第221話 「判決を言い渡す!!」 ~ 「お慈悲を!!!!!」
やっと話が一段落しました。
では第221話 どうぞ
「陛下!知らぬ事とは言え大変失礼をばいたしました。我ら魔神王国、四魔将が一人赤の将 カザンフが三子に御座います。陛下の御高名は予てよりお聞きいたしておりましたがこうしてご尊顔を拝する僥倖を授かることが出来光栄の至り」
ハザトが床へ顔を伏せたまま土下座状態で三人を代表するように一気に口上を述べるとそのまま微動だにしない。
「こいつらカーネタリア様に対してだけ態度が極端だニャー」
呆れるよな視線を投げかけるニャーラス。
「ヒョッヒョッヒョ。おおカザフン殿の御子息達であったか。彼の御人とはもう20年ほど前に魔神王国で顔を合わせたことがあったわい。
しかし互いに思わぬ場所で妙な出会いをしたもんじゃのうヒョッヒョッヒョ。
じゃがしかし今はほれただの老いぼれた冒険者のジジイじゃ普通に接してもらおうか、顔を上げなされ」
カーネタリア老人は三人を即し土下座をやめさせた。
「四魔将?お前らの親は魔神王国の将軍か貴族なのか、っていう事はお前らも貴族っていう・・・」
知矢もカーネタリアの言葉を受け三人をソファーへと即しながら聞いてみた。
「いやオヤジが魔王様の側近で貴族位を持つが俺たち子どもは一般市民と同じだ」
わずかに遠慮の姿勢を見せた三人であったが返って礼を失すると思ったのかその後は普通に戻ったようだ。
「しかし将来は四魔将って言うのとかの職位や貴族位とかをハザトって言ったなお前が継ぐんじゃないのか」
「いやそれはない。魔神王国における爵位や高位職は本人の実績や能力のみを評価して決まる。 その家族や兄弟は無関係だ。人族では受け継ぐものだと聞いたことはあるがそれはおかしな話じゃないか。能力があるものが得た職責や地位を能力のない者がそのまま受け継ぐって言うのは、王国では考えられんな。
だから俺たちは自分たちの力を試し、金を得、将来自分たちで家族を持つための準備として冒険者になり活動しているだ」
「モスリー姉様は将来錬金術師として工房を開くのよ。私は素敵な王子様のお嫁さんになるの」
エルは夢心地の表情で将来を語る。
そんな妹であるエルの言葉に少し和んだ表情を見せるハザトは続けた。
「そんな訳で俺たちは魔神王国の外の世界で経験を積み、色々な知識と金を得るために活動をしているっていう訳だ。そこまでは信じて貰えるか」
「ああ信じよう。理にかなっているしそれ以上にお前らの目は嘘を言っていない。だがそれに引き換え今回の行動は浅はかだったな」
「信じてくれた事に感謝する。 しかし短慮、それは認めよう。魔族の少年が捕らわれたと聞いて俺たちはかなり動揺をしていたのは事実だ。
しかし俺たちも国を出て旅をするまで遠い国家では魔族の認知度が低い事など知らなかったからな。神聖教国まではそれ程でもなかったがあっちの冒険者ギルドで聞いた話じゃ南の諸国へ行くと魔族はその容姿と高い魔力に敵意までは無くとも警戒されると聞いた。
さらにはこの帝国の様に魔族は物語に出てくる架空の種族で攻撃的だの悪い奴だのって言う風評があるって聞いてたからな。モスリーの錬金術と魔道具を使い姿を変え、魔力を外に出さないようにしていたんだが・・・あっさりお前たちには露見したがな。
だがそれだけにジーオ様が御辛い目にあっているのではないかと危惧をした、その心情は理解してくれ」
遠い異国の地で自分たちの存在が思わぬトラブルを招く事を事前に学んでいた三人がそう考えるのは当然であったであろう。
「ああ十分に理解した。 俺達もジーオと出会うまでは魔族の存在を知らなかったが会って話をすると何も我々と変わらない事も知ったしな」
