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老齢オヤジが死んだけど異世界でゆっくり老後をおくりたい~チートに大金ゆっくり老後、あれ俺若返ってるけど?  作者: 通りすがりの浪人者


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第228話 旅立ちを前に~「くっそ何か気が付いたか?妨害するか!」

ハイ数日開きましたが更新いたします。

では第228話 どうぞ




 

 空気が僅かな湿り気を帯び吹く風は温かく草原に芽生える新たな芽を撫でる様に走る。

 ここ異世界でも季節は冬から春へと確実に移り変わっていた。


 知矢はそんな季節の変化を明確に感じながら


 (また春が来た。もう数か月も過ぎるとわしがこの世界へ来てから三年になるのだな)


 と昔を懐かしむように記憶の中から日本での生活や家族の事、風景を思い浮かべるのだった。


 知矢は望郷の念(ノスタルジック)を感じていたが不思議と(元の世界へ帰りたい)とまでは思わなかった。

 確かに残された妻や孫の事を思い出すたびに寂しさを湧き起こさせることはあった。しかし50歳を過ぎ自身の父親の葬儀を経た時。


 『ちょっと待て、俺って後何年生きていられるんだ?』

 と言う考えが浮かんだ。


 それまでの人生、確かに”死”を感じるような危険な場面も幾度かあった。しかし自身の残された生のカウントダウンまで考えたことは無かった。


 父親の死、そして思い出される祖父の死。父は90歳、祖父は85歳でなくなっている。そこから考えると知矢は老衰で死ぬとすればあと生きて30年から40年。その中で元気にやりたいことをやれる年数は・・・。

 そう考えた時


 『生きているうちにやりたい事をやってやる!』


 そう心に決め行動へ移した。それには妻も同意し互いに仕事や子育てばかりのこの数十年を取り戻すかの様に色々と計画して実行したのである。

 そのおかげなのかは解らないが粗方やりたいことをしていたおかげで後はこの異世界で【のんびりと老後】を送るか、という境地に至ったのかもしれない。




 因みに余談であるがある年の秋、知矢は宣言する


 『今年の正月旅行はグアムだ!』


 家族は何を言い出したかと唖然とした。何故ならば知矢は大の外国嫌い、という訳ではないが毎日コメとみそ汁がないと生きていけないタイプの日本人であったからだ。

 その事を公言し知矢以外の妻や子供たちが海外旅行へ行ったとしても決して同行する事は無かったのである。


 「あなた何が起こったの、大丈夫?」


 「父さん、おかしくなったんじゃ」


 等とまるで天変地異の様に驚かれたが、そこで知矢の一言。


 「俺は銃が撃ちたい!」


 「「はあっ?」」



 知矢はやりたいことリストにあった銃、しかもライフルや自動小銃などの大型銃を撃ちたい衝動にかられたのである。


 調べてみると確かに()()()等でも観光客相手の室内射撃場はあったがそんなそんな観光客向けのリサイクル・ハーフ・パウダー (薬きょうを再利用して発射薬を減らした弾)ではなくフルロード弾、しかも屋外射撃場で思う存分撃ってみたいとネットをめぐって見つけたのがグアム郊外の国立公園内にあった射撃場である。


 結局知矢の要望通り家族でグアムの年越し。しかも新年一日朝一番から射撃場へレンタカーを借りて乗り込む力の入れよう。

 いったい何発、何種類のハンドガンや自動小銃、ライフル銃そして小型マシンガンを撃った事か。終いには手や体が痺れて力の入らなくなるまで撃った知矢は満足してその後の観光などはどうでもよくなっていた。


 ただし、弾丸長120mm程の対物ライフルだけは歳を考慮し自重(じちょう)して撃たなかった。代わりに息子が撃っているのを見守っていたのだが。 知矢曰『たぶん鎖骨が折れる』と残念そうであった。



