第220話 腹を割れ! ~ 「オッス!自己紹介いたします!!!!」
またいつもの倍の文字数になってしまった。けれど長すぎるので再び切り分けました。
しかし話はいつものごとく進んでおりません。
では第220話 どうぞ。
騒ぎの一夜が明けた知矢の屋敷。
この屋敷では一同、使用人たちを含め手の空いたものから主である知矢や来賓客と共にダイニングテーブルを囲み朝食をとる決まりである。今朝も知矢を始め使用人筆頭のリラレットやサーヤそして賓客として遇されているカーネタリア、その他手の空いている使用人たちも一緒の食事をしていた。
そこへ
「大変ですご主人様!」
警備担当の男が慌てふためきながら扉を勢いよく引きながらなだれ込むように部屋へ飛び込んできた。
「急報にしてももう少し礼節をもって行動しなさい!まったくもう」
知矢が立ち上げた魔道具商店の総支配人を務め併せて最近屋敷の家令を仰せつかったリラレットが慌てる使用人へ注意を発する。
「しっ失礼しました。ですが大変なんです」
「余程の様子だな。いったい何が出来したんだ」
知矢は食事の手を止め椅子から立ち上がると慌てふためく警備担当者へ向き直りながら先を即す。
「はい、昨夜拘束した三人なのですが。今朝がたまではピョンピョンさんの糸に縛られてたままマットの上で大人しくしていたのですが」
「逃がしたのですか」
リラレットが眼鏡の奥から鋭い視線を投げつける。
「いっいえ、そのような事は。そこは昨夜から変わらず・・・ともかく足をお運びいただき、状態をご覧いただければと」
慌てながら上手く報告できない警備担当者はとにかく見てほしいと知矢達へ訴える。
「要領を得ないが、分かったすぐ行こう」
そう言うと知矢は使用人の皆へはそのまま食事を続けさせダイニングを後にした。そこに続くのはリラレットとサーヤ、そして食事を早々に終えている知矢の従魔ピョンピョンとフェリシアであった。
ちなみにニャーラスは昨夜騒ぎが静まった後
「酔いが覚めたニャ」と言いつつ一人酒盛りを再開したため未だ部屋から起きてくる気配がない。
玄関ホールを通り過ぎ屋敷の外れに位置する部屋へと向かった。昨夜急遽空き部屋を仮の牢代わりに窓や戸を厳重に封鎖して三人を収容した部屋である。
知矢を先頭に皆が部屋へ近づくと部屋の前に見張り役の使用人たちがざわざわしながら部屋の扉の隙間から中を覗き込んでいる。
「何が起こったんだ」
知矢は部屋へ速足で歩を進めながら部屋を覗き込むことに夢中になり主の接近に気が付ていない警備担当の使用人たちへ声をかけた。
「あっご主人様!」
皆が一斉に振り返り知矢へと向き直りながら頭を下げる。
「ああご苦労さん。それで?」
軽く手を上げ労をねぎらい再び問いかける。
尽かさずその中にいた初期に雇い入れた元冒険者でドワーフとのハーフであるギムが口を開いた。
「ご主人様、今朝交代で来た時に中の様子を確認するために部屋を覗いたと思ってください。すると昨夜とほとんど同じようにピョンピョンさんの糸に絡んだ状態で転がる三人は変わらずなのですがその様子が! とにかくご覧ください」
義務は驚きを隠せぬ様子で慌てて状況を説明すると詳細は中を見て欲しいと扉の魔へを開け知矢をいざなった。
(どれどれ・・・あーあ、そうだろうな。魔力もピョンピョンの【鉄壁の防壁】で封じられたからこうなるわい。しかし一晩持ったと言う事は行使力ではなく魔道具のようなものかもしれんのう)
知矢は無言で扉の隙間から中を観察すると予想通りの光景に驚きもせず考察した。
扉から顔を離しそっと扉を閉め使用人たちを振り返ると
「ご主人様!ありゃあ!魔族じゃないですか。いやあの風貌に角、間違いなく魔族です。昨夜は魔法で身を変化させていたのですな!どうしましょうか。直ぐに騎士団へ通報し――」
ギムの言う通り。部屋の中には昨夜拘束したままの冒険者や魔法使いの装束を身に纏った三人がいたがその顔色は少し褐色に変わりしかも頭頂部や眉間の付近に三人ともそれぞれ独特の角を生やしておりどう見ても帝国人や近隣他国の人族には見えずだれが見ても絵物語に出てくる魔族のそれとはっきりわかる。