「だけどあの小僧は少し教育が足りない、甘やかせすぎだニャ」
ニャアラスは三人にジーオと初めて出くわした時からの事を詳細に語って聞かせた。
「「「あーあ・・・」」」
三人はその話を聞くだに肩を落とし「やっぱりか」と表情をみせる。
「ジーオ様はちょっと特別な存在であったそうなので幼いころから周囲が期待と共にその行動と発言を否定しない傾向があったようです」
モスリーがジーオが生まれた時に発する魔力の大きさから魔王やその周囲全てが将来に期待をして蝶よ花よと育てた経緯を語る。
「やっぱりだニャ。だからいい気になって家出をして『俺の国家を作るんだ』なんておままごとを始めるニャ。やっぱりあいつは当分牢屋だニャ」
そんなニャアラスの言葉に魔族の三人はさらに肩を落として言葉も無い。
「まあそれに関しては先に言ったが既に国家間の問題に移っている。俺達一介の冒険者が口を出せる次元ではないから見守るしかないが・・・」
とその時知矢の屋敷で門を警備する冒険者が部屋へ入り家令のリラレットへ何事かを告げた。
無言で頷くリラレットは手でしばし待つよう促すと知矢の側へ近づき伝えた。
「知矢様、アンコール伯爵様の先触れとして第一騎士団のモンドール団長がお見えとのことです」
「先触れに騎士団長とは豪奢だな。直ぐに客間へお通ししろ、いやそんな時間は無さそうだな。俺が表へ向かいモンドールと共に伯爵をお迎えするか」
知矢は感知レーダーの魔法でアンコールが直ぐそばまで来ていることを確認すると席を立った。
「とにかくお前たちはここで大人しくしていてくれよ。状況によっては呼ぶからな」
魔族の三人へ念を押すと知矢は早速部屋を出て行った。
その後に続くのはリラレットと子猫の姿へ一瞬で変化したフェリシア、そして物見遊山のニャアラスである。
「「「!!」」」一瞬光に包まれ子犬に変化したフェリシアに魔族の三人は再び驚愕したのであった。
「これはこれはモンドール団長様自らお越しとはとは恐縮の至り」
知矢が玄関先にいたモンドールへと歩み寄ると丁寧に腰を折り挨拶を口にする。
「トーヤ様、突然の訪問をお許しください。ですが私にその様な物言いは不要です。いつもの様で結構です」
「そうか、じゃあ遠慮なく。 で伯爵はすぐにも来るようだな。いきなり態々(わざわざ)来るという事は俺が出した手紙の件かそれとも別に何か出来したのか」
一応知矢は貴族相当の権を得ているため公式の席では伯爵の旗下でもあり準男爵く相当の地位にいる騎士団長を立てた。
しかしそれは不要とするモンドールの弁に握手を交わした知矢はいつもの調子に即戻すのであった。
「はい、先ほど頂きましたお手紙をお読みになった閣下がその件も含め可及的速やかにお話をと・・」
そう言いながらモンドールは少し口ごもり
「と言いながら閣下はトーヤ様のお使いの者を魔馬車へ同乗させ話を聞くと言う態でこちらへお向かいです」
モンドールは少々嬉し恥ずかしそうに語った。
「使いの者は役に立ったか。無事に役を果たしたかな」
「はい、立派におなりになったと私如きがお答えするのは恐縮ですがこの短い期間でああも変わるものかとお目付け役、教育係として閣下から負託されていたこの身の浅はかさを思い知ります」
上司であるアンコール伯爵の娘マリエッタを指導教育する事を任されていたモンドールはその介もなく数々の問題を起こした挙句屋敷から半ば放逐の様に知矢の元へ預けられたマリエッタが見違えるような落ち着きと物腰そして言動で実家である伯爵家を公式に訪れた時の様子を思い出しながら驚き、そして喜んだ半面自分の不甲斐なさを痛感していた。
「そんなに卑下することは無い。環境が変われば人も変わるものだ」
慰めるように話し知矢であった。
