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第41話 お前のやっている事は丸っとお見通しだ!  ~ぅうーヒック、トーヤ君のバカ・・・

本日もご覧いただきありがとうございます。


今朝、外へ出てみると空気が微かに変わっていました。

日中はもちろん灼熱が続いていますが朝晩は少しだけ秋の気配が近づいて来たようです。


皆さん、明け方が急に冷える事もありますのでお気を付けください。


では第41話どうぞ。



夕闇が色濃くなりそろそろ街の人々は家へ帰り夕食を囲む時間になっていた。



知矢は店の2階に設けた自室であれこれ手を広げ始めた事柄や今後必要になりそうな人数やその能力別のリストを作成していた。


これを元に奴隷取引商会に適合する奴隷のリストアップを依頼するつもりだ。


今度求める人員は希望の能力さえあればそれ程細かく執着せずに集められる程度で構わないと思い教育はリラレットに任せようと思っていた。



階下では既に使用人達が代わる代わる夕食を取ったり風呂に入っているであろう。



知矢の店では使用人は一般家庭同等以上の食事を取らせて毎日風呂へ入る様に指導している。


風呂は当然衛生管理の為であるがこの世界では一般家庭に風呂は無く皆汲んできた水桶又は水樋から流れた来た水を使い水浴びすれば良い方で、


多く水浴びさえもは毎日する習慣は無い。


知矢の店裏には設けた大きな木製樽、この樽の上には水魔法と火魔法を定着させたお湯の出る魔道具が設置されており樽の中に65度程度のお湯を貯めてある。


この樽の下には水の魔道具と混合させる出口を定着させてあるのでそこから出るお湯は42度程だ。



樽の中の温度を最初から快適な湯温にすると細菌増殖の心配もあるので敢えて高めにしてある。


この世界には殺菌剤等は無いようなので温度管理で対応するしかない。



それらも含めて使用人達には衛生面での指導を徹底している。


殆どが手を洗う事から指導しなくてはならなかったがリラレットを始め貴族に使えていた者たちが最低限の知識があったのが幸いしそれを知矢の日本で得た知識を応用させながら限られた道具で衛生の概念を仕込んだ。



次に問題が出たのが排水処理である。


勿論下水道等は存在しない。


殆どの者が河へ流したり、地中へ浸透させていたからだ。


少量ならばそれでも構わないが風呂を始め流しを設けたり色々衛生設備を設けるとどうしても大量の水を処理しなくてはならないジレンマを生じさせる。



知矢は

「スライムとかが下水処理の定番なんだがな?」


と冒険者達に聞いてみた処


「スライムは確かに森や湖、沼地なので生息してますがそれをごみ処理に使うなど聞いたことが無いですね」



との事で知矢はいつか捕まえてきて実験しようと思ったがしかし急には無理なので仕方がなく日本での知識を利用し ※1)合併処理浄化槽を作り浄化させた綺麗な水を浸透井戸を掘り地面に返す事にした。



土魔法で2×5メートル深さ2メートルの穴を掘り途中間間に仕切りを設けた上澄みのみ流れる分離槽を作り、

風魔法で竹筒から常に空気を送り出し2槽、3槽、と第6槽まで進む内にゆっくりと槽の内部に設けた緩衝材の石や砂利、竹の様な植物を割り入れた物を通過させる内にバクテリアの働きで浄化させる仕組みだ。



稼働させた直後は悪臭が発生し使用人達が知矢のやる事に疑問を抱き売り物である風魔法の魔道具を裏庭に並ばせ匂いを拡散させた程だ。



だが数日稼働させて行く内に次第と匂いを発しなくなり最後の槽を通過し浸透井戸へ流れ落ちる水が無色透明、無臭の水になったのをみて


「ご主人様の新しい魔法か?」


と皆が首をひねるのであった。



微生物急速曝気浄化の理論や仕組みを説明しても理解出来なかったので最後は


「綺麗にする魔法の仕組みだ」


で済ませる事にした。



サーヤだけは仕組み・理論を理解したのは流石だが彼女は元々日本で都会のマンション産まれであったので浄化槽自体の存在も知らなかったのは当然かも知れない。



ただし、知矢はこの仕組みをもっと簡略化する為にはスライム研究が必要だと思い店が落ち着いたらサーヤに研究させようかと考えていた。



ともあれ排水処理設備が整ったので知矢は早速洋式トイレを作ってみた。


形は不格好だが土魔法で作った椅子の下に穴を設け浄化槽まで竹筒で結んでみた。



トイレの匂いが逆流するのを防ぐトラップ構造は知矢の土魔法で成形が難しいので諦めて途中にジェット水流を噴出させ汚水を押し流す水の魔道具を取り付けてみたところ綺麗に排水し匂いはスイング式逆流防臭弁を取り付けてみたところ上手く稼働しているようだ。