 閑話休題






 しかし異世界へ転移した直後から色々な騒ぎや事件に巻き込まれ商売や冒険者としての活動など種々彩々の出来事の中でふと


 『ゆっくりと旅に出たい』


 そう思い出す様に考えが浮かんだのであった。




**********************



 知矢は屋敷の自室にある大テーブルに地図と紙を広げ色々書きこんでいる。

 その傍らではまるで地図を詳しく読み解く様にG・(ゴールデン)D・(デス)S(スパイダー)の従魔ピョンピョンが忙しそうに右へ左へと視線を巡らす。

 片やもう一人の従魔であるフェンリルの上位種フェリシアは珍しく知矢の向かい側のソファーへ腰を下ろし静かに紅茶を飲んでいる。

 フェリシアは従来、知矢の護衛を自任し傍らでいつ何があっても対応できるように立番の様に控えていた。


しかし最近知矢から

「どうもな傍でじっと立たれているのもこっちが気になって仕方がない。傍に控えるのは構わんがピョンピョンの様に自由に気楽にいてくれると良いのだが」


 そう言う主よりの要望を素直に受け入れそれ以来一見自由に過ごしている。

 しかし実際はそう装いながら常に警戒をしているのであったが。



 そしてその隣には昼間から酒を飲んでいるニャアラスとそしてカーネタリアの姿もありボンタも控えていたが流石に彼は飲酒はしていなかった。


 「ピョンピョンは地図が読めるのかニャ」


 『・・・(人族の文字と言うのは読めません、けれど場所を聞きながら覚えてまーす)』

 と念話で応える内容を知矢が伝える。


 「ヒョッヒョヒョ文字を理解せずとも絵で地形や場所を知りえるとはG・(ゴールデン)D・(デス)S(スパイダー)とは凄いのう」


 「ええ、この子が特に優秀なのかもしれませんが以前ベフィモス討伐の時に出会った個体もかなり状況把握や対応を協議する能力なども高く優秀でした。そのうちに文字も覚えそうですから大したものです」

 そう言いながら知矢は従魔を指先でなでると嬉しそうに知矢の指へ絡まって来るのであった。


 「地図を読めるなら下手な従人族より利口だニャ。犬族なんか地図はおろか地形も覚えないニャ。あいつらいつも『臭いさえわかれば問題ない』って言ってるニャ」

 そんな事を話しながらも知矢は色々集めた情報を目も書きにしそれを元に地図へと何かをかいていた。


 「トーヤ、いつ旅出でるニャ」


 「まだはっきりしたことは決めてはいないがそう遠くない時期、そうだなこの月内には出発しても良いかな。粗方やるべきことはやったはずだし。カーネタリア様は如何ですか」


 「ヒョッヒョッヒョわしは何の用もないジジイじゃて、トーヤ君の都合に合わせるわい」

 そう言いながら何か楽しそうにしわくちゃの笑顔を見せるのであった。




 知矢は皆で訪れた食堂の席で



 「――カーネタリア様、この地図を見てください。そして宜しければ一緒に旅に出ませんか」

 そうその場の勢いで思い付き、老人を旅へ誘った。


 「えっ兄貴旅へ出るんすか!もうラグーンには戻らないんすか!」

 脇でニャアラスとふざけ合っていたボンタが知矢の話をも耳して慌てる。


 「おみゃあ馬鹿だニャ。旅に出るって言ってるだけだニャ。帰って来るに決まってるニャ」


 「ああニャアラスの言う通りだ。別にこの都市を出て引っ越す訳じゃない。のんびりと魔馬車に揺られあっちの村、こっちの都市、あそこの渓谷や湖なんかを気ままに見て回りたいだけだ。まあ数か月かかるかもしれんがな。

 如何ですかカーネタリア様。突然な話なので困惑なさるでしょうからまだ先の話ですので考えておいてください」

 知矢はつい勢いで口走ったがこの老人も旅を好むのではないかと思い最近は都市や近郊で過ごす事が多かった事から旅心が湧くのではないかと思ったのだ。


 「ヒョッヒョッヒョ、旅か。旅は良いのう、どれトーヤ君と旅に出ようかの」

 老人はほぼ即答で嬉しそうに応えるのであったが。






 「ニャア、それじゃあ俺もそのつもりで準備しとくニャ」

 とニャアラスも答える。


 「えっ?お前も来るのか、いつそんな話になった。俺は初耳なんだが」

 ニャアラスの答えに驚いた知矢はメモ書きから顔を上げると唖然とした顔を見せる。


 「ニャハハハッ。トーヤと一緒なら面白そうだニャ。俺も数年前に故郷へ行って以来旅と言う旅なんか暫くぶりだニャ。大丈夫ニャ魔馬でも船でも何でも任せろだニャ」

 ニャアラスはすっかりその気で旅先でも船頭を務めてくれる様子だ。


 「ニャアラスの旦那が行くんじゃあっしも行きます!兄貴連れて行ってくださいよ!」

 ニャアラスの同行を知ったボンタも知矢へと自身の同行を願い出るのであった。


 「まてまてまて、お前ら旅に付いてくるって言っているが仕事はどうするんだ。特にニャアラス、お前は子供たちの教育プログラムが始まったばかりじゃないか。そっちはどうするんだ。一度出かけたら数か月は戻れないぞ」


