表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

36/257

第36話 帰宅、そして新たな家族と  ~睡眠不足はお肌の敵なのでお先に失礼いたします。

第36話まで参りました。

皆さんありがとうございます。


先日は1日のアクセスが1300を超え、ユニークも2000人を迎えました。


感激しております


では今日もよろしくお願いいたします



「「「「「お帰りなさいませ!ご主人様」」」」」


知矢は店の裏木戸から入り、裏玄関に足を踏み入れると大勢の奴隷たち、(今後は使用人と呼称呼ぶことにした)から一斉に挨拶を受けた。


「おっ、おおう! 只今、留守中は問題なかったか」


レーダーでその場に使用人たちがいる事は事前に察知していたが慣れない挨拶を一斉に受けすこしびっくりしてしまった。



知矢の返答に使用人の中から総支配人のリラレットが一歩前に踏み出し再度頭を下げた。


「お帰りなさいませ、トーヤ様。無事のご帰還、お喜び申し上げます」


さあ、お疲れでしょうと中を指し示し知矢を促すと使用人たちはいっせいに左右に割れ並び軽く頭を下げ知矢を待つのであった。


(「えっ?ここどこの貴族の屋敷だよ、いつの間にこんな躾を」)と戸惑いながらリラレットに先導されながら応接間的な部屋の一つへ案内された。





「トーヤ様、改めましてお帰りなさいませ。使用人一堂ご帰還をお待ち申し上げておりました」


と背後に居並ぶ者達と綺麗に併せて深々と頭を下げる。



突然の対応に慣れない知矢はきょどりながらも


「あっああ、ありがとうござ、ウォホン、皆ありがとう、何とか予定通りに戻る事が出来て皆の元気な顔をみれて俺もうれしい」



慣れてみれば知矢も転移前には小さいながらも企業のトップ、居並ぶ部下、社員に最敬礼され訓示を述べる事も常であった。



調子を取り戻した知矢は皆忙しいだろうとリラレットを残し解散させ話を聞くとした。



事前に申し付けていたのだろう、元メイドの1人マクが紅茶を持って再度表れ静かに給すると黙って頭を下げ退出していった。



紅茶を飲みひとこごちついている間もリラレットは静かに離れて立ち知矢の間を観ているようだ。



「さて、色々済まないリラレット。皆の様子を見るに問題はなさそうだがどうだ?」


留守中に行われていた諸々の準備や片付けは裏木戸より一歩入るだけで解るほど整えられている様子だ。


一般的に裏木戸や裏庭というと使用人や出入りの商人が使う場が殆どの事が多い。


その為、防犯はするが木戸も質素な見た目で裏庭に至ってはただの空き地。


使用人の洗濯物を干したり、休憩に使用するなど表向きと大きく異なるのはあたりまえだ。


裏玄関等は勝手口同然の少し幅が広かったり大人数や大荷物が出入りしやすい為だけのものである。



しかし、知矢が緊急指名依頼を受けていた間に、外からは普通の木戸だが内側を観ると防犯対策で厚い板を張り増してある。



その張り方が小洒落た高級感を演出する様に工夫されているが内開きの観音開きであるが故外からは全くわからない。


木戸を閉めるとその立派さが初めて解るのだ。



木戸を数歩入ると生け垣が植えられ先が観通せず金折に曲がると裏庭を通る通路が形成されていてその先が裏玄関へと繋がる。



生け垣と金折の箇所は見た目の演出に見えるが実のところは異なる。



何者かが裏木戸を破り突入してきたとしよう。


すると突入の勢いを生け垣で消され防衛側は金折側の方向より相手の虚を付き攻撃する事が出来る。


さらにその攻撃を受け敵が防衛側に注意を向けたときに生け垣の隙間から槍で攻撃する事も出来ると言うことだ。


見た目も整えられているが実をしっかり兼ね備えられているのが素晴らしいと知矢は感心した。


しかもプロの大工や庭師を入れたわけでもなく各自の努力と工夫で作り上げたと聞けば良い使用人に出会えたと知矢は思った。


使用人としての教育も出来ており奴隷を買ったばかりで知矢が留守にしたことが却ってよい方に作用したと見える。


1つ心配していたサーヤに関しても自らの置かれた立場、状況を受け入れ皆と上手く行っているようにも感じた。


同郷の者とはいえ知矢と異なり生まれ変わりこの世界で育ったことも大きいのであろう。


一先ずは安心したのである。


「はい、トーヤ様、今日まで申し付けられた事柄、予定は順調に進んでおります。明日以降の変更、追加のご命令が有りましたらどうぞお命示を」


とその他こまごまとした報告を受けながら店の開店に向けた諸準備を申し付けた。





その夜は知矢の依頼完遂と無事の帰宅を祝い、そしてやっと初めて落ち着いて全員そろっての夜なので食事も豪華にさせ酒もふんだんに出すようにさせた。


もっともほとんどが若い使用人の為知矢の他酒を楽しんだのは冒険者組であったが元商家組やメイド組も豪華な食事を大いに食べ話に盛り上がっていた。


「ご主人様、僕たちこんなにおいしい肉食べた事が有りません」


と顔の周りを汚しながら興奮して肉を頬張るアンドウ、ゼンゾウ、シンゾウ、ガンゾウであった。


冒険者組のギム、サンドス、ミレ、サーシャ、コレットは共に酒が大好きなようでドワーフのギムに全部飲まれまいと競って飲んでいる。




知矢と言えば皆の様子を見まわしながら静かにビールを飲んでいるがそのビールは適度に冷えており大変おいしかった。

「リラレット、このビールは冷えているが?」


隣で静かにワインをたしなむ総支配人に聞くと


「はい、実は冒険者ギルドのスコワールド様へトーヤさまのお好みをご存知かと尋ねたところ冷えたビールを好まれるとお伺いし勝手ではございますがトーヤ様のお作りになった冷やす魔道具を使わせて頂きました。」


