第94話 神の使いと神の加護を持つ男 ~スライム達「・・・・・・」フワフワ
こんばんは
朝晩冷えますね。
皆様いかがお過ごしでしょうか。
では早速 第94話 どうぞ。
静かな湖面が僅かに波をうち始めると岸から30m程の湖面が突如盛り上がったと思うと大量の水を纏った何かが姿を現した。
「Gyaaaaa!!」噴火の様に水撃が吹き上がりその中から何かの咆哮が辺りに響き渡る。
「水龍か!」
目の前に姿を表した巨大な魔物を見上げ呟く知矢。
余りにも突然、
余りにも巨大
そして
余りにも現実離れしている事態に思考が停止し戦う、逃げる、その選択肢さえも頭に浮かべる事が出無いでいるのだろうか。
巨大なその体躯を表した時に巻き起こった水撃も段々静まり辺りはただ波打つ湖面が広がる。
すると数十メートル先に起立していた巨体が湖面に波をたてながらゆっくりと知矢へと近づいて来るのだった。
知矢は射竦められる様に立ち尽くすばかりであったが思考は停止しておらず
(龍だよな、本物の、ドラゴンってやつに間違いない!)
知矢は恐怖にて射竦められていたのでは無かった。
目の前に物語でした無かったその姿と出逢いに感動していたのである。
目の前の水龍がその気になれば知矢の様な人族はそれこそ指先一つもしくはその巨体の上方に据えられている頭部の先端、長い口先、顎まで割れ口の端から見え隠れする鋭い牙。その口から発せられる吐息でも吹き飛ばされてもおかしくは無かった。
しかし、その水龍の大きな口から発せられたのは吐息でも水撃でも無く思いも依らぬものであった。
「そこの人族よ、我の言葉が理解できるか!」
その水龍は知矢を見下ろしながら突然人族の言葉を発しながらじっと見つめている。
「ああ、理解できている」一瞬の躊躇でその身を焼かれるか粉砕されるかと思っていた知矢は言葉を発した水龍を身構えながらも返事を口に出来た。普通の民であったならいやそこいらの兵士でも冒険者でも突然目の前に龍が現れしかも声をかけてきたらまともな受け答えが出来ただろうか。
何とか言葉を発せただけでも大したものかもしれない。
知矢は返事を口にしたことで少しだけ落ち着くことが出来た。
「貴方は水の龍であろうか。言葉を話す龍となれば相応な高位の龍であると見受ける。俺に何か用だろうか」
続けて今度は問いを発する知矢に暫しじっと観察する様に見下ろしていた龍。
「お前たちはここで何をしている。」
龍はそのままの姿勢で今度は知矢達の事を聞いてきたのだ。
「先ず、俺は人族の言い方で冒険者をやっている、名をトーヤと言う。ここには仲間と共に水をきれいにする方法を探すためにやってきた。それでスライムを使って彼らに水をきれいにする能力が在るのではないかと考えあそこへ置いてある器の中にスライムを入れて水の浄化実験をやっているところだ。」
知矢はこの龍がどこまで人間のやっていることを理解できるのかが解らなかったが隠さずに本当の事を伝えようと思った。
「・・・・なぜあやつらが水を浄化できるのだと考えたのか」
どうやら浄化と言う言葉は理解しているようだと少し話が通じるのだと安堵しながら
「私の住んでいた遠い遠い国にあった語られていた物語の中でスライムで水を浄化したり、汚れを綺麗にしたりする物語を読んだ事が有る。その物語は只の架空のお話しだがひょっとしたらスライムにそんな力があるのではと考えて実験をしにここまで来たんだ。
何か君に不快な思いをさせたのだろうか。それなら謝るし、この場から立ち去ろう。どうなんだ」
知矢は聞かれたことを全て話したつもりだ。なら逆に水龍が何故姿を現し話しかけてきたのかを聞くべきだろうと思った。
「・・・・・嘘は言っていない様だ・・・・だが・・うむ・・・」
水龍は知矢からの問いかけには答えず何か考え込んでいる。
「わしは大昔からこの湖に住む龍族だ。」
いきなり話をはじめた龍。
「わしの眷属とともにこの地に住むようになって人の暦で既に数千年だろうか。」
(数千年?それって古龍ってやつか!)
