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やさぐれ  作者: くらいいんぐ
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第9話

齋藤氏に連れられて、小高い丘のあるこじんまりとした店に行った。

そこは、高級住宅街にある隠れ家のような、しゃれた会員制の店だ。


「人目がつくからね。こういう店にしか入れないんだよ。」


「いらっしゃいませ、あ、先生、ご無沙汰しています。」


店長らしき人が挨拶をする。


「個室いいかい?」


個室に通され、齋藤貴雄と二人っきりなった。


「まあ、好きなもの食べてくれ。遠慮しなくていい。」


青年は圧倒されていた。

すると、齋藤貴雄が話しかけてきた。


「西山君、キミ〇〇小中学校っていうことは、駅前近くかい?家は。」


「はい、〇〇町です。」


「そうか、私も中学までその辺に住んでたんだよ。その辺は言わなくてもわかってるか。」


食事が運ばれてきた。

青年にとっては、こんな個室で高級な食事をするのは初めてだった。

なんとも、緊張がとれなかった。


齋藤が言う。


「たぶん、たぶんだけどな、キミが思ってる事と同じことを私も思ってるんだよ。」


「??」


「移転なんだけどな、別に構わないんだよ。いや、商店街を見捨てるってわけじゃないんだよ。私は、絵を描くことが商売だから、多くの人に絵を見てもらいたい、ただそれだけなんだよ。」


「・・・」


「でもな、お金が絡んでくるとそうもいかなくてな。描きたくない絵も描かなくてはいけないんだ。」


「は、はい。」


「キミは、今回の作品の『故郷』は好きか?」


「はい、なんというか、絵のスケールも圧倒されますが、なんていうか温かさを感じます。地元ということもあってか、細かいところまで街並みが描かれていて、親近感もあります。」


「あの絵のようになってほしいんだがね、この街も。」


「・・・」


少し沈黙が続いた。すると、今度は青年の方から思い切って話しかけた。


「先生は、移転に反対なんですか。」


「そうだな。本心は自分の生まれ育った町に絵を飾ってもらいたい。同じ市内でも、やっぱり故郷だからな、街中は。」


「先生!やっぱり移転はやめましょう。故郷に飾るのが一番です。」


「わははは、まあいい。そういえば今度、ららぽーとの人間と話をするんだが一緒に来なさい。」


青年は、なぜだか興奮していた。

今まで我慢してきた想いが一気に噴き出しそうになった。


そう、青年は青年なりに苦悩していたのだ。

それは、走馬灯のように頭の中を巡っていた。


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