表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

91/257

第91話 成長と進化  ~「なあ肩が重いんだが・・・」「ふ~らふ~ら」


こんばんは

活動報告では交信が途絶える旨を記載いたしましたが何とか更新できましたのでご覧ください。


では第91話です。



知矢達一行が水質浄化の実験に用いるためスライム捕獲を目的にラグーンを発ち一晩が過ぎた。



まだ朝もやが漂う静かな夜明けを迎えたキャンプ地は既に使用人たちが朝食の準備や出立の為の片づけそして馬魔の世話など手分けをし活動を開始していた。



知矢は朝に強いので寝坊する事はめったにないが主である知矢があまり早く起き出すとそれよりも早く起きなければならない使用人たちに迷惑をかけると思いテントの中で目を覚ました後もしばらくはじっと身を横たえ外の様子を窺がいながら起きるタイミングを計っていた。



そろそろ良いにおいが漂ってきたので頃合いかなとゆっくりテントから出ると傍で立番をしていた警備班で元冒険者の使用人、ハーフドワーフのギムが知矢に気が付いた。



「ご主人様おはようございます。よくお休みになれましたか」小柄だががっしりした体躯のハーフドワーフは片親の血筋か顔つきは割と精悍でいわゆるドワーフのそれとは若干異なって見える。


「ああ、ギムおはよう。ゆっくり寝れたよ。みんなはどうだった。冒険者組はともかく他の皆は慣れないテントじゃ寝付けなかったんじゃないか」


「ええ、ですが寝付けなかったのはどうやら旅で興奮しての事の様で大体は疲れてすぐ寝たそうです。」


「そうか、ならよかったがギムその口ぶりだと誰か寝付けなかった者でもいるのか?」


「いやあ、情けない話ですがどうも・・」

寝付けなかったのはどうやらギムの様だった。


ギムは長年の冒険者生活でどんな環境でも寝ることが出来るが常に周囲を警戒しながら浅い眠りの習慣があり夜番の一声ですぐに武器を持って立ち上がる習性が身についている。


それが今夜は知矢の指示で夜番も無く安心して寝る様にと言われたものの気になって逆に熟睡できなかったようだ。


「そうか逆に悪い事をしたな」

「いえ、ご主人様の魔法で警戒できるとわかってはいたのですがどうにもこれは習慣と言う奴で。ですがお気になさらず。体調は問題ございませんから」と苦笑いをしながらどうぞ食事の支度が出来ておりますと知矢を誘導し皆の方へ向かった。


「「「「おはようございます」」」」

「ああ、おはよう。みんな揃っているな」


「ご主人様、それがニャアラスさんがテントから出てきません」

「なに?」

「様子を窺がうといびきが聞こえてきましたからまだ熟睡のようです。」とあきれ顔のミミであった。


「あいつあれから何時まで飲んでいたんだ、仕方がない奴だ。まあその内腹をすかして起きて来るだろう」と皆に食事を始めようと声をかけた


「では、いただきます!」

「「「「いただきます」」」」


今朝の食事は濃い目の味をつけ焼いた肉を細かく切った物を葉野菜や根菜に混ぜたサラダとジャガイモのような芋を使ったスープ、そして昨日狩った数種の魔獣の肉を串に刺して焼いた物そして焼きたてのパンである。


