第28話 新装開店準備 ~大変です店長が姿を消しました!
数日更新が滞りまして申し訳ございません。
お盆休みを目前に仕事の区切りをつける為...言い訳でございます。ごめんなさい。
では28話 お読みください。
知矢はその日、街で必要な物を買い込むために3人の買ったばかりの奴隷を連れていた。
まず、自分が留守の間に旧商家を掃除し店先を整え、台所も改装して奴隷たちが生活できるようにするためだ。
それと元冒険者には交代で警護に付かせるため防具や武器も買い与えないといけない。
冒険者の5人には金を与えそれぞれ必要な武具を買いに行くようにさせた。
知矢の時間が限られていたこともあるしそれぞれの装備を一々知矢が選ぶのも何だしと丸投げであった。
元冒険者の奴隷たちは渡された金貨に戸惑いを持ったが主に指示されたのでと納得し装備をそろえられる喜びも相まって5人して勇んで出かけて行った。
残りの奴隷の内4人、元メイド長や、元メイド、元商家の奉公人、そして元貴族令嬢を引き連れ足りないもの、必要な物を駆け足で店を訪れ買い求めた。
知矢は自分のいない間に生活環境も整えておくよう元メイド長の女に言い含め各自の着替えや布団、身の回りのものはそれぞれ買いに行くよう別途金貨とマジックバックをそれぞれ渡してある。
元メイド長の女は金貨やマジックバックを平気で奴隷に渡すこの新しい主に戸惑いながらも「お前を信頼して任せた!」
という知矢のセリフに感動した様子のキリリとしたまなざしで「お任せくださいご主人様」と頭を下げて答えたのであった。
取りあえずの買い物を済ませ旧商家、(もう知矢の店になっていたが)に戻った知矢は全員を集め今後の話をした。
「簡単に言ったが再度話をしておこうと思う、俺はA級冒険者のトーヤだ今日から皆の主となったが見ての通り若輩者だ。
それぞれ思う事もあるだろうが取りあえず皆の基本的な生活、衣食住は保証しよう。
おれはここで商売をする為皆を買い取った、しかし俺は目立つことを極力避けたいので商売を始め全てを君たちに任せるつもりだ。
どうしても対応できない事態が起きれば表に出るが基本的に対外的な事は一任する。
そこで商売の話だがここで突発的な用が出来た、俺は明後日早朝より冒険者ギルドの緊急指名依頼で数日旅に出る事になった、留守中の指示はまとめて出発前夜までに渡すが何かあった場合は冒険者ギルドサービスマネージャーのニーナ・スコワールドさんに相談してくれ、話はしてある。」
とここで一息ついて周囲を見渡すが皆一様に真剣に話を聞いてくれているようだ。
「もうひとつ、留守中の警備担当主任を決めておく、冒険者のサンドスさん、あなたにお願いするので当番や警備の方法を相談して皆をまとめてください。」
突然指名された元冒険者のサンドスは驚きながらも「了解した」と簡潔に答えた。
この男、鑑定したところ42歳独身、剣術LV40、周囲探知LV15、ギルドLVはC級だがB級に近いステータスは持っているようだ。
「そして全体を統括指示するのはリラレットさん、あなたに頼みたいのですが」
これまた突然指名された元メイド長のリラレットは戸惑いを見せながらも
「はい、微力ながらご期待にお応えできるよう務めさせていただきます」と 力強く答えるのであった。
「先ほども言ったが先ず俺の留守中に皆の生活基盤を整備し、店として使用できるよう改装を頼みたい。改装と言っても簡単な大工仕事と掃除と模様替えが中心なので出来る範囲でやっておいてほしい。」
と再び見回すが皆黙って俺の言葉を聞き洩らさぬような顔つきで聞いてくれているようなので安心した。
知矢の鑑定によってこの中の数人は建築LV2~5の物が数人いたので簡単な作業は出来るであろうと大具道具や資材も買い求める様に伝えた。
「それと販売する物は小物だがその小物に俺が魔法を付与し、いわば魔法道具として販売する。その魔法自体は俺がいないとどうにもならないが先ずはその基礎となる小物の製作も頼みたい。」
といって木箱に入れておいた物をひとつずつ披露する。
「これは台所や流しなどに取り付け魔法を流すと...君、ミミと言ったなここに来てこの上の取っ手に触れながら微かでいいから何でもいい、魔力をそっと込めてみてくれ」
獣人の10代の元メイドを指名した。
急に呼ばれたミミは恐るおそる知矢の元へ出ると指示された板に木の取っ手と筒が取りつけてあるものをおっかなびっくり触れ魔力を注いでみるのだった。
「ッキャっ!」突然その魔道具の筒から水が出てきて下に置いてあった樽へ流れ込んだことに驚いたミミは獣人らしい反応でぴょんっと後ろに飛び去った。
「安心しろ、皆が見た様にこれは水を湧き出させる魔道具だ、そして止めたい場合はこの小さな魔法陣に触れるだけで停止する。
ミミ、君には水魔法の適正はあるのかい?」
驚いて魔道具を見つめていたミミは再び声をかけられ戸惑いながら「い、いえ私は風と生活魔法だけでございます。水魔法は全くできません。」と答える。
「いまミミが言った様にこの魔道具の最大の特徴は魔法適性に関わらずほんの微量でも魔力を発する事が出来れば作用して使う事ができる点だ」
と説明しながら次々と「これは火を出し料理につかえる物、これは光を放ち灯りにつかえる、これは風を出す・・・・」
と魔道具を紹介していった。
次々紹介され実際に目の前で発動する魔道具に信じられ無い物を見る様に皆固まって言葉もない。
そこでそれぞれの魔道具を並べて置き皆に一通り順次使わせてみるのだった。
「「「おお」」」各所より興奮した声が聞こえてくる。
「俺は身体強化しか使えないんだぜ、初めて炎を出したぜ」と喜ぶ元荷運び人のワイズマン。
「私は水と風よ、こんな明るい光を出せるなんて」元商家の奉公人の女のモネが光る魔道具を眩しく見つめ興奮する。
そんな様子の中、一通り魔道具を使用してから人の輪の外に一歩下がり静かな驚きのまなざしで皆を見る者がいた。
元貴族令嬢 サーヤ・ベストファール、今はただのサーヤとなった前世は真木野 桃香であった。
知矢はそっとサーヤの傍により小声でささやく
「君の作り出した技術に比べると玩具みたいなもので恥ずかしいがな、わしは単に自分が便利に生活したくて考えたのじゃがいかんせん創作性が無い物でのう取りあえずわしを始め周りの皆が便利に使える程度になってしまったのだよ。」
と高高炉やその後蒸気発電まで考えていたサーヤを目の前にして恥ずかしく話すのであった。
しばし皆の様子を黙って見つめていたサーヤが口を開いた。
「いえ....こういった安心して皆さんが使えるような道具こそがこの世界に役に立つ道具だったのかもしれません...