驚く知矢ったがそもそもそんな名称があるのかも知らなかった。
「何百年か於きに人族と交わる事もあった、だがその多くはわし、もしくはわれの眷属を狙って近づく者ばかりであった。わしは人族を食べる訳でもなし、お前らの住む場所を襲う事もせん。だがしかし逆は幾度となく起こった。
一度襲ってきた者を捕まえ聞いた事が有る「なぜわしらを襲うのか」とな。怯えながらもそいつは言った「鱗は防具に、牙は武器に、革は鎧に、肉は食べ物に、そして・・血は不老不死の薬に」とな。だが誰一人とてわしの鱗一枚剥がす力など持ち合わせておらん。武器で傷をつける事も出来ん奴らばかりだ。だがその血は薬にだと聞いた事も無いわ。」
その古龍は昔人族から来たという話を披露した。確かにこの世界にはそんな話が伝わっている。
しかし昔話程度の話で実際討伐した本人や得られた龍の肉を食べた、血を飲んで不老不死になったなどと言う人物が人々の前に現れその証拠を見せた者など一人もいなかった。
結局物語として人の口から口へと伝わるうちに誇張、脚色されただけの事であろう。
吟遊詩人たちが話歌う物語も龍は時たま題材に上がるがそれも結局は雲の切れ目からその姿を見たとか山の間から姿を現したとかの目撃談を大仰に語る物ばかりだ。
ましてやこの帝国では龍は神の使い、害すれば神罰が下るとまで言われている。そうむやみやたらに龍を襲う者がいる訳では無いと思った知矢だが襲われている側はそうは思わない。
「俺たちはあなた達龍族を襲うつもりなど一切ない。逆に同行する仲間の獣人は貴方を神の使いだと言って敬っていた。だから安心してほしい。逆に聞く。スライムを捕獲し連れ去る事もあなたの眷属を襲う事と同義なのか」
「あやつらは別に眷属でもないしお前たちが連れ去るのは勝手だが1つだけ問題がある。」
「問題、何であろう。教えて欲しい、もし問題が在ればそれはおこわないと誓おう」
古龍は少し考えるように間を開けながら答えた。
「お前たちの言うそやつらが水をきれいにすると言いうのは本当だ。おかげでこの湖も長い事きれいに保たれておる。あやつらをむやみに殺したり、この湖からすべて持ち去るのでなければ許そう。」
古龍の言葉を信じればやはりスライムには浄化作用を、浄化能力が備わっていた事になる知矢は意外な事でその能力が証明された事に喜びそして驚いた。
「もちろんだ。むやみに殺したり、乱獲などしないようにする、約束しよう。だがスライムはこの湖にどれほどの個体数が生息しているのであろう。それが解ればより注意が出来るのだが。それに彼らは育てたり増やす事は出来るのか、貴方はそれを知っているのなら教えてほしい。」
ついでと言っては何だが知矢はであったこの古龍から情報を得られればそれに越した事は無いと試しに聞いてみた。
「・・・数か数えた事など無い、それだけあやつらは大勢いる。それに餌が在れば太りそして分かれて増える。そうじゃなそう考えるとお前らが何百と持って行っても奴らが居なくなることも無いか、ハッハッハ。好きなだけ連れて行くと良いだろう。しかしわれの眷属に手を出すことは許さんからな。」
よくよく考えた古龍はいくらでもいるし増えるスライムの事を思い出した様で自分の心配を笑った。
「ああ、約束しようあなたの眷属には手を出さない。ところで確認何だが、眷属という位だから姿かたちは貴方の様な龍を差すので間違いはないだろうか。」
念のため聞いてみると「そうだ、我々龍族の者の事だ。」
「わかった。仲間たちも戻ってきたらよく言い含めておこう。まあ、もう既にあそこで隠れてこちらの様子を窺がっているようだがな。」
知矢は少し離れた木々の陰から知矢と古龍の様子を窺がう様に隠れているニャアラスと使用人たちに気が付いていた。
「そうそう、俺の方もついでに紹介しておこう。おーいピョンピョンこっちに来てみろ」
知矢はニャアラス達にも来るように手を振り従魔の事も紹介しようと呼び寄せた。