実際マリエッタ・アンコールは知矢と出会った頃の激情さと短慮は鳴りを潜めいま使用人の一人マリーとして生活を送っている。
そう変わった経緯はやはり知矢の使用人たちの教育のたまものであったことは確かである。しかしマリー自体も地位や立場、環境が変わりしかも自らの能力は低くはないと思っていた剣や対人の捌きなども知矢の使用人たちの足元にも及ばず基本的な生活を送るすべも持たず失敗ばかり。
全てを根底から覆され本来であればその時点で諦めや喪失感を持ってもおかしくはなかった。
しかし根底にあった負けん気も功を奏したのかもしれないが周囲の同僚や上司たちの積極的な行動と助言そして愛ある振る舞いに踏みとどまりさらには落ち込む暇を与えられぬほどの忙しさもよかったのであろう。
サーヤに言わせると
「マリーは考えさせてはダメ。やらせるのが一番」
とバッサリ一言で教育方針が決まった経緯もあった。
ともかく数か月ではあるが今のところ再教育は上手くいっているようにも見える。ただしまだまだ乗り越えるべき試練はある為元の籍へ帰るのは先の話だ。
知矢の屋敷の門が広く開け放たれ華美な装飾も無いが重厚な作りをした魔馬にひかれた車が敷地へと入るとエントランス前で停車する。
家令のリラレットが恭しく進み出て魔馬車の扉を開くと最初に姿を見せたのは知矢の使用人として働くマリーであった。
マリーはわずかに頭を下げながら尽かさず扉の脇に立ち礼をとって控える。
すると一呼吸置き中からアンコールが姿を見せた。
「アンコール伯爵様自らこのような場所へお運びいただき恐縮の極み」
再び知矢は貴族に対する礼の姿勢をとる。
「トーヤ殿、突然の訪問申し訳ない。それに気を使っていただき感謝する」
アンコールは脇に使用人として控える娘に僅かな視線を送ると幸せそうな笑みを一瞬浮かべた。
「それで伯爵様自ら御出でとはどういう風の吹き回しだ。まさか可愛い使用人と少しでも時を同じくしたかったなんて言うんじゃないだろうな」
客間へ場所を移すと知矢は口調をいつもの様に戻しながらからかう様にアンコールを見る。
「いやはや、まあその様な気持ちも無くはなかったのですが・・・・いただいた手紙の件驚きました。まさか他にも魔族の者が普通にこの都市へと踏み入れていたとは」
一瞬だらけた顔をしていたアンコールであったが本来の要件へと話を進めると態度と口調を改めそれは即貴族の顔へ変わった。
「ああ本当だ。だが特に南の大国以外の国家からの流入に制限はなかったと思うが」
「ええ、確かにその様な規制はございません。しかし我々政権側や冒険者ギルドをはじめとする魔神王国と交流がいささかでもある者を除く一般市民はその存在さえも全くと言って知らないのも事実で市位に出回る物語の中に登場する程度。 しかもあまり友好的な表現がされていない。これを我々も特に否定し制限をかけていなかったことが裏目となります。
やはりその容姿と魔力は・・・」
アンコールの危惧するところは恐ろしい存在であると一般の市民が認識している魔族が事実存在し都市を訪れたことに対する一般市民の反応とそれに対して魔族の民が受ける人種差別的な負の感情を強く感じる事にも苦慮しているという事だ。
「そのあたりの事は帝国政府が今後国民教育として考えなければならないな。だが今はそんな時間は無い。取りあえずは関わった者、見聞きした者たちへきちんとした情報を開示して誤解の連鎖を生まないようにするにとどめる。そんなところか」
「はい、取り急ぎはそのように。しかしトーヤ殿の屋敷を襲撃と言う点は・・・」
「襲撃なんて大げさな話ではない。単なる行き違っただけだからそこは問題ないすでに彼らとは話をして和解をした。 それよりもその三人の魔族はジーノの件が今後如何なるかを心配している。
