第216話 完了報告そして目を向ける者 ~ 「出してくれよー!!!!」
ハイこんばんは
第216話を投稿いたします。
ではよろしくお願いいたします。
知矢はニャーラス達と共に一度アンコール伯爵の元を辞して帰路についた。
現状で知矢の出来る事、考え付く事も無かったので暫くは帝国と神聖教国との間で交わされる外交折衝の推移を見守るしか術がないと判断したためである。
「トーヤ殿。魔人の少年はお任せください。豪華な歓待という訳にはいきませんが移動の制約以外、食事や生活などの環境は配慮いたします」
そう言いながら知矢を館であるラグーン城と呼ばれるアンコールの邸宅の玄関まで見送った伯爵が知矢に気を遣うように述べてたが知矢は苦笑いを浮かべつつ
「まあ、あまり甘い顔はしなくても良いと思う。が、まあ伯爵の立場だと考え方によっては本来国賓として入国するとそれ相応の接し方をしなけりゃならない程の者が不法入国という厄介な立場としてを珍入してきたんだ。バランスが難しいところだろうが程々にな」
そう半ば慰めつつも自身もどうして良いのやら明確な返答をできない分上手く返答が出来ない知矢だった。
館を出た知矢は
「一度冒険者ギルドによって報告だけするか」
知矢はそう一行に声をかけこの後の予定を告げた。
元より知矢と行動を共にする一行であるので否は無い。一行は伯爵からの魔馬車を丁重に断るとその足でラグーン冒険者ギルドへ向かうのだった。
「ニャアそうだニャ。一応指名依頼だから依頼達成の報告はいるニャ。??依頼達成だよニャ?」
「アハハハッ・・・・多分大丈夫だろ。元々は調査が目的だったことだしな」
「ヒャッヒャッヒャ。だいぶ予定と違ごうとるがまあ調査し原因を特定したんじゃ問題なかろう」
一行は釈然としないものを感じつつも互いに成果を確認するように苦笑いを浮かべながら進むのであった。
ギルドの分厚い扉を開けて混雑する人の波を縫う様に進みながら見知った冒険者と声を掛合いながら笑みを交わす知矢やニャアラス。
そしてカーネタリアの姿をみとめた冒険者はその姿を見ることが出来た事に感動や感嘆の声を上げながら見送っている。
やはり伝説のSランク冒険者と言うのは絶大な存在感も醸し出している様子だ。
知矢の従魔であるピョンピョンは当初こそG・D・Sという恐れられる存在であったが故に逃げ出す者や顔を引きつらせる者が多数いたが今ではその愛嬌ぶりと慣れもあるのだろう。可愛いペットの様に受け止められ始めている。
しかし最近多い他の地区から初めてラグーンを訪れた冒険者達にはやはり距離を置かれる事や驚きを持って迎えられることも少なくはない。ピョンピョン本人はいたって気にもならない様にそう言った冒険者にも知矢の肩に乗りながら手を振るのであった。
そしてもう一人の従魔フェリシアは人化の魔法を使い長身の若い女性の姿であることから余計に人の目を引き付けるのであるが勿論なじみの冒険者たちが彼女?に言い寄る事など決してない。
やはり声をかけてくるのはラグーンに馴染みの無い冒険者だけである。
ギルドに併設されている食事処で既に酔いが回っていると思われる数人の冒険者グループが大勢の冒険者の中でひときわ目立つ存在であるフェリシアへ目を向けたのは無理も無い事ではあるのだが。
「ようねーちゃん。そんなガキやジジイなんかといないで俺たちと組まないか。俺たちはかの有名な【無敵の強剣】だ。CランクだがもうすぐにBランクに上がれる力を持つって評判を知ってんだろ。俺たちについて来ればいい思いをさせてやるぜ」
などと酔っぱらいながら絡む輩はいるものだ。これも知矢の好きな異世界冒険者のお約束である。