勿論この洋式トイレを喜んだのは知矢だけで無くサーヤも非常に喜び次には


「洗浄便座が欲しい」


とまで言い出したが少し研究が必要だったし時間もあれこれ些事に追われ未だなし得ていない。







書類をまとめあげ一息付いていた時、知矢の探知魔法のレーダに青い点滅と黄色い点滅が交わるのを捉えた。


さらに他の青い点滅が直ぐ様合流し黄色い点滅を囲む。



どうやらまた賊が侵入し警備に捕らえられた様だ。



近頃では探知の魔法もどんどんレベルアップしレーダへ表示される情報が増え知っている者ならば名前も表示される様になったのは凄い事だと感じていたが、1つ知矢には解せない事がある。


当初より知矢への補助、もしくはアドバイザーと思っていたステータスの音声ガイドが全くレベルアップする様子が見られない事だ。



知矢の知識にある他の異世界転生物だとレベルアップしていく内に人格まで出来たりほぼ人と会話している位の機能や中には具現化する物語まであるがこのガイドさんは全く無い。



最近はもう諦めて無機質な通知も聞き流しがちである。



それは置いておいて先程の捕らえられた賊もやはり第2商業ギルド絡みらしい。



警備は指示通り騎士の詰め所へ通報した様で別の青い点滅が素早く外へでて詰め所の方へ移動を始めた。



その時であった。



「兄貴!」

板窓の外から声がかかる


「どうした」

知矢も疑わず答える


「この先の路地でどうやら奴らの仲間が張り込んでますね。

ワイズマンの奴は多分直ぐ捕らえられるかと思うんでやすが?」


そう、声の主はあの冒険者ギルドを追放され、復帰の代わりに知矢の指名依頼を助ける事、

と条件を出され知矢に付き従い精霊を操る敵と戦った3人の内の1人ボンタであった。



あの時、ギルドへ報告へ向かう途中気にしていなかったボンタの能力を鑑定したところ思わぬ能力を持っていたのでそれを活かして知矢に従うなら仕事を与え衣食住と活躍に応じた金銭を支払うと契約し連れてきていたのである。



その意外な能力



気配探知LV25、気配消失LV20、我慢強さLV15、片手剣LV5、他




であった。


正直片手剣のレベルは殆ど役に経たないが気配探知と気配消失は相当の高さだった。



その能力を買われこの商店を護る盾の1つとして使われる事になった。



本人も元々その力には気が付いていたが全く使い処をわかっておらず宝の持ち腐れであった。



知矢が本気になればボンタの気配も感知出来るが普段は全く気が付かない程の力であるため商店の2階に潜み知矢の代わりに周囲を警戒して何か見つければ気配消失を使い近づいて調べる等をしていた。





「兄貴、どうしやすか?警備主任のサントスへ伝えますかい?」


とボンタの問に知矢は


「いや、今回は俺が密かに出て相手の様子を観ながら対処する。お前は気配を消して付いてこい」


と机の脇に立て掛けてあった知矢の日本刀を手に取りボンタが控えていた板窓を押し開け屋根から屋根へ伝い降り既に闇に包まれた面通りを音もなく駆けて行くのだった。



既に知矢のレーダでも先の様子が確認出来ている。



青い点滅が10名の黄色い点滅に囲まれながら右に左に動き回っていたがどうやら捕らえられた様だ。



知矢達は話し声が聴こえる位置まで街の建物や影を利用し気配を断って接近してみた。



「オイ!お前はあの魔道具屋の仲間だな。どこへ行こうとしていた!」


「.......」


ワイズマンは何も答えず聞いてきたやつに歯を食いしばりながら睨み付けていた。



「フン、どうせ騎士団の詰め所だろ、こっちはなんでもお見通しさ」

と頭の悪そうなセリフを吐く大柄の男は手にしていた大柄のナイフをペシペシとワイズマンの頬に当てながら続ける。



「そんなこたあどうでもいい、オイお前らの主は誰だ!あの魔道具はどこで誰が作ってる!痛い目に合う前にさっさと吐いちまえよ!」



「...........」



相変わらずだんまりを決め込むワイズマンであるがこの者は元々に運びの怪力と足の速さだけが売りの為1対1での争そいや喧嘩では力と足で相手を翻弄し勝ってきたが多数対1で囲まれてはそれこそ力も足も出しようが無かった。



そんな危機的状況でもすぐに知矢を始め警備の仲間が助けに来てくれると信じだんまりを決め込みながら周囲を窺い切っ掛けさえあれば瞬時に脱出するつもりでもいた。



そんな様子をすぐそばで聞いている二人知矢とボンタである。



知矢は話を聞きながら(何故こんな所で情報聞き出そうとかしてるんだ?普通攫って(さらって)隠れ家でじっくりだろうに?)



