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ゴーレムと一緒にダンジョン探索GOGO!

 ——見つからない?


 いつもなら、すぐクラウスに群がる女子たちの黄色い悲鳴や、男子たちの野太い声が聞こえてくるはずなのに、今日はそれが無い。


 まさか欠席しているのかと疑い始めたところで、ようやくモデル体型の美形を見つけた。


 周囲には、なんだかできそうな生徒が揃っている。

 槍を担いだ屈強そうな男子に、杖を持った理知的な男子。


 弓を手に、瞳を使命感に燃やす凛々しい女子、それから両手にダガーを握る冷徹そうな女子。


 あくまでも見た目の印象だけれど、平民科トップ5が集まった、オールスターチーム、といった風情だった。


 その中心に佇むクラウスは、とても画になっていた。


 ——う~ん、やっぱりクラウスは俺なんかよりもああいう連中と一緒の方が映えるなぁ。


「サンゴーちゃん、今日もよろしくね」


『まかせるのだー』

『なでてー』

『あそんでー』


 しゃがみこんだハロウィーがサンゴーの頭をなでると、イチゴーやゴゴーも集まっていく。


 ——なんだろう、この保育園感……。


「ちっ、なんで貴族科の連中と一緒なんだよ」

「あいつらと下で会ったらさっさと逃げようぜ」

「甘ったれのお坊ちゃまお嬢様のおもりなんてごめんだぜ」

「どうせ貴族科の連中なんてオレらを平民どころか下民とか見下してんだろ?」

「貴族共に平民の力を見せつけるざまぁ展開、痛快だよな」


 すぐ近くのチームの愚痴が聞こえてきて、元貴族の俺は複雑な気持ちになった。


 彼らの態度は悪い。


 だけど理由なくこんな態度は取らないだろう。

 きっと彼らも、貴族に良くない思い出があるに違いない。

 そう考えれば、なんだか可哀想な人たちに見えてくる。


 ――俺が冒険者として平民を助けていたら、ああいう人も減るのかな?


「ラビ!」


 厳格ではありつつも、はつらつとした気持ち良い声に振り返ると、貴族科側からノエルが駆けてきた。


 豪奢な金髪をなびかせる絶世の美少女の登場に、平民科の誰もが目を見張った。

 そしてノエルの美貌に首ったけだった全男子の視線が三〇センチ下がったのがわかる。


「貴族科との合同授業も、悪くないよな」

「あいつらと下で会ったら、助け合おうぜ」

「身分違いの恋とかちょっとロマンチックだよな」

「見下されているからってこっちも同じじゃ大人げないよな」

「普段バカにしている平民に助けられる貴族っていうのも痛快だよな」


 ――前言撤回。こいつらのはただのひがみだ。絶対に。


「ではラビ、一緒に潜ろう」

「俺は嬉しいけど、本当に良かったのか?」

「問題ない。私は一人チームでラビ&ハロウィーチームと合同でダンジョンに潜る。それだけだ」


「ノエルがいいならいいけど……」


 彼女の背後では、一部の生徒がノエルに侮蔑の視線を向けていた。


「なんだ、ノエルの奴また平民と一緒かよ」

「平民びいきが」


 自分たち貴族の誘いを断り、平民と仲良くするノエル。

 それが彼らにどのような印象を与えるのかは、想像に難くない。


 ——ノエルが俺と仲良くしてくれるのは嬉しいけど、度がすぎるとノエルの立場が悪くなるよなぁ。


 でも、それを口にすればノエルを傷つける。

 何かいい方法はないかなと思いながら、俺はダンジョンの入口へ足を向けた。


「今日もよろしく頼むぞニゴー」

『たのまれた』


 ノエルはまぁるい体を抱きすくめ、目元に顔をうずめてくちびるをふれさせる。


「ノエルって趣味悪いよな」

「あんな魔獣型ゴーレムがいいのか?」

「もしかしてデブ専? じゃあオレもワンチャン」

「ないない」


 ——ごめんノエル。お前の自業自得だ。


 いい方法なんてきっとない。

 俺は諦めた。


   ◆


 しばらくして、俺らは以前、クラウスと一緒に訪れた地下五階を通り過ぎて、地下一〇階に到達していた。

 通路の石壁に囲まれた通路の奥からリザードマンたちが弓矢を放ってきた。


「サンゴー!」

『まもるのだー』


 サンゴーが前に出て、ドーム状のバリアを張ってくれる。

 矢が弾かれたのを目にして、リザードマンたちが怯んだ。


 間髪を容れず、ヨンゴーがノエルの分身を三人作り、リザードマンたちに突撃させた。


 そこに本物のノエルが交じり、迫る四人のノエルにリザードマンたちは目標に迷った。


「本物は私だ!」


 ノエルのサーベルが稲妻をまとい、リザードマンの喉を突いた。

 すばやく引き抜き放った二撃目の斬撃が隣のリザードマンの首を刎ね、最後のリザードマンの顔面がハロウィーの放った矢に貫かれ、敵は駆逐された。


「よし、イチゴー達のおかげで順調だな」

『えへんー』


 むんとお腹を張るイチゴーの頭をなでると、ニゴーがリザードマンの体をストレージに回収してくれた。


 サンゴーとヨンゴーも、褒めてとばかりに俺にじゃれついてくる。


「ほんと、信じられないよね。地下一〇階っていうことは、この階層に出る魔獣のレベルって一〇レベル前後でしょ? 二年生ぐらいの強さはあるはずなのに」

「ハロウィーもすっかり一年生のトップランカーだな」

「どうだラビ、そろそろ二〇レベルにはなりそうか?」


 リザルト画面を眺めていたノエルに尋ねられて、俺は首を横に振った。


「いや、まだだな。やっぱり十九レベルにもなるとなかなか上がらないなぁ」


 そこで、ゴゴーがぴょこんと跳ねた。


『たからばこをみつけたのです』


 ゴゴーがイチゴーとお腹をくっつけあい情報を共有。

 するとイチゴーの頭上にこの階層のマップが表示されて、宝箱マークがいくつか追加された。


 青い点は俺たちで、赤い点は魔獣だ。


「階層中にドローンを飛ばして、マッピングして、ゴゴーの探知スキルで敵と宝箱の場所を加える。効率いいよな」

「ねぇラビ、そろそろ帰る時間はだいじょうぶ?」


 ダンジョンに潜る前、俺たちは先生から魔法の氷を貰っている。

 周囲の温度に影響されず、一定の速度で溶けるため、時間を計るのに使われる。


 時間の流れをノーマルに設定している氷をストレージから取り出すと、だいぶ小さくなっていた。


「氷が溶けたら帰還の準備だったな。今ゴゴーが見つけてくれた宝箱を回収したら帰るか」

「……待て」


 イチゴーが表示しているマップ画面を眺めながら、ノエルは怪訝な表情を作った。

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