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第59話  罪と罰  ~このシュチエーション前にもなかったか?

皆さま、おかげさまを持ちましてユニーク数が5000人を突破いたしました。

m(__)m

誠にありがとございます。


では本日も更新できました

第59話

どうぞ





「この薄汚い冒険者の悪党め。

貴様!あの時は何か魔法でも使ったのであろう!


だがもうその手は食わぬ、正々堂々と剣を持って決着を付けようではないか!」



マリエッタはそう激高しながら騎士から奪った剣を持ち知矢へと剣先を一直線に打ち込んだ。



「どこが正々堂々だこのじゃじゃ馬バカ娘!」


知矢はソファーから瞬時に飛び背後へ宙返りし降り立つ。



「何だと無礼な!貴様逃げるな!」


ソファーを挟みにらみ合う二人。


だが知矢は未だ刀に手もかけていない。




そこへ

「止めるのだ!」



大声ではないが重く響くような声がかかる。


「マリエッタ、剣を引け!」


アンコール伯爵だった。




「父上様、何故でございますか、私にお任せいただければすぐにでもこの悪党を始末いたします!」


剣を知矢へと振りかぶりながら反論するマリエッタだが



「マリエッタ!ワシの命が聞けんのか!」



そこまで言われやっと剣を下ろすマリエッタ、しかしその瞳は今にも知矢を目から光線でも放ち打ち抜きそうな勢いだ。



「オイ!」アンコール伯爵は剣をマリエッタに奪われ唖然としていた騎士へ顎をしゃくる様に促すとその騎士は我に返り、恐れながらとマリエッタに声をかけその手から自らの剣を取り返した。



「お前たちは表に控えておれ。」


騎士達に退出を指示する伯爵はそれとと続けて「モンドールをこれへ」と第一騎士団長のモンドールを呼ぶように指示した。



命を受け下がった騎士たちが扉を閉めた後


「マリエッタ、お前は私が願い招待した客に有無を言わさず剣を向けるのか!」


と重い口調で話す。



それは先ほど来、知矢と話していた口調とは異なりマリエッタを震えさせるに十分な声音こわねであった。



「・・お、お父様が招待、願って、な、何故でございますか・・


この者は昼間商会の者を脅し金品を奪った一味にございます。


それを見とがめ捕縛しようとした騎士団、私に歯向かった悪逆非道の悪党でございます。


どうやってお父様に取り入ったかは存じませんがそのような者の言をお信じになさいますな。」



父である伯爵の強い怒気に一時ひるんだマリエッタであったが何とか自身の正義の思いを伝える事が出来た。




「は~~あ~・・・・」

盛大に深いため息をつく知矢であった。嘆息するのは一体何度目であろうか作者もすでに数を数えてはいなかった。



「貴様!伯爵である父の前でその態度は何だ!床に跪け!頭を上げるな!」



知矢のため息が気に障ったマリエッタは再び激高するが知矢はお構いなしに空いていた伯爵の右手のソファーへ座り直ししかも高々と片足を振り上げた後スタッとおろし両足を組んだのである。



「貴様!!!」とマリエッタが知矢の方へ空手のこぶしを振り上げ突撃する様子を見せた時





「知矢殿!誠に娘が申し訳ない!」





と逆に知矢の前に跪き頭を下げ許しを乞うた。



「お父様!いったい何を。この様な平民に貴族であるお父様が跪きしかも頭を下げる等・・・」



状況が全く理解できない光景に思考の停止したマリエッタ、そして未だこうべを垂れ続けるアンコール伯爵。




流石にこれは無いなと知矢は


「伯爵さま、頭を上げ立って下さい。それでは俺が困る」


と知矢が本当に困ったこと口調で告げると



「そうか、知矢殿が困るか、親子そろって困らせてはいかんな、ではこの程度だが許してもらおう。」


とマリエッタに見えぬ角度で知矢へにやりと口角を上げた表情をみせ知矢のそば、先ほど来、座っていた席へ腰を掛けるのであった。


(これも貴族のやり方か、敵わないな)と心の中で何度目かの嘆息を又するのであった。。



伯爵として父親として平民の冒険者である知矢、平民に頭を下げた父を見たマリエッタはやっと自分が何か間違った事をし父が代わりに詫びたのか?と思い始めていたが未だ理解できていなかった。




そして丁度静まり返った所で扉が叩かれ執事が第一騎士団長のモンドールを連れて入室してきた。



「伯爵さま、お呼びにより参上いたしました・・がこれは?」


入室したモンドールが感じた気まずい空気と呆然と立ち尽くし下を向きながら下唇をかみしめワナワナ震えているマリエッタ。



かたや普通ではありえない貴族しかも伯爵のすぐそばに座り足を組んでいるトーヤと名乗る冒険者。


その光景があまりにも異質で理解できないでいた。




「おお、モンドール、わざわざ済まない。

実はお前も知っての通りトーヤ殿を招待して色々と相談をしとったのだが娘、マリエッタを呼び寄せトーヤ殿と顔を会せた途端に騎士から剣を奪い又してもトーヤ殿に斬りかかろうとしたのだ。」



とモンドールへ何とも言えない情けない顔を向けるのだった。



それを聞いたモンドールは(もうお助けできる状態では無い・・)と言葉無くマリエッタを見つめるのだった。



「・・・モンドール・・」


訳が全く分からず父には叱責されしかも頭を下げさせ、その冒険者は平民のくせに(マリエッタとしての感覚です)対等以上の態度でそこに座ること・・・すべて何もかもが理解できない状況でモンドールへと助けを求める様に声をかけるしかできなかった。



