第47話 グヒヒ今に見ておれ ~兄貴そろそろあっしも腹が減って・・・
今日も一日暑い中を皆様お疲れ様です。
本日もどうにか投稿できました。
ではゆるりとご覧ください。
第47話です
商業中核都市ラグーンよりゆっくり河を降る事1日、ラグーンの衛星集積都市”ラッテ”にある大きな倉庫を持つ工房では朝靄がまだ太陽を覆い隠す薄暗い早朝にもかかわらず活発な声が響いている。
「おいノブユキ荷ひもが足りないぞ!」
「はい今持って行きます。はいギムさん」
「誰かそっちを押さえててひもを縛るから」
「アヤメ!そんなに無理に引っ張らないで」
「そんなこと言ったってワオン崩れないようにしてるだけだよ」
「アヤメ、荷作りはそんなにギュウギュウに引っ張るもんじゃねえ、ほれ俺のを見てろ、こうするんだ」
「うわぁ、ワイズマンさんの紐さばき華麗だな!まるでプロみたい」
「...........(一応もと荷運びのプロだったんだがな・・・)」
魔道具商店の従業員一同がワイワイガヤガヤ早朝だと言うのに大騒ぎで荷を積み込んでいた。
5台の馬魔車が通りへ並び中央の一台へ山の様に木箱が積まれている風景をニーナは少し離れたところから静かに見守っていたが近所迷惑ではと注意をするそぶりも見せず黙ってたたずんでいる。
馬魔車の周囲には魔道具商店の使用人が取りつき木箱を積んではひもで固定する作業の真っ最中。
そしてその外側では剣や槍、弓を携えた警備主任のサンドスを初めミレ、サーシャ、コレットの元冒険者で今は魔道具商店の警備を担う者として周囲を警戒している。
そして新人警備担当のササスケ、ミホも腰や背に帯刀し不審な者がいないかを馬魔車の前後を歩き回り通りを巡回中だ。
木箱を満載した馬魔車の御者台には老齢の御者が1人静かに座り、荷を積み終えるのを待っているようだ。
暫くして荷積みを終え全員が満載の馬魔車の前へと集まった。
「はい、皆さん準備は良いようですね。1日目は楽しくのんびりした船旅、昨日は都市でゆっくりしたり観光したり、十分楽しんだ事と思います。ラグーンに帰還した後はご主人様へよく感謝をお伝えするのですよ。こんな自由にしかも楽しませて頂ける環境を奴隷身分の私たちにお与え下さるなど他では考えられない事です。
みなさん今日これからの事は十分に頭に入っているとは思いますが、これからラグーンへ帰還するまで一切気を抜かずご主人様の為、無事の旅を祈りつつ全員で戻りましょう。よろしいですね」
と朝の訓示を述べるのであった。
「「「「ハイ!」」」」と全員が元気よく答礼すると今度は警備主任のサンドスの号令でそれぞれ指示された馬魔車へと乗り込み、先頭に乗り込んだリラレットの「出発!」の合図に一斉にラグーン目指し進み始めたのであった。
先頭車両にはリラレットを始め警備のギム、ミレ、アヤメが乗り込みシンゾウ、イーシャも同乗する。
2台目を警備のサーシャ、ササスケの他マイ、マク、アンドウ、ワオン。
3台目には荷を満載している為か老齢の御者1人のみ。
4台目は警備のコレット、ミホの他ゼンゾウ、、サーヤ、モネ、ティレット。
最後の5台目を警備のサンドス、ノブユキ、アカネの他ミミ、ガンゾウ、マレル、ワイズマンが乗り込んでいた。
一度都市を出る際に門で荷の移送許可書の確認に合わせ全員の身分証を確認された後馬魔車の集団は街道を一路ラグーンへ向けて快調に出立した。
そんな快調な滑り出しを見せる馬魔車が都市から霞むほど離れた頃、都市の門から死角になる外壁を一本のロープが降ろされスルスルと1人の男が降りてきた。
まだ朝もやに視界が不明なのを利用し都市警備の騎士団の目をかいくぐり街道の脇を隠れる様に森の方へと走っていくのだった。
しばらく森の中を通る木こり道を進むと木こりの休憩場所と思われる杣小屋が見えてきた。
小屋の前には魔馬が数頭繋がれ、屋根の隙間からは白い煙が立ち上り中に人が居ることが窺がえた。
男は小屋の入り口へ近づくと「あっしですボンザンス様」と中へ訪いをつげた。
ギイィと小屋の戸が微かに開かれ訪れた男を確認すると戸が開かれ中に招き入れられた。
「おお、待っておったぞ様子はどうだ。」