あっそうそう、そういう訳で都市の中を自由にさせておくのも何なんだからとりあえずは三人を折れの屋敷に逗留させておくことにする。そのほうが事件も起きにくいだろうし事が動けば直ぐに話が通る。伯爵もその方が何かと都合が良いだろう」
「そうですか。確かにそうしていただけるとこちらも助かります。トーヤ殿には度重なる協力とご苦労をおかけします。此度も何か褒賞を差し上げなければ。とは言っても先だっての件も未だ未決のまま。如何なるものをもってトーヤ殿に報いればよいのか正直思い付きませんな」
アンコール伯爵は苦笑いを浮かべながら本心からどう報いればよいのかを困っている様子であった。
信賞必罰は国政を営む者にとって一番重要な事である。知矢はそれほど気にもしていないが大功を上げた者に報いない為政者など誰も信じて付いてきてはくれない。
よって知矢の考えはともかく帝国政府としては何かしらの褒章を無理にでも与えるのは必要な事であった。
「まあ俺も褒賞が欲しくて動いている訳ではないがな、だがくれると言うのであれば俺からは取りあえず一つ願いをかなえて欲しい事がある」
アンコール伯爵との協議の中知矢は以前からの懸案を解決できるのではないかと提案してみる事にした。
「おお、何でございましょう私めにで出来る事でしたら何なりとお申し付け下されば」
アンコールは報いる術が見いだせないところへ知矢からの望みがあると聞き笑顔を漏らした。
「残念ながら伯爵様では荷が重い話だと先日聞いている件だ」
知矢は依然話した南の某国からの亡命を希望し一時預かりとして屋敷に逗留させているミサエラとコルサミルの件を再び話題にする。
「ああ、その件でございましたか。そうですな残念ながら私の権ではその件には及ばず・・・」
ミサエラと名乗る者の行使力【精霊への願い】の使用が皇帝勅令にて禁じられている件である。
「だからさ、丁度良い事に辺境伯様も滞在中だ。奴ならばその件を皇帝陛下に奏上し裁可を受けることも出来るだろうし、魔電だったか、それを使い皇帝陛下と直接のやり取りもできる権があるんじゃないかと思うんだが」
「しかしそれではトーヤ殿に理が無いのでは」
アンコールは知矢の申し出を考えながら他の者の助けにはなる物の当人に利益が全くない事を心配する。ましてや精霊魂石に封じられている精霊を開放する為にミサエラの精霊術の使用を皇帝に許可を受けると言うのは知矢個人の利益ではなく帝国の安全保障上の話であるのだから尚更だ。
「俺の利益の話をしているのではない。友人が困っているから手を貸して欲しいと言う話だ。それに伯爵は十分理解していると思うが助かるのは彼女たちだけではなく帝国内に存在する政令を無理やり封じ込めてある石を好意的に解放し精霊の自由を取り戻すためだ。どうだろうか伯爵様よ」
知矢は真剣なまなざしでアンコールを見つめる。
対するアンコール伯爵はその視線をじっと受け止めながら無言だ。
「解りました。トーヤ殿の好意を無にするわけにはいきません。精霊術を何の障害も無く行使できるよう辺境伯閣下に強く働きかけ直ぐにでも皇帝陛下へ奏上するように努力いたします」
今まで見た事も無いほど真剣で強い意志を感じる眼差しで知矢を見つめるアンコールであった。
「そうか、頼む。しかし伯爵の立場もあるから無理はするなよ。いざとなったら彼女たちを連れて俺がこの国を出ればいいだけだ」
何の事は無いと言う口調で知矢は言うが
「とんでもない。トーヤ殿にこの国を去られては帝国の損失です。それに・・・こんな程度の折衝が上司にできなくては恥ずかしくてトーヤ殿に申し訳もたたんでしょう。しっかりとやらせていただきます」
重ねて決意を語るアンコールであった。
