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第58話 貴族の父の願い  ~貴様!!殺す!!!!

暫くぶりに今夜は2話投稿いたします。


では第58話をご覧ください。






「貴様!あの時は何か魔法でも使ったのであろう!

だがもうその手は食わぬ、正々堂々と剣を持って決着を付けようではないか!」


知矢の姿を見るとマリエッタは先ほど姿を現した時と別人のように吠え知矢へ決闘を申し出るのだった。






少々時間を戻しアンコール伯爵邸の客間にて



「おおすまんすまん、実は頼みと言うのは他でもない、娘の、マリエッタの身を其方に預け心身ともに教育しなおしてもらいたいのだ。」


ととんでもない事を言いだしたのである



「あのなあ伯爵さま、今日会ったばかりの平民でしかも素性の定かではない粗暴な冒険者に自分の娘を預けるって?


しかも教育をしてほしいとは、いかなる了見なのか俺でも伯爵の見識を疑うぞ。」


いきなり突拍子も無い事を言いだす伯爵に呆れるしかない。




「いや、何を謙遜する。素性は冒険者ギルドを通じて身元の保証はされておるし、今までと言ってもこの数カ月の間に起きた数々の出来事からもトーヤ殿が義と技を有し芯の通った行動をしている事は判っておる。



しかも市井の評判も素晴らしいぞ。


なかでも使用人として仕えている奴隷たちの待遇にしてもしかり、彼らの顔つきや様子、言動を見聞きしていた当家の者もとても虐げられた悲惨な奴隷の者に、いや他の商家の使用人よりも生き生きと働いていると不思議がっていたほどだ。」



アンコール伯爵は何かウキウキする様に知矢の評判をまるで身内の事を褒められているかのごとく語り出した。



「いや、奴隷で買ってきた使用人たちに気持ちよく一生懸命働いてもらえば商売も上手く行くし、規定の年季が明けたら解放するっていう一般的な奴隷契約で働いてもらっているんだ、待遇を与えるのは当然だろう。


まあ、もちろん働きの悪い者や嘘をついたりいい加減な態度のような者がいれば俺だって厳しき対応するさ」




知矢は長い会社経営の中で自然と身についた人を見る目、見えない場所でもしっかり行動している者、また逆の者もその態度や言動から解るのである。



これは別に知矢に限った事ではないがどの会社でもトップに立つ者が自然と身に着ける能力である。



これは自社の社員に対してだけでもなく取引先や同業者同士、監督官庁の役人はたまたすり寄ってくる政治家などからも感じ取れるのである。



なかにはそうでは無い者もいるかもしれないがそうでなければ会社のトップなど出来る物ではない。




その話は置いておいて。


「いやいやそれこそ謙遜が過ぎると言う物だ。


事実トーヤ殿がこの都市に来てから知り合った者で犯罪者を除くとまず悪い話を聞かないと来てもいる。」



「ちょっと待て、伯爵様よこの短時間でそこまでいろいろ調べて裏をとれる物なのか、おかしいだろう!」



「ふっふっふっ、当然の反応だな。実はな今日の事件以前からトーヤ殿に興味を持ってないろいろと調べさせていたのだ。」


と事も無く言い放つアンコール伯爵であるが知矢はその言葉が信じられなかった。



なぜなら知矢は最初こそ未熟な練度の魔法で使用するのもおぼつかなかったが感知魔法やその発展形のレーダに関しては自分でも自信のある魔法であったし、事実周囲の人全ての中から己に関心を持つ様な人物が接近するだけでアラートが発報するもしくは赤く表示されるなどこの世界の者には考えつかないであろう使い方を編み出して自信を持っていたのだ。



だからもし伯爵の手の者が知矢に興味を持って近づけば何かしらの警告が出るはずである。


知矢は今も自分の目の前に人知れず表示されているレーダのモニターを見ながら考え込んでいた。




「其方、何か信じられないと思っているようだが、ひょっとして鑑定魔法以外にも何か特別な魔法を持ち素性を調べられないようにするなどしておったのか?