しかし周囲いる知矢達を知る冒険者は
「あーあ、しらねっと!」
「おい距離をとれ、巻き込まれんなよ」
「くっくっく、見ものだ見ものだ」
等とその様子をまるでイベントの様にニヤ付きながら距離を取り見物する始末である。
案の定フェリシアに絡むような輩は勿論その力もそれなりでしかなくフェリシアの力を推し量ることなどなく無言の彼女?はちらりと男たちに一瞥を送るだけで
「ヒャッ!!・・・・」
「うわわわあああぁー」
「エッ?あわわわわ・・」
など情けない声を上げて失神で済めばよい方で中には失禁する者さえいた。
フェリシアは主である知矢から
「みだりに殺気を放つ事の無い様に」
と命じられていたため単に視線を刺しただけであるのだがこの始末である。
フェリシアの洗礼を受けた大口をたたいた未熟な冒険者はその後、先達者である優しい冒険者たちの介助を受けた後、酒の肴にされながらラグーンで触れてはいけない物が何かの教えを乞う事になる。勿論その勉強代を自ら差し出しての事であるが。
「トーヤ君!」
人込みと騒ぎを抜けたところでラグーン冒険者ギルドサービスマネージャーでもあるニーナが自身のデスクから手を軽く振りながら声をかけて来た。
「ニーナさん、少し前に無事帰還しました」
そう挨拶を返しながら知矢は簡単に指名依頼の成果と対応をアンコール伯爵へと委ねたことを伝えた。
「エッ! 魔族の方が今回の原因だったんですか!」
思いもよらぬ事にニーナは思わず声を上げてしまい慌てて口元を抑えながら周囲を軽く見まわした。
「ええ、その通りです。大丈夫ですよ、魔族の少年の姿は門を通過するときに騎士団の方々以外に周囲の市民の方に騒ぎを目撃されてしまっていますからね。今頃は都市中にうわさが広がっている事でしょう」
そう慰めるようにニーナへその時の状況を話す。しかし未だ冒険者ギルド内でその話が騒がれていないところを見るとジーオ少年が魔族である事に気が付いた冒険者は偶々居なかった様で都市内の噂もここに届くのは幾分後になりそうだ。
「ごめんなさい、つい驚いてしまって。でも私も魔族の方、魔神王国の方にお会いした事は無かったわ。とても強大な魔力と身体能力を誇るけど多種族や他者への敵対心や領土欲求などの無い穏やかな民族と聞き及んでいたのよ」
ニーナは流石ギルド主任だけあり一般市民にはまず知られていない魔族の存在を熟知していた。だがまさかそんな遠い国、ほとんど物語にしか登場しない種族が自分たちの国へ姿を見せて騒ぎを起こすなど思いもよらぬことについ声を上げてしまったのだ。
周囲の冒険者たちはギルド内の騒めきにニーナの声も紛れて気が付く者はいなかった。
しかし実のところニーナの上げた声に敏感に反応した者ががギルドの中に唯一、一人いたのだった。
――「・・・・・・・」
一見ひょろりとした体躯で冒険者としての強さや強靭さを窺えなさそうな男は革のマントにその身を覆い、フードを目深にかぶったままテーブルに突っ伏して一見酔って寝ているかに見える。
(今、確かに魔族と言った・・・・・)
フードの奥から微かに光る視線の先には知矢達の姿が映し出されていた。
男はなおもその若い冒険者とギルド職員の話を聞こうと聴覚神経を研ぎ澄ます様に集中していた。
「――という訳であとは高位貴族様や帝国政府が国家間の話し合いで今後の対応をどうするのかっていう話になりますから私たち民間人である冒険者は手を引いたわけです」
「そうでしたの。でも市民やほかの冒険者たちに何か実害が出る前に事を済ませることが出来て本当によかったわ。トーヤ君たちのお手柄ですね」