知矢から先日の指名依頼の結果魔族の少年を保護、拘束した旨使用人たちには話してあった。
しかしほとんどの使用人や都市にいる一般帝国民は魔族の存在を物語の中でしか存在しない言わば空想の作り話としか思っていないのが現状だ。
その物語に出てくる角を生やした恐ろしい種族が突如、しかも人族だとしか思っていなかった者たちが一晩明けると角を生やしていたのだから驚きを通り越し中には恐怖を覚え顔色を悪くしているものまでいる騒ぎであった。
「まあ待て、落ち着け」
慌てた様子で訴えるギムやそのほかの使用人たちを落ち着かせると知矢は
「皆に説明をせずすまなかった。実は昨夜のうちから彼らの正体には気が付いていた。しかしピョンピョンの糸で拘束し逃げる事もかなわないし昨夜は遅かったからな。今日にでも彼らと話をしてからその正体を看破し皆にも説明するつもりだった。騒がして済まない」
警備担当の使用人たちを落ち着かせながら簡単に説明をして詫びを口にした。
「今朝になりその姿を変えた、いや本来の姿へ戻ったのはおそらくはピョンピョンの糸に魔力を遮断する【鉄壁防壁】と言う特別な糸で魔力毎封じた結果だろう。しかし魔力の余韻で変化が持続したかまたは何かの魔道具が作用していたのが魔力枯渇でその機能を停止したかだろう。それで今朝になり魔族の姿を現したという訳だ」
「知矢様、彼らをこのままにして危険は無いと考えてよろしいでしょうか」
その場についてきたリラレットは屋敷の家令として安全上の確認を口にした。
「ああ問題ないだろう。ピョンピョンの行使力の作用が切れないうちは」
そう言いながら知矢は確認の為方へ乗るG・D・Sの従魔へ顔を向けた。
『・・・(あと数日は大丈夫です)』
と元気に手を振り上げるのだった。
「という訳だ。それにもし何かあってもこの屋敷の戦力なら何の憂いも無いだろう。そう言ったわけだから過剰に騒ぐ必要はない」
知矢はそう皆へ説明すると使用人たちは少しだけ落ち着きを取り戻したように見える。
「しばらくしたら目を覚ますだろう。魔力も発せず弱っているのかもしれないが死ぬわけじゃない」
知矢は引き続きの警備を指示し目を覚ましたら自分を呼ぶように言うとリラレットたちを連れて自室へと向かった。
自室へ戻った知矢は早速デスクに向かうと最近やっと慣れて来たインクペンで即手紙を書きあげ封をすると蝋印で封じた物をリラレットへ渡し
「アンコール伯爵宛だ。ワイズマンは今日こっちにいるか」
「申し訳ございません、生憎今日は商店の方へ。私かサーヤさんで宜しければ直ぐにでも」
使用人の中から将来の地位を見込んで最近の知矢やリラレットは公式の外部交渉や使いの多くをワイズマンへと指示する事が多かった。
元々”荷運び人足”を自称していたワイズマンであったがその実は日本でいうところの個人経営の運送会社の社長の様なもので他者との交友も広く経験も豊富で対人交渉などにも長けている事を知った知矢はそう言った外商の様な経験を積極的に積ませていた。
「いや、・・・そうだな。うん、マリーへ使いをさせよう。正使をマリー、副使と言うか、一応お目付け役でアンドウを同行させるか。魔馬車を手配、いや今は我が家に専用の魔馬車と魔馬に御者までいたな。魔馬車で行くと良いだろう」
知矢はアンコール伯爵宛の手紙の使いを使用人の中でも日が浅く未だ丁稚の位にいる女、マリーを指名した。
マリーは実のところ本名をマリエッタ・アンコールと称し管理貴族であるアンコール伯爵の娘である。
正義を標榜する騎士マリエッタの暴走で迷惑を被った事に端を発した知矢とのかかわり。その一本気ではあったが偏向した考えを強制する事を願う父、アンコール伯爵のたっての頼みで結果的に使用人として雇う事になった知矢はマリエッタを過去と決別させるために名をマリーと改めさせほとんどの使用人が”奴隷”であった知矢の商店で自信と向き合いながら庶民の暮らしと人々との交わりを当して変貌する姿を観察していた。
