第24話 商人へ転職 ~そんな怪しい商会っていつ行ったのですか!
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ニーナを知っている者が今のニーナを見るとどう思うであろう、それ程ニーナは困惑したままの表情で通りを歩いている。
傍らには大き目のコートにフードを目深にかぶった冒険者と思しき男の姿が、勿論知矢である。
その困惑した表情のままニーナは知矢を先導する様に大通りを避けなるべく目立たぬようにある場所へ向かっていた。
知矢は少々うつむき加減でニーナを見失わぬよう足元を見ながら歩き、同時に他人には見えないレーダー感知用ディスプレイを展開させ知矢へ強い関心を持った者が付近にいないかを検知しながら歩いていた。
少し前、
「司法貴族の方がヒント?どんな内容です?」
知矢に未知の魔法道具を見せられ、更に大々的に販売する事を聞いたニーナはその魔具には至って関心を持ったが販売となると難しいと思いその意を伝えたが知矢には既にそれすらも解決する目途が有ったのだった。
唐突に知矢に促されさるところへ案内を頼まれたニーナは多少「なるほど、それを活用するのね」と一旦は理解したがそれが上手く行くのか、少なくともニーナには前例を聞いたことが無い。
不安に思いながらも知矢の欲する物を探しにある店を目指していた。
知矢が隠棲のごとく隠れ住んでいた旧商家より歩いて1時間は経った頃、目的の店に到着したようである。
そこは知矢が知った街並み、商店が並び出店の屋台が軒を連ね人々が楽しそうに買い物をしていた場所とは雰囲気が全く異なり、
どちらかというと堅苦しい雰囲気の建物が並び行き交う人々も女子供は殆ど見受けられず襟を正した、そう役人的な格好の者や貴族の家令や使用人、時には騎士や兵士の姿を多く見る地区であった。
「ニーナさんここですか?何かすごく持っていたイメージとかけ離れているのですが?」
堅苦しい雰囲気の風景と人々に困惑する知矢に
「えっ?イメージですか?、知矢さんのイメージとはどんな風景なのですか?」
知矢の発言に逆に困惑するニーナ
「いやあ、あの手の商売っていうのは薄暗い裏路地にあったり、不衛生で治安の悪い場所っていう気がしてたもので」
「ああ、それで ”最初場所だけ聴けば一人で行きます、女の子を連れて行くような場所ではありませんからね” っておっしゃっていたのですね、トーヤ君のイメージの方が不思議です、だって役人の許可や管理が必要で公正な取引と清潔感が売り物なのですから本当に真逆ですね」
なぜそんなイメージを持ってたのですかとクッスッと笑うニーナは
「はい、着きました、こちらが ”奴隷取引商会” です」
と、やはり知矢のイメージとはかけ離れた奴隷商というより”証券取引所”の様な”銀行”とも見える建物の前に到着した。
石段を数段上がった入口の扉の前にはドアボーイならぬ品の良いどちらかと言えば執事のような男が立っていた。
二人が石段に足をかけ近づくと恭しく礼をし
「いらっしゃいませ、本日はどのようなご希望でしょうか」
と尋ねてきた。
「こんにちは、私は冒険者ギルド、サービスマネージャーのニーナ・スコワールドと申します、
今日はこちらにいらっしゃるA級冒険者 ”トモヤ・ツカダ 様”のご希望で参りました。」
といつも知矢に対する言葉使いとトーンも違い”出来る女”を醸し出す様子に知矢は少し見惚れてしまったが急に紹介され慌てて姿勢を正す。
「はっ、はい私が知矢・塚田です今日はよろしくお願いいたします」
と頭を下げるのであった。
「ニーナ・スコワールド様とトモヤ・ツカダ様ですね、当商会へようこそ、ご案内いたします、お入りください」と戸を開け片手で恭しく店内へと促す。
「どうぞ、こちらでおくつろぎください、只今お茶とそれに担当者を呼んで参りますのでしばしお待ちを」
