第226話 贖罪と必然、人の業 ~「ラーメンおかわりニャ!」
なんとなんと3/10、23時!
驚異の四日連続更新です。なんとか書き上げました。
では第226話 どうぞ
都市の閉鎖域へ封じ込められている異形の生物 【パラサイト・アミュー (不定形生物)】。
冒険者ギルドのガインより知矢が欲する建物や土地の売買での条件として出されたのがその討伐であった。
しかし過去にカーネタリアらが行ったあらゆる攻撃にも魔法にも成果を得られず最終的には至高の存在として崇められている龍族、そのなかの火龍の一族へ助勢を願い消滅をさせた経緯を聞いた。
知矢やカーネタリアがこの商業中核都市ラグーンに封じられている【パラサイト・アミュー (不定形生物)】を直接観察し魔法を試すもあえなく断念。
一度屋敷へ帰宅した一行はその方策を話し合うのであった。
『・・・(ねえねえご主人様、今の話の中に出て来たのはどうでしょう)』
知矢の膝の上で静かに寝ていたと思った従魔G・D・Sのピョンピョンがむっくりと起き上がり知矢を見上げながら何かを伝えようとしていた。
「なんだいピョンピョン。良い方法でも思いついたのかい」
膝の上の従魔を指先でなでながら知矢が問う。
『・・・(ええとビック・キラー・アント嬢王が口から出して攻撃していたのが少し効いていたみたいですから嬢王様にお願いしてそれをいっぱい貰うって言うのはどうでしょう)』
従魔は両手を知矢の指に絡め甘えるような仕草をしながら考えを披露した。
「・・・・ピョンピョン!お前凄いところに目を付けたな」
『・・・(えへへへ)』
「だがそのままの案は採用するには難しいな。おそらく蟻酸の一種だろうが」
知矢は従魔が思いついた案の実効性は否定した。当然のことながら越えなくてはいけない壁が高い。
・ビック・キラー・アントの嬢王に願う。
・蟻酸を大量に貰う
・集めたそれを【パラサイト・アミュー (不定形生物)】へなんか知らの形で武器とする
最初のビック・キラー・アントの嬢王に願う事やその物質を大量に確保する段階で恐らく不可能であると。
「ギサンってなんニャトーヤ。聞いたことないニャ」
「蟻酸って言うのはなあアリの様な虫が体内で作り出す物質の事だがまあそれを下さいと言ってもらえるものでもないしな。しかもおそらくは相当大量に必要だ。別の物で代用できないかな」
「蟻酸はカルボン酸の一種。アリから採取は無理。機能性分子に含まれる基本的な化学構造だから作り出すのは不可能」
再びサーヤが助言を発する。
「サーヤはよくそんなの知ってるニャ。やっぱり頭がいいニャ」
ニャアラスは単に感心しサーヤはうつむいて頬を赤らめているが脇で聞いていたカーネタリアは
(異世界の知識はこの世界の遥か上をいくのだな)
と自身も知らぬ考えや知識に関心をする。
「まあそうだよな。しかしサーヤ、蟻酸やカルボン酸は無理としてそうなると強酸性の物質であればやつを溶かす事で討伐が出来るんじゃないか。強酸性の物質を大量に作り出す事はどうだろう」
「・・・考える時間をください」
そう呟くとサーヤは知矢達へ頭を下げてその場を辞した。
「よし、ピョンピョンの意見が切っ掛けで少しだけ光が見えたな。しかし今すどうこう出来るわけじゃない。ここは待ちだな。取りあえずビールを貰えるかな」
そう言うと控えていた使用人に願い知矢もカーネタリア達と酒食を共にするのであった。
日は変わり。
「リラレット、今日態々呼んだのは他でもない。お前を含む使用人たちの事だ」
知矢はある日の朝いつものように朝食後に日課のミーティングを終えた後、個別に使用人筆頭支配人兼屋敷の家令を務めるリラレットを呼び出した。
「私たちの事でございますか」
リラレットは知矢と執務机を挟みながら不安そうな目を眼鏡の奥から窺わせる。
(まさか、もしかしたら再び奴隷商へ戻されてしまうのでは・・・)
等という不安を一瞬覚える。しかし
(知矢様がその様な事を言い出すとは思えません。しかし何かしらのお叱りでございましょう)