ここしばらくの様子を見るに落ち着いた行動と先走ったものの考え方も無くなりそろそろこの立場も卒業が見えて来たのではないかと考えていたところである。
そう言った点から試しに実家でもある伯爵家へ使いに出した時にも平常を保ちながら用をこなせるかを
も観るつもりであった。
副使にアンドウを指名したのも同様である。アンドウ、ゼンゾウ、シンゾウ、ガンゾウ達も丁稚を卒業し今では手代として店の将来を担う幹部候補生予備軍のような立ち位置である。
そろそろ彼らにも公式の外商や外交の一端でも接する機会を与え学ばせようとの考えであった。
いきなり単独で伯爵家への使いなど出来るものでもなく日頃から部下として接しているマリー。実際は年下の上司であるアンドウたちが仲良く友人のように接しているマリーであったがその実家である伯爵家を訪れる機会に同行するのは願ってもない事ではないだろうか。
そう言った考えのもとに知矢は二人を指名したのである。
「委細承知いたしました。では早速指示をいたしますれば」
そう腰を折り挨拶をするとリラレットは知矢の執務室を出て行った。
残されたサーヤは
「知矢さん、どうしますか」
ぼそりと呟く様に話すサーヤ。
「まっ奴らが目を覚ましてじっくりと話を聞いてからだが、話が進まないようならいつもの手かな」
「飴と鞭」
サーヤは後方で静かに控えるフェリシアに微かに視線を送りながらつぶやく。
同じ日本からの転移者と転生者は少なからず意思は通ずるものである。
「フッフッフ。そうとも言うかな。コルサミルやミサエラの時もジーオの時もまあまあ上手くいったからとにかくやってみるか」
『?』
視線を感じた者の自分が話題になっていることを理解していないフェリシアであった。
「それと知矢様」
「?なんだい付け加える事があったかな」
知矢はとりあえずまだ時間もある事だし紅茶でもいただこうかとダイニングへ戻る為おもむろに席を立つと
サーヤが再び声をかけた。
「もう少し筆記の練習をした方がいいと思う」
先ほど認めていたアンコール伯爵宛の手紙を思い浮かべながらサーヤはぼそりと呟いた。
「・・・・転移前から容姿は若返り、実年齢も若返ったそして膨大な魔力を身に着けて新たな地を踏んでも・・・悪筆は変わらんらしい。残念だ」
知矢は指摘を受け少ししょげながらつぶやく様に言葉を返し自室を後にした。
「・・・何故?」
残ったサーヤは置いてある書類に目を向けながらこの人はこれだけ色々な事を成する力をもっているのにと解せない様子だった。
ちなみに普段知矢の傍らで書類の整理や経理を担っているサーヤの筆は流石元とは言え貴族令嬢と言うべき流れるような達筆ながら誰が見てもきちんと読むことが出来、数字の記載も列を成し整う様は他の使用人たちからも賛美・称賛を受ける素晴らしいものである。
廊下を歩く知矢は少しだけ肩を落として寂しそうに見えるのであった。
しかし背後に従うフェリシアは『?』全く理解が付いていない為黙って従うのみである。
当然ピョンピョンは知矢の肩にいるが『・(?)』元気のない主にも気が付いていないのであった。
暫くのち、三人が気が付いたという報を受けた頃には気を取り直した知矢。
「――さて、昨夜は我が家へ突然の訪問だったので生憎大したもてなしは出来なかったが今日はじっくりと話を聞いておもてなしをして差し上げるか。なあフェリシア」
眼下にはわずかに震える魔族の三人を寝ころばしたまま知矢が誰に言う訳でもなくそう口にした。
背後に控える人族の姿のフェリシアは無言で頷きながら魔族の三人から視線を外すことは無い。
「きっ昨日、明かりの魔道具を壊したことは謝るわ。でもいきなりこんな仕打ちは酷すぎると思う」
エルと呼ばれていた少女の様な女は詫びを口にするもやりすぎであると訴える。
『・・・』
「ヒィーっ!」
エルは無言の圧力をフェリシアから受けると奇声を上げて褐色の顔を青くした。