「ああ結果を待っている。さてそれもそうだが今近々の問題、魔族の少年、ジーオの件はどうだ」
「はい、こちらを訪問する前に帝国政府から魔電が入りました――」
数時間に及ぶアンコールとの会談。
その間は特に大きな動きも無かったが待っている方としては気が気ではない。
「なんか話が長いみたいだけど・・・上手くいってないのかな」
気が気ではないエルはその小柄な体躯をソファーの上でじたばたさせいる。
「事が事だ。政府とか貴族とかっていう話なんだそう易々と話が進むわけないだろう」
ハザトは内心イライラしていたが表面上は落ち着いた態度でソファーへ腰を掛けている。
しかし
(あいつ貴族と話を付けるとか貸しがあるとか言ってたがやっぱり所詮冒険者の若者だしな。あーもうどうすりゃいいんだ)
頭の中で繰り返し考えているがよい案も浮かばず知矢を信じて待つのが良いのか何かないのかと自問していた。
「エル、私たちは彼に委ねるしかないのよ。我慢して落ち着きなさい」
モスリーは先日とは打って変わり落ち着いた様子で腰かけながら出された紅茶をゆったりと口にしている。
「どうしたのモスリー姉」
「どうもしないわよ。今言った通りこの国で貴族や国を相手に私たちが出来る事は無いという事よ」
「どうやらいつものモスリーに戻ったようだな」
そんなモスリーの様子を見たハザトは内心イラついていた心が少しだけ和らいだ気がした。
「ええ、やはり先日の私はどうかしていたわ。やはり落ち着いて情報を整理し考察する・・・いつもしていた当たり前のことを見失っていたなんて」
紅茶のカップをテーブルに戻しながら回想する様に天井を仰ぎ見る。
「だが結果としてはトーヤと知り合えた事が良い方法に向いたかもしれんな。まあまだ最終結論は出ていないが」
ハザトも少し肩の力を抜いてソファーへと寄りかかりながら天井を見つめた。
「ええそうね。結果としてツカダ様と知り合えた、これは条件として大きいわ」
「なによなによ、二人して落ち着いちゃってさ、もう!」
エルはそんな二人を見てぷりぷりしながら目の前のテーブルに置いてある菓子をうっぷん晴らしの様にがつがつと食べるのであった。
――コンコン
ハザト達三人が控える部屋の扉がノックされた。
がばっとソファーから立ち上がる三人は扉へ注視する。
「待たせたな」
知矢が真剣な顔で入って来た。
「どうなった!」
「ねえ早く教えてよ!」
ハザトとエルは慌てた様子で懇願するように知矢へと問う。
「まあ落ち着け、そして控えろ。
どうぞお入り下さい」
そう知矢が扉を振り返り入室を即すとすぐに一人の人物が姿を見せた。
「こちらは帝国に於いてこの周辺都市群を統括する管理貴族であられるアンコール伯爵閣閣下である」
知矢の紹介に魔族の三人へ胸を張る様子して立つアンコールであった。
「「「ははーっ」」」
三人の魔族は片膝をつき頭を垂れて礼の姿勢をとる。
「いやそう硬く並んで結構だ。魔い神王国の方々よ。頭を上げてくれ」
アンコールは三人を睥睨すると優しく声をかけ知矢を促して三人を着席させた。
「改めて名乗ろう。私は帝国管理貴族のアンコール伯爵と言うものだ。こういった事態故貴公らを歓迎するという訳にもいかんが冒険者としてそして錬金術師としての名声は聞き及んでいる。その活躍に関しては礼を言おう。今後とも是非この国でその力を発揮してくれると嬉しい」
アンコールは冒険者としての三人を肯定しそれに関しては問題ないとお墨付きを与えたようなものだ。
「ありがたいお言葉、感謝のし様もありません。しかしこの度は同族がお騒がせいたし誠に持って恐縮の至り。しかし閣下のお力をもって寛大な処置を賜る事を切に願います。