そう考え身を固くする。
「そう警戒することは無い」
知矢はリラレットの心情を感じ楽に聞く様に伝えた。
「実はな、お前も含め最初から俺に仕えてくれているほとんどの使用人の皆だがそろそろ年季が明けるんだ。つまり借金奴隷であるお前たちを購入し借金を肩代わりして給料をその返済に充てていたんだが返済が終了し晴れて自由の身になると言うことだな。おめでとう!」
知矢は魔道具商店を開業するにあたり自身の身の回りの事も含めその手を奴隷を購入する事で賄おうと考え奴隷商会からリラレットを始めコレット達、それにサンドスを始めとする元冒険者合計20名手に入れた。
その彼女たちの借金返済が終了する旨購入した奴隷商会の商会長ザイードより通知を受けたのである。
しかしその20名の中でサーヤだけはその返済額があまりのも膨大であった為今回は除かれる。彼女一人に課されている借金、実のところ引き起こした大災害の賠償金であるが白金貨2枚、20億イエンにもなる。しかし過去の業績により賠償金が減額されそれでも日本円で5000万円にもなる為早々に返済は困難であった。
「まさか、些か早ようございます、何かのお間違いでは。私共の借金の返済、年季明けは4年から5年と聞き及んでおります。未だ半分もお返ししていないはずでございますが」
思わぬ話しリラレットは何かの間違いではないかと驚きを隠せない。
「いや間違いはない。ザイードからも返済に関する明細が来ている。これだ」
知矢は自身のデスクの引き出しから書付を出すとリラレットの前へ滑らす。
「失礼をいたします」
そう言いながらリラレットは両手で押し頂きながら書面へ目を通す。
「・・・・確かに知矢様のおっしゃる通りでございますが・・・えっ?」
書面を確認しながらリラレットは内容に驚きの声を上げた。
「知矢様、大変失礼でございますがここに記載されている毎月の返済額、つまりこの項でいいますと私のお給料でございますが奴隷契約時の金額が三倍になって記載されております。これは・・・」
「お前たちには言っていないが俺に仕え始めた後にその仕事ぶりや人となりを見させてもらってな。その上でザイードと相談し契約内容を変更してもらった。
通常、奴隷契約の変更には奴隷本人の了承も必要なんだが契約内容がその奴隷に対して条件向上であった場合、奴隷本人の了承無しに契約を書き換えることが出来ると聞いてな。すまないが勝手に変えさせてもらった。
皆は毎日真面目に真摯に仕事をこなし、おかげで俺はこんなに毎日を快適にそして優雅に過ごすことが出来ている。その事に俺は大変感謝している、ありがとう」
知矢はデスクの椅子から立ち上がるとリラレットへ頭を下げた。
「お顔をお上げください、知矢様」
突然の事で慌てるリラレット。
「こんな事で感謝の気持ちを表現する事は出来ないが俺は本当にこの国へきて良かったと思える出会いを得られたと感謝しているんだ」
「知矢様。しかしこんな過剰ともいえる待遇を頂けていたなんて、皆が知ったら喜びのあまり卒倒してしまいます。ですが・・・」
知矢の気持ちを受けてリラレットも感謝に堪えぬと礼を述べるが
「知矢様、私たちはお暇を頂くと言う事でしょうか」
思わず浮かんだ心配を口にする。
借金奴隷が精算を終える。そして主からその身は自由だと告げられるという事は必然的に解雇されるという事である。
「リラレット、お前たちがそう望むのであれば自由にするが良い。しかしもしこのままここにいてくれるのであれば待遇は今まで通り、いやこれからはこれまで以上にそれぞれの活躍や仕事に対しての報酬を約束しよう。定期的な賞与も出すつもりだ。どうだろうか、直ぐに結論を出す必要は無いが皆にもそれぞれの事情があるかもしれない。このまま俺のもとで働くもよし、他にやりたいことや故郷に戻るもよし行きたい場所があればそれは自由だ。
因みに退職を希望する者がいればその時に慰労金を支払う。それも含めて皆に話をしてほしい」
知矢はそう告げた。