「やりすぎだったか? しかしこちらとしては状況が状況だ。
夜中に一度姿を見せ過ぎ去った者がまた姿を見せ何の用か当家へ接触を試みた。 それを誰何し暗闇に明かりを灯したところいきなり攻撃の姿勢をとり事実攻撃に出た。おれの故郷では【器物損壊罪】と言って十分に犯罪者として扱われ身柄を確保されて当然な行為だ。
あの場で即騎士団へ突き出してもよかったがそれをあえてしなかったこちら側の配慮に感謝して欲しい位なんだがな」
当然のことであると知矢はさらりと告げるとエルは悔しそうに奥歯へ力を込め口を真一文字に何かへ耐えていた。
「いや俺たちはただ少し聞きたいことがあって訪問しただけなんだ。 少し互いに行き違った点は確かにある。それは詫びよう。 申し訳なかった。
壊した明かりも弁済する。それで許してはくれないか兄弟!」
ハザトは素直に非を認め詫びの言葉を口にし何とか拘束を解いてもらおうと必死だ。間違っても騎士団へ突き出されては困る理由があるハザトは必死に言葉を紡ぎその傍らで無用な発言をするなとエルへ目配せを送る。
「ほう、聞きたいことね。あんな夜更けに襲撃まがいの行動を見せながらも聞きたいことがあるのか」
ハザトは少しだけ早まったかと口にした言葉を呪った。
先ずは誤解だと説得して拘束を解きその後自由を得たうえで聞けることは聞けばよかったと後悔する。この状況でこちらの腹を探られては弱り目に祟り目だと言葉を飲み込んで押し黙った。
「どうした。聞きたいことがあったのだろう。俺に解る事なら答えてやるぜ」
(さてどう出るかのう。ジーオの事を口にするのか。しかしこ奴ら今の状況を分かっておらんようじゃな)
「自分で口にしたのに何故今更口をつぐむんだ。 まあ時間も惜しい先ずはこちらからお前たちへ言う事があるからよく聞いてくれ」
「「「??」」」
知矢の言に訝しい表情を見せる三人。
「お前らまだ自覚ないのか? とっくに変化解けているんだぞ。 魔族の象徴をはっきり見せられてるんだこれ以上隠し事をしててもしょうがないだろう」
知矢の言葉に一瞬顔を見合わせた三人
「えっうそ!」
「マジか!」
「なぜ!」
互いに人族の姿から魔族の姿へ戻っている事を確認すると驚きと共に理解が付かないと声を上げる。
「・・・バレては仕方がありませんね、そうです私たちは魔族です」
すこしガックリとした様子ででも素直に正体を肯定するモスリーだった。
「まっ、知ってたがな」
「うっそ!」
「ほんとかよ!」
知矢の言葉にエルもハザトも疑いの言葉を口にする。
「嘘を言ってどうする。大体お前、昨日冒険者ギルドからずっと俺たちを付けて来て屋敷へ一度潜入を試みただろう」
「うっ何故・・・」
「判ったかって、そりゃあ、あれだけの魔力を持った者が後を付けて来ればこのフェリシアどころか俺だって気が付くだろう。まあ日常は巧みに魔力を抑えているみたいだがな。人族へ変化する技も、その魔力を抑えるのも・・・魔道具だろう。おそらくは三人が身に着けているその腕輪辺りがそうなんじゃないか」
「・・・」
「当たりみたいだな。しかしその魔道具も力を失い本来の姿を暴露してしまったわけだが、でお前たちは何のためにこの帝国へ正体を隠して潜入してきた。 魔神王国の国王である魔王の指示でこの帝国で破壊活動や暗殺でも企んでいるのか。
事と次第によってはどんなことをしてでも全部はいてもらうぜ!」
知矢はこの三人がそんなことをするために来たのではないと薄々感じてはいたが試しにわざと大げさな話をぶつけて反応をみる事にした。
「なっ、そんな事する訳ねえだろう!」
「そうよそんな卑怯な真似を魔神王国の者は決してしないわ!」
「恐れ多くも魔王様がその様な卑怯な真似を指示するものですか!取り消してください!」
知矢は三人の反応に少々驚いた。
確かに言われも無い罪を着せられる事に対する自然な反応ではあるが三人の口ぶりからは魔王や魔神王国民として表裏比興を見せる事無く、ましてや自身が助かりたい一心で見せるような口ぶりでは決してないことがうかがえた。