と広く彩光の良いガラス張りの窓が並ぶ応接室へと通された、すかさず未だ年端もいかぬような少女がお茶を持って現れ静かに去っていった。
「ニーナさん、これってガラスですよね」
とこの世界で初めて見た木の窓ではなくガラスの入った窓を繁々とみる知矢。
「あら、トーヤ君はガラスをご存じなのですね、中々この都市でもガラスの入った窓を持つ建物は少なく貴族でも客間や応接間以外はとても取り付けられませんからね。
この商会でもこう言った商談をするのに明かりが必要な場所以外は無いと思いますよ
そういった意味ではトーヤ君の考えたあの光を発する魔道具が流通すればいつでも明かりのあるとこで居られますね」
ニーナの説明でガラスの希少価値が相当高い物だと知りガラスか何か透過する物質があれば良いのになと考えていていると
コンコンとノックが響き
「失礼いたしますお客様」
と口ひげを生やし落ち着いたビロード調の服に身を包んだ社長然とした男性が入ってきた。
「この度はお運び頂き誠にありがとうございます、当商会を預かります ザイード・ギムベルグと申します」と丁寧なあいさつに
「これは、商会長自ら恐れ入ります、
私、冒険者ギルドサービスマネージャーのニーナ・スコワールド、
こちらが本日のお客様 A級冒険者 トモヤ・ツカダ様ですよろしくお願いいたします」
と再び知矢を紹介する。
「ご紹介に預かりました 知矢・塚田です、商会長自らありがとうございます、若輩者ですがよろしくお願いいたします」
と儀礼を正したあいさつをすると
ホウ!と聞こえそうな顔を一瞬したと思ったら再びにこやかな笑みを浮かべ
「これはご丁寧にありがとうございますお客様」
「どうぞ、トーヤと呼んでください商会長」と返すと
「ありがとうございますトーヤ様、私めはザイードと呼び捨てで結構です、どうぞよろしくお願いいたします」
奴隷証の商会長とは言え商人のザイードは一瞬で知矢の持つ若者に無い何かを感じ取り丁寧な対応を尽くすのだった。
「ではザイードさん、私は見た通りの若い単なる冒険者です、トーヤと呼び捨てでお願いします」
知矢からするとまだまだ若く見える商会長だが転移して
”若返った自分の立場をわきまえんとな”
と思い出したように考えてのことだ。
「はい、ありがとうございますトーヤさん、そちらのお嬢様、ニーナ様は冒険者ギルドでのお噂はいつも聞き及んでおります」
「ザイード様、私めもニーナで結構です、私はこちらのトーヤ様を案内して来ただけですので」
”えっ”?どんな噂??”とでも思ったニーナが慌てて返す。
その様子に当然の反応だよなと少しニーナにホッとした商会長であった。
「ではニーナさんトーヤさんをお連れ頂きありがとうございます、
で、本日のご希望などを早速ではございますがお伺いいたしたく存じます」
とあくまでも丁寧なザイードなので知矢も併せる事にした。
「はい、実は急な思い付きでもあるのですが今度小さな商売というか物品の販売を始めようと思いまして、それに合わせて準備的な作業の出来る者と店を任せる店長、そして店番や裏方もこなしてもらえ店の者の衣食住に手を貸す者等を求めたいと」
知矢はこの計画を以前から考えていたわけではない。
唐突に訪れた豊富な資金の活用、市民への還流、出来ればその還流先を貧しい者や貧困にあえぐもの中でやる気とくすぶる能力を生かせる場所、
その機会を提供する事が出来、そういった事業の中で自らも利を得ているように見せかけられれば自由な立場でのんびりとした生活ができるのではないかと考えたのであった。
もちろん、当面は都市に大きな話題を振りまき今置かれた立場を霞められればと言うのが第一の目標である。
その為、店はしっかり人を配しきちんとした商売をする段取りを考えていた。
・商売の表立った責任者を立てて知矢は姿を見せない
・会計や接客の知識を持つ者を得、他の者も教育出来る者
・少々の工作、加工ができる者
・魔力を有する者
・料理、清掃、片付けがしっかりでき他の者に衛生感覚を指導できる者