直ぐに地を素早く走りピョーンと知矢の肩へ飛び乗る従魔。その背をやさしく撫ぜながら
「こいつは俺の従魔、名前をピョンピョンと言う。魔物だが今は俺の家族だ、よろしくな。」
と古龍へと紹介すると従魔も古龍に対し「こんにちは」という波動を出しながら手を振るのであった。
おずおずと近づいてくるニャアラス達を横目で見ていると。
「おぬし、そいつは森の守り手ではないか!なぜそやつがお前の下に居る。そ奴らの仲間は集団で大型の獣たちにも打ち勝つ森の番人として、ほれ後ろに見えるであろう。かの深い森森の各所で森や山を守る守り手として君臨しとる種族だ。」
古龍は後ろを振り返り湖のはるか後方に広がる東の大森林を示し従魔の事を森の守り手と称した。
「こいつは以前、大森林、あなた方の言う深い森森の外郭で出会って仲間になりたいと言うので従魔にしたんだ。」といまは掌に載せ見つめ合う様にいる従魔と会話する様にあった日の事を思い出しながら話した。
「お前は不思議な奴だ。昔一度だけそ奴らの一族と揉めた事が有った。その時は湖に逃れ難を逃れたがあやつらの王はわしにも匹敵するほど巨大でのう、しかもその眷属がまた何百と群がって来よって閉口したわい。しかも湖に逃れたわしを追って細かい奴らが水の上をすいすい歩いてきおってから。わしらの眷属総出で湖から追いやったがもう奴らと揉めるのはご免じゃ。おいその小さい守り手よお前がその人族に従っているならわしはこやつとは争わん。良いかよく覚えとくのだぞ。王に余計な事を言うではないぞ」
古龍は知矢の従魔に念を押す様に語り掛けるとピョンピョンは機嫌よく手を振り「大丈夫」という波動を出した。
思わぬ古龍とゴールデン・デス・スパイダーの争いを聞いた知矢はだがその争いが骨肉のものでは無く喧嘩程度の物であったのだろうと感じ少し笑ってしまった。
「うぬ!お主何を笑う!」とその様子を観た古龍は知矢へとその矛先を向けた。
「いやいや、古龍よ済まない。ただ、争いと言っても血で血を洗うものでは無さそうだと思いおそらく中の良い物同士の喧嘩程度なのだろうと感じてつい笑ってしまった。」
「ふん、何が仲のいいものか。そやつらの王はいつになっても頑固者で行かん。ふん!」とやはり仲が良さそうだと感じた知矢であった。
「まあそんな事は良い。じゃあわしは行くぞ。くれぐれも水を汚したり眷属に手を出すなよ」と言いながらその巨体を静かに湖へと向け立ち去ろうとしたが
「まて!」突然振り向く古龍、再び知矢へと近づきその巨大な顔を知矢の真近まで寄せるとまるで何かを確認する様にクンクン匂いを嗅ぐように仕草をした。
その様子を少し離れた場所から近づきがたく見守っていたニャアラスと使用人たちは「ああ!」とまるで知矢が龍に食べられでもするかと悲鳴を上げた。
横目でその様子を見、片手で制する様に大丈夫だと合図を送る知矢はそのままされるがままにしていた。
従魔は「何するんだ!」と何かを訴える様に波動を出していたが古龍はそれを相手にせず鼻先を下の方へ向けぴたりと停止した。
その場で巨大な顔の目をギロリと知矢へ向けながら何か別の所から声が聞こえた。
『おい人族よこのわしの声が聞こえるか』
知矢はその声が頭の中から聞こえて来たのに気が付き驚く表情をしたが試しに『ああ、聞こえるがこれで良いのか』と頭の中で古龍に話しかける様にしてみた。
『うむ、そのまま聞け。おまえのその腰の剣、そしてその背にしている荷物。どこで手に入れた』
思わぬ質問にどう答えて良いのかまさか「最高神様から貰った」等と言ってこの古龍が信じる訳も無いがしかし何故そんな事を聞いてくるのか疑問に思った。
『これは有る方から特別にもらったものだが何故それを気にする』
『ある方とは・・・神か!』
古龍の言葉に思わず『えっ何故』と口にいや頭にしてしまった知矢。