と考えながらも二流の奴らなのだろうと思い気配を絶ったまま物陰から出てワイズマンを尋問中の奴らへと1人で近づいていった。



「オイ!手前いつまでも黙ってられると思うなよ、喋りやすいようにその口広げてやろうか!イヒッヒッヒ」


と未だ大声でワイズマンを恫喝している。


周囲には仲間が9人居るためだろうか気が大きくなっている。



しかし男が「なあ!お前らそうしてやるか!」


と振り返ると今の今までいた仲間が何故か一人も見えなかった。


慌てて周囲を見回すがいるのは暗闇でフードをかぶった1人、そう知矢だけであった。


「オイ、お前周りの足元をよく見てみろ」



知矢が落ち着いた声音で男に声をかけると足元に仲間が全員倒れ伏している。


勿論気配を消して近づいた知矢による一瞬の内に全員の首筋に放った峰打ちの技である。



一瞬の内に自分だけしか生き残っていない事に気づき急におどおどした態度になったと思った時


「おおお・・おまおまお前はわわわわ・・・・」


と震える様に後ろに下がり出し、てっきりワイズマンを人質にでも取るのではと警戒していた知矢が拍子抜けする様に見ていると


「あわあわあああああーーー」と叫びながら逃げ去ってしまった。




あっけにとられて見送る知矢であったが既にボンタが気配を消して追跡中である。



「何だったんだあいつは

おいワイズマン怪我はないか」


と使用人を心配し見やるとワイズマンも同様にあっけにとられていた様だったが知矢の声を聞き我に返り


「ご主人様、申し訳ありませんでした。」と頭を下げて詫びるのである。



「何、気にするな。しかし毎回こんなんではお前の身に危険が及ぶな。

次回からは警備の奴に行かせるか複数で行動させよう。

ともかく怪我が無くてよかった。」


と逆に心配してねぎらっているところへ



「ご主人様~!」

騒ぎを聞きつけて警備担当のコレットと同じく獣人のミレが駆け付けたのだった。



「おう、良いところに来た、こいつらを縛り付けてくれ。ワイズマンを恫喝した奴らの仲間だ。

肝心の恫喝した張本人は逃げ出したがな。今ボンタが後をつけている、その内知らせが来るだろう。」



その後もう一人警備担当のギムも合流し残された9人を縛り上げミレとワイズマンを改めて騎士団詰め所へ走らせるのであった。




騎士団を連れてミレとワイズマンが戻ってきた気配を察知した知矢はコレットとギムに後を任せて静かに闇へ消えて行った。





知矢が裏口から店へ戻ると総支配人のリラレットと警備主任のサントスが待ち構えていた。


「トーヤ様お手を煩わせまして申し訳ありません」とサントスが頭を下げる。


「いや構わない。それに今回は丁度良かったからボンタに仕事を与えた。


奴の事だ賊の仲間がどこへ逃げ込むかキッチリ掴んで来るだろう。


それより思った以上に煩わしいな"第2商業ギルド"の連中は。」



「はい、昼間も客に紛れて根掘り葉掘りいろいろ聞きだそうと何人も代わる代わる紛れ込んでいましたのもその者達かと存じます。」


リラレットは店の奥より目を光らせ本当の客でない者を見抜いていたようだ。


「ご主人様、騎士団の方から第二商会へ捜査の手を入れる事は出来ないのですか?」

サントスとしては当然の思いだろう。


しかし肝心の捕らえられた本人が鑑定結果に関わらず第二商業ギルドとの関係を否定し単なる単独犯のこそ泥と供述しては司直の手も及ばないのであった。



「...........」


黙って考えながら奥へと向かう知矢の後をリラレットとサントスも黙って付き従う。






応接室のソファーへ腰かけた知矢は未だ思考を巡らせている


そこへリラレットの命じられたのかイーシャとマレルが盆にのせた軽食と知矢の大好きなビールを運んできた。



「おっ!気が利くな!そうだリラレットにサントスお前たちももう仕事は終わりだろう、一緒に飲みながら作戦を聞いてくれ」


と何か思いついた知矢は嬉しそうにビールを飲みながら二人を誘うのであった。




その後三人でビールとワインを飲みながら少し夜更けまで語り合い知矢の作戦を聞いたサントスなどは

「そりゃあ面白い事になりますね!」と顔を赤らめながら興奮気に賛同しリラレットはやり過ぎでは?と思いながらも反対はしないのであった。



街が暗く静かに眠りの時を迎える刻限だが魔道商会の応接室には煌々と天井につるされた魔道具が光りキンキンに冷えた魔道具で飲み物もいつまでも冷たいままであった。





それを部屋の外にて立番するギムが


「..くうううう、今夜が当番で無けりゃなあ!!」


と羨ましがるがそれとは無関係に三人の杯はすすむのであった。









とあるアパートメントの一室では


「トーヤ君最近全然顔を出さないわね.......」


と1人静かにワインを傾ける女性がいる事など知りもせずに・・・・・。













※1) 合併処理浄化槽:基本都会の方には全く見た事も無く聞いた事も無い物です。

微生物を槽内で活性化させ薬品や動力等を使用せずに汚水・排水を微生物分解、浄化させる物です。

唯一使用するのは継続的に送り込む必要のある空気を発生させる”ブロア”と呼ばれる機械のみです。


ブロア:簡単に言うと金魚などの水槽で空気をブクブク出すあれ、それを大きくしたものですね。

それだけで本下水の無い地域では日本中に設置してあります。

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