申し遅れましたが私たちは魔神王国国民であり私はハザト、こちらは妹のモスリー、そしてもう一人の妹エルに御座います。」
ハザトはソファーへ浅く腰掛けながらアンコールの方を向き直り丁寧に腰を折り頭を下げる。そしてモスリーとエルも無言でそれに倣うのであった。
「うむ、丁重なあいさつ痛み入る。さすが魔神王国、魔王様の右腕と称されるカザンフ殿の御子息と聞き及ぶ。しっかりとしたお子をお持ちで羨ましいくらいだ。はっはっはー」
「父の名をご存じとは恐れ入ります」
そんな形式的なあいさつが済むと知矢が口を開く。
「さて早速だが待ちに待った本題の方へ移ろう」
その言葉に三人に緊張が走る。
「閣下宜しいでしょうか」
丁寧な口調でアンコールを窺う知矢。
「ああ、それでは早速だが帝国政府並びに皇帝陛下よりこの度の件についてご裁可が下された。心して聞く様に」
アンコールの言葉に僅かに頭を垂れ聞き入る三人。
「此度、魔神王国国民であるジーオと名乗る者が無断で当帝国に侵入、さらには自身の魔力、魔法の力をもって魔物を使役し徒党を組みし行いは帝国に対する反意を窺わせるものである」
厳しい言葉を突きつけるアンコールへ三人の身は一応に硬くなり僅かに震えさえも見えるようだ。
「・・・しかし。ここにいる帝国が誇るAランク冒険者のトーヤならびにSランク冒険者として各国で名だたる業績を残すカーネタリア様より話を聞き及ぶに子供の成した冒険、遊びの域を少し逸脱した程度の事と話もあり、事実帝国に実害を及ぼさぬ前に拘束された経緯を鑑みるに問う帝国で厳罰に処するのはあたらずとの皇帝陛下のお言葉である。
よってかの者は魔神王国国王、魔王様よりの要望に則し当国を処払いとすることと決した。
しかし未だ本人に善悪の判断が及ばぬ気配も見える事から魔力封印の上、帝国騎士団並びに任意の冒険者を同道のもと神聖教国国境にて魔神王国よりの迎えの者に引き渡す約定が成った。
以上である!」
部屋に厳粛な言葉が響き渡る。
(こうしているとこいつもやはりいっぱしの上級貴族と言うところかのう)
知矢はアンコールの隣で真面目切った顔つきをしながらそんな感想を思い浮かべていた。
「という事は・・・」
エルがぼそりとつぶやく。
「魔神王国に強制送還されて向こうでお仕置きって事だ。本人は嫌がるだろうがまあ良かったなお前ら」
「おー!ご無事に帰国できるんだ!やったぜ!・・・・オホン。帝国政府並びに皇帝陛下に於かれましては寛大な処置を賜り感謝を申し上げます」
一瞬喜びの声を上げたハザトは慌てて姿勢を正すとアンコールに謝意を表すのであった。
「いやなに。ワシは単なる伝言役にすぎん。ここにいるトーヤ殿に感謝するのだな」
でわな、と言うとすぐにアンコールは部屋を出て行った。
この後別室で労をねぎらうと称し茶菓子を供して寛いでもらう事となっている。もちろん接待役は丁稚のマリーであるのだからアンコールとしては望外喜びである。
アンコールは踵を返すとうきうきした様子で知矢の使用人の先導で去っていった。
「ツカダ様、この度はご迷惑をおかけした上にご尽力を頂き誠にありがとうございました」
モスリーはアンコールが去り扉が閉められると改めて姿勢を正し知矢へと謝意を表す。
その言葉にハザトとエルも頭を下げる。
「いや冒険者として指名依頼で関わった事でもあるしな。だが元々魔王様からの要請もあったと聞いている。俺は無関係にこうなったんだろう。気にするな」
「だがそれでも感謝する。あるがとう」
ハザトも真剣なまなざしで礼を述べるのだった。
「だがそんなに感謝している場合でもないんだぞ」
知矢はそんな事を言い出す。
「なんだって、まだ何かあるのか」
少し不安そうなハザト。
