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称賛なき偉業

 数日かけて、ヴァイスタ達はシェイを調べ尽くした。その間、戦場へはエスケーたちが代わりに送られていった。


 彼らには日ごとに傷が増え、犠牲者が出るようになった。それに反して戦果は乏しく、補給もろくに行われなかった。


いつしかリッチイン隊兵士らの、揶揄する歌がこだまするようになった。


「『恥を知れ(グレット・ライトマン)』、嘆くことはない。それがお前たちというものだ。逃げても誰も責めはしない。一度経験があるのだから。『恥を知れ(グレット・ライトマン)』、頼むから消えてくれ」


 エスケーたちは、それに必死に抗議した。『恥を知れ(グレット・ライトマン)』とひとくくりにしないでくれ、巻き込まれただけの被害者だ。怪物であるシェイこそ、その原因だと。


 シェイはどうしてもその姿を憎みきれなかった。『四つ葉(シンサリー)』にいる間は反発しか感じなかったその言い訳が、冷笑と蔑みを受けながら必死に絞り出されているのを目の当たりにすると、憐れみを感じずにいられなかったのだ。


 お人よし過ぎると何度も想い、そもそも『恥を知れ(グレット・ライトマン)』として蔑まれているのは自分も同じで、ここで揶揄してしまえば堕落(・・)するという直感もあった。


 そのため、執拗に影で暴力をふるってくるエスケーらに対しても反撃せず、新たな銀色の鎧で耐え忍んだ。あらゆる攻撃を通さずに、根負けしたエスケーらはそれに参加することも少なくなっていった。


 ちょうど、シルバの場合と同じ状況であった。


 それでもエスケーは闇討ちを止めなかった。シェイへの憎しみというよりも、自身を保つために行っているようだった。『恥を知れ(グレット・ライトマン)』ではない、そう証明するにはシェイを元凶として排除するしかないと思い込んでいた。


 調査を終えると、ヴァイスタは改めてシェイへ、ニキン前線基地への再攻撃を命じた。前回の攻撃の際、エスケーらか兵士らが情報を漏らしていて、迎撃を受けたと言う彼の主張は無視された。


 むしろヴァイスタは、より困難な状況であれば、新たな変化が見れるのではと期待しているようだった。


「焦ってください、乱れてください。とにかく激しくいってください」


「わかりましたよ……」


 シェイに拒否権など最初からなかった。逃亡を不問にしてもらった借りもある。ヴァイスタたちとエスケー、そして冷やかに監視するリッチイン隊を背に、より厳重な守備が置かれた基地へ突撃していった。


「構え! ……撃て!」


 ニキン兵は、魔法と矢を放つものを交互に置いて切れ間ない攻撃をしかけた。さらに強くなった()が、シェイを激しく叩いた。


「効いてません!」


「くそ! カサルの化け物め……鎧のすき間を狙うんだ!」


 だが、銀色の鎧はその()の中を進み距離を詰めて行った。

傷を受けても快癒するのではなく、魔法も矢も通さなかったのだ。


 ニキン側は、やはり漏らされた情報を持っていたようで、その事実にも柔軟に対応しシェイの体の柔らかい部分を狙った。


 しかし、今回の軍配はシェイへあがった。攻撃を通してしまう急所を把握し、それを鎧で庇ったままで前進したのだ。バリケードを体当たりで吹き飛ばし、奇襲を狙ったニキン兵も全てを迎撃した。


 そして、とうとうバリケードを突破しきった。ニキンにはそれほどの損害は出ておらず、兵力を温存したまま基地で迎え撃つことには成功したが、それを突破された事実は少なからぬ動揺をもたらしていた。


 シェイが青色の鎧で跳躍を選ばなかったのも、その効果を狙ったヴァイスタの助言によってである。銀色の鎧の力を見たいがためであったが、予想以上の効果をあげていたのだった。


 たった一人で敵基地攻略へ王手をかけたシェイだったが、称賛の声はなかった。ニキンはもちろんのこと、カサル側のリッチイン隊は『恥を知れ(グレット・ライトマン)』であることを恥じていたし、エスケーらは激しい嫉みにかられていた。


 ヴァイスタたちも、その力には目を奪われても、シェイはあくまで発現があった実験台の一つとしか見ていなかった。


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