第82話 騎士団三度 ~「あっ!兄貴の危機でやんすか!!」
週の初め月曜日
皆様お元気でしょうか。
昨日少し弓の修行に熱が入り過ぎ無駄な力みをいつの間にかに発しておりました。
何年経とうと上手くならないものです。(-_-;)
では第82話どうぞ。
「どうだろうか、トーヤ殿」とオースティン騎士伯は軽い感じで問いかけて来る。
一拍間を置き知矢は
「お断りだ!」
とにべも無く即答だった。
バッサリと一言で断られた騎士伯のオースティンは半ば予想していたかのように肩をすくませ苦笑いを浮かべるが後ろに控える騎士の1人ジェシカ・エクワドルはそうはいかない様子だ。
「なっ!」とジェシカが口を出そうとする前に知矢がそれを遮る様にオースティンへ言葉をつづけた。
「騎士伯殿は何か想定内の様な感じですが、俺としてはもし剣の師として首を垂れるならマジェンソン・ボドー、彼には俺の暇な時で良ければ多少時間を取りますよ。
しかしそっちのジェシカ・エクワドルって言ったか。お前はダメだ、っと言うかお前俺に教わる気などはなから無かろう。」
と横目でジェシカに視線を送る。
指摘されたジェシカは言葉も無く先ほどまでとは異なり額に険を浮かばせ目を細め知矢を見ていた。
その隣のマジェンソンは知矢の指摘にジェシカの顔を窺がいその表情に驚き知矢とジェシカを交互に見て言葉を差し挟めない様子だ。
「トーヤ殿、それはどういう事であろう。ジェシカが何かしたかい?」とオースティンは知ってか知らずか素なのか擬態なのか知矢へ問う。
「騎士伯殿はお意地が悪いのかそれとも俺を試しているのか。まあ、後者でしょうね。」と知矢が牽制するがまだその表情は前のまま軽い笑みを浮かべていた。
「ジェシカとか言ったなお前。何というか、分り易すぎるぞ。感情をコントロールできない剣士が相手に勝てると思っているのか。お前マリエッタと余程懇意にしていたんだろう。それで仔細も知らず上辺の話や未確認の噂程度の情報に踊らされてアイツの、マリエッタの敵でも取って、いや俺の手から救出してやるとでも考えてる。
顔にそう書いてあるぞ。」
知矢の説明が的を得ていたのか核心を突かれたのかジェシカの顔は益々険を深く刻み微かにした唇を噛み締め何かを我慢する様子だ。
「いやあ流石と言うかトーヤ殿あなたはアンコール伯爵様の言う通り人の心情を読み取るその観察力たるや素晴らしいですね。まるで心の中を見透かす魔法でも使えるかと思ってしまいます。」
未だその表情は僅かに笑みをたたえ知矢に言わせると(お前たちその貴族の笑みの裏は怖くて覗く気にもならんわ)と考えていた。
「解りました。正直に申しましょう」とオースティンは姿勢を改め知矢へと改めて向き合う。その表情はいくらか真面目になった様子だ。
「このジェシカは今あなたのご指摘の通り、幼いころからマリエッタ嬢と交友がありましてね。
ご学友候補という立場はご存知かな。
将来マリエッタ嬢の周囲にはべり公私ともに成長を共にし勉学やその他の学び舎も共にするそんな候補に選ばれたのがこいつが5歳に成った頃、マリエッタ嬢はまだやっと2歳か3歳に成った頃だ。
それ以来ほぼ寝ているとき以外は生活を共にし今日まで来た、そう言った訳でこいつとしては妹同然、いやそれ以上の大事に共に育ってきた娘をしかも彼女の得意とする剣で圧倒し最後は伯爵の元を離れその身を預けられたと聞いていても立っても居られなかったようだ。
そう言った事もあり何とか君に近づきたいとの思惑があったのだろう。私の所へ君に剣の指南を受ける機会を設けてほしいと申し出てきた。
マジェンソン・ボドーはその話を耳にし純粋に自分もその剣を真直で感じ許されるなら教えを請いたいと申し出てきたのでな同行させたと言う訳だ。」
オースティン騎士伯の話を黙って聞いていた知矢は隣で一緒に聞いていたニーナが心配するほど呆れた顔をしていた。
「騎士伯様よ、俺が初めてアンコール伯爵と対面した時に言ったセリフを聞かせてやろうか」
と未だあきれ顔でしかも(もうあいつ関係のドタバタはごめんだ)と思いながらオースティンへと尋ねる。
