第42話 さあ!来やがったな ~では個室をリザーブしておきます(良いですね!)
本日も何とか投稿できそうです。
よろしく願い致します。
では第42話です
魔道具商店へ2度目の侵入者があった日から数日、商店へ訪れる客は増える一方だった。
今朝も開店を待ちきれない客が表戸を開ける前から店の前につめかけていた。
魔道具商店では知矢の方針で先ず表戸を開け周囲や店先を清め、埃が立つようなら少し打ち水をし警備担当を除く使用人が全員声をそろえて
「「「おはようございます、」」」と表に向かい元気よく挨拶を行い
総支配人の「開店いたします」の
声で客を誘導始めるのであった。
「おい、わしはこの光の魔道具を50個くれ、風の魔道具もだ」
「こっちは光の魔道具と水の魔道具、それぞれ100個欲しい」
と大量買いを希望する客がかなりいる。
しかし
「お客様に申し上げます。
当店では発売当初より多くお客様に公平にお買い物をして頂くため購入は1種類に付お1人様3個まで、同時に購入できるのは3種までとさせて頂いております。
なお、購入された方には手の甲へ特殊なスタンプを押させて頂きますのでご了解ください。
このスタンプは明日まで消えませんのでスタンプがまだ見える方は本日は購入できませんのでご注意を。
以上の事をご理解いただけた方のみお並び下さい。」
と使用人の男の子ガンゾウが声をからして押し寄せる客に注意を促している。
「おいおい、こっちは客だぞ。何故ほしいだけ買えないんだ、数はそこに山の様にあるじゃないか。」
等苦情を言う客が続出しているがこれは転売目的の商人であろう。
個人客と思われる者達は特に文句を言う訳でもなく1つ2つと購入していく。
そんな客の時は
「お客さん、悪いねうちの店の決まりなんだ。
多くの人に公平に買ってもらう、そこにも書いてあるだろ、守れないんなら買わなくて構わないぜ、それに1つ買う人も多く買う人も順番は守ってもらわねえとな」
と大きな態度で人を押しのけ大量購入を迫る客には警備担当の者達が丁寧に説明し理解を得ているようだ。
その時である、しばらく前から通りの先で店の様子を窺がっていた10人ほどのどう見ても素行の良くなさそうな集団が動きを見せた。
警備主任のサントスは事前にボンタから密かにその様子を伝えられていたので黙って注視していたが動きがあったと同時に奥へ合図を送り控えていた警備担当の者達を増員した。
「おう、お客さん、商品が欲しいならその列に並んでくれ、注意書きも並びながらよく読んどいてくれよ」
サントスは多少威圧をかけながらも客として対応していたがその集団の中から一人分け出でてきたかなり恰幅の良いガマガエルと狸を合わせた様な身なりだけは高そうな生地の服をまとった男が出てきた。
「おい、お前さん店主を呼んでくれはくれまいか」
と慇懃無礼だが目つきと言い態度と言い上品さとはかけ離れた言い方でサントスに声をかけた。
「悪いがこの混雑だ、支配人も大忙しでね商品の説明ならそっちの若い使用人がデモを見せてくれるからそっちに並んでくれ。」
とそ知らぬ様に対応した。
「わしは客では無い、この都市の商売をまとめている商業ギルドの会頭”ボンザンス”様だ、良いから店主を呼びなさい」
サントスは自分の事を様付けで名乗るやつを初めて観たなと変に感心してしまった。
事前の知矢からの指示は基本的に購入客以外は門前払いで構わないと言われていたがもし第二商業ギルドが尋ねてきた場合の対処も指示されていた。
「ボンザンスさんかい、はて今日支配人に客が在るとは聞いていないが何刻の約束ですかい?」
これも指示に有った対応だ。
基本は事前の約束が無い限り合わないのはこの世界でも一般常識として通じる行為だ。
貴族同士等で緊急を要する場合でも先振れを出すのが大前提であり庶民でも商売を行う者であれば最低限の常識である。
「オイ、ボンザンス様がわざわざお越しになったんだぞ!約束なんか関係ねえ、早く主を呼べ!」
ヒキガエル狸の脇で偉そうに胸を張りながら顎をしゃくりあげ怒鳴り散らす取り巻きか護衛だかわからないチンピラ風の男がサントスに向かって吠えた。
だが冒険者として死の危険を潜り抜け糧を得てきたサントスにそんなチンピラの脅しなど蚊に刺される方がよっぽど嫌な程度だ。
しかしその様子を距離を取ってみている客たちは小声で互いに
「おい、また第2ギルドの奴らが嫌がらせに来たぞ」
「またギルドの職権だか何か知らないが言いがかり付けて金をふんだくろうっていうつもりだろう」
「いやあの業突く張りの事だから金のなる木を根こそぎ手に入れようって按配じゃねえか」
など言いたい放題だったがヒキガエル狸の周囲に群がるチンピラたちが睨むのでみな距離を更に開けてしまったので商売にならなくなっている。
「おいおい、あんたたちは約束も無しで商売の邪魔をしに来たのか、ほれみろあんたの連れがお客を威嚇するから皆怖がって買い物もできやしねえ。
事前の約束が無いならさっさと帰って今度はちゃんと事前の許可を得てから面会を申し込んできな。
まあ、あんたの面会希望が通るかはわからんがな、ふっふっ」
とわざとバカにするような態度を見せるサントス。
こうして相手を逆上させれば調子に乗って暴れ出せばこっちの物だ。
大勢の目撃者を前にして商売の妨害をし客を威嚇、店の警備の者に暴力でも振ってくれたら幸い。