『主様この者たちは自らの置かれた立場を理解しておらんようです。少し解らせる必要を感じますが』
知矢の背後で主の身に何かあった場合、即座にその身を挺して守れる位置に於いて無言のまま控えていたフェリシアであったがその主に対し文句を口にする彼らへ牽制の意味か少しだけ殺気を漏れさせながら一歩を踏み出したのであった。
「「「ヒィっ!」」」
とたんに三人は尖らしていた口を強張らせ動けぬ身を必死に引くのだった。
「まあまあフェリシア。彼らも悪気はないのだろう。必死に自国の王と国民の正義を訴えているだけなんだ。そうだろうお前ら」
知矢の弁護に必死に首を縦に振る三人はそれこそその形相は必死であった。
「じゃあそろそろ話してもらおうか」
(今回は飴と鞭と言うよりフェリシアの圧に屈した感だな)
知矢はフェリシアの殺気に恐れおののき委縮する三人に優しく語り掛けるのであった。
「――じゃあやはり冒険者ギルドで偶然耳にした話からあの魔族の少年を助ける為に情報を集める行為でここに来たという訳だな、あくまでも情報を知らんがための行為で少々焦ったために慌てて行動に出たっていう事で間違いはないんだな」
あらかた話を聞いた知矢は念を押す様に三人を見下ろしながら睥睨する。
コクコクと首を縦に振る三人。
「まあそれも予想通りか。魔族であることを知った段階で解っていたがな。
しかし些か早まった行動だと言うのは否めんぞ。 確かにお前たちが魔族であることを秘して純粋にいち冒険者として活動をしていたと言う話は信じよう。 その正体をできる事なら隠しつつ魔王の孫である少年を保護し無事魔王国へ送り届けたい。その思いは理解する。 だがな、既に事は冒険者レベルの話ではなくなり国家間の問題へと舞台が移った。お前たちの浅慮はその舞台を破壊し逆にジーオの身を危険にさらす行動であると知れ!」
知矢に叱責された三人はしゅんとした態度でうつむいている。
「だが」
知矢は続ける。
「行動の是非はともかく故郷の見知った者が危機に陥ったことを知り必死に助けるすべを求めた、その心意気は評価しよう。結果としてこうして捕らわれてしまっては身も蓋も無いがな。 だがその身を顧みずっていうやつは嫌いじゃない」
そういいながら知矢はピョンピョンに念話を送る。
『・・・(解りました!)』元気な返事が返ってくると即三人を拘束していた【鉄壁の防壁】の糸がするりと解き放たれふっと消え失せたのであった。
「「「・・・っえ?」」」
「お前ら攻撃の意思は無いんだろう」
「「「コクコクコク」」」
必死に首を縦に振る三人
「じゃあ拘束は解いてやろう、だが勝手な行動は許さんからな。 お前たちには部屋と食事を提供する。だから暫くは俺の屋敷に逗留して待つ事それが出来るならおれも協力しよう。
今この都市を管理する貴族でもあるアンコール伯爵が帝国政府と連絡を取り合い魔神王国と今後の引き渡しに関する協議を進める手はずだ。
お前たちが余計な事をしなければ俺が管理貴族からの情報を教えてやるし上手くいけばジーオとの面会も可能なら許可を得てやる」
「貴族って・・そんなことが出来るのか、お前」
ハザトはまるでハトが豆鉄砲でも食らったような顔で知矢を見つめる。
他の二人は唖然としながらも解かれた戒めを受け腕や体を伸ばしながら話を聞いていた。
「まあ管理貴族様や騎士団様には貸しがかなりあるからな。悪いようにはならんだろう。 それともし街へ出たいなら人族に変化していれば少しは街へ出ても構わんが必ずこの屋敷に戻ってくること。 決して勝手な真似はするなよ。もしそんな真似をしようとしたら・・・」
知矢はそう言いながらフェリシアの方へ視線を送る。
すると控えていたフェリシアは自らの拳でコツコツと腰の日本刀の柄を叩いて三人をぎろりと見つめた。
「しねえしねえ!」
「そうそう絶対言う事聞くし!」
「私も浅慮は反省します」
そう言いながらもう何度目なのか首をコクコクと必死に振る三人であった。
