惜しみない声援を送っている。

ただし、ノエルのほうが男性人気は高い気がした。


『これがうちわけっす』



 最大観客収容人数:5万人

 男性客:28654人 ノエル派18009 エリザベス派10645

 女性客:21116人 ノエル派 8829 エリザベス派12287



 ――思った以上にノエルのほうが人気だったな。ていうか男性人気がエグイ。


 幼馴染の男性人気に、複雑な気持ちになった。

 嫉妬ではなく、ノエルを変な目で見るな、的な。

 試合が始まると、まずノエルが仕掛けた。


 相変わらずの初速。

 電光石火を超えた雷光石火の早業でエリザベスとの距離を潰すもディーヴァの腕がノエルの斬撃を弾いた。


 が、ノエルはまるで計算通りとばかりに、二撃、三撃と切り込んでいく。

 ノエルの剣は弾かれても死なない。

 むしろ弾かれた反動を利用してそのまま、次の斬撃に繋げている。


 ――また腕を上げたな。


 剣士としての成長が留まるところを知らない幼馴染に息を飲んだ。

 エリザベスは天才だけれど、才能ならノエルも負けていない。

 が、これは出来レース。

 ノエルに勝つつもりはなんて毛頭ない。


 ――雰囲気が変わったな。


 興奮しきっている観客は気づいていないだろうけど、ノエルから闘志が消えたのがわかる。


 次の攻撃をてきとうに受けて負けを宣言するつもりだろう。

 俺も、ノエルを見習って決勝戦ではエリザベスに花を持たせようと思う。


「歌いなさい! 私のディーヴァ!」


 ゴーレムが歌い、手の平から二発の光弾が放たれた。

 ノエルは流れるようなフロントステップとサイドステップで避けながら接近。

 彼女の背景で光弾がゴヴォッっと音を上げ、爆炎を上げていく。

 ドカーンという爆発音のない、静かな爆炎だ。


 ――アレを食らうのキツイからなぁ。接近してわざとディーヴァの拳を食らうのがベストかな?


 ノエルの算段を予想していると、不意に彼女の目の前で光弾が炸裂した。


「ノエル!?」


 彼女は光弾に触れていない。


 ――まさか、好きなタイミングで爆発させられるのか?


 思ったよりも痛い思いをしたが、これで試合は終了だ。

 ノエルは後方に吹き飛びながら、地面を見ている。

 受け身を取って転がり、降参するつもりだろう。


「歌えディーヴァ!」

「は?」


 刹那、ディーヴァは五指を突き出した。


「降参だ!」


 地面から立ち上がったノエルが声を挙げた。

 だが、エリザベスは嗜虐的な笑みを作り、ディーヴァは伸ばした五指から同時に光弾を放った。


 それも、さっきよりも明らかに速い。


 五発の光弾は、まるでその一発一発が狙撃手の手で狙いを定めたかのように、ノエルへ殺到していった。


「サンゴー!」


 本能的に危険を察知した俺は、衝動的に叫んでいた。

 詳しい指示は出していない。


 それでも、自律型ゴーレムではサンゴーは自らの意思で考え、最適解を導き出した。


 五倍の爆炎がバトルフィールドを包み込んだ。

 観客が息を飲み、数秒の静寂がコロシアムに奔った。


 数秒後、白煙の晴れた場所には、サンゴーを抱きかかえるノエルが倒れ込んでいた。


 バリアがチリとなり、消えていく。


 ――よかった。だけどサンゴーお前……。


 俺は見逃さなかった。

 あの一瞬、まず、ニゴーがバーニア機能でサンゴーを抱えて超加速。

 その勢いのままにサンゴーを投げ飛ばし、ノエルの元へ飛んだ。


 そこまではいい。


 だが、そのあとサンゴーが取った行動は驚くべきものだった。

 自慢のバリア機能で自分とノエルを包み込むのではない。

 自らの背中で光弾を受け止め、ノエルだけをバリアで包んだ。


 もし、前者ならば直撃を受けたバリアは砕け、余波がノエルを襲ったかもしれない。


 だけど後者なら、自ら直撃のダメージを引き受け、ノエルへの余波はバリアで遮断できる。


 これなら、ノエルにわずかな苦痛も与えずに助けられる。

 その判断を、サンゴーは瞬時に行い実行した。

 ロボットだから自分の命に興味がない?


 違う。

 サンゴーは同じゴーレムのことも守るし、滑り台から落ちてきたイチゴーとゴゴーが何度もぶつかっていると、その場から退避した。


 モリハイエナと戦った時も、俺がいたから怖くなかったと言ってくれた。

 サンゴーにも自我と生存本能はある。

 その上で、ノエルを守ってくれたんだ。


 ノエルが無事だったことと同じぐらい強く、サンゴーという偉大な守護騎士様に尊敬の念を抱かずにはいられなかった。


 そしてそれ以上に、明らかな過剰攻撃を行ったエリザベスへの怒りが湧いてきた。

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