「ほほう、どんな事を言ったんだね、興味があるね」と少し前のめりになりながら聞いてくるので知矢は全く同じ口調を思い出しながら
「「結局はあんたたち家族や配下、使用人が甘やかしただけじゃねえか。
聞けば俺以外にも街で巡回中に勘違いして殴りかかったり剣を向けて威圧したりとトラブル続きで他の騎士や兵士がそのしりぬぐいをしてたんだろ。
詫びるならその街の人々と騎士にも謝罪した方が良いぞ。
そんな風に奴を今まで育てたのあんたたちだ。
もう屋敷に閉じ込めて花嫁修業させてさっさと嫁に出すんだな。
もっともあんなじゃじゃ馬で短慮な奴を嫁に貰う奴がかわいそうだがな。」
って言ってやった。」
と少しドヤ顔で一気に言い尽くした。
目の前のオースティン騎士伯はもとより隣で聞いていたニーナそれにマジェンソン・ボドーそして黙って知矢にその整った細い端正な顔つきで柳眉を逆立てていたジェシカ・エクワドルさえもが唖然とあっけにとられ口を開いたまま呆然としていた。
その様子を楽しげに見まわす知矢。
「くくくくっく」
しんと静まり返ったその場に聞こえてきた忍ぶような笑い声その声の主、オースティンは我慢しきれなくなったのか状態を反り返し大きな口を開いて「わっはっはっはっはー!!」と大笑いを始めた。
その大笑いに我に返ったニーナは(あの時一人で行かせないで強引にでも同行すればよかったかしら)とよくそんな口を訊いて無事伯爵さまの屋敷から出てこれたと信じられない顔をしていた。
ひとしきり笑い声をあげ満足したのか姿勢を戻すオースティンだったがその眼がしらには大粒の笑い涙を浮かべていた。
目頭を手で拭いながら「いやあ、こんなに笑わせて頂いたのはいつごろからだろう、傑作と言うか豪胆な方だと言うか。」
と知矢を褒めたのか呆れたのかわからない事を言いながら部下の方を見遣っやった。
「ジェシカ・エクワドル、貴様は今のトーヤ殿の話を聞きどう思った、言ってみろ」
柳眉を逆立てていた顔は上官が振り向いた事と先ほどの話に唖然としたことでどこかに行っていたが改めれ詰問の様に問いただされると回答に詰まった。
ジェシカは確かにマリエッタを敬愛し守り育んできた自負と責任を持っていた。そしてマリエッタの処遇を聞いたとき「そんな馬鹿な!」と一瞬伯爵に対し直訴しようとしたが思いとどまり現況はその冒険者だと知った時その剣を持ちねぐらを襲撃しようとも考えたが己の立場がかろうじて自制を促した。その点で言えばマリエッタのように短慮では無かったがやはり姫様と呼んで10年以上。その姫が誰とも知らぬ冒険者の元へ連れ去られたことに対する気持ちは抑える事が出来なかった。
その折、話の経緯が一部漏れ伝わった所によると剣で敗れた結果だとそしてその冒険者の剣は第1騎士団長さえも脱帽すると聞きマリエッタに対する思いと剣士としての自負その感情の結果が上司であるオースティンへの直訴である。
勿論オースティンはアンコール伯爵から直に経緯詳細を聞いておりジェシカの申し出に対しトーヤへ礼をもって教えを乞う事が出来るのであれば機会を作ってやっても良いと条件付きながら許可した。
なぜそんな許可をしたのか。オースティンも今は伯として騎士団を率いているがやはり元々は己も剣士の一員であった故知矢の剣技を真直でしかも実力をよくわかっている者と試合わせればその力が良く分かるのではないかと言う計算も合った。
しかし何も試合う必要も、弟子を取る義理も無い冒険者が素直に聞き入れてくれるとも思っていなかったし伯爵から聞いていた人柄から貴族の命はおろか貴族その者に何も価値を見出していないと思われる節もあり、オースティンの申し出を即答で断った時も以外では無かった。
「・・・・ぶ、無礼な物言いをする奴だと思います。」絞り出すように感情を抑えながらジェシカは答えた。
「無礼だと思いますが・・・・おっしゃっていることの意味も解ります。・・・確かに姫様は我々や使用人から大事に育てられお父上であるアンコール伯爵さま、そしてマリエッタ様のお兄様方も皆手放しに姫様を褒めたたえ、大事に大事にお育てになられました。」
