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第86話 環境と生活  ~「私も行く!」「マリーお前は研修中だ」

取り急ぎ投稿します


では第86話です



「お帰りなさいませ!」


「「「「「 お帰りなさいませ!!! 」」」」」


「無事のご帰還お待ちしておりました」


「「「「「 無事のご帰還お待ちしておりました 」」」」」


「お風呂になさいますかそれともお食事に致しますか」


「「「「「お風呂になさいますかそれともお食事に致しますか」」」」」


「行ってらっしゃいませ」


「「「「「 行ってらっしゃいませ 」」」」」


「声が小さい!!」


「「「「「 声が小さい!! 」」」」」


「違う!」


「「「「「 違う! 」」」」」




今、魔道具商店隣の空き家を改造した倉庫兼使用人の集会場ともなっている広い空間に多数の声が響いている。


これは新たに買われた奴隷たちとその他1名を加えた新人使用人教育の真っ最中の光景である。

今基本挨拶を大声で教えているのは元貴族家メイドで獣人のマイである。

マイは片手に木刀を持ち新人たちの前後を回りながら一人一人の声がしっかり出ているか、姿勢は正しいか、お辞儀の角度はどうか、心がこもっているか等を厳しく確認している。


声出しは毎日の基本訓練の最初に行っているが教育開始から既に4日を過ぎやっとどうにかそろい始めたばかりなのでマイも気を抜かず指導している。


その中でひときわ大きな声を出しキリリとした姿勢やお辞儀の正確さが光るものが1名いた。

元伯爵令嬢であり騎士団に所属をしていた事もあるマリエッタ・アンコール、今はマリーと名を変え知矢の使用人として働く事でその凝り固まり偏向している考え方を根本から育て直す事を目指している。


マリーが連れてこられた後、警備を担う元冒険者たちを見て「私もそちらで剣を持ち!」と知矢に願ったが知矢は逆に一切剣や武器、戦いなどへの関わりを禁止しあくまでも接客を含内向きの使用人として教育する様指示していた。


マリーもだがその他の新人奴隷たちは他の使用人と一緒に先ずは掃除のやり方や衛生観念、食事のマナー、料理に下ごしらえは元より街の店や市場での肉や野菜の買い出し、服やその他縫製まで一切の事を学ぶ。

今回は元々料理に特化して奴隷を購入して来た為その者達はそう言った一般常識に関して問題は少なかったがマリーは貴族の令嬢である。料理と言えば食べるだけ、掃除はしたことも無く買い物などはそれ以前にお金を自ら支払ったことが無い為教える方は子供に教えるレベルから指導しなくてはならず苦労の連続である。



マリー本人は「何でもできる」気でいたが今では何もできない何も知らなかったことに自信を失っていた。しかし朝の声出しだけは率先して元気よく声も出せるようになり一応貴族の礼義も最低限は知っていた事が功を奏したのかどうか微妙な所ではあるのだがこなせる様にはなってきた。


今後の活躍に期待したい。




余談だがこちらも元貴族令嬢であったサーヤとの対面は特に問題無く終えていた。

マリーが気落ちした状態で連れてこられたせいなのかそれとも他の貴族との社交場での付き合いに疎かったせいなのかはわからないがサーヤとしては言葉少なかったがマリーの実家伯爵家に比べ爵位の低い男爵家出身であるサーヤの方がそれを気にしていた節もあった。


知矢はそんなトラブルが無いとは思っていたが何かの時にはサーヤを庇う気でいたのでこちらも安堵していた。




隣の建物でそんな教育が行われている頃、魔道具商店の二階にある知矢の自室では深刻な顔をした知矢とサーヤそれにリラレットが顔を突き合わせて相談中。


「ではトーヤ様、魔道具の種類や販売個数を制限し代わりに新商品と随時入れ替えていくと言う事ですね」リラレットが眼鏡を戻しながらメモに書き込みをしながら確認している。


「ああ、そろそろ次の段階に進めようと思ってな」

知矢は紅茶を口にしながら答える。


「何を新発売するのしょうか」


「今考えているのは”混合栓”だ」


「混合栓?とはどのような」聞いた事の無い言葉に戸惑うリラレット。


「一つの器具からお湯と水が出る。熱いのも冷たいのも、そして丁度いいのも」

簡潔にサーヤが説明する。


「お湯が魔道具から出るのですか、それは薪でお湯を沸かさなくていいと言う事ですね。それなら多くの方が喜びますでしょう。お風呂も気軽に使える等、トーヤ様の言う”公衆衛生の促進”にも寄与するものです。是非販売致しましょう。」