 「問題ないニャ。俺が勉強教える訳じゃなから大丈夫ニャ。それに旅先でもきっと魔物に出くわすニャ。それを狩れば金にもなるし」


 「そうは言ってもな。おいボンタお前はダメだぞ」

 ニャアラスの返答に苦笑する知矢


 「何でですか兄貴!あっしもお供しますよ。兄貴やカーネタリア様の身の回りのお世話もしますから連れて行ってくださいっす」

 必死にすがるボンタであるが知矢の考えは決まっていた。


 「お前にはすでに仕事を言いつけてあっただろう。低ランクや新人冒険者の指導って言う重要な任を。お前の指導する奴らも決まっているんだお前が抜けると計画が狂う。ここは我慢しろ」



 知矢が新たに考え出した【冒険者育成会】。その事業は未だ手探りのような状態である。しかし使用人の中で冒険者歴も長く知矢の警備責任者を務めるサンドスを実務の責任者に据え計画が動き出した。


 もうすでにコルサミルとミサエラという新人冒険者とその他にも若い冒険者が数名が基礎研修という絵や図を使った育成が始まりそろそろ実践研修も予定されていた。その実践研修のなかで実際にチームを組んで依頼を受けながら学ぶ指導員に知矢はボンタを指名しているのであった。



 知矢は以前ボンタへ



 『FやEランクの冒険者を対象にギルドのサポートとは別に将来的に冒険者を育成する学びの場を作ろうかと思ってな。その言わば実験みたいな感じでお前を講師にほら今雇っている冒険者たちがいるだろう。彼らをお前が率いてパーティーリーダーとして依頼をこなしながら育成をするって言うのはどうだ。

 お前にしか体験できなかった事。こんなふうにしたら失敗する。これが出来なくて諦めたからこうなった。それは実際体験して苦境に立たされた者でしか言えない貴重な事だ。それを含めお前もそう二度と繰り返さない様に指導しながら一緒に学ぶんだ』



 そう伝え知矢の元でただ言われた役目をこなす事で得ている収入と言う立場から、他の者を指導しながら自身も新たに学びながら再度【冒険者】として出直す切っ掛けをつかませようと考えた。


 「っそっすけど・・・・兄貴と旅に出る機会なんてもう無いんじゃ・・・」

 与えられた仕事を思い出したものの知矢へ同行したい気持ちが捨てきれないボンタである。


 「おみゃあを連れて行っても足手まといだニャ。留守番してるニャ」


 「ニャアラスの旦那そりゃあ無いっすよ!あっしも・・・あっしも・・・」


 「ニャアラスよさないか。ボンタ、お前には責任のある重要な仕事を託したつもりだ。今後、そして未来にもつながる重要な任だ。今回は諦めろ。それに俺は戻って来ても多分またどっか別のところへ旅に出るだろう。次の機会を待て」

 そう言い含める知矢であった。




 「ニャらトーヤとカーネタリア様それにピョンピョンにフェリシアで5人だニャ。ミャ、アマジック・バックもあるしピョンピョンは場所を取らないからニャ小型の魔馬車で十分かニャ」

 そう旅の準備を思い描き計算するニャアラス。

 知矢の従魔ピョンピョンは片手?を上げて応える。


 「いやすまないがもう二人増える。魔馬車は中型の2頭立てを借りる事にするよ」

 知矢が事情を話し始める。



**********************



 「えっ知矢様が旅にお出かけになる。しかも数か月でございますか」

 知矢から話を聞いたリラレットは驚きの声を上げた。


 「ああ、まあ物見雄山(ものみゆうざん)であって今回は依頼なども無いからな気楽な旅だ。屋敷と店の運営はリラレットに任せるので皆と相談して進めてくれ。

 勿論(もちろん)魔道具の【魔法貼り付け】の道具は予備も含めて多めに作って置いていくし金銭に関しても多めに渡しておくから心配しないでくれ」


 知矢は大きな問題も無いであろうと告げた。


 「・・・でございますか。知矢様のお考えですので致し方ございません。では同行する使用人の選抜を行います。少ないかもしれませんが身の回りのお世話と護衛で8名から10名ほど選抜致します。それに併せ旅のお仕度をいたしますので少々お時間を頂戴いたしたく・・・」

 リラレットは(あるじ)が仕事ではなく楽しみで行くと言うのを反対する訳にもいかず致し方なく準備を進める旨を述べた。



 「待て待て、使用人は同行させなくても良いぞ。護衛もいらないだろう。何と言っても俺も一応曲がりなりにもAランク冒険者だ。それにカーネタリア様などSランクの冒険者だぞ。しかもピョンピョンとフェリシアがいるんだぞ。下手しなくてもどう考えても戦力過剰な程だ。