『お前は何者だ。よくよく見ると人族にしては魔力も強く発する気質も少し異なる。教えろ、いや良いわしに見せてみろ』
と知矢へ問うが
『見せろとはステータスの事か』と知矢は思たが
『良い、少しお前の正体を覗かせてもらうぞ』と古龍は知矢から少し離れその両手を何かゴニョゴニョと動かすとその口からは何かわからない龍独特の言葉なのかが漏れ聞こえてきた。
すると
『やはりそうか。最高神様の加護を持って居るしかもそのほかの獣神様や他の加護まで・・・お前は人族では無いのか、うむ・・”転移者”、”若返りし者”そうかお前は異界の者か、しかし最高神様の眷属ではないがその加護を持つ者・・・』
頭の中に響いていた声、おそらくテレパシーの一種だろうがそれが少し途絶え古龍は何か思うのか考えるそぶりを見せた。
『トーヤと言ったな。いや失礼した。最高神様の加護を持つトーヤ、いやトーヤ様と言わせてもらう。トーヤ様とは知らず無礼な態度、大変申し訳なかった。この通りだ。』といきなり態度を変えた古龍はその頭を水面に付けるほど下げ詫びを示しているようだ。
『ちょ、ちょっと待ってくれ。古龍さまあなたに頭を下げられるいわれは有りません。俺は最高神様の加護は貰ったが別にその眷属でも神の仲間でもない只の人族の若者だ。』
慌てた知矢は頭を上げる様に古龍へ訴えるとすぐに頭を上げて古龍は
『いや、その様な事は無い。我々も長い時の中を生きて最高神様には直接お会いする事は一度として無い。唯一関係があったのは龍の神様から頂いた”龍族の守り”その魔力に包まれた至宝に最高神様の魔力が込められておったことがあるだけじゃ。それをトーヤ様は直接お会いされたのでしょう。でなければ加護は与えられる事はありませんからな』
と自分の中で何か合点がいく様に頷き一人で理解していた。
『そうだ、詫びと言っては何ですが、わが眷属は元より我が龍族に広くトーヤ様の事を伝達しておくとしましょう。さすればどこかで何か困った折に近くにいる龍族やその眷属へ声をかけて貰えれば皆すぐに力を喜んで貸すでしょう。うん、そうしよう』とまたしても独り合点をし1人事を決める古龍であった。
『古龍さま、いや何もそこまでしてくれる様な事は俺はしていませんから』
と知矢は必死で訴えたが何か聞き入れられずその古龍は『では早速広めておきますからな、では。ああ、スライムと呼んでいるあやつら、どうぞ好きなだけお持ちください・では!』
と言いたいことだけ言って湖の奥へズブズブと潜って行ってしまったのであった。
その様子を見て居たニャアラス達は古龍が立ち去ったのを見て知矢の元へ駆け寄った。
「ニャア!トーヤ。大丈夫か。龍は龍はええっ?なんなんニャ?」
「トーヤ様ご無事で」と知矢の無事を上から下まで確認するギム
「ああっれ・・本物の龍ですよねええええ?」各自困惑するや興奮するやの使用人達である。
知矢は(いったいあの龍はそもそも何しに出て来たんだ?・・・・・)
ひじょうに疲れた顔をする知矢。使用人たちに夕食の支度を頼んで
「少し疲れたから」とキャンプに設営されたテントで少し休むと伝え1人テントへ入っていった。
その後をピョンピョンと飛び跳ねながら従魔もテントへ入っていく。
全員その様子を呆然と見送ると「夕食の支度をしましょうか」というミミの声にああと答えながら何か足取りも重い様子で各自の仕事へと別れて行った。
「トーヤ!で一体ニャンニャンだ!!」と訳が分からなく叫ぶニャアラスを置き去りにして。
昨日朝5時から栃木県茂木町”モテギサーキット”へKCBMへ参加するべく行ってまいりました。
早朝は寒く高速の行きかえりも冷えましたが昼間は非常に暖かく過ごしやすかったですね。
妻からは「柏屋さんの温泉まんじゅう!!」というお土産リクエストで新商品の”抹茶”と定番の”こしあん”を買ってまいりまして好評でした。
皆さんもご存知かもしれませんが柏屋さんの温泉まんじゅうは美味しいですね。




