1. ヤバい人にバレてしまった
「はぁっはぁっはぁっ」
ツン
きゃー!! 筋肉最高!! この分厚くて弾力のある手触り、最高よ! 今は夏だからみんな半袖を着ていて触り放題! あぁ〜極楽ぅ〜!
「うん? あれ、今誰かに触られたような・・・・」
「気のせいじゃないか? 誰もいないぞ」
やばい! バレたら一巻の終わりだわ。今日はここで引き上げないと。
その時、服の襟を思い切り掴まれた。
「ぐえっ」
「今何していたんだ? はあはあして不審者か? 殿下に害をなす者ならば容赦はしないぞ・・・」
無表情で迫ってくる大男。無表情が怖い、怖いわっ!
「い、いえいえ、決して害そうとしたわけではありませんっ! 私はただ筋肉を触りたかっただけでして・・・」
「筋肉だと・・・・? やはり頭のおかしいやつだったか。ちょっとついて来い」
え、今筋肉をバカにした・・・?
「・・・・ちょっと離してください。そしてそこに座りやがれ」
「・・・は? どうしたんだ急に。やっぱり頭のおかし・・・・・」
ああああ! 頭のおかしいおかしいうるさい人!
「そこに座りやがれっていってんですよッ!! いいから座れ!!!」
すると反射的に大男が地べたに正座する。
「あのですねぇ、筋肉は正義って言葉知ってます? あのゴツゴツとした硬い感触、悪漢を弾き飛ばす力・・・・! 私にとって殿下でもなんでも関係なく、筋肉がついていればいいのです! 筋肉こそ、至高・・・!! 幸い影を薄くするギフトを授かってですねぇ、筋肉が触りほうだ・・・あら? どうしたんです? 真っ青な顔をして・・・・」
チラッと大男の方を見ると、私の後ろを見て顔が真っ青になっていた。なんで?
視線を辿るとそこには・・・・
「僕がどうしたんだい?」
目が笑っていない笑顔を向けて立っている金髪碧眼の私と同い年くらいの青年が立っていた。
「ぎゃっ!」
「あははっ、随分と面白い悲鳴だなぁ」
うっ、そこは素直に変だと言ってください!
「で、でんか・・・・あの、先程の彼女の発言は・・・・」
「ああグレイブが心配するようなことはしないから安心して。いや〜しかし、私よりも筋肉が大事だと言われたのは初めてだよ。そんなに筋肉が好きなのかい?」
おお! 殿下、良い人! 筋肉の理解者だ!
「はい! そうです!」
「そうか。それで、影を薄くするギフトを貰ったと言っていたね? だったらちょっとだけ僕たちに協力してくれないかな? さっきは私も気づかないほどに気配がなかったからね。ぜひともその力を借りたいんだ」
え? バレてたの?
ってあああああ!! グレイブとかいう大男との会話、聞かれてたのかぁ〜!
いやそれよりも協力ってなに?
「嫌ですよ! 私はこの力は筋肉のためだけに使うと決めているんです!」
「っちょ、おい! 不敬だぞ!」
「・・・・グレイブ。今はお忍び中だよ? 周りにバレたら厄介だから少し黙ってて?」
「・・・っ分かりました」
殿下ってちょっと怖い?
「だったら周りに、君が僕のことを気配を消してストーカーしていたと言ってもいいかな? もう外に出られなくなっちゃうかもね。君の好きな筋肉も拝めないかも・・・・あっ! もし協力してくれたら1日1時間、グレイブの筋肉を触っ・・・・」
「で、殿下! 一体何を・・・・」
「是非とも協力させていただきますッ!」
「あ、ちょ何勝手に話を進めて・・・・」
「そう。良かった」
「あーーー!!」
「ごめんよグレイブ。約束しちゃったからよろしくね」
いやよ! せっかくのおいしいエサが逃げちゃ!
おねがい、グレイブくん!
「・・・・ああっもう! 分かりましたよ! その仕事、引き受けます」
「うん、おねがいね」
え、これって仕事なんだ。
・・・・あれ? もしかしなくても私、まんまと嵌められた?
まぁいっか。結果的に今までみたいに一瞬じゃなくて1時間ずっと筋肉に触れるようになるんだから!
「じゃぁ、協力内容について話すから王宮にきてもらうよ。お忍び用の馬車が迎えに来てるから乗ろう」
「はい」
え・・・えぇぇぇぇ!? 私、ただの町娘なんですけどーーーー!!
「絶望したような顔してるけど、君くらいの図太さなら全然平気だよ。王子である僕の頼みをはっきり断ってきたしね」
・・・・・素直に乗るしかないか・・・・
拝啓、お父さんとお母さん。
私、今から見たことのない王宮に行って参ります・・・・
娘の無事を祈って待っていてください。
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