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違和感

「……待て」


 イチゴーが表示しているマップ画面を眺めながら、ノエルは怪訝な表情を作った。


「どうしたんだノエル?」

「いや、確認だが、青い点が人間、赤い点が魔獣だったな?」

『そうだよー』


 イチゴーの返事に、ノエルはますます首をかしげた。


「この階層にいる生徒は、我々だけなのか?」

「「え?」」


 俺とハロウィーの声が重なった。

 それがどうおかしいのか、すぐにはわからないけれど、なんだか妙な違和感を覚えた。


「でもノエル、わたしたち以外の人はイチゴーちゃんたちがいないし、仕方ないんじゃないかな?」


「いや、確かに我々はイチゴー達のおかげで、かなり効率よくダンジョンを攻略できた。だが、八階層辺りからは全ての宝箱を回収し、ダンジョンの隅々まで探索している。その間に、上から誰も降りてこないのは不自然ではないか?」


 ノエルが訝しむ一方で、ハロウィーは悩んだ。


「う~ん、みんなのレベルだとここまで来られないんじゃないのかなぁ? 九階層のフロアボスはレベル十九で三年生並みの強さだし」


「だとしてもクラウスのチームならば余裕だろう。他にも、貴族科の生徒で一〇レベルを超える超実戦派の軍人貴族生徒のチームなら、到達は不可能ではないはずだ。むしろ、貴族科の生徒と平民科の生徒は互いに自分たちの実力を見せつけてやると、より深層を目指していたはずだ」


 言われてみればと、ハロウィーは納得した。

 俺も、その通りだと嫌な予感に駆られた。


「イチゴー、ドローンを全部呼び戻せ。それから上の地下七階を最効率で偵察するんだ。地下九階と八階は俺が直接確認するから」

『わかったー』


 イチゴーの頭上にウィンドウが左右に二つ並んで展開。

 左側は地下七階のマップ。

 右側は、九分割されたドローンのカメラ映像だ。


 廊下の奥からドローンが戻って来て、俺らの頭上を飛び去っていく。

 すぐに地下七階のマップに、ドローンの場所を示す黒い点が九つ現れた。

 九つの点は九手に分かれて、被ることなく、ダンジョン内を効率的に飛んでいく。


「よし、俺らはすぐに九階に戻ろう」

「うん」

「心得た」


 俺らは来た道を引き返すと、すぐに階段を上った。


「ゴゴー、この階層に生徒はいるか?」

『いないのです』


 俺のマップでも、青い点は俺たち三人だけだった。


「イチゴー、地下七階に生徒はいたか?」

『いないー』


 続けて、俺らは地下八階へ上った。

 その頃には、ドローンは地下六階もすでに調査済みだった。


「地下八階にも生徒がいない? なんでだ?」

「もうみんな早めに帰ったんじゃないかな?」

「いや、ノエルの言う通りみんな躍起になっていた。時間を破って潜る奴はいても、全員一斉に時間前に引き返さないだろ」


「じゃあどうして」

『みつけたのー』


 イチゴーのメッセージに振り返ると、九分割されたカメラ映像の一つに、平民科の生徒が映っていた。


 近くに貴族科の生徒が倒れている。

 それを、平民科の生徒が担ぎ、運ぼうとしている。


「助けているのか?」


 次の瞬間、こっちの存在に気付いた生徒が、雷撃の魔法を放ってきた。

 そこでカメラの映像は切れた。


「あ、魔獣と間違えられちゃったのかな?」

「いや、それよりもあの剣呑な雰囲気、何か妙だ」


 ノエルの言う通り、俺も今の映像には違和感があった。


「他のドローンを向かわせられないの?」

「また壊されるだろう。ともかく、先程の倒れた生徒のことも気になる。ラビ、我々も上に戻ろう」

「いや、何か危険な気がする。ここは情報収集を優先しよう。イチゴー、みんなで近くのモンスタールームに行って魔獣を駆逐してきてくれ」

『わかったー』


 イチゴーたち五人が通路の奥に消えると、俺の視界にリザルト画面が表示された。

 イチゴーたちが魔獣を倒す度、その経験値が全て俺に入って来る。


「何をしているんだラビ? わざわざイチゴー達をモンスタールームに送るなど」

「宝箱を無視して、ただレベルを上げるだけならこれが一番効率がいい。俺が十九レベルになってから大分経つ。それに十五レベルの特典がドローンだったんだ。俺の予想だときっと二〇レベルは……」



『レベルが20に上がりました』

『レベルが20になったことで新しいスキルが解放されました』


『超小型飛行ゴーレム生成スキル:最大積載量1キログラム、六枚のプロペラを駆使して時速100キロで360度全方向に飛べるコインサイズの非自律型ゴーレムを生成します』



「よし、やっぱりバグ(昆虫サイズドローン)だ」


 俺はすぐにスキルを発動させた。

 すると、青いポリゴンの中からコインサイズの、超小型ドローンが現れた。


「む、小さいな。偵察用か?」

「ああ。これなら連中にもバレないだろう」


 廊下の奥から戻って来たイチゴーたちに、すぐ指示を出した。


「イチゴー、こいつで平民科生徒の追跡を頼む」

『わかったー』


 イチゴーが手で通路の逆奥を指すと、バグは音もなく、静かに飛び去った。

 俺らは、イチゴーの頭上のウィンドウに映る、バグのカメラ映像に注目した。


 すると、地下五階で魔獣を狩る貴族科の生徒の姿を見つけた。

 五人の生徒は疲労困憊の様子で、額の汗を拭っている。


 そこへ、突然背後から何かが投げ込まれ、爆発した。

 噴き上がる黒煙は、ダストンとの決闘でノエルが浴びた、デバフアイテムを彷彿とさせた。


 案の定、貴族科の生徒たちはよろめき、膝からくずおれた。

 それを、平民科の生徒たちが回収していく。


「なに、これ!?」

「襲われているだと!?」


 二人が驚愕の悲鳴を呑み込んだ。

 俺も固唾を呑みながら事態を見守った。

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