もしそうであったならその自信と魔法に悪い事をしたかもしれんな。」



「どういうことだ。」

知矢は訝しく聞く。



「トーヤ殿、其方は貴族というモノをよく知らぬと申しておったしな、我々の仕事の中には表面だけで済む問題では無い事も多くての。

色々情報を入手する手は有るものだよ。」


と少し知矢に勝を得たのではないかと満足げな顔だ。



対してその顔つきを見た知矢は不満な顔を隠さない。



「まあ、その様に怒らずとも。だがそう言った側面もある事を覚えていて損はないぞ。これからも貴族だけでは無い様々な者と出会う事も多くなるのだからな。



詫びと言っては何だが1つだけわしの手の内 ※1)を見せようかのう」



オイ!と声を出すとアンコール伯爵のすぐ後ろに男が突然現れた。



知矢の気配感知にも反応が無く動体視力でも素早く表れる影も見えなかった。

「・・・・」


言葉の出ない知矢を見てアンコール伯爵はますますおもちゃを自慢する子供の様に上機嫌になった。



「いやあ、トーヤ殿のそんなに驚いた顔を見られただけでもわしの秘密を見せた買いがあったと言う物だ。」ハッハッハッーと高笑いをするのである。



その上機嫌な笑いを聞きながらも知矢は気配感知やレーダーの機能を絞り込み色々試してみた。

だがその原理は用として知れなかった。


悔しい顔をする知矢だったがいつか暴いてやるととりあえず今目の前にいる男をレーダーへマーキングするのであった。


こうすれば次に接近されても今度は自動的に認識が表示されるはずだと。



「ああ、少し笑いすぎたかのう、詫びをした相手に笑われるのは面白くなかろう。またしても済まなかったな。ハッハッハー」


と未だ喜びが止まらない様子であった。



「で、その男が俺を監視していてこいつなら悪さをしないであろうからお姫さんのお供に丁度良いと言う訳か」

とすねた様子だ。


「いやいやお供だなどと思ってはおらん、弟子でも良いし、逆に付き人として傍に置いてもらいトーヤ殿のやること、成すことを身をもって体験経験をして多くを学んでほしいと言う事なんじゃが、

どうであろうか、頼まれてはくれまいか。


もちろんそれに関わる経費は支払う、使用人の一人としてただで何を命じても構わん。

ああ、そうそう当然だが礼もだす。どうであろう。」



「・・・」どうしたものかと知矢は悩んでいた。

正直貴族の姫を傍に置いて何もメリットはなかった。

逆に行動の制限を受けるかもしれない。


それに貴族の姫が使用人たち奴隷と上手く行くのかと言う疑問もある。

特にもと貴族令嬢のサーヤもいる事であるし。


ただ、知矢の中では日本にいた頃種々の出来事で行き場を失った者やドロップアウトした者を助けたと言う訳では無いが自分の道場へ身を寄せさせそこで好きに生活させながら時に用を頼んだり時に剣技や弓技を教えたりしていた事もあった。


そう言った者の全てが上手く今生活しているかはわからないが少なくとも心に自信を取り戻したり、家族のもとに自ら戻る気に成ったり働きに出られる様になったりし道場から姿を消して言った者も多くいる。


そんな経験からじゃじゃ馬姫を傍に置く事、それも年長者の務めかと思っていた。

だが見た目がその姫と同年代で上手く行くかという不安もあったのだが。



「しょうがない、良いだろうそれは依頼と言う事で良いのだな。それなら受けようだが期限はどうする。」



仕方がないかと色々の考えの中から諦めと共に自分の何か役目なのかとも考えて了承する事にした。


「おお、ありがたい感謝するぞトーヤ殿。


しかし依頼と言う形をとるとはさすが冒険者と言ったところかのう、さすればじゃ2年、と言うのは如何かな。2年間其方の傍で何かを感じ取れなければそれまでであろう。その時は修道院にでも行ってもらうしかない。