・店の治安維持を担えるもの
おおよそ上記の事が出来る者を10名前後は必要と考えていた。
商売が上手く行けば人数や店を大きくすることも考えるがいきなり大商いをする気は無く最初の目標は噂が噂を呼び人が興味を持つが値段の問題では無く数が流通できない限定品での商売でスタートさせる予定だ。
金や権力に物を言わせて強引に買い取ろうとしたり妨害が入る事も懸念し最初から用心棒的な者を配しに目を光らせるつもりだ。
もし手に負えないような時は”雇われた名もなき冒険者”として知矢が出ればよいだろうと考えていた。
以上のような条件をザイードへ伝え見合った”奴隷”を購入する事が出来るか率直に聞いてみたのだった。
黙って知矢の話を聞いていたザイードは「なるほど...」と少し考え込む様子だった。
少しの間を置き
「トーヤさん、只今お聞きした条件ですと店の全てを奴隷に任せて商売をさせると言う事になりますが、そういったすべて奴隷だけでの運営と言うものの前例が無くいかなる人選をしたものかと考えあぐねまして...」と言葉を濁す。
知矢の隣で話を聞いていたニーナも同様の考えの様で知矢の反応を窺っている。
「ザイードさんの懸念がどこにあるのか、正直私はこの都市での奴隷について実は先日知ったばかりで詳しくないものですからそういった所で互いの感覚の相違、齟齬があるのかもしれません。」
知矢はザイードに奴隷制度や在り方の詳細説明を求めたのだった。
ザイードの説明は以下の様だ
・奴隷の管理は帝国内務省麾下にて行っている
・奴隷商へ下げ渡される(販売)された金は被害者や遺族、賠償先へ渡される
・罪状により拘束期間が存在する
・拘束期間は金銭に換算され支払われる給料が充当される
・販売された奴隷は魔法契約により縛られ主となった者の命令は絶対であるがやる気が無い者が多いがそこまで魔法契約の命令有効ではない
・ただし主となった者の指定する秘密など口外禁止や敵対禁止は厳格に守られる
・奴隷を購入し主となっても暴力的な支配は禁止されている。(重い罰則もあり)
・商売で店を任せられる様な者が奴隷になる事が少ない
・店の全てが奴隷だと知られると客が敬遠するかもしれない
以上の様な内容を簡単に説明した。
静かに聞き入っていた知矢は問題ないので奴隷を見せていただきたいと伝えた。
そこまで言うならばと多少諦めを含め頷いたザイードは配下の者を呼び今いる奴隷を順に連れてくるように言った。
「それと先ほどは触れませんでしたが中には一家、家族で奴隷に落ちた者や夫婦、恋人、仲間等グループも存在します、この者を分けて個別に購入する事も可能ですが出来る事ならグループ単位がよろしいかと」
とザイードは知矢に何故だかわかるかと問いかけているように聞こえた。
「やる気、モチベーションの問題ですね、まあ纏めて使用する事の懸念もあるでしょうが家族や恋人などは特に分けて購入した時よりまとめた方の利点があると言う事ですね」
との回答にザイードは黙って頭を下げ ”やはり見た目の若さに囚われない方が良さそうだ”と確信するのであった。
暫くすると配下に連れられた販売候補の者達が10名ずつ入室し知矢とニーナの前に並べられ順に名前と罪名、拘束期間、前職、特技、特異な能力、魔力の有無などが一人ひとり告げられた。
多くの奴隷は若い冒険者である知矢が買い主だとわかるとあまり好意的な目を向けなかったが逆に手玉にとれそうだとアピールをしてくる者もいた。
知矢は黙って話を聞き、手にした紙の束に”これ”と思った者がいればメモをしていった。
もちろん話や印象では無く”鑑定”に表示されている事をもとにしてだ。
特に文中に記載していないと思いますが
この話の中では”紙”に関して特別希少性や生産の困難さ、高価格という設定にはしておりません。
ですから普通にメモ用紙として登場させております。
念のため。
では次話もよろしくお願いいたします