私は自分の知り得る知識の最先端を再現できる最速、最短を考え過ぎて間にある技術の積み重ねや人の経験を全て飛び越してやろうとしてしまったため、制御できないようなものを作り上げ結果大爆発し多くの死傷者を出し都市を壊滅させてしまいました。
トーヤ様、ご主人様のようにもっと足元を見て人の為になる物を考えられたらあんなことにならずに.....」
「....」
知矢は言葉が出てこなかった..そんな大層な事を全く考えず自分の為と思っただけなのであるが。
しばしの間が空いた後知矢が何かを言おうとする前に
「ご主人様が私を買ってくださったのは単に同郷の者への同情かと思っていましたがひょっとして今後色々作り出すための手助けの為ですか?」
と知矢の真意を聞きたいようだ。
「いや、同情とか技術を得たいとかじゃないんだ。
まあ、確かに同郷の者が奴隷だったのに気が付いたのでと言うのも大きいが何も利用しようなんて考えとらんから安心しろ。だが正直この世界の低い識字率や計算が出来ない者への指導は頼みたい、要は先生だな。
そのうえでわしの留守中やわしが表に出たくない代わりに商売の管理みたいなことを頼みたい。商家で働いていた経験の者もいるがみな丁稚程度の立場でまだ商売を任せられん、接客は十分できると思うがな。」
とサーヤに新たな仕事と役割を与えたのであった。
「.....わかりました、務めさせていただきます。」
と落ち着いて答えたサーヤに元貴族の矜持や元研究者だった誇りなどは見受けられず知矢はまずは大丈夫そうだなと安堵したのであった。
全員が魔道具を体験し終わったので再び皆を集めた。
「今皆が実際体験したように生活の上で非常に役に立つ商品だと思う、これを量産して今後販売をする予定だ。ただ魔法の定着、付与は俺にしかできないので先に基本となる道具の製作を皆で手分けして行ってほしい。
作りは簡単だが見た目を少し変えて一般庶民が買いやすい素朴な形状の物から趣向や飾りを施して貴族や裕福な者向けの割高な商品を用意してもらう。
この商品制作の指導はサーヤに頼む。そして商売や生活に役に立つ様に全員に文字と計算を覚えてもらうがこの指導もサーヤが行う、いいか」
「はい!務めさせていただきます、皆様もどうぞよろしくお願いいたします」と俺への覚悟を込めた返事と共に他の皆へと頭を下げたのであった。
薄々サーヤの素性に気がついてたのであろう距離を測り損ねていた他の奴隷たちも主人の命もあるがサーヤが皆にきちんと頭を下げてあいさつしたことで逆にホッとし受け入れられた様子がうかがえる。
「おう、先生、俺は冒険者のギムだ、俺やぁこの歳になるまで全く字も書けねえし文字も読めねえ、がんばるからこっちこそよろしく頼むぜ」
と元冒険者のギムが賛意を示し先生と呼ぶと他も皆口々に先生と呼びだしたのであった。
空気が良くなった様子に安堵した俺は
「じゃあ、リラレットさん俺はしばらく出てくるから後は頼む、夕食時間も解らないから今後は俺の都合は考えずあなたが考えて指示してやらして下さい。基本的には日の出から日の入りで、ただし渡した光の道具は各自分や各場所に設置して暗くなった後の行動は任せる。」
じゃあ頼む、と声をかけ知矢が裏口からまたフードをかぶって出てゆくのを皆がそろって
「「「「行ってらっしゃいませ、ご主人様」」」」と唱和し送り出すのであった。
全員の唱和に思わずずっこけてしまった知矢は裏口の周囲を窺いながら「シーッ!」と唇に手を当て皆に注意を促しながらそそくさと出かけて行った。
裏通りを歩きながら次は自分の旅の準備と依頼内容の情報収集かと思いながら速足で次の場所を思い浮かべるのであった。
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ありがとうございます
ですが
登場人物が増えてきて(まだ少ないですが)どう性格付けや言い回しし個性を付けたらいいのか全く分かりません。
他の方は凄いですね....
暖かく見守って下さい。
では次話もよろしくお願いいたします。