「さっき伯爵も言ってたろ 『魔力封印の上、帝国騎士団並びに任意の冒険者を同道のもと神聖教国国境にて魔神王国よりの迎えの者に引き渡す』 ってな。先ず魔力を封印されているとはいえ長い道中ジーオは大人しくしてりゃ良いが。同行する者がかわいそうになる」
知矢は嫌だ嫌だと他人の事とは言え同情をする様子だ。
「ああ・・・まあそうだな。同行する騎士団の方には申し訳ないな」
その様子を思い描いたのかハザトも同情の念を禁じえない。
「何言ってんだ他人事のように」
「ああ?他人事だろう。騎士団の方々に対して同情はするが」
「解ってないな。『任意の冒険者を同道のもと』ってやつ。あれお前たち三人の事だからな」
知矢はあきれたように言うのだったが
「えっ!私たちが一緒に行くの」
「行くと言うより帰国に付き合うのか!」
「・・・確かに同族がそばにいればジーオ様にとっても。そう適任と言えば適任かもしれませんが」
「えー!絶対国に帰ったらとーちゃんに叱られるよ。『お前たちは一体何をしていたんだ!』って絶対怒るよ」
「親父に俺たちは騒ぎに無関係だなんて言い訳は通じないしな・・・・・先に逃げ出すか」
「何を馬鹿な事を言っているのです。これもご奉公です。諦めなさい」
騒ぐ二人に最後はモスリーが〆て話題を封じた。
「まっそういう訳だ。魔神王国の一団が準備を整え神聖教国へ向かうのにタイミングを合わせるそうだから出発は二日後らしい。それまで屋敷に滞在してくれ。
そうそう今夜は騒ぎの無事解決とお前たちの歓送迎を兼ねて宴会だぞ! うまい物をたっぷり用意するからな。酒も浴びるほど飲ませてやるから楽しみにしていろ」
そう言うと知矢は猛然自室に陥っているハザトとエルを放置し部屋を出ていくのであった。
「ツカダ様!」
その後を追ってモスリーが廊下へ出て来た。
「重ねましてこの度はご迷惑をおかけし申し訳ございませんでした。一度国へ帰ることになりましたが
このお礼はいつか必ず」
そう言うと丁寧に腰を折り頭を下げるのであった。
「ああそうだな、そんなに気にする事も無いが再びこの国へ来たときは是非寄ってくれ。錬金術の工房を開きたいって言ってたな。そん時は協力するぜ」
そう言って知矢は背を向けると手をひらひら振りながら去っていった。
(本当に敵対せずに済んでよかった。懐の広い御方だったし)
モスリーは黙って見送るのであった。
――
そこには一人の女の横たわる姿が見えたる。
「・・・・・・・・ここは?・・・・・」
薄ら目を開けた女は何かの匂いや大きな音に刺激されて覚醒、目を覚ました様だ。 しかし周囲は暗くそして床や壁は硬い何かで作られているまるで平らな岩場の様な・・・そんなところに横たわっていた自身の状態を未だ思考は定まらない為か理解ができない様子だ。
「私は・・・何をして・・・」
自問するが頭に霞が掛かっているかの様に何か強い力によって思考が明瞭にならない。
「寒い・・・・」
「わーっはっはっは!!!もっと飲め飲め飲むニャ!!」
「おう言われなくっても飲むわ! わっはっはっは!!!」
「エヘヘヘヘ、モスリー姉様、そんなバルコニーなんかで寝てると風邪ひくよ、ヒック!」
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ちゃんちゃん!
いつも読者の皆様ありがとうございます。
もしよろしければ★★★★★の評価をしていただけたら幸いです。
しかし次回投稿は少々間が開くかもしれません。
(話を考えてなかった(;^ω^))
少々お待ちください。
ではまた次話にて。
とうとうロシアが侵攻を始めましたね。
中国ウイルスで世界がパニックの中何を考えているのか。
どうしようもないがどうにかしたい。無理だけど(-_-;)