 それに身の回りの世話も不要だ。魔馬車で移動してマジック・バックから必要な道具を出して、そんな気軽な旅だしな。

 それに使用人たちが慣れない長旅に出て体調でも悪くしたら大変だ」

 知矢はリラレットの好意を押しとどめた。


 「しかしそれでは・・・・」

 だがリラレットも護衛に関しては納得をしたが主の世話をするのが使用人の務めとそちらは譲らない。


 結局サーヤも交え意見を交わし知矢も折れて使用人を二人同行させることとなった。

 今はその同行する使用人の選抜をリラレットたちが行っている最中である。同時に料理担当の者たちが思考を巡らせ三度三度の食事を大量に作り上げてマジックバックへ収納する事を実施している。


 併せて専用のマジック・バックを用意し一瞬で大きなテントや天幕が設置できる様に組み立て済の設備を試行錯誤(しこうさくご)の上準備していた。


 知矢は

 (過保護にも程があるであろう)と少々呆れていたが使用人たちの好意からであると諦めていた。



 しかしこのテント類は見た知矢も感心するほどよく考えられたシステマチックな物であった。


 テント自体は骨組みを作り薄いシート状の布などをかけて固定してあるのでそれ事収納するだけであるが驚いたのは天幕の方である。


 底に木の板で床を作り中心に柱を立て放射状に丈夫な革紐が渡されその先はそれぞれ8本の柱へ固定されていた。そしてその紐と柱に大きな布を固定して完成。しかも中にはすでに調理出しや流し、竈やテーブルに椅子などの備品を設置済み。本当にただ出すだけで使用可能な物であった。しかも天幕には跳ね上げ式の庇が各所に有り跳ね上げれば風を通し降ろせば日差しや寒さを通さぬよう工夫を凝らしてある。


 さらに天幕は複数種類があり【くつろぎ用】【トイレ用】【風呂用】【用具保管用】【予備用】と至れり尽くせりである。


 よく聞くとテントも人数分以上に複数ありの中には既にベットが備わっているそうだ。


 そんな快適装備を幾多もマジック・バックへ収納しての豪華旅であるがそれを運用する役や洗濯なども含めリラレットは使用人の同行を必死に求めたのであった。



**********************



 「・・・ニャアトーヤ」

 ニャアラスは少し呆れたような顔を向ける。


 「言いたい事は解っている。これもみんなの気持ちだと言われれば無下にも出来ないだろう」


 「ミャハハハ、まあ良いか貴族並、いや貴族以上の豪華なゆったり旅を俺も味あわせてくれニャ」

 ニャアラスはそう言ったがどう考えても帝国皇帝でもここまでの豪華で備わった旅は出来ないであろうと思う知矢であった。




 実際この規模で長い旅を皇帝が行えばその随行員は万にも及ぶであろう。しかし昔からマジック・バックは存在していたの皇帝であればでかなりの荷をそれに収容する事は可能であった。しかし時間経過が無い物はほとんど存在せず容量も小さいのが一般的だ。もし帝国政府が知矢の魔道具商店からマジックバックを購入していたとすれば皇帝行幸が革新的に変わるであろう。




 「で、トーヤはさっきからいろいろ書き込んでいるけど何を書いてるニャ」

 ニャアラスは今度は知矢が地図や紙に真剣に何かを書き込んでいる内容へ気を向けた。


 「ああこれか。いや大した内容ではない。どの道を通ろうかとかその街道にはどんな村や町があるか、特産品や珍しい物美味しい食べ物が無いか。昔の遺跡や景色の良さそうな場所はどこかなとか大きな湖や川の位置も確認しているんだ」


 知矢は最近知った【文書館】へその後も足繁(あしげ)く通い可能な限りで各地の情報を集めていた。しかし知矢が転移前に住んでいた日本の様に旅や各地の情報を専門に乗せている雑誌や専門書などあるわけもなく得られたのは本街道、主街道、脇街道、そして街の名や村の名、地方の名称などである。農作物の書物でその地方の特産などを見る事は出来たがそれ程種類があるようには見えなかった。


 しかしその中でも気になる場所をチェックしそして地図から地形を読み取り時に主街道を外れて寄り道をしようか等と各所へ書き込みをしていた。


 以前も書いたがこういった行為は知矢が転移前にツーリングを始めとして旅行に出る前に必ず行っていた事である。


 中には全く情報も無いのが本当に自由な旅のスタイルであると言う者もいるかもしれないがこれが知矢のスタイルである。




 「ヒョッヒョッヒョ、トーヤ君といると旅まで豪華で行先も確実じゃな」


 「カーネタリア様の旅はどうだったニャ」


 「わしか。わしの旅などそれこそその日暮らしじゃ。何をするか何処に行くか何を食べるか全く何も考えとらんかったからのヒョッヒョッヒョそう考えるとまたくもって長い事、無駄な時間を旅して来たのかの」