「よし、そうと決まればまずは・・・リラレット、サーヤ」
部屋の外で扉から中の様子を窺っていた二人へ声をかけた。
「ハイ知矢様」
「聞いた通りだ。こいつらへ部屋を用意し着替えや身の回り物を見繕ってくれ。それにまずは、お前ら風呂へ入れ。どうせクリーンの魔法しか使っていないだろう。まあ冒険者だからそれで良かっただろうがこの屋敷にいる以上は身綺麗にしてもらわないとな」
知矢の言葉に即行動を開始するリラレットとサーヤ。
一応警備の者を数人従え魔族の三人を案内に立ったのであった。
―― 一刻後
「いやー旨い飯だったな」
ハザトは満足げに出された紅茶を口にし先ほど供された朝食を兼ねた早めの昼食を反芻するように天井を見上げてソファーへ座していた。
「もう私、何も入らない」
エルはその小さいからだにいったいどれだけの食事をとったのか苦しそうにお腹を抱えてソファーへ身を預けている。
「それにしてもこれほどの屋敷に先ほどの豪華な食事の数々、そして豪華な風呂や室内設備を有し魔道具も豊富に備えている。貴方様はいったい何者なのでしょうか。貴族ではないと耳にしてはいましたが」
モスリーは風呂と食事を与えられ改めて振り返ると目の前の若者がいったい何者であるのかを聞いていなかったことを思い出した。
「そういや名乗ってなかったか。 ではあらためて。
俺はこの帝国で冒険者をやっているトモヤ・ツカダって言う。通称はトーヤだ。一応ランクはAだ。 この屋敷はまあちょっとしたことで褒められてな帝国皇帝から下賜されたものだから俺が買ったり建てたりしたものではない。
屋敷にある魔道具類は全部、俺が主催する魔道具商店で販売している物だしな、買えばそれなりにするが元々俺が生活するのに便利なものをと考えて作り出して販売しているものだ。なかなか良いだろう。良かったら土産に買って行ってくれ」
「冒険者、しかもAランク・・・魔道具を販売。すると噂の冒険者は貴方だったのですねツカダ様」
モスリーは旅先で聞いた話を思い出した。
魔鉱石こう大鉱脈が冒険者により発見されて中核商業都市ラグーンは大好景気であると。
しかもそのラグーンでは高性能の魔道具がいくつもしかも格安で販売されて大騒ぎだと。
そんなうわさ話を遠くの都市で聞いた。
モスリー達三人はその魔力と容姿を魔道具で偽り当然力も抑え秘してC,Dランク冒険やチームとしてはDランクチームとして地味に活動をしていた。変化の魔道具で容姿を変え魔力を制限しているがそれを解き放てばおそらくはBランク以上の活動をしていてもおかしくはない。
しかし他者に気取られない範囲で本来の力を発揮すれば魔族の巨大な魔力と身体能力を持っていたため受ける依頼以上に稼ぐ事は出来ていた。
噂を聞きまとまった金もある事だしラグーンで発売されたマジックバックを手に入れれば今以上に活動がしやすくなると考えこの都市へ足を向けたのである。
しかし都市へ到着しマジックバックは早々に入手する事が叶ったが思いのほか他にも良い魔道具や高性能のマジックバックがある事を知り暫くはこの都市を中心に活動して資金を貯める事、そしてモスリーも少し腰を落ち着ける事で仮の居を構えれば副業でもある錬金術師としての仕事も多くこなせると相談していた矢先に今回の騒動であった。
しかしまさかその魔鉱石発見の冒険者と欲しかった魔道具を販売する者が同一でしかも一瞬でも敵対しそうになったと思うとモスリーの背に冷たい汗が滴ったのであった。
「そうでしたか。それは大変な方へ私たちは刃を向けようとしていたのですね。今更ながらにほっとしています」
正直な気持ちを吐露するモスリーであった。
「でもさ・・・」エルがお腹を苦しそうに支えながら小声で会話へ入り込んできた。
「あの怖い人ってトーヤの配下なの。でも悪いけどどう見てもトーヤより強そうだよ」
エルは隠れるようにちらっと離れて壁際へ控えているフェリシアへと視線を送りながら知矢へ問うてきた。
「ふふっ、まあ俺より強いし、強大な魔力を有しあらゆる魔法を自在に操るっていうのは合っているな」