「知矢様、解りました。知矢様の御心を皆に伝えます。その上で今後の方針は各自に決めさせる事と致します。感謝に堪えません。
ですが・・・私はこのままお傍でお仕えしとうございます。これからもどうか宜しくお願いを申し上げます」
そう言うとリラレットは深く腰を折り頭を下げるのであった。その下げた頭、目には熱い物が浮かび上がり音もなく落ちて行った。
知矢の元と辞したリラレットは少々腫れぼったい目頭を押さえながら仕事へと戻っていった。夕食ののちに該当する使用人を集め話をするつもりだ。
どれだけの者が出ていくかは解らないがリラレットは殆どが残留を希望する様な気がしていた。
とても奴隷とは思えぬ待遇に報酬、そして主としてほとんど欠点らしき欠点の無い知矢の元を去る理由などほとんどの者が持っていないであろうことは確信している。
しかし何かしらの事情は各自にあるかもしれない。そうなったときは笑顔で送り出そう、そう決めたリラレットは執務をしている与えられた自室へと向かうのであった。
コンコンと知矢の部屋をノックの音が響いた。
知矢の許可を受けて入室してきたのはサーヤである。
「総支配人が目を腫らせていた。知矢さんが泣かした」
「おいおい聞こえが悪いな」
「解っている。支配人は残留を希望したのでしょう。多分皆も残るわ」
そう呟くように応えるサーヤ。
「すまんなお前はまだ年季がだいぶ残っている。金額が金額だしザイードにも相談したのだがやはり政治的な決定も絡む処分だからと言ってな」
「ううん、良い。私は自身の行いを贖罪しながら生きて行かなければならないそれは私が背負わなくてはいけない業でもあるから。
でもそれでも知矢さんからの待遇は過剰。私はこれ以上のお給料を上げて欲しくはない・・・ありがとう」
それだけ言うとサーヤは静かに知矢の部屋を去っていった。
(あの子は如何に転生者であったとしても今はまだこの世界では16歳だ。一人で背負うには・・・)
知矢はせめて契約返済金が完済するまでは手元で見守ろうと心に決めていた。
次に知矢の部屋を訪れたのは。
「トーヤさんお呼びだそうで」
「失礼します」
次に知矢から呼ばれたのは南の大国 【ルドマリッド人民共和国】からの亡命希望者で元工作員の補助をしていたコルサミルとミサエラである。
「ああ呼び出して済まない。そこに座ってくれ」
二人をソファーへ誘うと知矢はそく自分で紅茶を入れ二人へ差し出した。
「で、早速何だが帝国政府から許可が出たぞ」
知矢は亡命の許可が降りたとの知らせをアンコールから受けたことを伝えた。
「ワオ、やっとね。しかし待った甲斐があったわね。これで晴れて堂々と街を歩けるわ」
コルサミルは元気に宣言する。
「よく言うわね、今までだって散々自由に街で買い物したりしていたじゃない」
ミサエラは笑いながら指摘する。
「いやいやいや、全然違うね、そう心が違うのよ。どこかでやっぱり何て言うのかな引け目は感じていたわ。でもこれからは違う。早速冒険者登録をしてバンバン稼いでトーヤさんにおんぶじゃなく自分たちで美味しい物を食べまくるわよ」
「そうね、この歳で初心者冒険者って言うのも少し恥ずかしいけど、頑張ろうね。あっでも・・・」
コルサミルの言葉を受けてミサエラもやる気を見せたが
「精霊魔法の事だろう」
知矢がミサエラのう憂慮を指摘する。
ミサエラはハッとして知矢を上目遣いで見ながらゆっくり頷く。
「問題ない。先日お前たちの亡命希望が通るのと同時に皇帝勅令の一部改訂が通知された。これがその布告の写しだ。重ねておめでとう、良かったなミサエラ」
「ハイ!ありがとうございます。これでまた精霊さんと楽しく暮らせるんだわ」
ミサエラは破顔して元気よく答える。
「あんたは本当に精霊が大好きね。いっそうの事精霊さんに嫁入りしちゃえば」
などと二人は喜びにあふれ今後先々の展望などを夢見るのであった。
「ミサエラ、喜んでいるところ悪いが先に一仕事やってもらうが良いよな」