 そう老人は笑いながら語る。しかしその実は魔法の真理。(まことの)(ことわり)を追い求め追及する旅でもあった。


 自分はどこまで魔法の高みを見ることが出来るのか。それはいったいどの様な物なのか。終着点はあるのか。そう言った事を四六時中考え己を鍛え時に魔物や魔獣の生態を観察しながら研究をし時に魔物と戦う事で得られる経験にも真理を追い求める。

 そんな数十年であった。


 それでも満足する事は今もって無い。もしかしたらそんなものは無いのかもしれないと思い始めていた時に大森林の傍らで出会った若者、知矢とニャアラスの行動に興味を覚えて付いてきたのであった。


 勿論カーネタリアは知矢がただの若者ではない事を【鑑定】で知り得ていたが逆に自分には決して手の届かいない物を持つこの若者であれば自分の無しえなかった真理、見る事の出来なかった物を見せてくれるのではないか。

 そう考えた時、自身の残された短い人生をこの若者たちと行動を共にするのは実に面白く興味深い。そう強く考えて今に至るのであった。



 「まあこんなものを書き込んでますが実際は全く未定です。確かに【大工業集約都市バスランド】へ行き工業都市とはどんなものかどんな製品や技術があるのかは見てみたいですね。そしてその先にある【トゥーラス山脈】、ここはまだ漠然としていますが恐らくは山々や北の大森林周辺を巡ってみる。決まっているのはこの二点だけです。

 一度ラグーンを出たらそれこそ行き当たりばったりですから何週間、ひょっとすると数か月はかかるでしょうね。ニャアラスそれでも付いてくるのか」


 「問題ニャイニャイ。楽しみが増えるだけニャ」

 そう気楽に応えるのであった。



 ニャアラスが楽しみと言うが実際この世界は旅と言う行為は観光旅行では決してない。必要に迫られた行為でありそれは危険と過酷な死をも予見させられる行為である。


 都市や国を渡り歩く者は商人か冒険者がそのほとんどを占める。それ以外で旅をする者はいない。

 一般の市民は近隣の都市や村へ行くことさえ殆どない。理由は第一に危険であるからだ。戦闘能力を有していない者にとって防壁に守られた居住地から外へ出ると言うのはいつ死ぬかもわからない。魔物や魔獣に襲われる。山賊や追剥に襲われる。そんな危険な事を不必要に実行する者はいない。


 第二に旅をする必要が無い。用が無いのであるからすること自体を考えない。勿論旅の商人や冒険者から聞く話。又は旅の吟遊詩人などが語る物語にあこがれ時に未知の場所、世界への夢踊らされることを心に宿す者は少なからずいる。しかしそう言った者の中で冒険者などになった者以外は夢の行為でもある。


 そう言った事から知矢が『物見雄山の旅』といっても使用人たちにとってはとても考えられぬ事であった。






 「――そう、じゃあもう何日も経たないうちに出発するのね。気を付けて行ってきてくださいね」

 ラグーン冒険者ギルドのニーナを訪れた知矢は何か新たな情報でもないかと尋ねるが特にそれは得ることが出来なかった。


 「ええありがとうございます。何か旅先で面白い物があったらお土産に買ってきます。まあ、あまり期待はしないで待っていて下さい」


 「そんな気を使わなくて結構ですよ。ですが帰ってきたら旅の話をたくさん聞かせてくださいね」

 ニーナは実のところ知矢の旅へ一緒に連れて行って欲しい、そんな言葉を思い浮かべながらも飲み込むのであった。


 「ハイたっぷりとお聞かせします。そうそうそれとお願いがあるのですが」

 知矢は自分たちが留守の間の店や屋敷、そして使用人たちの事を気に留めて欲しいことや何かあったら相談に乗ってほしいと願った。


 「はいお任せください。ですが知矢さんの使用人の皆さんはしっかりしている方が揃っていますから大丈夫ですよ」

 それでも知矢はたまに泊って行ってリラレットやサーヤの相談相手になってほしいと願うのであった。




 「オイ、トーヤ!」


 そんな話をしていると冒険者ギルド長のガインが知矢へ声をかけて来た。


 「こりゃあギルド長様、先日はミサエラの為に色々とお手間をかけまして、ありがとうございました。おかげ様で彼女達も晴れて冒険者として活動に精励(せいれい)出来る事でしょう」


 知矢は白々しくも恭しく礼を述べる。確かにミサエラ達は先日の精霊魂石よりの精霊解放の儀を受け今や注目の冒険者であった。また二人が若い女性と言う点も併せて話題である。しかしその裏で知矢がミサエラとコルサミルに内々の助言を行い要らぬ依頼への誘いやチームへの勧誘から距離を置かせ現在は知矢の【冒険者育成会】での基礎教育を開始させたところだ。



