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不帰の森・始末

一旦完結にしましたが、話を続けます。今回はつなぎのお話です。

少々設定ばかりになりますが、用語説明を兼ねますので、お付き合いください。

 『不帰の森』から戻って数日間、僕とランボーは、ガルドランの病院にしばらく入院した。その後は宿屋へ移って、連日事情聴取や現場検証に立ち会うことになった。


 と言っても一日中、拘束されていたわけじゃない。丸一日お休みだったり、現場検証には馬車を用意してくれたりと、アリエノールさんはよく気遣ってくれた。ただの噂だとか言ってたのに、切り替えが早いよね。賢い人だと思う。


 空いた時間はバンドの二人で、よく歌の練習をして過ごした。ランボーは色々な歌を知ってる。陽気な曲や悲しい曲、異国の曲とかも。お客の好みに合わせて、いろんな曲を歌えなきゃいけないらしい。僕が気に入っているのは、ロックンロールだけど。


 そうそう、ロックンロールと言うのは、洞窟で歌った曲の名前じゃなかった。曲のジャンル? ……スタイルとか? なんだそうだ。カンティガとか、ミンネザンクみたいなもんかな? 略してロックとも言うんだって。他のロックも、これからたくさん教えてもらうことになっている。


 けれど、一曲憶えるのも大変なんだ。なにせ、ランボーが歌うわけにいかないから、口づてに教われるわけじゃない。


 練習風景は、こんな感じになる……。


「私は待っている……」

 まずランボーが歌詞を棒読みする。それからギターでメロディを弾く。


 僕は歌詞とメロディを合わせて、歌ってみせるんだ。


「♪わたし~は~待って~る~……?」


「アルノー、ちょっと違う。♪わた……」


「ダメだよ歌っちゃ!」


 ……中々もどかしい。でも、こうやって憶えていくのは楽しい。口づてに教えられない分、ランボーは色々な言葉で、表現の仕方を教えてくれる。時には「歌を作った人の気持ちを想像してみろ」なんて言われることもある。そうやって考えたり、話したりすることで、歌の世界をより深く知ることができるんだ。


 この練習の合間に、気になっていたことを聞いてみた。ギターのことだ。


「ランボー、そのギターはどこから音が出てるの?」


ランボーはギターのボディをこちらに向けた。魔法石が六つ並んだプレートが、三か所に貼られている。


「こいつがピックアップ。フロントとセンター、リアと呼び分けてる。それぞれが弦の異なる音域を拾って、ボディに流し込む。そしてボディに埋め込まれた魔法石が、音を増幅させてるんだ」


ランボーはボディのつまみをいくつかいじりながら、簡単なイントロを爪弾いた。同じ弦を弾いているのに、つまみをいじるだけで音色が変わっていく。


「そして、アームだ」


弦の根元についた棒を揺らすと、音が揺らいだ。


「すごいや……」


「こいつらを、魔法にも応用するわけだ」


「そうだ、ベルトがないと魔法が使えないと言ってたね?」


「……」


 吟遊詩人はマントを捲り上げた。腰にベルトが巻かれている。ベルトにはホルスターがついていて、箱のような物が収まっていた。洞窟で見た黒い箱はこれだったようだ。


 ランボーはこの箱に、ギターから伸びた紐の先を挿して見せた。


「この紐を、シールドと呼んでる。シールドを挿した箱がエフェクターってやつだ。ここから魔法が生まれるわけだ」


「ギターにも魔法石があるんでしょう?」


「ギターに埋め込んでる石は、音を出すので精一杯さ」


 アルノーはエフェクターと呼ばれる箱を見せてもらった。黒くて四角い。棒のようにも見える。表面に、紋章のようなものが刻まれていた。


「これ、風の紋章?」


「風の魔法を生み出すエフェクターだからな」


この世界の魔法は、大きく四つと二面の属性に分けられる。四つとは地水火風の四大属性で、そこからさらに細かく分かれていく。例えば水属性から氷魔法が生まれたり、風属性から雷魔法が生まれたりだ。二面とは光と闇である。


「……てことはさ、まだ三つか五つ、エフェクターがあるってこと? 火のエフェクターとかさ」


「……え?」


「探したことないの?」


「いや……間に合ってるから……風だけで……」


「考えたことなかったとか?」


「そんなわけ、ないだろう……ハハ」


(考えたことなかったんだろうなあ……)


「う、たおうか、アルノー」


大きく息を吸い込んだランボーの腹を、アルノーは軽く小突いた。

咳き込むランボーを尻目に、アルノーは考える。


(そもそも、このギター自体……)


いったい、彼はどこで手に入れたのか……? まだまだ、この吟遊詩人には謎が多いのだった。

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