「ええ、解っています。精霊魂石の解放ですね」
「ああそうだ。この都市内に保管されている精霊魂石に封じてある精霊を怒らせることなく開放する。頼めるな!」
先日ラグーンへ潜入した南の大国の破壊工作員の一人が所持していた【精霊魂石】。呪術者の強制力を持って精霊を使役する魔法、【精霊封じ】と【精霊召喚】を行使してその呪術者の命令に強制的に従わせることが出来る。
しかしその精霊が封じられた精霊魂石を破損などした場合自らの意思に非ず閉じ込められていた精霊は怒りと共に暴走しその周囲を破壊尽くす勢いで降臨する事を知った知矢がニャアラスとの探索で潜んでいた元南の工作員補助の二人のうちコルサミルは剣士格であるがミサエラは【精霊への願い】と言う行使力をもつ魔法使いである。
その彼女達を懐柔し帝国へ亡命させるに併せ精霊魔法を用いた精霊魂石からの精霊の穏やかなる解放を頼んでいた。
しかし二人を連れてきて暫く時が過ぎたが今やっと帝国皇帝による精霊魔法の行使に関する禁止令の改定が通知されたことによりミサエラによる精霊開放が現実的になった。
「ええ、任せてください。無理やりそんなところに閉じ込められた精霊さんを自由にして差し上げれるのは私の本意でもあります」
ミサエラはまっすぐに知矢を見据えきっぱりと言い切った。
「よし、精霊解放の日時は管理貴族と協議がいるだろう追って連絡する。それまでは今まで通り自由に過ごしておいてくれ。だが急に決まる事もあるから行先だけは残しといてくれよ」
そう言うと知矢は無限倉庫から重そうな皮袋を取り出し二人の目の前へごとりと置いた。
「これは約束していた報酬の先渡しだ。小金貨、中金貨を織り交ぜ全部で1千万イエン入っている確認してくれ」
知矢は二人を都市へ誘うときに
『 そうだな俺の知りたい情報が手に入りその情報通りに事が成せたら・・・金貨1枚を払おう。おっと小金貨じゃないぞ正真正銘の大金貨、1.000万イエンだ! 』
そう約束をしていた。
「「ヘッ????」」
二人は目の前の重い革袋を目にしたまま硬直している。
「おいおい忘れたのか。亡命を決断した時に話したじゃないか俺の知りたい情報が手に入ったら俺から報奨金の代わりに大金貨1枚を支払うって。大金貨じゃ使いにくいだろうし両替商に頼むと少なからずも手数料を支払わなくてはいけないからな、使いやすく小、中金貨と併せて大銀貨も混ぜてある。念のため数えてくれくれて良いぞ」
「あっそうだった!」
いち早く正気に戻ったコルサミルが思い出したようだ。
「でっ、でもさ・・・こんなに貰っていいのかな」
ミサエラは困惑している。
それは当然だ。二人が以前所属していた南の大国 【ルドマリッド人民共和国】での通貨に換算すると帝国通貨大金貨一枚は5000万ゲインに相当する。
南の大国における二人の収入は月2000ゲイン。その中から1500ゲインを事前に上司に上納と言う名目で抜かれ二人が手にしていたのは500ゲインだ。それだけで10万倍の報酬であった。
衣食住を保証されている社会主義国家であっても生活するには少なからず金が必要なのは当然である。しかし手取り500ゲインは帝国通貨に換算でおよそ100イエン。知矢の屋台で素うどんを一杯食べる事しか出来ない。
そんな二人が報酬として1000万イエン、南の通貨換算で5000万ゲインと言えば一生お目にかかる数字ではない。
実際のところ南の官僚たちは平民階級層や部下などの低階級層から強制的に奪った金を得ている為月100万ゲイン程度の収入があり贅沢三昧をしているのであったがそのような事実は彼女達や一般平民階級には決して知らされることは無い。
「二人で分けて500万イエン。この都市で小ぶりな部屋を借り屋台や普通の食堂で食事をとる。そして冒険者に必要な装備やポーション、薬草や道具類などを購入して冒険者活動を始めればFランクで最初は月の収入が10万から20万イエンにはなる。こつこつ真面目に活動すれば1年もすればきっとEランクに上がれるだろう。そうすれば月の収入も安定して一人30万は手にすることが出来る。
