第38話うわ~出たよ、何でもありだな。 ~ザイード「トーヤ様!」
本日2話目の投稿になります。
よろしくお願いいたします。
では第38話です
裏口から密かに出かけた知矢は裏通りを使い速足で先ずは先日取引したばかりの奴隷取引商会へ向かった。
訪いを告げると先日の家令がすぐに応接室へ通してくれまもなく商会長のザイード・ギムベルグが以前同様の口ひげを生やし落ち着いたビロード調の服に身を包んだ顔を見せた。
「トーヤ様、先日の取引より間もなく急なお越し、先日の商品に如何有りましたか」
と握手を交わし挨拶をしながら売った奴隷が何か問題を起こしたのではないかと心配顔だ。
「いえ、ザイードさん急に申し訳ありません。先日の者達はとてもよく仕事をしてくれておりますのでご安心を、今日は急に人手が足りなくなったので急ぎ警備に従事できる冒険者をあと5名から10名ほどお願いできればとおもい」
「そうでございましたかトーヤ様、それでしたら丁度最近はいった者の中にお勧めできる冒険者が5名おります。先ずはトーヤ様のお眼鏡にかなうかご覧いただきますが私の節穴でもご満足いただける商品と自負しております。」
とザイードは先日の取引で知矢の選別眼を目の当たりにし己の未熟さを痛感したばかりであったが以前にもまして自己修練に拘り己の鑑定に現れる表記のみでは無くもっと人となりを感じてみようと心新たに邁進していたのである。
そんなザイードの指示でさっそくおすすめの奴隷が応接室へそろえられた。
ザイードに命じられ静かに横並びになっている奴隷、元冒険者との触れ込みを目の前にして知矢は鑑定するのも忘れて見入ってしまった。
そろいもそろってその姿は、頭は髷を結っており、この世界で一般的な布地の服装は前で左右を入れを併せる和服に見えズボンは履かず袴調の者や着流し調の者など色々だ。
中でも中でも全員が腰に帯を締めており渡されればすぐに日本刀が帯刀できそうな服装である。
「トーヤ様如何なさいましたか?」
呆然とする知矢にザイードが不審がり声をかけるまで知矢の頭の中は混乱していた。
ザイードの声に覚醒した知矢はすぐに鑑定を始めるのであった。
黒く細い顎鬚を伸ばした精悍な若者
・ノブユキ 人族 (18) 剣技LV30、魔力D、気配感知LV18、冒険者ランクD
少しでっぷりとしたニコニコ顔の男
・イエヒコ 人族 (17) 剣技LV22 魔力D 居合LV18 冒険者ランクD
ほっそりとした締まった体躯の長髪を若武者髷にしているおどおどした女
・アヤメ 人族 (18) 剣技LV20 魔力C 風魔法LV20 火魔法LV18 冒険者ランクD
表情が少ない印象に残りずらそうな男
・ササスケ 人族 (16) 剣技LV18 忍び足LV10 速力B 隠密LV13 水魔法LV12 風魔法LV9 冒険者ランクE
何故か真っ赤な忍び装束を全身にまとう女
・ミホ 人族 (16) 剣技LV15 忍び足LV12 速力C 隠密LV13 火魔法LV15 空中抜刀術LV10 冒険者ランクD
腰の曲がった老人
・アカネ 人族 (16) 剣技LV15 変装演技LV19 隠密LV10 風魔法LV10 冒険者ランクE
以上であった。
「......」知矢は突っ込みどころ満載で何から確認すればいいか悩んでしまった。
「如何ですかトーヤ様」ニコニコ顔のザイードであった。
「どこを突っ込めばいいのか悩みましたが...
