第49話 閑話 ~ 知矢の過酷な旅は続く
昨日は更新が出来ませんでした。
本日も業務多忙に付”閑話”のみの掲載となります。
申し訳ございません。
明日も表のプロジェクトが佳境の為どうなるか微妙な事をお知らせしておきます。
では第49話
よろしくお願いいたします。
知矢は久しぶりに”木こりの宿とご飯”にて既に知矢専用となっていたにある3階の客室のベッドで目を覚ました。
昨夜は使用人を連れ宿を訪れた知矢は食堂の一角を占領し商売の邪魔をし今まで数々の悪行を裏で行っていた第2商業ギルドを事実上壊滅させた旅の無事帰還を祝っての食事会であった。
もちろん協力してくれたニャアラスやギルド職員のニーナも招待し食べて飲んでの大盤振る舞いであった。
使用人たちは楽しかった行きの船旅での思い出を語り合ったり、衛星集積都市ラッテで1日だけ過ごした観光の話、その中でも非戦闘員の皆が興奮して語ったのは第2ギルドとの戦いの様子であった。
中でも元商家の奉公人であったマレルはまるで自分が戦いの先頭にでも立っていたか、もしくは講談師に成ったかの様にリラレットへその様子を身振り手振りや時には隣で静かに食事をとっていたイーシャを相手に立ち回りを再現しながら様子を語っていた。
「その勝ち誇った敵の親玉が私たちが精魂込めて作ったマジックバックに手を入れた瞬間です!!
怒涛の如く噴出した閃光が辺りを光で押し込める直前ご主人様の声で私たちは大盾の元へ伏せ隠れした時です!
大地を揺るがす大地響きと激しい大音響!その様子は今思うと神様の神罰が天から落ちたのと等しいような!!」
と興奮して何度も語っていたのであった。
夜も更け若い奉公人も多い知矢の配下への気遣いもあり皆を早々に店へと返し休ませるように言いつけ未だ飲み足りなさそうな警備班の者には酒とミンダの作った摘まみの入ったマジックバックを渡し
「ほどほどにな」とだけ申し付けて全員を返した。
その後静かにニーナと語らいながら飲もうと思っていたらニャアラスが間に入り込んで飲みだすは語り出すは、ニーナは
「お疲れさまでした、今夜はニャアラスさんも主人公の1人ですからゆっくり飲んでくださいね」
と笑顔を残し早々に帰宅したのだった。
そんな訳でその後ニャアラスと二人、そしてかたずけを終えたミンダと主も交えて夜更けまで楽しく飲み明かした知矢であった。
ニャアラスは何度も何度も戦いの様子を聞きその度に「俺も参加したかったニャア」と繰り返し、先日の旅で再び冒険者と戦いの血が騒ぎだしたのか「知矢また行こう!今度は大森林に魔獣を仕留めに行くニャア」と繰り返し話すのであった。
知矢も「そういえば俺、まだ魔物や魔獣と戦った事ないな?」と思いながら機会が在ればニャアラスと組んで何か魔獣退治の依頼でも受けてみるか」
等と考えながら話を聞いて飲んでの楽しい夜であった。
その後半分酔いつぶれたニャアラスには借りた部屋へ押し込み知矢も自分の部屋でゆっくりと休んだのである。
板窓から微かに入り込む朝日は部屋の壁に綺麗な二等辺三角形を画いており季節ごとに角度が変わるのを見ただけで時間が解ると食堂で良く出くわすここを定宿にしている旅の商人が話していた事を思い出す。
ベットで全力大の字に四肢と首を伸ばす知矢独特の伸びをすると何だか全身へ新たな血液が一斉に目覚めたように流れ出す様な気がして気持ちが良いので昔から欠かさない目覚めの儀式だ。
「今時の若いやつが言うと”ルーティン”とか言うよな」と呟きながら体を起こす。
板窓を全開にするとやはり気持ち良く晴れ渡る正に秋晴れと澄んだ空気を感じ周囲を見渡しながら再び大きな伸びをし気持ちの良い空気も吸い込んでみた。
日本にいた頃はこの後 「先ずは一服」 と自宅を一歩でて目の前のガレージの庇に置いてあるデレクターチアへ腰掛けポケットから愛飲している "フィリップモリス社のMarlboro edge8"を取り出す
。
さらに昔息子が旅先の呉市にて海上自衛隊呉史料館 (てつのくじら館)で買ってきたお土産の自衛隊エンブレム(らしい)の付いたオイルライターで火をつけ深く吸い込むのが常であった。
大体一本目数口吸い込むと気持ちの良いしびれにも似たくらりとするのが「ふーっキタキタ」と煙草の美味さを増幅させていてやめられなかった。
最近の若い子は「ヤニクラ」とか言うらしいが知矢はそんな事若者言葉は知らない。
知矢の転移前に既に世界中の先進国ではいつの間にか愛煙家が迫害を受けて差別の憂き目に合っていたし妻や息子、孫にまで禁煙を促された事など数しれず。
しかし武道を嗜み日頃の食生活や習慣に気を払う知矢だったが何故だか煙草だけは止めようとも考えた事がなかった。
何度かまだ若い時にロングツーリング前の3ヶ月程煙草を吸わないでいたことはある。
これはしばらく吸わないでツーリングへ出発し晴れ渡る高原で山々や下界を観ながら良い空気の中で煙草を味わいたい!
との思いから単に3ヶ月吸わなかっただけであるが。
在る時訪れた福島県、地元の人だと山通りとか呼ぶらしい浄土平にある吾妻小富士へバイクを降り軽く山を登り雄大な山の景色を眺めながら3カ月ぶりのタバコを堪能したのだった。
岩や礫ばかりの山頂に見つけた岩に腰かけ、気持ちの良い風に吹かれながら大きくタバコを肺へ吸い込み味わった時の脱力感、しみじみと「旨い」と1人呟いた。
そんなビールと煙草が大好き知矢であったがこの世界へ転移した当初新しい環境や次から次へと起こる出来事でたばこの事をすっかり忘れていた。
ビールはミンダの宿ですんなり出会えたのだが次に知矢の欲しい煙草は出くわさなかった。
そもそも煙草文化は確かにこの世界にあった、あったのだがあるのは葉巻の様に葉を巻き絞めて吸い香りを楽しむ物や刻み煙草をキセルに詰める物等は有ったが紙巻きたばことフィルターそしてメントールを封じ込めた様な物は有るはずも無かった。
当初は葉巻で代用したがその強すぎる香りと日本のタバコと異なり口の中をくぐらすだけの吸い方に慣れず、次は売っている刻み煙草を紙で巻いてフィルタ代わりの物を取り付けてミントのような香りの葉をもみ込んでみたがとても吸えたものでは無かった。
暫くしてサーヤと出会い
「お前に知識と技術にタバコの加工やフィルタを作る方法は無いか?」
と聞いてみた。
が、「知矢・・・たばこは百害あって一利なし」
とだけ言い残すと知矢を置いて去っていった。
思わず両ひざをつき両手を地につけ愕然とした知矢であった。
だがしかし!今も知矢の中では密かに旨い煙草を追い求める旅は続いているのであった。
現実問題ですが私の愛飲しているMarlboro を始めフィリップモリス社製の紙巻きたばこの生産が2020年代で終了とのプレスリリースが数年前に発表されております。
私は今後どうしたら・・・・・
電子煙草嫌い!