「だよね、じゃあ何で?ほかの使用人みたいに奴隷ってっ訳じゃないし」
エルはその疑問が気になって仕方がない様子であった。
「よしなさいエル。個人の能力を無理に詮索するのはマナー違反でしょ」
モスリーは嗜めるが「そりゃあ解っているけど」とエルは気になって仕方がない様子である。
「それにそのG・D・S!ありえないでしょう。大森林でもG・D・Sって言えばアリゲッターだって逃げ出すよ。そりゃあこの子はまだ小さい幼体みたいだけどG・D・Sを肩に乗せてる人族なんて聞いたことないわ」
モスリーは小声で聞いてきたのがいつのまにかに興奮して声が大きくなっていた。
「こいつは何でもありのスーパー冒険者ニャ!」
そこへ今起きたのであろう、ニャアラスが姿を見せ慣れたもので知矢の使用人へ声をかけ自分の食事を願った。
「何でもですか。あっいいぇ失礼しました。この度ツカダ様にお手間を取らせ暫くお世話にもなる事になりました。私はモーリス、あのひょろりとしたのは兄のハザト、この子は妹のエルと申します」
突然姿を見せた獣人の男が使用人に当然のごとく指示を出しているのを見て容姿から知矢より年上であることからモスリーは丁寧に自己紹介をしたのだった。
「ニャア、昨夜はいまいち盛り上がりに欠けたニャ。フェリシアの一睨みで終わって物足りなかったニャ。俺はトーヤんところの居候のニャアラスだニャ」
そう挨拶を返しながらニャアラスは使用人から受け取ったサンドイッチプレートとフレッシュジュースで遅い朝食を頂いている。
「何でも出来るわけじゃあない。出来る事を少しづつやっているだけだ。
そしてニャアラスは居候じゃないな、大事な友人だ。
彼はBランク冒険者としてこの都市でも有数の冒険者だから頼りになる。何か困ったことがあれば相談すると良い」
「朝からトーヤも持ち上げるニャ。困ったことがあったら言うニャ。誰か紹介するニャ」上機嫌で朝食を食べるニャアラスであった。
「そしてこのG・D・Sは名をピョンピョンと言う、そして彼女はフェリシア、今は人族の姿に変化しているがその正体は聖獣フェンリルの特殊体だ。二人とも従魔だが俺の家族だよろしく頼むぞ」
「聖獣・・・」
「フェンリル・・・」
「特殊体って・・・・・・」
三人はフェリシアの正体を聞きまさかと思いながらも驚きのあまり言葉だ出ない。
そんな三人の様子をちらり見ずフェリシアは微動だにしない。
言葉を失っている三人に構わず続ける知矢。
「そうそう失礼しました。カーネタリア様の紹介を飛ばしていましたね申し訳ありません」
知矢は少し離れたテーブルでニコニコと黙って話を聞いていた老人を紹介する。
「こちらのお方は ゴホン。
元神聖教国の教皇様でいらしたカーネタリア・イラ・カリット・ドゥ・トーマス16世陛下だ。
ちなみに冒険者でもあられるがそのランクは 【S】だ」
「「「・・・・・・」」」
さらに言葉も無く唖然とする三人
すると、突如三人そろってがばっとソファーから立ち上がると即床へしゃがみ込むと床のジュータンへ頭を擦り付け縮こまった。知矢の生まれ育った日本で言うところの土下座である。
「陛下!知らぬ事とは言え大変失礼をばいたしました。我ら魔神王国、四魔将が一人赤の将 カザンフが三子に御座います。陛下の御高名は予てよりお聞きいたしておりましたがこうしてご尊顔を拝する僥倖を授かることが出来光栄の至り」
ハザトが床へ顔を伏せたまま三人を代表するように一気に口上を述べるとそのまま微動だにしない。
当のカーネタリアはいつものごとく
「ヒョッヒョッヒョ」
としわくちゃの顔で微笑むのみ。
「こいつらカーネタリア様に対してだけ態度が極端だニャー」
そう呟きながらニャアラスは残った朝食をあっという間に平らげるのであった。
昨日3回目のワクチン接種の案内が届きました。
しかしそれも含め世界情勢が混迷を深める一方です。
中国が
ロシアが
困ったものです
(-_-;)
ではまた次話にて