そしてその2年間の間に事故などで怪我やひょっとして死んだとしても一切の責任はトーヤ殿にはないと言う契約書を付けよう。それならば少し気も楽になるであろうからな」



そう言いながら今度は執事を呼び「例の物を」と命じると長方形の盆にのせられた書状を運んできた。


「これを読んで確認してくれ、先ほどの話の他に報酬の件も記載してある。」


と知矢へ見せるのだった。


書面へ目を通し一読した知矢は再び呆れるような顔をし

「伯爵さま、俺はあんたの掌に載せられて言う通りに踊らされている何かなのかと思うよ。

ここまで周到な内容がすでに出来上がっているって事はそういう事だろう」



「フッフッフ、まあそういうな、それが高位貴族だと覚えておいてくれればよい。これも1つの社会勉強かもしれんしな。」


ワッハッハーと最後は勝ち誇る様に笑い出した伯爵を見てその内ガインと一緒一杯食わせてやると心に誓うのであった。




正式に依頼書を交わし報酬を決め取りあえずの経費で大金貨1枚を受領した後マリエッタを呼ぶよう執事へ伝えたのだった。


「で伯爵さま、姫にはもう話してあるのか」

依頼契約書と経費の大金貨をマジックバックへ仕舞う振りをして無限倉庫へ収納しながらふと聞いてみた。


「いや、まだ何も言ってはおらぬ。取りあえず自室で謹慎せよと申し付け騎士に見張らせておる。」


「大丈夫なのかよ、俺に預けると解ったら親に捨てられたなんて勘違いして自殺なんかされたら救いようがないぞ」


大丈夫かよと嫌な顔を見せながら知矢は確認するが


「自殺などする者か、あの子はそのような弱い心は持っておらん、そこは心配ない。」


と自信満々だがどうも知矢には一抹の不安がある。





しばらくして執事が戻ってきた。

「マリエッタお嬢様をお連れ致しました。」と恭しく頭を下げながら扉を開けるのだった。


静かな人の気配の後扉から現れたのは青いドレスに身を包み深窓の麗人とはこの人かと言うような優雅な所作で父である伯爵へ頭を下げる様子は先ほどの怒りに任せ剣を振るっていた者ととても同一人物には見えなかった。


しかも鎧を脱いで屋敷内様であろう薄手のドレスはその身のラインをはっきりと表しすらりとした脚、引き締まったお尻から腰のライン、鎧で解らなかったとはいえ今はその存在を大きく強調する胸などどこから見ても高貴な良家のお嬢様と言った所だ。



「お父様、この度はお騒がせを致し誠に申し訳ございませんでした。」

と再び腰を折り頭を下げる。


すると必然とその胸は大きく揺れるのであったがふとニーナを思い出した知矢は(ニーナの方が形が綺麗かもな)などと不謹慎な事を考えていた。



そして頭を上げたマリエッタは「出来ます事なら、この不名誉をすすぐ機会をお与え下さるようお願い申し上げます。再びあの卑怯な冒険者と対峙した暁には決して卑怯な真似を許さずこの手で私の剣であやつを打ち取って見せます!」


と強く輝く瞳で誓いの言葉を吐くのであった。



「何が卑怯だか知らんが、伯爵様よこれを教育するのか?」

と知矢は思わず恨めしそうな顔を伯爵に向けるのだった。



「なに!あっ!!貴様先ほどの、出会え出会え!!狼藉物が侵入しているぞ!!」



といきなり叫び出し警護の者を呼び寄せた。



廊下に待機していた騎士団の者がいったい何事かと部屋へ飛び込んでくるとマリエッタは「貸せ!」

と騎士から剣を取り上げると知矢へ向け剣を指ししめ



「この薄汚い冒険者の悪党め。貴様!あの時は何か魔法でも使ったのであろう!

だがもうその手は食わぬ、正々堂々と剣を持って決着を付けようではないか!」


と叫び剣を手に知矢へ迫る。



(反省の方向も違うし全く短慮の自覚も無いのかこのバカ娘は)


といい加減何度目かもわからない溜息を吐くのであった。







ぼんた「兄貴!お俺っちの気配感知にビンビン感じますぜ!!」


知矢「・・・・」


ボンタ「なにかとてつもない妖気が!!!」


知矢「・・・」そっと逃げる知矢


ボンタ「兄貴?」


マリエッタ「貴様剣の錆にしてくれる!!!!」


ボンタ「ギャアアアアアアア!!」


マリエッタ「うむ、人違いか、またつまらぬ物を斬ってしまった・・・・」

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― 新着の感想 ―
[一言] ……根本的に教育間違えてるよコレ。 どんだけ甘い顔してきたの伯爵さまぁ!?
[気になる点] 言う物…… 貴族の常識とか知られてない事の比喩なら物はないでしょ。 いうモノかいうもの上に点をつけて強調するか。 [一言] 文章の流れを無視して無理に変換すると違和感しか。 変換…
[気になる点] 解る…… 分かるが一般的だが可もなく不可もなく。 判る……そう判断する等、自分の判断を示す。 解る……理解している、状況など他人を含めての評価判断等。 [一言] 変換で多数の…
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