とリラレットは乗り気である。


「よし、じゃあその方向で」

「ダメ」

知矢が販売を決定しようとするとサーヤからストップがかかった。


「どうしましたサーヤさん。貴方もお風呂が大好きではありませんか」とサーヤの様子を窺がうリラレット。


「・・・多分みんなが、都市中がお風呂に入ると排水があふれる、河が汚れる」


サーヤの一言で知矢は「しまったそれがあったか。使い勝手や利便性ばかり着目して何が公衆衛生だよな、逆に河川公害を引き起こすところだった。ありがとうサーヤ気が付いてくれて。」

と自分の視野思考が狭くなっていた事を反省した。


リラレットは「そこまで河が汚れたりしますか?」と懐疑的であったが知矢は知っていた。


それは昭和の30年代から60年代にかけて日本全国各地で見られた公害であった。

特に急激なベットタウン化が進み人口増加にインフラ整備、特に本下水化が全く進んでいなかった地方都市や周辺の街で急増した事件だった。


それまでの手汲み井戸電動ポンプ井戸、そして公共水道へと水事情が発展し家電製品の普及や各家に風呂が普及し始めた時から始まった。


家庭での水使用の水量が爆発的に増えた半面下水道施設が無い地区が殆どであった為人々は側溝や水路、小川へ家庭排水を流していたのだがその量が膨大になるとともに洗剤の普及や食生活の変化で排水に流れ込む化学物質や油、その他排水ゴミが垂れ流されていたのが当時の日本だった。


そのせいで各地の側溝や小川、河川には異臭が立ち込めひどい状況に陥った。


行政、国は中々動き出さず放置していたため全国の河川は悪臭や泡が立つひどい状態になり川には魚や虫が住めなくなるなど環境汚染が深刻であった。


数十年かかり少しずつ改善をしてきたが今もって渋谷付近を流れる渋谷川などは異臭を消すため令和の現代でも浄化設備を稼働させてはいるが設計や行政官僚の見通しが甘くオシャレな通りに塩素消毒薬の匂いと排水匂いが立ち込めたカオスな街になっている。


あの中でインスタ映えと喜んで都会渋谷を歩き回る若者・・・解せない。





「トーヤ様が作られたあの浄化装置では」とリラレットが喜ぶように思い出すが


「あれの能力はここで使用するのが限界」

サーヤがバッサリ否定する。


「そうなのですね、残念です。」と沈む様子のリラレットである。


知矢は腕を組みながら虚空を見つめ何かを考えている。すると

「そういやまだ試していなかったな」と呟いた。


「「?」」サーヤとリラレットは知矢の話の続きを待つ。


「スライムだよ、そうサーヤ定番じゃないか。スライム排水処理の実験をしようと依然考えていてそのままだった。」と思い出したように言うが


「そんな話この世界で実用化されたと聞いた事が有りません」とこれもサーヤにバッサリと切られる、が。


「だが否定も出来ないだろう、そうだ何人か連れてスライム探索と浄化実験をしてみよう。その上で各水路や吸い込みに入れて浄化できるなら河川公害の抑制につかえるかもしれん。」


使用人達、特に元冒険者組へ唐突にスライム探索捕獲作戦が発布された。


知矢を筆頭に周辺の魔物の生息や地理に詳しいギム、ミレを始めノブユキ、ミホ、ササスケそれにワイズマン、知矢の世話係としてマク、ミミを加え以上9名を選抜し探索捕獲作戦が実行されることとなった。



スライムが生息するのは沼地や湿地帯、それに木が生い茂る浅い川辺等が考えられた。それらを順に探索し環境や生息場所ごとに数種のスライムを捕獲し持ち帰った後実験を試みる予定だ。



ミレに命じ冒険者ギルドで何か情報が無いかを確認に行かせているうちに数日泊まり込みになるであろうからと衣食住の準備を整える使用人たち。


だが荷物は全て各自に支給してあるマジックバックや知矢の無限倉庫へ収納できるので実に身軽だ。


そうこうしている内にレンタル馬魔車屋から2台の馬魔車を借りてワイズマンとカンゾウが戻ってきた。


荷物らしい荷物は無いため積むのは移動中快適に過ごせる様軟らかい敷物や毛布やクッションなど、あとは必要に応じて各自がマジックバックから取り出せば済む。


念のため槍や弓矢が積み込まれ全員が身支度を整え出発の準備が出来た。



そこへギルドで情報収取をしてきたミレが帰宅。すると同行者が一名。


「トーヤ、何か面白い冒険に出るニャ!俺も行くニャ!」

愛すべき友人ニャーラスさんの登場である。


併せて10名になった一行は残存部隊の使用人たちの見送りを受けながらゆったりと馬魔車で店を発った。



はたして上手くこの作戦は達成できるのか。


はたまた何か大きなトラブルに見舞われるのか。






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― 新着の感想 ―
[一言] スライムは作品によって扱いが異なりますからねー。 ペットにもなる無害なものから物理無効の暴食モンスターまで。 はたしてこの世界のスライムは都合良く汚水や汚物を処理してくれるのか?
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