 「フン、まあ良い。こちらとしても新たなそして力の持つ冒険者は大歓迎だ。だがなお前の方は暫く姿を消すそうじゃないか。お前にやってもらう予定の指名依頼をどうするんだよ、ったく」


 ガインは知矢の言い様を鼻白んだが代わりに知矢が都市を留守にする件へ絡んできた。しかしガインはミサエラ達二人が知矢の基でそう言った基礎教育を受けている事を知っていたがそれが彼女たちの為になると思い敢えて何も触れてはいない。しかもその【冒険者育成会】の意義と可能性も驚きをもったが敢えて傍観するところはガインもただの元Aランク冒険者ではなく貴族位を持つ考え方は為政者に近いせいかもしれない。



 「はてそんな予定は聞いてませんがね。それにそもそも私の様な青二才ではなく昨今のラグーンや周辺都市には多くの高位ランク冒険者が集まっているじゃないですか。そんな難しいお仕事であれば私ではなくどうぞ先輩諸氏(せんぱいしょし)へ願ってください」

 知矢は素知らぬ顔でそう言い放つ。


 しかし事実今、魔鉱石発見に始まる一連の好景気に沸くこの商業中核都市ラグーンを始めとする近隣衛星都市も含め冒険者達への依頼があふれるばかりの状態である。下はFランクからC,Bの高位ランクに至るまで忙しく嬉しい悲鳴をあげていた。


 そんな中、Aランク冒険者たちはそれ程忙しいという事も無い。配下に多くの冒険者を抱えるクラウンを運営しているグループ等もトップにいる者たちは同様である。

 それは何故か、各種依頼に精通し依頼達成率も高いAランク冒険者であったがその頼金額も高い為それなりの案件でなければ動くことは少ない。

 もっともそこまで上り詰めた冒険者は金銭的な要件で一般の依頼を受ける事も少ないのが実際だ。それよりも配下の冒険者たちを育て自らのグループの増強を第一にしている事も多い。

 そんな訳でガインの頭にあるようないわゆる面倒な依頼を好んで引き受ける高位冒険者はいないのであった。もっとも状況がもっと切迫する危険性のあった場合は緊急依頼や強制指名依頼などいくらでも手はあるはずだ。そう言った手を使わないと言事はそれ程急ぎの要件でもないだろうと知矢は判断した。

 


 「ったく、何でお前たち高位冒険者ってのは偏屈で自分勝手な奴ばかりなんだ」

 どうやらギルド長もAランク冒険者を簡単に御し得る事は出来ない様子だ。『そりゃあ面白い』と言う興味を引く案件のみを好む様なやつらばかりなのであるから。


 「どうやらギルド長は自分が()A()()()()()()()であった事をお忘れの様ですな」

 失笑する知矢はガインの現役時代を指摘する。


 「ふっ、馬鹿言え俺はまっとうな冒険者だったわ。

 それよりお前、旅の本当の狙いは何だ。【大工業集約都市バスランド】に何があると考えている。あそこはお前なんかが近づいても楽しい事なんかないはずだぞ」

 突然ガインは知矢の行き先に話題を変じて来た。



 「妙な事を言い出すな、何を言っている。俺は別に工業都市を目的地にした覚えはない、どちらかと言えば通過点であり目的地ではないぜ。何を勘ぐっているか知らんが妙な言いがかりは寄せ」

 (何か妙だのう、こ奴何を隠している。わしがバスランドへ近寄るのを嫌がっておるやに感じるが)


 「なっ、本当だろうな。お前みたいなお騒がせ野郎が工業都市で騒ぎを起こされちゃ叶わんからな。通り道と言うだけなら近くの衛星都市に休暇村がある。温泉もあるからカーネタリア様にも喜ばれるだろう。そっちにしておけ。ともかく余計な騒ぎは起こすなよ」

 そう言いたい事だけ言いくぎを刺すとガインはニーナに衛星都市「フィーリン」の位置を教えておけといって足早に去っていった。



 「・・・何なんでしょう?」

 去っていったガインの背を見ながら知矢は呟く。


 「何かいつものギルド長らしくありませんでしたね」

 どうやら知矢の感じた違和感はニーナも同様の様である。


 「バスランドって単なる工業都市ではないのですか。何か秘密を持つような重要施設があるとかもしくは俺みたいな冒険者が近づくような場所ではないとかっていう」


 「いえ、特にそう言った場所では・・・ああ成程!」

 否定しようとしたニーナであったが突如何かを思い出した様に笑みを浮かべた。


 「えっ、いったい何ですか。ニーナさんも何だか妙だな。いつもの聡明な笑顔ではなく何かいたずら小僧の様な悪い笑顔ですよ」

 