下を向きながら両手を強く握りしめ何かを絞り出すように続ける
「実は、騎士団に仮配属されたころから何か別の事を気になってはおりました。私と所属が離れた事もありその目で活躍を見る事が叶わぬ代わりにマリエッタ様は夜ごと今日あった事を、どんな悪人がいたとかこんな悪人をとらえたとかあの者は正義の邪魔だとか日を追うごとに何か一方的に誰かを断罪する様な話や言葉を多く聞く様になり・・・何か方向ややり方が違うのでは、そんな事をして大丈夫なのかと思う反面どうしても姫が語る活躍を何か物語の主人公の活躍を聞いているような錯覚に陥っていたのかもしれません。
トーヤ殿言った事は・・・言い方は別にしても本当は御付の私が早く、もっと小さなころからお話ししていればよかったのではと・・・」
そこには俯きこぶしを強く握りしめながら涙をこぼす姿があった。
扶育、ご学友、お友達、それがいつの間にかただの追従者、信徒になり盲目だったことを思い出した1人の若い女性騎士がいた。
「マリエッタ程バカ娘で無かったのは幸いだったな、オースティン騎士伯様」
「ええ、そうですね。これで激高しトーヤ殿へ斬りかかりでもしたら、まあその時は逆に切り捨てられているでしょうが、その後はモンドール団長以上の苦境に私が立たされるだけですけどね」と苦笑い。
と軽口を聞いたのと
「ジェシカ、心と頭の中は整理されて少しは熱が下がったであろう」との問いに
一度頭を上げ上司の目を見つめた女性剣士は腰を深く折り曲げ頭を下げるのだった。
「よし、頭を上げろ。そして改めて剣士、騎士としてトーヤ殿へ辞を低く、最礼をもって願ったらどうだ。」
との上官からの申し出にすぐさま頭を上げたその瞳には希望と感謝が見えていたが即何かを逡巡する気配を見せ僅かに視線をずらし横目で知矢の様子を窺がった。
そして黙って上司の方を見つめている様子に再び視線を戻すとその上司は静かに大きく首肯く(うなずく)のをみて。
「トーヤ様先ほど来大変失礼な態度、大変申し訳ございませんでした。」とがばっと音がするほどの勢いで腰を直角以上に折り頭を下げた。
そのままの姿勢で「姫様の事はトーヤ様のおっしゃる通りそして伯爵さまがその身を預けた意味をもう一度よく考えたいと思います。
そしていつか私の考えや気持ちにセイルが付きました暁に剣のご指南をお願いできますでしょうか」
とそのまま不動の状態で知矢の言葉を待つ。
相変わらずオースティンは笑みを浮かべながら黙って見守るばかりであった。
知矢はまたあきれ顔をしながら「はーっ」と嘆息し言葉を繋ぐ
「マジェンソン・ボドー!!」突然呼ばれたマジェンソンは慌てて
「はっ!」と踵を鳴らし最敬礼の態勢
「ジェシカ・エクワドル!」
一瞬微かな間を置きガバッとその身を起こし同じく最敬礼の姿勢をとる。
二人に命じる、明後日勤務終わり後冒険者ギルドの訓練場へ来るように。以上だ。
と知矢は二人へ命じると
「「ハッ!了解いたしました」」とキレイに揃った返礼が返ってきた。
その様子をにこやかに観ていたオースティンは別の客がこの席を見つけ近づいてきたことを感じ取り静かに立ち上がると左手で知矢の肩を軽くたたき右手で握手を求めそして二人を促しその場を静かに去っていった。
皆さま、感想をいただきありがとうございます。
そして誤字、脱字の指摘本当に感謝いたします。(恥ずかしいです)
一部ご指摘がありました誤字に付一言。
貴族階級は各世界の階級などを参考に適当に記しておりますが
騎士伯は爵が正しいのではとのご指摘
本来ですとそうなります。
ですがこの話の中では 準男爵以下の階級で伯の意味するところを「頭、統領、リーダー」と言う意味を採用しており騎士のトップ=騎士伯と致します。
伯爵麾下の騎士団とは存在を分けております。
騎士団が2種あるので変ではとお思いかもしれませんが伯爵の直接指揮下の騎士団は他国との戦争などへも赴く軍隊。
騎士伯の騎士団は周辺警備警戒。
と思っていただければ幸いです。
ですが思い付きで書き込んでいる事も多いのでご指摘は真摯に受けたいと思います。
今後ともよろしくお願いいたします。




