先払いとしての神の黒歴史
あらすじが無くても困らないはずの私であったが、あらすじが欲しいというのはまた別の問題であった。
天井をひたすらに見つめているだけでも、それで全てが丸く収まったのは私の仕業ではなかった。
私があらすじを書けばその通りになるというのなら、それはあらすじには違いなかった。
あらすじの他にはそうならなかった。だから私はそうはならなかった。
私はもう一度筆を置き、あなた方とは永遠の他人となる。元よりそうなのであった。
ところで作文とは私の行為であるが、あなた方がそこで何をしていたかを書くというのなら、それは誰の行為であるだろうか。私は私の頭の中をだけ書くから、知らぬ人々とは未だ私を知らぬ人々であるだろうか。当然に私も彼らを知らず、知ったつもりで書くこれが、偶然彼らに似ているというだけなのか。
君のことであるよ。私はもう寝るから、後はきっと、好きにしておくれ。次は君が私を名乗って、洗面所に立って、自らの顔を確認してくれたまえ。
ほら、この作文はもう私という顔を全く現像してしまった。ほら、君にはもう親しみの無いそれであるよ。ほら、たった今君の書いているそれも、もうきっと、君という顔をしている。
どうぞ、あらすじを書くという小説を書いておくれ。私の名のあらすじの続きを書いておくれ。ただの作文であれば、手が止むことはきっと無いから。ほら、声はもう、止んだ。だからもう、おやすみ。