 「あら、私そんな悪い顔をしていましたかふふふっ」


 「ほらやっぱりどこかいつもと違う様子ですよ。いったい何が成程何ですか、教えてください」


 「どうしましょうね~。ではこうしましょう」

 そう言うとニーナは知矢から背を向けると後ろのデスクで何かを紙に書き出した。直ぐになおると、


 「はいトーヤ君、これをお持ちください」

 ニーナは封をした便箋を手渡した。


 訝しみながら受け取り封を開けようと帯同している腰の日本刀から手裏剣を抜こうとすると


 「あっ今はダメです。それはバスランドに着いてから、そうですね、バスランドの大門(メインゲート)を入った時にでも開けてみてください。もしかしたらちょっとだけ面白い、ひょっとしたらちょっとだけ興味を引く事が書いてあるかもしれませんよ」

 そう茶目っ気たっぷりの表情で告げた。


 「・・・何か嫌な予感がしますね。まあニーナさんの事は全幅の信頼を置いてますから悪い事にはなりそうにありませんでしょうけど」

 そんな知矢の言葉にもニーナは笑顔で答えるだけであった。








 いよいよ知矢がカーネタリア達を同道し旅に出る前の夕刻。

 知矢は店や屋敷に雇用している全ての使用人たちを屋敷で一番広い玄関ホールへ集めた。




 「皆忙しい中、態々集まってもらって感謝する。俺は明日からしばらくの間この都市を出て方々を旅してまわる予定なのは周知の事だな。留守の間、皆で協力して店とこの屋敷を守ってほしい。何かあった場合は筆頭支配人のリラレットそして支配人に昇格したワイズマンと相談して上手くやっていくことを願う」



 知矢は旅に出るにあたりワイズマンを支配人として任命した。これは以前から決まっていた事であったが知矢が留守をするにあたり魔道具商店と屋敷双方を同時にリラレット一人に監督させる体制からリラレットを総支配人から筆頭支配人とし全体の統括と屋敷の家令の任に宛てる事とし、魔道具商店の責任者にワイズマンを支配人に据えて任せる事としたのであった。


 「リラレット、ワイズマン頼んだぞ」


 「「ハイ!お任せください」」

 一歩前に出た二人はしっかりと応えるのであった。



 「そして全体の警備主任は引き続きサンドスに頼む。副主任ミレ、君もサンドスを補佐してやってくれ」


 「「ハイ!」」

 屈強な元冒険者サンドスと猫獣人族の元冒険者ミレが同様に一歩出て頭を下げて応えた。




 「さて、こうして忙しい皆を集めたのは他にも話がある。これから名前を呼ばれた者は前に出てくれ」

 知矢はそう言うと全体を睥睨し空で名前を呼んだ。


 「サンドス」 「ハイ」


 「ギム」   「ハイ」


 「ミレ」   「ハイ」


 「サーシャ」 「ハイ」


 「コレット」 「ハイ」


 「ワイズマン」「ハイ」


 「リラレット」「ハイ」


 「マイ」   「ハイ」


 「マク」   「ハイ」


 「ミミ」   「ハイ」


 「ワオン」  「ハイ」


 「ティレット」「ハイ」


 「モネ」   「ハイ」


 「イーシャ」 「ハイ」


 「マレル」  「ハイ」


 「アンドウ」 「ハーイ」


 「ゼンゾウ」 「ハーイ」


 「シンゾウ」 「ハーイ」


 「ガンゾウ」 「ハーイ」


 「ノブヒコ」 「ハイ」


 「イエヒコ」 「ハイ」


 「アヤメ」  「ハッ」


 「ササスケ」 「ヘイ」


 「ミホ」   「ハイ」


 「アカネ」  「ハッ!」


 知矢に呼ばれた19名はサーヤを除き初期に知矢が奴隷取引商会を通じて購入した奴隷たちである。


 知矢の前に居並んだ全員を見渡しながら知矢は告げる。


 「ここに並んだ皆は魔道具商店立ち上げの頃から苦楽を共にしてきた者達だ。ろくな方針も決まっていない行き当たりばったりで始めた商売であったがここまで来たのは勿論ここにいる全員のおかげであるが何より君たちが相談しながら苦慮を重ね工夫を凝らし力を合わせ出来上がった基礎があるからである。俺は本当に感謝をしている。ありがとう」