すぐに控えている俊足のワイズマンとミレが二人して騎士団詰め所へ駆け込む手はずだ。
騎士団へは事前に話を通してあるのですぐに対応の約定も出来ている。
後はもっとあおってチンピラの暴発を待ちその後は警備全員で征圧するだけであった。
「まあまあ、お前たち待ちなさい。」
意外な事にガマガエル狸がチンピラたちをなだめだした。
「お前たち我々はまっとうな商人なんですよ。
相手の態度が悪いからと言って同じように対応していてはいけませんねえ。
日頃から礼節をもって対応する様にと言っているではありませんか。」
意外過ぎるガマガエル狸の発言にサントスも毒気を抜かれた様子で口をあんぐりと開けてしまった。
「いいでしょう、今日の所はボンザンス様が来たことだけ伝えなさい。
そして私のギルドへ出頭する様に申し付けるのです良いですか」
と言いたいことだけ言ってすぐにその重そうな体をぐるりと回しながら店から離れて行ったのであった。
取り巻きのチンピラがすぐ後を追ったが数人残ったものが周囲を嘗め回す様に威嚇した後
「ボンザンス様の御厚意だ。今日の所は帰るが必ず主に伝えろ、ギルドに頭を下げに来いとな、土産も忘れんじゃねえぞ、解ったな!」
と言い残しガマガエル狸の後を追うのであった。
だがサントスは
「おい!何を勝手に言ってんだ、用もないのにこっちから行くわきゃねえだろ。お前の飼い主によく言っとけ!」
とチンピラの背に向けて言い放ったがチンピラたちは振り返り戻るそぶりを見せたが立ち止まって
「フン、おぼえてやがれ!」
と踵を返すのであった。
その様子を黙って店の奥から見ていた総支配人のリラレット。
「メイド長さま、ご主人様へご報告しなくて良いのですか?」
とその脇にぼっといた元メイドの使用人マイが相変わらずのぼやっととぼけた顔で尋ねる。
「マイ!何度言ったら覚えるのですか、私はもうメイド長ではありません。
総支配人と呼びなさいとあれほど。
まったく、それに今お出かけのトーヤ様へ使いなど出したらどうせあの者の手下がどこぞで見張っているかもしれません。
そんな者をトーヤ様の元へ案内する様な事になってトーヤ様を煩わせるわけにはいかないのです。
それを十分理解しなさいね。
それに事前にお話しを戴いてます、我々はトーヤ様のご指示通りに動けばよいのです。」
わかりましたね、とマイに注意を促し余計な来訪者でざわついた客を整理する様に言うとマイは
「ハーイ、メイド長さま」
と先ほどから変わらぬぼやっとした顔つきで店先に出て他の使用人と共に乱れた列を誘導し販売を再開するのであった。
直ぐに落ち着いた客の流れを確認すると表を離れて奥へ向かうと在庫管理をしていたサーヤと目が合った。
「サーヤさん、予定通りと言う事でよろしいのですね」
リラレットが確認するように尋ねる。
サーヤはリラレットの言葉にこくんと頷き
「問題ない、ご主人様の想定の範疇。
でも出来ればひと騒ぎ欲しかったけど奴らも慣れた物、いつもの事と高をくくっているはず。
次は多分客への嫌がらせと買い物帰りの客が狙われると言ってた、私もそう思う。」
淡々とした口調でサーヤは答えるが知矢の指示もあったがサーヤの頭の中でも奴らの行動確率を種々計算済でもある。
「では予定通りにサントスさんへ伝えノブユキたちを周囲の巡回に出してもらいましょう」
と安心した様子で答え店へ踵を返すのであった。
残されたサーヤは帳簿と在庫に目を向けながら
「何だかただ1人で研究しているより人との交わりが増えると色々起こって面白い物ですね」
と1人呟くと再び帳簿に目を落とすのであった。
その頃知矢がいたのは久しぶりの訪問になる”ラグーン冒険者ギルド”であった。
相変わらず知矢はニーナに選んでもらったフード付きローブに身を包み目立たない様、最近創造魔法を使って新たに会得した”気配遮断”のLV1を発動し人の気を引かぬようにニーナが座るいつもの席へと顔を出した。
「ニーナさん」
一応念のため小声で声をかける知矢。
「あら!お久しぶりになりますねトーヤさん。声をかけられるまで気が付きませんでしたよ?」
と知矢の顔を見て真剣な表情で仕事をしていたニーナがパッと明るい表情を知矢に見せたのだった。
「ごめんなさい、念のため気配を遮断する魔法をほんの微かに使用していたものですから。お邪魔では無かったですか」
「そうでしたの、はい、大丈夫です。
如何ですかお店の方は、かなり評判になっているのでギルドの冒険者の中でもひっきりなしに話題になっていますよ。」
「ええ、使用人のみんなが頑張ってくれているので店の運営は順調な滑り出しですね。
話題が広がるのは私の予定通りですのでこれからもっと話が広がってくれると今後こんなフードでこそこそニーナさんに会いに来なくても良くなるのですけどね」
知矢は順調に話題が広がっているのを聞き先ずはと安堵したがニーナに言った通り本来の目的である”魔鉱石を発見した冒険者の話題”が霞むようになるのはもう少しかかるともわかっていた。
「まあ、そうですわね、そうしたらまたお食事に誘っていただけますか、トーヤさんのお話をもっといろいろ聞いてみたくて、でも知矢さんもお忙しいので我慢していたのですよ」
と可愛い甘える表情を見せるニーナに知矢は思わずドキッとしあわあわと返事をするのであった。
「えええっと、そうですねんんっ、そうだ、久しぶりに今夜あたり”木こりの宿とご飯”で食事でもいかがですか?