めいめい食事を堪能していると

「ウニャア、寝坊したニャ・・・」寝ぼけ眼のニャアラスが匂いにつられたのかやっと起き出した。


「おはよう、先に顔でも洗って目を覚まして来いよ」と知矢は使用人から受け取ったタオルをニャアラスへ投げた。



顔を洗ってさっぱりと目が覚めたのかニャアラスが席に着くと「いただくニャ」と元気良く食事を始めた。


「ニャアラス、お前あれからどれくらい酒を飲んでいたんだ」


「いやあ面目ない。だけどニャトーヤ達が寝てからは1本だけニャ。それよりトーヤの従魔の獲物を食べるのを見てたら気になって気になってなかなか寝れなかったニャ」


お食事を口に運びながら時折欠伸をする様子からするとやはりあまり寝ていないようだ。


「ああ、そうだピョンピョン。あいつまだテントで寝てたな。指でさすっても起きないから置いてきたがおいつも夜更かしだったのか。」


「トーヤ、おミャア気が付いてないニャ」


「何がだ」


「昨日アイツが狩ってきたクレイボア・・・もう無いニャ」


「「「「エッ!」」」」知矢を始め話を耳にした使用人たちが一斉にニャアラスを見その後昨夜知矢の従魔ピョンピョンが食事をしていた方向へ一斉に視線を向けた。


食事中であったが「少し失礼」と声をかけて立ち上がった知矢は魔馬車の裏側で従魔が引きずってきたクレイボアを食べていた辺りを見に行った。


「!」


少しして戻った知矢は静かに再び席へ着くと皆を見渡しおもむろに「・・・何も残っていない・・・」

と口にした。


「「「「「「エーッ!!!!!」」」」」」驚愕の顔を浮かべ驚く使用人達。


「ご、ご主人様まさかピョンピョンが食べた訳ではありませんよね。」

「あの大きさだと20人前は有ったと思うが」

「いえいえそれ以上ですよ」

「食べ残しを他の魔物が食べちゃったんでは」

「ニャアニャア、俺が最後まで見てたから間違いない」



「「「「「「エーッ!!!!!」」」」」」



ニャアラスの衝撃的な目撃情報に再び驚愕する使用人達であったが知矢は


(そういやあいつ初めて会った時も凄い食欲で体の何倍もの量をぺろりと食べきってたな・・・って事は)


知矢は初めてピョンピョンを従魔にした夜の事を思い出した。

あの時はまだ体長が40mm程であったのが一晩で大量の魔物の内臓やらを食べつくし翌朝には60mm以上になっていた事が有った。


その傍らには脱皮した皮が残されており(ひょっとすると定期的に大食いするのは脱皮の前兆か?)と考えた。


普段のピョンピョンに食事は与えられた丼の様な小鉢に生肉や内臓を盛った物が一杯だけで十分満足している様子で追加をせがまれた事は無かった。


しかし前回に続き今回も急な大食い、しかも前回よりさらに多い量を食べている。


知矢は急ぎ食事を終えると未だテントで寝ている従魔の様子を確認しに行った。



「おいピョンピョン!起きてるか」知矢は話しかけながらテントの入り口を押し上げ中の様子を確認する。


「・・・おいおいおい・・・やっぱりかよ」


そう、起き掛けに見た時は変化が感じられなかったがいまテントの中で毛布の上に未だ寝ている従魔。その傍らには先ほどまでの従魔であった大きさの抜け殻が鎮座していた。


脱皮である。


未だ寝ている従魔は脱皮によりさらに一回り大きくなりさっきまで手のひらサイズであった物が今では知矢の拳程度の大きさに成長していたのだった。


「ゴールデン・デス・スパイダーってのは定期的に爆食いしたら成長するのかよ。知らなかった・・・」


こぶし大に成長した従魔は知矢の事などまだ気が付いていないのかそれとも脱皮成長の疲労なのかよく寝ていた。




「ニャアトーヤどうだった」食事を終えゆったりお茶を飲んでいるニャアラスが振り返って聞いてくる。

使用人たちは既に後片付けや出立の準備を始めている様子で席の傍には知矢へお茶を供するためミミが控えており姿を見るとすぐに準備をし席に着くやいなやお茶が目の前に置かれた。


「ミミありがとう」


「いえ、ご主人様。それでは私も席を外させて頂きますがどうぞごゆるりとお過ごしください。」

ミミは丁寧に頭を下げると静かにその場を離れ他の使用員たちと共に出立の準備に加わった。



入れたてのお茶を少しふーふー冷ましゆっくり口に含むとほうじ茶の良い香りが口の中に広がった。


(う~ん、ほうじ茶も美味い)知矢は満足そうに飲んでいるがそれもそのはず。このお茶は入れる直前焙じられたものである。よって強い香りを保持し湯で抽出された旨味も存分に味わえ微かな甘みまで感じるほどであった。


この世界に紅茶は存在していたが緑茶は無かった。今はノブユキ達の故郷から手に入れた緑茶があるがその中に運搬中樽の中で多少湿気ってしまった物が幾分か存在し風味が悪いので廃棄しようとした使用人へ紙を使い遠火でじっくりゆっくりと焙じる事を教えたのだった。