その金を使って安定収入を得るまでの資金にすれば良いさ」
「でも私たちに冒険者なんてできるかしら」
ミサエラは少し弱気を見せる。
「誰でも最初はあるもんだ。無理せず地道に行けば怪我や命を落とす事も無い」
「でもさ土地勘も無いし森の特性や魔物の知識も少ないのよ。そりゃあ確かに誰でもそこから始まるわけだけど、あたしたちは・・そのう少し歳をとってるじゃない。こんな年で初心者冒険者なんて言っても誰も助けてくれるわけじゃないし、やっぱり不安だよね」
コルサミル迄先ほどは
『そうね、この歳で初心者冒険者って言うのも少し恥ずかしいけど、頑張ろうね。』
等と気持ちを高揚させていたが段々現実を見てそして知矢から褒賞と言う名の資金を与えられたことでこの金を受け取ると今まで面倒を見てくれていた知矢から突き放されるのではないかと言う不安が込み上げてきたのであった。
「まあ、慣れない土地と新たなる仕事。そりゃあ不安も覚えるのは無理もない。そこでだ俺の運営する冒険者育成会に加入しないか」
知矢は彼女たちの不安を承知していた。そしてその不安解消の手はずも準備している。
「「育成会?」」
「ああそうだ。詳細は省くが・・・」
知矢は低ランク冒険者や冒険者になり日が経っている者でもうまく仕事が軌道に乗らず困窮したりけがや病気、そして死を覚悟しなければならないような状況に陥る。もしくは困窮のあまり悪事に手を染めたり悪い奴に言い寄られ仲間に引き込まれたりなど望まぬ結果になる者を一人でも減らしもっと冒険者として安全にそして行為率良く知識と経験を積ませる場を作る活動を始めていた。
それが【冒険者育成会】である。
この会に加入した者は座学に始まり実技指導を受け実際に都市外へ出ての活動に至るまで、そしてDランクに昇格をする。もしくはEランクでも十分な経験を積んだとみなされるまで指導を受けることが出来るシステムだ。
この指導には知矢の使用人で元々冒険者であった者たちが指導員として交代で教える事になる。そしてそれ以外にも実際第一線で活躍する冒険者を指導員として雇う事も計画していた。
この会に加入している間は無料ではなく正式にギルドで依頼を受け得た報酬から一定の割合を徴収する仕組みだ。
勿論アコギな事はするはずもなく逆に経済的に不安定な者へは知矢がこれから作り上げる【寮】に住み朝晩の食事も食べる事の出来る居場所も提供する。
もっとも寮で生活する者は一定額の寮費は徴収するつもりだがそれを払っても自身の身で宿へ泊まり歩くよりよほど環境は整備するつもりだ。
その第一期生の中に二人を参加させようと考えていた。
「まあざっとこんな感じで学びながら冒険者として活動もできるし教官も依頼に随伴する。ただし実はまだ寮を予定している建物が入手できていなくてな。まあ今受けている指名依頼を終えれば自動的に入手する予定だが。
そんな訳でお前らには報酬を渡した事だし衣食住の心配はなくなった。だから冒険者育成会へ入ったら安心して活動を始められる。どうだ入ってみないか」
知矢はこの二人が第一期生で丁度良いとも考えていた。自立し始めの12、13歳の少年冒険者よりある程度社会生活を営んでこれから必死に冒険者になろうとする二人は言うならば後が無い。それだけに真面目に学ぶことだろうと考えた。
教える方も実を言えば未だ手探り状態。実際には自分たちが今まで先達から教わった事を思い出しながら指導する事から始める。
そんな試験運用には適している生徒に二人は丁度良いとも考える知矢だった。
「えっそんな制度が帝国にはあるの、凄いのね」
ミサエラは驚きの声を上げる。
「いやこれは俺が考えてまだこれから始める事なんだ。まあお前たちもしばらく俺のところに済んでいたから解っているだろうが商売が上手くいってそれなりの資金を得たんだが貯めこんでいても仕方がない。資金の還元事業の一環として始めるんだ」