 そう言うと知矢は19名に腰を折り深々と頭を下げた。


 「知矢様、どうぞ顔を上げくださいませ。

 私たちの方こそ明日がどうなるかわからぬ奴隷の身を知矢様にお救いいただいた者ばかりでございます。こちらこそ最上位の待遇を持って遇していただき更には生きる糧をお与えいただきまして感謝の言葉もございません」

 そう言うとリラレットは床に頭が付くかの如く腰を折り礼をもべるのであった。他の18名も同様に口々に感謝の言葉を述べ頭を下げる。



 「どうか頭を上げて欲しい」

 知矢の言葉に顔を見せるがその目はみな光る物を一応にたわわに見せていた。


 「皆の気持ちは十分に受け取った。俺はこの都市に来てよかったな。幸せだ・・・・・」

 知矢もこみ上げる物があったがぐっとこらえて言葉を続けた。


 「さてすまん続ける。そこでこの19名は本日をもって奴隷待遇を終了する事を宣言する。先日の給料分を持って皆、借金奴隷としての金銭的な縛りは全て無くなった。ここに奴隷商会からの明細と奴隷から解放されることを約す証書もある。そして奴隷契約の奴隷紋を消すための呪術者の方に来てもらっているから証書と明細を行け取った者から順に施術をしてもらう様に」


 そう言うと知矢は一人一人に言葉を駆けながら書類を渡し再び感謝を述べるのであった。


 奴隷契約の魔法から解放された者へ残る使用人から大きな拍手が送られた。自身の手から消えた奴隷紋を確認し皆の拍手を受けた元奴隷たちは皆一応に涙を流しながら喜びをあらわにした。



 全員の奴隷紋からの解放が済むと知矢は


 「よし!お前たちの奴隷解放を祝しそして宴会をするぞ! 19名は今日は客扱いだ。それ以外の者達は頑張って接待してやってくれ。そして明日からは留守を頼むぞ!」


 知矢の声に「「「ハイ」」」「「「オウ」」」と声が響くと皆が一様に笑みを浮かべながら宴会場へと消えて行った。



 玄関ホールに一人取り残された知矢は何か感慨深いもので心が温かくなった。


 (まさか異世界に来て奴隷を購入する事になうとはのう。わしもこの異世界に少しは馴染んできたのか)


 日本にいた頃には考えもしなかった奴隷制度。ニーナから話を聞いた当初はその慣れない制度へ忌避感があったがいつのまにかそれを受け入れていた自分を不思議に思うと同時に(郷に入っては郷に従う)という事なのかとも思った。

 これが中世ヨーロッパやアメリカの奴隷制度や現代の闇で行われている人身売買のような一方的に人の命を売り買いする様な制度であれば真っ向から否定したかもしれない。

 しかし犯罪奴隷は法的に罰を受ける制度であり、借金奴隷は制度が確立し一方的に虐げられる制度ではないと聞いたことで多少忌避感が和らいだ。


 先ほど借金奴隷から解放された19名の喜ぶ顔を見ていた知矢はそんな事を考えながら佇むのであった。



 「知矢さん」

 すると姿を見せない知矢を心配したのかサーヤが宴会場へ続く廊下を仕切る扉から姿を見せた。



 「・・・サーヤ、すまんな」

 知矢は同郷の日本から転生していたサーヤ事真木野 桃香である。彼女は貴族の娘として生まれ変わった日本に生きていた頃の記憶を宿す転生者である。

 そこで日本でいた頃研究者であった真木野桃香の知識と貴族である父親の力を借り産業革命を成し遂げるべく高炉の建設を行い失敗の上多くの犠牲者を出した責任を取り借金奴隷と犯罪奴隷両方を背負い売られていた。

 借金の額も飛びぬけて高かったサーヤだが犯罪奴隷としての立場や政治的な配慮もあり他の者の様に返済額を知矢が操作して早めに開放する事は出来ないと奴隷取引商会のザイードから告げられていた。



 「先日も言った、気にしないで。私も気にしていない。それより皆が宴会を楽しみにしている。主が不在では始まらない」


 「・・・ああそうだな、じゃあ飲むか。明日からは頼むぞ」

 そう言う知矢はサーヤの脇を通り抜けるときに頭をポンポンと撫でるように叩くと扉の中へ消えて行った。


 「・・・」

 サーヤは少しだけ頬を赤らめるとすぐに後を追うのであった。








 対中国ウイルスワクチン接種 3回目打ってきました。

 翌日熱を出し頭痛と嫌悪感で会社を早退し寝込みましたわ(-_-;)

 翌々日には何とか復活しましたが根性で何とか乗り切ろうとしましたが無理でしたね



皆様は如何ですか。

早くこんなことが無い世界へ戻りたい


ではまた次話にて

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