「そうだったのか、いや実に良い配慮だ。とても冷えていて旨い、疲れも吹き飛ぶと言うものだ」


(そういや宿でも屋台でも冷やす魔道具は既にあったな)


「リラレット、今既に売られている冷やす魔道具は知っているか?値段とか性能だが。」


「ええ、存じております。価格はおおよそ大金貨1枚~小金貨3枚程から2枚程度の物まで、性能ですが高い物は10年程使う事が出来き安い物はおおよそ1年から2年は使えると聞いております。


ですが大きい物でも水がめより少し大きい程度、小さい物は壺程度が精々ですので用途が限られます。


しかも魔力供給を毎日欠かさず行わなければなりませんのでご主人様の作られた物とは比べ物になりません。」


「あれは ※1ペルチェ素子の原理に似ている。」


と話題に入ってきたのはサーヤであった。


ペルチェ??リラレットのと聞いた事の無い言葉と言う顔


「ペルチェ素子は金属の接合部に電流を流すと片方の金属からもう片方へ熱が移動するというペルティエ効果を利用した板状の半導体素子だ。

直流電流を流すと、一方の面が吸熱し、反対面に発熱が起こる。


その作用を魔力で再現しているようだったので私も改良しようと思ったが私の魔法LVと適正では叶わなかった、でも結果ご主人様の考えた方式の方が構造が簡略化されて尚且つ魔力を保持できる期間も量も多いのでコストも低いしあれは素晴らしい魔法だ。」


と前世の知識と魔法の併せ持つ仕組みを利用しようと考えていた節があるが複雑故適わなかった挙句知矢がもっと単純に作り出してしまったのを目の当たりにして技術者としての敗北感が有ったようだ。


(天才)の名を欲しいがままにしていた技術者サーヤが知矢作り出した魔法、魔道具をほめるのを聞き何故かリラレットが鼻高々の様子である。


「それは当然ですわ、知矢様ですから。」

どうやら少し酔い始めているようだ。


「サーヤ、お前も何か役経つ物を作ってみるか?案を出してくれれば俺の魔法で実現可能な様に研究してみるのも構わんぞ」


「.....いえ、止めておきます。研究者として・技術者としての私サーヤ・ベストファールはもう既にこの世に居りません。ここに居るのは奴隷として買われご主人様の使用人の1人サーヤです...」


多くの死傷者を出した研究や開発から一切の手を引くことで贖罪のひとつとし、奴隷、使用人として生きる決意を自らに再確認させるようなサーヤの言葉に知矢もリラレットも言葉が出ない。


代わりに知矢は先ほどから果実ジュースを飲んでいるサーヤへワインの入ったコップを渡し自分のジョッキを目の前に突き出した。


「...」


戸惑うサーヤを見てリラレットも自らのコップを知矢のジョッキに近づけサーヤを見る。


恐るおそるコップを掴み持ち上げると知矢が静かに


「新しいサーヤに、そして皆を頼むぞリラレット、俺たちはこれから家族だ、乾杯!」


と囁く。


「サーヤさん力を貸してくださいね、そして皆と一緒にご主人様の為に尽くしましょう、乾杯!」


「....ご主人様、支配人そしてみんなよろしく願いします....乾杯!」


と三人のコップが微かに合されるのであった。







その頃、ラグーン冒険者ギルド3階にあるギルド長室では



「う~んもう少しトーヤの奴を困らせて苦労させるつもりだったのだがな...くっそ!いとも簡単に解決し、しかも大都市管理貴族より報奨まで貰いやがって、ったく」


と書類の山の中で何か言っているのはギルド長のガインであった。



「何をぶつぶつ言っておられるのですか、トーヤさんに期待して任せたのでしょう、万事うまくいって万々歳ではありませんか」


と書類の束を抱えているニーナ。


「そうは言っても出来過ぎだ、あいつにはもうちっと苦労を味あわせた方が良かろうと思った俺の親心だ。


しかもおかげで奴の事を問い合わせたり依頼を出せないかって各ギルド支部や本部、近隣の貴族からも問い合わせの手紙や魔伝が山の様だぞ。

どうすんだこの書類、しかも魔鉱石の査定が終わって奴の取り分に関する手続きやなんや、最後には帝都より奴を表彰した方が良いのではなんて言ってくる始末だ。


俺の寝る間もありゃしねえ!」


「ハイハイ、ギルド長が寝る暇に以上にその処理をする我々も大変なのですからさっさと書類を書き上げてサインを下さいね。


あと追加で申請書も出てますからこれも目を通して決裁してください、はい皆さん処理が終わった物からどんどんギルド長へ回して下さいね、でないと我々も本当に寝られませんよ」


ニーナの背後には書類と格闘する職員の屍が死屍累々の様相であった。

まるでゾンビの様に青い顔で書類を作成している。


「おい、まさかお前ら俺を本当に徹夜で決裁させる気かよ!」


「元A級冒険者には不可能はございません」


と鋭いまなざしを送り冷たく流すニーナであった。



諦めたように書類に目を通すのを再開したガインであったがその新たな申請書の中身を明け方虚ろな頭で決裁してしまった事を後悔するのは後日の事であった。







今日より数日更新が途絶えます事をお詫びいたします。


14日辺りから再開できれば幸いです。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 金折とはなんですか? 調べても金具しかでてこないのですが。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