「えっトーヤさんが自費でやるの、しかも資金の還元って儲ける為じゃなくて!」
「もちろん儲けなんかではしないさ。逆に金がかかるだけだ。だからこそ俺の儲けをみんなに還元する事業としているんだ。加入料金を徴収するるのは無料で学ぶより金を払えばそれだけ必死に学ぼうとする意識が変わるだろう、その為さ。考えてもみろ。
建物を用意して学びの場と講師を準備、住まうために寮と食事の提供、低ランクの依頼に同行する人件費や経費、武具の貸し出し迄考えている。儲かる要因が全くないからな」
「トーヤさんっていったい何者なのよ信じられない。普通は儲かったらため込んだり高価なものを買って贅沢に暮らしたいって思うんじゃないの。それを・・・。しかもトーヤさんて使用人と一緒におんなじ生活をしているし。まあ確かに食べている物は考えられない程贅沢な気もするしあの屋敷も豪華だけれど何か違うのよね」
コルサミルは知矢の考えが理解できないと驚くばかりであった。
「でもそんなトーヤさんだから私たちに手を差し伸べてくれたり、使用人の方たちだって殆どみんな奴隷でしょう。それを普通の使用人の待遇以上に気を使っていたり、しかも聞いた話では教会や孤児院にも莫大な寄付もしているって」
ミサエラはどこから聞いてきたのか知矢の寄付の話まで知っていた。
「ハーっ、もう信じらんない人だけど信じるわ。良く解らないけどとにかくあたしたちの為にもなる話だわ、ぜひその冒険者育成会に入れて。いえ入れてください、お願いします」
「ええ私も是非に、よろしくお願いします」
コルサミルとミサエラは腰を折り頭を下げて心から願うのだった。もう某国には帰らない、帰りたくない。この帝国でしっかりと生きて行かなければ。そう心に決めたのだからこんなチャンスを逃すはずもない二人であった。
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夜になった。
知矢はいつもの様に使用人と屋敷で食事をするのでは無く珍しくカーネタリア老人とニャアラス、そしてボンタを誘って北門近くにあるボンタの親しくしている女が働く食堂を訪れていた。
「ぷはーっ、まあ店はともかく酒はいつ飲んでも旨いニャ」
大きな木のジョッキをドンとテーブルに置いたニャアラスは昼間の疲れをいやすニャとビールを一気に飲み干すのであった。
「ニャアラスの旦那そんな言い方無いっすよ。店も良いし料理も旨いそれに店主も店員も上等じゃ無いっすか」
ボンタは文句を言いつつニャアラスが空けたジョッキのお代わりを自ら運んでくる。
「ニャははは、お前はもうトーヤのところに世話になっていないでここで働くにゃ」
「そんな事言わないでくださいよ。あっしは兄貴に一生ついていくんすから」
そんな二人の会話を楽しく聞きながら知矢とカーネタリアはにこやかに酒を飲むのであった。
「ところでカーネタリア様。少し前にこんなものを手に入れたんですが」
そう言うと無限倉庫から革ひもが通してある六角形の金属の棒【トゥワイスの印】を取り出した。
「ヒョッヒョッヒョ、何じゃなこれは」
そう言いながら手に取りながら辺に刻まれた文字や文様(魔法陣)を繁々とみる。
(鑑定)カーネタリアは無言理に魔法を行使した。
【トゥワイスの印。トゥーラス山脈にあるトゥワイス工房の扉の鍵。ダンジョン化したその工房内部を封じている封印を解くための鍵 】
「ヒョッヒョッヒョこれはこれはまた面白い物を手に入れたのう」
そう言うと辺に刻まれた文字ではなく文様(魔法陣)を知矢へ指し示し
「この魔法陣が鍵じゃな。必要な場所へこれを宛がうのか差し込むのかわからんがともかくその時この魔法陣に魔力を込めると鍵か扉のような物が空くじゃろ。行ってみたいのかいの」
老人はそっと知矢へ【トゥワイスの印】を返す。
「やはり鍵ですよね。私の鑑定でも同様です。しかし正直未だ迷っています。どんな物がそのカギに閉ざされた場所に秘められているのか、金銀財宝って言うよりも貴重な魔道具が隠されているのではないかと思っていますがどう思いますか」