小屋に入った男は一番奥の火の前に獣の皮を敷き詰めた簡易なソファーにふんぞり返る、脂肪に満ち溢れた男の前へ進み出た。
未だ小屋の中に朝の光が届かない中、火に照らされ浮かび上がるその顔は元々闇夜に知らず出くわすと女性が卒倒しそうな顔をしているが今日はいつもにも増して醜悪な様子を見せていた。
男はそんなボンザンスの前へ微かに震えながら近づき報告する。
「ボンザンス様、奴らは工房から山のような木箱を満載した馬魔車1台と前後4台の馬魔車に分乗し街道をラグーン方面へ予定通り出発しやした。」
じろりと前にひざまずく男を見下ろしながらボンザンスと言われた男は重そうに口を開く。
「...うむ、分った。で荷の方は間違いないんだな!」
そう発したこの男、言わずと知れた”商業中核都市ラグーン”において第2商業ギルドの元会頭、現在では帝国中に手配が及んでいる犯罪者ボンザンスである。
ボンザンスは魔道具商店の様子を調べさせていた目つきの冷たい配下の者より新製品の”マジックバック”とその仕入れの為に休業する話を聞き及び密かに設けてあった抜け荷用のトンネルを使い配下の者にリラレットたちがどこへ向かうかを追跡させていた。
昨日の早朝行き先が衛星集積都市”ラッテ”でそこのさる工房へ入っていったと報告を受け秘密の隠れ家にしていた昔実家の商会が使って老朽化の為封じていた倉庫に隠れていた全員を引き連れ、さらには下町に隠れ住んでいる移民の巣窟から悪事に慣れた手練れを金で雇い入れラッテへと向かい杣小屋へ隠れていたのである。
「へえ、実物までは見られませんでしやたが工房の使用人のじいさんが飲みに行った店で酒をおごって聞き出したところ、中々酔ってもしゃべりゃあしなかったんですが、やっと作っているのはマジックバックでその出来たすべてを明日の早朝運び出すと言ってやした。」
と男はおどおどしながらも自分の成果を必死に伝えた。
「ぐふふふふ・・・そうかそうかご苦労だった。
あの無礼者たちめ、あいつらのせいでこのボンザンス様がこの様な目に・・
ぐくくくく今に見ておれ全てのマジックバックをわしが手にすれば今までの財など比べ物にならんそれこそ巨大な富を得られるぞ、いいかお前たち、奴らの荷を手にし売り払えばお前たちが一生使いきれない金をやろう、わかったか!」
おお!とくぐもった声ながら狭い杣小屋にいた大勢の者が賛意を示しその暗闇に濁る目には欲望の光しか見えていない様だった。
しかしふと一人の男が疑問を投げかけた。
「しかしボンザンス様、帝国中に手配が廻っているかもしれないんすよどうやって奪った荷を売りさばくんすか?」
もっともな意見だった。
醜悪な顔でその男を睨み付けると
「だからお前はいつまでも馬鹿でうだつが上がらんのだグヒャヒャ。このボンザンス様に不可能などない。既に以前から南の港には密輸船を確保してあり、それを使い南の大国”ルドマリッド人民共和国”に売りさばくに決まっとるだろ。強欲な奴らとの取引など、このボンザンス様以外出来はしない。そうして大金をせしめたら後は船で東の小国へ身を置き後は贅沢三昧の暮らしが待って居る。
いいか、奴らから荷を奪ったとしてもお前らでは売りさばくにも足元を見られ大した金にはならん、わしがいるから大金になるんだ、わかったな!わかったら言った通り奴らを追い指示した山間で前後から挟み込んで皆殺しだ!」
と狂気を浮かべ叫びながら立ち上がり配下に出発を指示した。
ボンザンスはその醜悪な顔に合わせて脂肪に満ち溢れている為馬魔には乗れず荷台に押し上げられやっとの思いで乗り込むのだった。
先行して先を塞ぐものは身軽な馬魔のみで先発し脇間道を進ませた。
ボンザンスは馬魔に乗れない者と一緒に馬魔車で街道を追いかけるのであった。
ボンザンス達が出発した後の杣小屋、
その様子を杣小屋の外で壁ごしにじっと動かず耐え忍び中の話を聞いていた男がおもむろに立ち上がり自分も隠していた馬魔に乗りボンザンス達とは反対の方角、衛星集積都市”ラッテ”へ向けて急ぎ駆けるのであった。
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