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『最強で最凶の2人』竜人とその番、狼獣人の護衛旅は誰がサイキョウですか?

作者: BBやっこ

ショート版3話を投稿、完結済みのもの。

ー<冒険者ギルド!>>ーーー


騒めく時間帯を過ぎた冒険者ギルドは、酒を飲む冒険者が残っていた。


早朝の新しい依頼争奪戦をするのは、若い奴か金が必要になった奴らで。

酒を飲んでいられる冒険者は、余裕を体現している。


実際は、たまたま良い依頼を得て懐が温かい者や夜にイソイソと仕事に行く。指名の依頼を受けるほどの名も力もなかった。


それでも安い酒と食事を提供がされる冒険者ギルドの一階は、活気付いていた。


緊急依頼があれば行く、心意気くらいはある。

そして、新しく冒険者になる者を歓迎する用意はあった。酔っ払い、稼いだ金は酒と食事に武器にかければすっからかん。


陽気に、金がなくなれば冒険へ。

そんな日常を過ごす中で、たまに楽しいイベントに出会う。



今日は“その日”だった。


「冒険者の登録をお願いします。」


受付でそう言ったのは、まだ未成年と思える声と体格。力自慢には見えない。装備はなかなか良いものだが、馴染んでいるか微妙なところで初々しく見える。


「よお新人か?」

「冒険者登録!ヒョロい体だなあ。」


絡みに行った男。まだ優しい対応だ。

しかしあれで怖気付くなら登録さえも止めておけと言うしかない。


その対象になった子供は、今の所逃げ帰る様子はなく佇んでいる。


慌てないのは、まあ合格点をやっても良いが。何か見せてくれはしないだろうか?


威勢が良いのもいいし、コソコソ帰るのも良いだろう。助けを呼んでみるか?気が乗った誰かが、面倒を見てやると言い出すかもな。


完全に物見の姿勢で、酒とつまみを食いながら結末を見届ける。


「悪いけど、相手をする気はないよ。」


気負いなく答えたものの、育ちが良いのが露見しただけで状況の好転は見込めないだろう。


「あの新人が、どうなるか賭けるか?」

「逃げ出すだろ、腕っぷしは期待できねえ。」


「いいや、意外とお帰り願えるかもな!」


丁寧な物言いで、戦意喪失。あまり絡むと受付が止めるのも織り込み済みだ。


「後どれくらい持つだろうか?」

「受付が止めるまで」

ピンっと硬貨が机に弾かれて、乗った。


「あいつらがここまで連れてくる、に賭ける!」

「教官が来て、訓練所行き」


「お前、そうなったもんな!」


賭けをし始める。楽しく、騒いでも冒険者の日常風景だった。



「退けて、冒険者登録する。」

最期の男が賭けて、事態は動いた。



そして、新人冒険者は魔法を使ったらしい。


気づけば、受付近くには

びしょ濡れの2人が出来上がったのだった。


「お帰りは、あっち。」


そう言った新人冒険者は、なんて事ない風にそう2人に告げたのだった。



ー<<保護者>>ーーー


「セリさんですね。後は魔力を登録完了してください。」


使った魔法は水。

給水魔法と侮られる属性は、建物内で使っても多少目溢しされる。


ちょっと後片付けをすれば済む話で、水に濡れた彼らがするだろう。


「まったく。新人にちょっかいかけなければ気が済まないのだから!」


受付の女性が、怒ってくれるがどうって事ない。

「これくらいなら挨拶の範囲内だよ」


いっぱしの冒険者の口をきく。しかし、魔法使いとしてみれば2人の男が反応できないほどの速さで水を被っている。


有望な新人が入ったとなれば、縁を作っておくべきか。


水魔法と侮る冒険者、その有用性は水の補給に相手の注意を引くのにも使える。勧誘に動こうとする者達の意識を引く者がいた。


「オレの総取りだな?」


獣人の冒険者がそう言う。この冒険者ギルドでたまに見かける男だ。

「ああ、まあそうだな。」


新人が冒険者登録できると賭けたのは、この男だけ。なかなかの賭け金が男の懐へ入る事になる。


「運が良かったな〜、ちょっ奢ってくれないか?」


「運じゃないんだなあ、これが。」含み笑いをする。その様子に、不思議がる酒呑み達。


しかし、何か仕込んだ訳ではないだろうと興味も薄くなる。


「あんた犬の獣人?知り合いに居たっけなー?」


男は、さり気なく受付から見えない位置に移動する。


新人冒険者は、冒険者ギルドの説明を受けている。


「あー!アンタ狼獣人だろ?!」


そう叫ぶ声がうるさく、周囲にも聞こえた。


それがどうしたと思う者、うげっと距離を取ろうとする者。


冒険者の間で、狼の獣人というの厄介だという認識が強かった。

理由は、色々やらかして行く上に腕も立つから面倒だ。


狼が出たと騒ぐ男は、何かあったのだろう。

犬獣人と間違えられるのもわかる。良く居るからな。


(目立ちたくなかったんだが)

そう思って、動けずにいる男に近づいたのは。


「カナン、ついて来てたの?」


無事冒険者登録した、セリだった。


知り合いか?と騒ぐ冒険者達をすり抜けて話している。

隠れて様子を見る予定だったがバレてしまった。


まあ、しょうがない。



ー<<竜の玉>>ーーー


「わりぃな。答えはわかってたんだわ。この金で奢るから勘弁な!」

賭け金は、飲み代になるらしい。獣人の男カナンはそう言って新人冒険者に向き直った。


自身が賭けの対象にされていたがセリは、果実水を頼んだ。奢り飲み物は美味しい。


他の冒険者も狼獣人と馴染みのように話す新人が気になるが、タダ酒も忘れない。正確に言うと俺らの金だが、気にしない。


ワイワイガヤガヤと戻るかと思ったが、違う一団が合流した。


「新人はオマエか。」



“所属があろうと、力で引き込めば良い。”

端的に行って、タチの悪い方だ。


「てめえが新人か。先輩が教育してやろう。さっさと来い。」


初対面であり、入るとも言っていない。


「興味ない。」


新人の態度に武器を持った男達が殺気立つ。囲まれた状況は、流石に分が悪いだろう。狼獣人に守ってもらう気か?


それでも、数と武器持ちに対抗できるとは思えなかった。それでも、


「面倒」


態度は変わらない。新人の勇み足にしては、危険だ。


水浸しにしてしまうかと魔法放つのだろうが、それだけで退散する奴らではないのだ。


流石に止めよう。

飲んだくれの冒険者達の心が一致する。

相手はまあまあランクが上だが、ここで引くのは目覚めが悪くなる。


「セリ」


周りは、登場した人物に目を剥いた。


「竜人だ」


翠色の髪に、黄色の眼。有名な冒険者であり敵に回してはいけない最強種族。


「一人でできるって言ったのに。」

騒めきに興味なく新人冒険者は呟いた。



「結局、2人とも冒険者ギルドに来たんだね?」


潮が引くように、冒険者たちは下がった。そして3人は個室へ案内される事になる。


冒険者ギルドでは、この日。

最強で最凶なのを連れて来た新人の話題で、持ちきりながらも酒を飲んだのだった。



カクヨム(https://kakuyomu.jp/works/16816927859794987406)

続きは別小説として載せます。


詳しくはカクヨムで、予約投稿続ける予定です。

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