知矢は当然老人が鑑定を行使しておりトゥワイス工房の事も知っていると思い話す。
「科の工房は今では伝説じゃ。その昔は多くの権力者が探し求めておったとも聞く。そしてその権力者たちが諦めた頃から今度は冒険者達がその財を狙って中には専業で探し回る冒険者迄一時期はいたほどじゃ。
しかし誰もその痕跡さえ掴むことは出来なかった。ほんにもう伝説、物語のお話になっておるじゃろ。
しかしかの道具士が存在したのは本当じゃ。わしは近づくと勝手に開いたり閉まったりする扉の魔道具を見たことがある。細かい事までは解らんがそれに刻まれた微細な魔法陣の数々はいわばそれだけで芸術品と言っていい素晴らしい出来栄えであったわい。
それ以上に何故扉が勝手に開け閉めするのかとも思ったがわしには結局どうにも理解が出来んであったなヒョッヒョッヒョ」
カーネタリア老人はそう言うと大きなビールジョッキを虚空に上げてビールを飲み干す。すると
「ハーイ!ビールお替りどうぞ」
尽かさず店の看板娘、マルゲリッタが陽気にビールを差し出した。
「娘さん気が利くの、ありがとう」
「いいえどうぞゆっくりしていってね」
そう一言いうとマルゲリッタはショートボブの髪から少し伸びた後ろ髪をなびかせボンタに笑顔を送ると忙しそうに去っていった。
「ひょっひょっひょ。ボンタくん。中々良さそうな娘じゃないかヒョッヒョッヒョ」
知矢とニャアラスから話を聞いていた老人が気立ての良いその娘を評価した様であった。
「カーネタリア様迄勘弁してくださいよ」
そう言いながらもボンタは少し高揚し赤らめた笑顔を隠す様にビールをあおるのであった。
「カーネタリア様、もしその工房が存在し中には垂涎の魔道具があったとします。ですがそれを持ち出して公にすると新たな火種や争いを生むのではないでしょうか」
知矢はトゥワイス自身がそう言った争いを避けるためにダンジョンに魔道具やその秘術を封じたのではないかと考えた。
「うむ、そういう考えもあるが一方でこうも考えられんか。
かの魔道具士は確かに戦乱に使われる自身の魔魔道具、そしてそれを手にしようと権力者との争いが起きて一時身を隠し秘術も封じた。しかしこうしてその封じた場所のヒントが作られ世に出て来たという事はかの者が時を経て誰かに託したい、そう考えていたと」
「そう言う事も考えられるかもしれませんね。ですがそれが私っていう事も無いでしょう。たまたま古い道具屋で見つけた代わったアクセサリーを購入したと言うだけですから。そんな秘宝ともいえる魔道具を公にする様ないうなれば大それた事を私がするのは何か違うと思うのですよ」
知矢は歴史的な経緯と未だそう言った秘術ともいえる魔道具の価値を考えると興味だけで探し求める危険性を考え始めていた。
「必然じゃな」
「!」
「歴史の必然、人の出会いの必然。時としてそう言う思わぬ機会が訪れるのは実は古から定められていた、そう最初から決められていた事だとは思わんか。人はそれを『必然』と言うのじゃよヒョッヒョッヒョ」
老人が口にした『必然』と言う言葉。奇しくも先日知矢自身の口から従魔の二人へとつぶやいたセリフであった。
「必然ですか・・・・」
知矢はこの異世界に存在する事は異端、異物ではないかと考えたこともあった。知矢にとっては全く無関係の場所へ突然現れた存在である自分はそう言った位置づけなのではとも考えた事がある。
しかし世界を作り上げた最高神の導き、と考え直した時、カーネタリアの言葉を聞いた時自身の存在は必然となるのでは「そう考えると・・・」
知矢は僅かな刻思考した。そして
「カーネタリア様、この地図を見てください。そして宜しければ一緒に旅に出ませんか」
ついそう口に出していたのであった。
この数日久しぶりに連続更新でしたが残念な事に明日以降は無理でございます。
何故ならば!!
まだ全く続きを考えてません、少々お時間をください。(-_-;)
ではまた次話にて




