第98話 雌雄決戦 ~「むにゃむにゃトーヤ君~お帰りなさい」
こんにちは
昨日は更新が滞りまして申し訳ございません。
そして本日は短い薄い内容です。明日は更新できるかわかりませんが昨日今日の分を取り返すために頑張れたら更新いたします。
では第98話どうぞ。
知矢の従魔ピョンピョンは怒っている。
自分が寝ている間に自分専用にとご主人様が用意して取っておいてくれたご飯を何者かが手を出したのだから。
「・・・・・・・・・・!!!!」(何をしているのそれは私のご飯よ!!)と身振り手振りでその何かに向けて強い波動を出し訴えた。
その怒りの波動ともいえる無言の声が届いたのか、木の蓋を押し退け甕の縁を両手でとらえ顔を突っ込むようにして中の食料を食べていたその何かがピクリと動きを止めた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・!!!」(あなたいったい誰。何で私のご飯食べてるの顔を見せなさいよ!!!)再び両手を振りながら何かを無言で訴える従魔。
従魔の無言ではあるが怒りを込めた波動に驚いた様子の何者かがゆっくりと食料をむさぼり食べていた甕から顔を起こし甕の縁に手を掛けたまま横を向き従魔と顔を合せた。
怒りの波動を出したままの従魔、その小さな体躯を上から見下ろすその何かは暗闇ではっきりその姿は解らないが後ろ足で立っているその身長は約600mm程。硬そうなうろこでおおわれた肌は背筋から長い尾にかけてきれいな曲線を生かし長さは全体で1200mm程だと思われる。
暗闇に浮かぶそのシルエットをが従魔を見下ろしながら声を出した。
「Gyu?gyuugyuyugyugyurururu (えっ?これは僕が見つけたんだよだから食べたっていいじゃないか)」
魔物同士でしか伝わらない言葉を発するその何かは従魔のご主人が甕に保管しておいてくれた食料の権利を主張し始めた。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ (だからそれは私のご主人様が私の為に用意してくれたご飯なの、勝手に食べないでよ。)」
「guryuugurururugyugyuguguuuryuuu! (そんなの知らないよ、僕が見つけたんだから僕のさ、お前あっちに行かないと踏みつぶすぞ!)」
身勝手な事を言われた従魔ピョンピョンは怒り心頭である。しかも踏みつぶすとまで言われて引き下がっては知矢の従魔としてのプライド、そしてゴールデン・デス・スパイダーとしての矜持が許さなかった。
だがここで少々考えていただきたい。
それはゴールデン・デス・スパイダーの一般的な特性である。
人々から恐れられているゴールデン・デス・スパイダーは人が置いておいた食料を見つけると集団でむさぼりつくしゴールデン・デス・スパイダーに目をつけられた食料は骨も残らないと言われる人々にとっては大変迷惑な魔物として恐れられているのだ。
そんな一般の風聞など知らない従魔のピョンピョンは大好きな主が自分の為の用意しておいてくれた食料を他の者が横取りしたのだから許すわけもない。
「・・・・・・・・・・・!・・・・・・・・・!(やれるものならやってみなさいよ!そっちがその気なら私も許さないから!)」
従魔はそう言い放つと地面にその8本の脚をぎゅっと踏ん張り戦いの姿勢をとった。
「gyuugyugugugagyuugyuu!gyagyagyuuuu!(ちび助のくせに生意気だ、こいつめ!これでもくらえw!)」
その何者かは後ろ足を軸に急旋回をするとその長い尾を振り廻し従魔に向けて振り降ろした。
しかしその動きはいささかのっそりとしたもので従魔はぴょんと軽くかわし空中を軽く跳んでシュタっと木箱の上へと着地した。
「・・・・・・・・・・・・・・・(そんなのろまな攻撃が当たるわけないでしょう)」
とあざ笑うかのように前脚を振り上げ後ろ足でゆらゆらと踊る様な仕草でからかった。
「gyugyugyugyuuuuu!(こいつめ逃げるな!)」
その何かは前脚を片方振り上げ従魔が降り立った木箱へと突進し従魔を木箱事破壊してしまった。
「gyuugugugugyuryuu(どうだちび助め)」
激しく破壊された木箱を見下ろし勝ち誇る何か
しかし「・・・・・・・・・・・・(やーいのろまそんなの当たらないわよ)」とまたしても素早い跳躍で攻撃を避けた従魔は再びその何かをからかう様に前脚を振る
「Gyuuuuuu!!gyuugyurururuuu (何を!!それじゃこいつをくらえ)」
その何者かは怒りに震えその小さい相手に大きな口を開き大声をあげながら口内を青白く光らせるのだった。
その頃テントで睡眠中の知矢は何かの気配を感じ目を覚ますとレーダーに映る様子を確認して跳び起きた。
それは従魔のピョンピョンが何者か赤い点滅と対峙している様子だ。
知矢達への悪意や興味を示すことがレーダー警戒アラートの条件設定にしていたため従魔との争いが起きるまで発報しなかったのである。
がばっとテントを飛び出しながら「みんな緊急だ起きろ!!」と叫びながらレーダの示す方向へ一目散にかける知矢。
こんな事ならギムの言う通り夜番を置けばよかったかと走りながら後悔する知矢であった。
各テントの中から警備担当者が次々と出てきて知矢を追う。その先では何かが破壊される音が響き戦闘状態をうかがわせていた。
走りながら知矢は魔力操作を行い各所に設置した光の魔道具のスイッチを入れ瞬時に周囲一面眩い光を照らし出す。
「ピョンピョン大丈夫か!」魔馬車置き場の裏側へと飛び込んだ知矢。
そこに見えたのは・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・!(あっご主人様悪い奴を捕まえました)」
真っ白な糸にグルんぐルンに巻かれた大きな何かが糸で身動きが取れずにその糸の中でごそごそ必死にもがいていた。
知矢の従魔ピョンピョンはその何かの上でピョンピョンと跳ねながら前脚を盛んに上げ振り主へアピールするのであった。
すぐに使用人たちが各々武器を手ににはおっとり刀で急行したが知矢が立ち止まり見つめる先を覗き込むとそこには喜んでいる様子のピョンピョンとその下で囚われになっている何かを目にし従魔とその何かを交互に見ながら立ち尽くすのであった。
「・・・!・・・・・・・・・・・・!(イェーイ!私、大活躍でしょみんな見て!)」
皆の視線を受けてさらに喜びに溢れクルクルダンスの様にその何かの上で跳ね回る従魔であった。