上手く焙じる事によって湿気た茶葉も新たな香りを生み出し甘みとコクが深まりその味わいは緑茶とも紅茶とも異なるサッパリとしつつも深い味わいを得るのだった。


「ニャアお茶よりどうだったんだニャ」ゆっくりほうじ茶を堪能する知矢へニャアラスが急かす。


「・・また一回り大きくなっていたぞ」横目で視線を送りながら落ち着いた口調であったが実際は逆にお茶で気分を落ち着かせている最中だった。



「フミャア!やっぱりそうだったのか。あの時もそうだったからもしかしてと思ってたにゃ。

だから俺は昨日そんな気がして遅くまで観てたんだけど変化がニャかったから違ったのかと思ってたニャ」



知矢は先ほど鑑定した従魔のステータスを思い出していた。




・ゴールデン・デス・スパイダー

・LV8

・名称:  ピョンピョン

・知矢の従魔

・攻撃力: 250

・力 :  400

・威嚇:  215

・速力:  A

・魔力:  B

・特力:  糸を吐く、仲間を呼ぶ、かみつき、瞬発、投網、スパイダーショット



LVが倍になり攻撃力は数倍、そして力や威嚇力もかなり強くなっていた。

そして新たな特力を得ている。


昨夜クレイボアを倒したところを見ると一般的なクレイボアはCランクからBランクの魔獣である事からピョンピョンはその小さな体にそれだけの力と能力が備わっていると言う事だ。


実際戦う場面を見た事の無い知矢は推測しかできなかったが実際そういう事であろう。



「おいトーヤ、いくら何でも早過ぎじゃニャアか?この調子だと倍々で育っちまうニャ」


「ゴールデン・デス・スパイダーの生態は冒険者ギルドの資料室でも殆ど情報が得られなかったからな。まあこの後も倍々でって事は流石にないだろうが、しかし時に大食いをすると強くなる・・のか。」



その時知矢のレーダーに反応があった。ピョンピョンが起き出したようだ。


少しすると「ピョーン」と軽く知矢の肩へジャンプし姿を現した。


「ワッ!」突然姿を現したゴールデン・デス・スパイダーに驚くニャアラス


「おうピョンピョンおはよう、良く寝てたな」知矢は変わらない様に従魔へ声をかける。

「・・・・」知矢の肩で左右へ体を揺らしながら前脚で知矢の頬をふにゅふにゅする。


「そうか何か疲れたのか。いいかピョンピョン良く聞けよ。お前気が付いているか?脱皮してまた一回り大きくなってるぞ」


知矢との主従ラインがより強くなったのかやはり以前よりも従魔の考えがよりわかりやすくなった知矢は従魔が発した「何かすごーく疲れて寝てた」という言葉(感情)を感じ取った。


知矢に脱皮して大きくなったことを告げられたピョンピョンは最初自覚が無かったのか自分の手足をあれこれ見まわしたり転がってお腹を見たりしてから再び知矢の肩で頬をツンツンすると


「おっやっと自覚したか。そうだ大きくなったし力や能力もだいぶ強くなってるみたいだぞ。」


としばし主従の会話を楽しみながら知矢はあれこれ質問して従魔の能力をどれだけ自覚しているか探ってみたがやはり本人はよく解らないようであった。


だが相変わらず可愛い仕草で肩から頭に移ったりピョンと膝に飛び移ったりと楽し気な様子を観て知矢は「まあ、良いか」と素直に従魔の成長を喜び今後を見守る事にした。



「良いのかニャア?まあトーヤが食べられない様にニャ」と半ばあきれながらも楽し気な友を見て反対しないニャアラスさんであった。




「ご主人様、宜しければ出発の準備が整いました」とミレが呼びに来たのでピョンピョンに肩へ乗るよう言いながらその場に残されていたテーブルや椅子などを無限倉庫へ収納しニャアラスを伴い皆が待つ魔馬車へと向かった。




「よし、忘れ物は無いな。では出発!」 「「「「「おおう!!」」」」」

ギムの号令で魔馬車がゆっくりと走り始めた。



今日は目的地の湖とその脇に広がる湿地帯には午前中に到着する予定だ。


その後知矢とニャアラス、ギム、ノブユキ、ワイズマンの5人で周囲の探索と出来ればスライムの捕獲を行う。


他の者はその場で数日実験を兼ねて捕獲と観察の為滞在する準備などを行予定だ。


ササスケがテントでは無く簡易の小屋をテントの部材と近くにはえる木々や枝を利用し作成する事になっている。


それに加え捕獲したスライムの実験の為観察用のプールを掘りその出簡易的に飼育しながら数日様子を観る予定だ。


そこで何かしら成果が見込まれるようなら数をそろえ持ち帰り帰宅後本格的な実験を行う事になっている。


果たしてどこかの異世界小説のように上手くスライムを活用できるのか。


今後の実験観察の結果を待とう。







明日以降も仕事の状況次第になりますので更新できなかった場合はご容赦願います。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