「おい、モンドール。娘は全くすべて何も解っておらぬようだ。すまないが順序立てて話をしてやってはくれぬか」


とアンコール伯爵は傍で事態のすべてを見聞きしていた側近に願うのだった。



それを受けモンドールは丁寧に(馬鹿でもわかる様に)順序立てて状況と各自の立場立ち位置、誰が悪いのかその結果マリエッタがしでかした事の重大さを懇切丁寧に説明した。



その話を無言で聞いていた知矢と伯爵であったが片や話も聞きながら「いや」「でも」「だが」「しかし」など口をはさみそうになるたびモンドールに「黙って聞け」と注意されやっと最後まで話を聞いたマリエッタであった。




「・・・・・・」そして無言で下を見たり、知矢を睨んでみたり、父である伯爵をすがる様にみたり感情が入り乱れそうになりながらもモンドールの言った意味、起きた出来事、自分がしてしまった事の重大さがじわじわと浸透していくようであった。




「モ、モンドール・・ひょっとしたら、わ、私が悪なのか!正義を守る為剣を振っていたはずの私が!!!!」



「落ち着いてください!マリエッタ様、悪とかそういう話ではありませんともかく落ち着いてください。」



ようやく自分の行動が間違っていたのではないかと思い至ったマリエッタは興奮してモンドールに迫りその肩をつかみながら答えを聞き出そうと必死だった。



「ええい!止めんか。少し静まれ!」



再びアンコ-ル伯爵の強い声音が響き渡るとやっとマリエッタが静まり、モンドールにそくされる様に空いていた父の向かい側のソファーへ腰を下ろすのであった。



「トーヤ殿、すまんがもう少し付き合ってほしい」と知矢に詫びるとモンドールへ再び問うた。




「ではモンドールよ、娘も己のしでかした事がやっと理解できたようだが、この行いを帝国の法に照らすと如何なる事に成るかも説明してやってはくれまいか」


伯爵はいつもの命令口調ではなく部下へまるで願うように言った。



それに驚きながらも少し考えながらモンドールは答えた。


「はい、今回のトーヤ様に対する、行い。

いえ、言葉を改めさせていただきますと事件の罪でございますが先ず・・」





・証拠もなく相手を犯罪者と一方的に決めつけ捕縛しようとした規律違反


・武器を持たぬ相手を切り付けた障害未遂、又は殺人未遂


・犯罪行為と誤認し一方的に相手の罪を問うた捜査規律違反


・伯爵が招待した客へ対し剣を向けた不敬罪


・謹慎中の身ながら騎士より剣を奪った罪





「などが考えられますが・・いかんせん前例があまりない物ですから・・」

とモンドールはマリエッタの犯した罪を列挙はしてみた物の自分でも悩んでいた。



「うむ、まあそうじゃの、だが他はともかくトーヤ殿へ斬りつけた罪だけでとっても重罪であろう。その刑は如何な物か」



「はい、傷害罪でございますと・・奴隷落ちが一般的かと」



「殺人ではどうだ」


との問いに少し言いよどみながら




「・・・お命を賜る事に成るかと」と段々声が小さくなりながらもはっきりと答えたのだった。





「!・・・」その答えに当事者のマリエッタは声も出ない。

そして再び俯く様に下を向くとした唇をかみしめ震えながら両手膝の上でを握りしめていた。





(私は・・・私が罪を犯したのだ・・・


父や兄に正義の剣を振るうと誓ったあの日から悪をこの街から一掃し父の助けになればと・・・


犯罪者として処刑され父や兄の名をこの家を汚すくらいなら・・・)




「父上、お許しください!!」


突如立ち上がったマリエッタは傍に控えていたモンドールへと掴みかかると一瞬の内にその腰に携えていた短剣を抜き去り自らの喉へと突き刺そうとした瞬間




カキーン!!ドッス!




響き渡る金属音、続けて聞こえた鈍い音。



その音の方を見ると扉にはモンドールの携えていた短剣がもっと小ぶりなナイフによって打ち付けられていた。


もちろんそのナイフを放ったのは知矢である。



知矢は以前、街を色々見て回った折に見つけた武器屋でその研ぎの技に惹かれて立ち寄り一見不愛想だが刃物を作るその技は感嘆するものでありそこで気に入ったナイフを手に入れ腰の日本刀に携え手裏剣として持っていた一本であった。



マリエッタがモンドールの短剣を奪い即喉へ向けた瞬間に放ったナイフは正確に短剣の柄元をとらえその勢いのままマリエッタの後方にあった扉へ短剣と共に飛び去ったのだ。



「あっ!」手から短剣を失ったマリエッタがその手を見つめた後ナイフを投げ残身の構えのままの知矢へ視線を向けた。



「何をする!何故死なせてくれなかった!!お父様やお兄様そしてこの家には私が生きて裁かれるなど迷惑でしかない!この場で死なせてくれれば全てが収まるものを!!」


と叫ぶように吐露するのだが




瞬時の事に対応できなかったモンドールとアンコール伯爵がごくりと喉を鳴らした時




「おいおい、何かってな事をしてんだこのじゃじゃ馬は、考え無しに俺に剣を向けたと思ったら勝手な解釈で死ねばいいだと。


いい加減その短慮を何とかしろバカ娘!



もう既にお前の身柄は俺が預かる契約が済んでんだ、それを勝手に死なれたら俺が困る。


もうお前はこれから勝手に人に剣も向ける事を禁ずるし、死ぬことも許さない。


おれの指示で俺の元で生きろ!


これは俺からの初めての命令だ!」



と残身を解き再びソファーへ深く座りなおした知矢はマリエッタに宣言するのであった。




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