ミンダさんへお願いして個室を借りますからそこで久しぶりにおいしい宿のご飯を頂きお酒を軽く飲んで楽しい話でもしましょう。」
と逆に提案するのであった。
「ええ、大賛成ですが、宜しいのですか?」
と今の知矢の状況と店の事を心配するが
「ええ、私もたまにはゆっくり楽しく食事をしたいと丁度思っていたのです、良かったらお付き合いください。」
「ハイ!でしたら喜んでお伺いしますね」
と二人がほんわかな会話を楽しんでいると突如
「このやろう!」ガツーン!と知矢の頭部に一撃が加えられたのであった。
「っつっつう痛ってー、何しやがるこのおやじ!」
知矢も最善から察知していたのだがまさか会話に割り込み一撃を食らわせて来るとは思わず知矢の油断であった。
その一撃を下したのは
「トーヤ手前なにこんなとこでうちの職員を誘惑していやがるんだ!」
そう”商業中核都市ラグーン冒険者ギルド長” ガインであった。
「何言いやがる誘惑何て人聞きが悪い、それよりギルド長が何やってんだよ善良な若い冒険者に暴力振いやがって」
「何が善良な若い冒険者だ、お前のおかげで財政的には潤ってギルドも特に財務部は大歓迎だがこの俺がどれだけ書類の山に苦労したか、さらにお前は逃げ回っているがこの都市管理貴族からお前との面会の矢の催促をこの俺がなだめて引き留めてるっていうのにこの野郎、もう一発殴らせろ!」
「何だとこの野郎!やるかぁあ!」
と二人が言い合いを初め今にも決闘にでも発展しそうな勢いであったが
「いい加減にしなさーい!!!!」
とギルドに響き渡るほどの声をあげ二人に割って入るのはニーナであった。
「ギルド長!いきなりひどいではありませんか。
大体書類にうずもれてるってあれは散々ために溜めたギルド長がいけないのですよそれをみんなが必死に手を貸して処理したのですから偉そうに言える事ですか!
それに管理貴族の方の件だってそもそもギルド長が”あの冒険者は私が目をかけてやっていたのですよハッハッハッハー”なんて大風呂敷を広げてトーヤさんの功績に乗っかって自慢したのが原因です。全てギルド長が悪いのですよ!!」
と一気にまくし立てたのだが
トントントン「ニーナさん」ツンツンツン
知矢がニーナの肩をたたき振り向いたニーナに「あっち」と指をさす方を見るとギルド中の視線が三人に向かい辺りが静寂に固まっていたのであった。
「あっ」っと小さな声をあげしまったと真っ赤になりながら後悔するニーナの横で
「はあ、絶対さらに目立て注目集めちまったな・・・はぁ~」と嘆息する知矢の姿があったのである。
リラレット「トーヤ様がお戻りにならない!どうしたのでしょう」
サーヤ 「お酒でも飲みに行ったのでは」
リラレット「お酒でしたらいつもここに戻って」
サーヤ 「そう言えばあいつキャバクラ好きって言ってたな」
リラレット「キャバクラって何でしょう?」
サーヤ 「・・・・綺麗な女の人がお酒をついでくれて男の人を接待する店」
リラレット「キャー!そんな場所にトーヤ様が行ったら穢れてしまう!!
サントスさん!!!」
サントス 「どうしました支配人」
リラレット「緊急事態です!大至急警備の方全員でトーヤ様をお救いに行かねば!!」
サーヤ 「ダイジョブ、ワンセットかツーセットで帰ってくる。今日トーヤそんなにお金持ってないから」
サントス 「?????」
あー!!キャバクラ行きたい!!!
もう8カ月以上言ってない!!!!
中国のバカ野郎!!!!!!!!!!!