先ず一番右奥の女性、君は何故老人の格好をしている?」
少し呆れながら聞いてしまった知矢だ。
「..........なぜ!何故私の変術を見破ったのだ!商会長殿!内緒にしてほしいとあれほど!!」
ザイードに鋭い目を向けるアカネであったが
「失礼ですが、私は何も、ひと言もトーヤ様に申し上げておりません。年齢も性別も含め」
とにこやかにトーヤへ尊敬の目を向ける。
「何!ではそこのご人の目が見抜いたという事でござるか!これはお見事、拙者感服いたしましたぞ!」
「....」俺は突っ込まないぞ、突っ込まないからな!と心で叫ぶ知矢。
らちが明かないので率直に話を聞くためザイードと使用人にはしばらく席を外すように願った。
ザイードは話を聞きたそうにしていたが客との信義の問題であるからには従うほかなかった。
「さて、全員の代表は君で良いのか、ノブユキ君と言ったな。」
人払いを済ませた知矢は全員から話を聞こうと思ったが収拾がつかなくても困るので最年長の男を指名した。
「ああ、そういう感じで。俺の名前も解っているしアカネの術も見破るという事は鑑定持ちですね」
「ああ、その通りだ。しかし契約をするとしてそれ以降は絶対に口外はしないでくれよ、その他多くの秘密を俺は抱えているんでな。」
最近の知矢はうっかりすると自分が未だ60歳を超えた老人であった時のままに振る舞ってしまう事が素である。
ニーナと一緒の時は何故か16歳の知矢で居られるであるがその所が本人も苦慮しているところだ。
だが今のような状況だと敢えて隠す必要も感じない為素での対応になる。
「で、ここからが本題だ。君たちのステータスを見たことはもうわかったと思う、そこで聞く、君たちは何者だ?」
知矢の質問の意味が今一つ理解できてない様子の若者たちに続けて聞いてみる、ただし日本語でだ。
『君たちの先祖は日本からの転生者又は転移者なのか?』
知矢が発した日本語に”びくっ”とする5人だったがその中の赤い忍者のミホが
「あっ爺さんたちと同じ言葉だ!」
と素直に反応した。
直ぐにノブユキが「おい!ミホ!」と制止させるがミホは口を押えて頭をかくだけであった。
「やはりそうだったんだな。まあステータスにその事が表示されて居る等思いもよらなかったのだろう」
個人のステータスは鑑定にておおよそ観る事が出来る、ただし一般的には観る事の出来ないような内容まで見えてしまうのが知矢の鑑定魔法である。
彼らのステータスに書かれていた特別な表記それは
”日本よりの転移者の子孫”
とあった。
「あなたがそれを何故見えるのかはともかく、何故日本語を俺達でも殆どしゃべれないのに?
その見た目、あなたも転生者?目と髪は黒いがいやそれにしては彫りが深く爺さんたちの言う南蛮人のような印象も...」
知矢の容姿、特に顔つきはよく日本人離れをしていると言われたものだ。本人の血筋はいたって純潔の日本人ではあるのだが何故か彫りが深く目つきも西洋人のそれに少し似ている。
何度か沖縄へ行った事が有るが毎回現地の住民と間違われるのが本人としても不思議でしょうがなかった。
そんな顔つきの為この世界で逆に違和感なく溶け込めているのではないだろうか。
ノブユキの疑問にどう答えるかは思案処だった。
正直に転移者であると言うべきかそれともごまかすか。
今後の事も考えるならば正直に打ち明けてもいいのだが未だ出会ったばかりの若者へ信を置くことも出来なかった為ごまかすことにした。
「いやその見た目と服装で昔出会って交流した俺の村にいた老人の事を思い出したんだ、その老人は流れ者だったが俺が生まれる前から村に住み村人に剣技を教えてくれた。おれの剣術もその流れと思ってくれていい」
ともっともらしい事をいい知矢は自分の脇に携えていた日本刀を軽く持ち上げ見せたのだった。
「あっ、爺さんのワザモノとおんなじだ!」とまたミホである。
渋い顔のノブユキは諦め顔で今度は制止しなかったが知矢の日本刀を見て少し知矢の話を受け入れた様子だ。
「まあ、何か事情があるのだろうがそれ程何か自出を隠さなければならない理由でもあるのか?
正直君たちに一番聞きたいことは君たちの自出などでは無くもっと俺にとって重要な事だ!」
「もっと重要な事?」
一瞬受け入れたかに見えたノブユキの表情が一気に引き締まり肩に力が入り警戒しているのは明らかだ。
だが知矢にはそんな事はどうでも良い、だがこれだけはどうしても聞きださなければならない。
「そう、重要な事で最大級の俺の関心ごとだ!!」
そう告げると知矢は真剣な顔をし全員を見渡すのであった。
ミホ「ニンニン!この手裏剣をくらえ!」
知矢「.......」突っ込まないぞ、突っ込まないからな!
ミホ「効かない!じゃあこれだ忍法火遁の術!!」
知矢「.......」ただの紙手裏剣とファイヤーの魔法じゃねえかよ....