「でもニャーニャさん。俺はもう一つ騒ぎがあればもっと面白かったニャ。魔族って言うから強い奴が出てくるかと思ったら一応国王、魔王の孫らしいけどとんだやんちゃ坊主だったニャ。しかも強敵というには10年早いまだまだ子供だったニャ」
「あらあら、そうでしたか。残念でしたねニャーラスさん。でも無事に指名依頼達成ですからおめでとうございます」
――「・・・・・・」
(魔王の孫だと・・・・誰だ。リュッケ様はもう成人されているはずだ。やんちゃ坊主・・・・
まさかジーオ様・・・いやまだまだ子供だ。遥か大森林を抜け聖教国の遥か先まで来れるはずもない。だがそうすると・・・・)
男は耳を欹てながら思案に暮れた。
知矢達は一通りニーナへ報告をすると指名依頼達成の処理を受けると留守にしているギルド長ガインへ伝言を頼み冒険者ギルドを後にするのであった。
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「お帰りなさいませ、知矢様。お早いお帰り、ご無事で何よりでございます」
リラレットをはじめとする使用人たちがが知矢を屋敷の玄関でにこやかに出迎えながら他の使用人が知矢の荷物や装備を受け取る様子を見守っている。
装備や荷と言っても知矢は最高神からもらったリュックとニーナに選んでもらったフード付きのローブを脱げば終わりだ。腰の日本刀は左手に下げ常に携行しているがこれも無限倉庫へ収納すればいつでも瞬時に出し入れが可能ではあったが無手の状態で突然剣を出す場面を部外者に目撃されるといらぬ嫌疑を呼ぶことも考慮し刀だけはいつも携えていた。
以前知矢は【我が家は貴族ではないのだから貴族の様な扱いや振る舞い言動、変に貴族の使用人ばったような態度や行動をとらない様に厳命しておく】
と、そう宣言していた。
その知矢の命もあり使用人たちは主の心の内を慮りリラレットを筆頭に一時期貴族寄りに突き進んでいた思考や行動を修正していた。
しかし玄関へ主の帰りを出迎えるのは使用人にとって当然の事とリラレットに言われては知矢もそこまでは否定はしない。しかし不必要に大勢が列して出迎えることの無い様にだけくぎは刺しておいた。
よって本日も出迎えはリラレットを始め知矢の身の廻りを手助けするもの。同行する客を誘導接待する者など4名だけである。
「ああ皆無事に戻った。ニャーラス、カーネタリア様と自由にくつろいでいてくれ」
リラレットへ二人には酒と食事を供するように命じながらニャアラスへ声をかけてから知矢は自身の執務室へと向かう。
「ニャア、分かってる、好きにやらせてもらうニャ。カーネタリア様。先ずは風呂へ行くニャ」
最近ほぼ毎日知矢の屋敷にいるニャアラスはすっかり風呂好きになった模様で出先から戻ると風呂へ入らねばくつろげないと言うほどだ。
特にこの屋敷以外の風呂などでは獣人族特有の体毛が抜けて他人へ迷惑をかける事を気遣い浴槽へ入ることをためらっていたがこの屋敷では別だ。
知矢の知識とサーヤが試行錯誤をし開発したろ過循環装置(ジェットバス機能内蔵)によりいつでも浴槽内が綺麗に保持出来る事を知ったニャアラスは大喜びで「サーヤは凄いニャ」とサーヤを抱きしめ頬をスリスリしながらほめたたえたほどである。
言葉数の少ないサーヤは頬を赤らめながらも喜ぶニャーラスの様子に満足げであった。
「ああ、そうさせてもらうかのうヒョッヒョッヒョ」
使用人の先導で二人は浴室の方へ消えていった。
知矢は階上の執務室に設けたデスクの椅子へ腰を下ろす。
当然のごとくついてきた従魔のピョンピョンは知矢の肩からピョンと飛ぶとデスクの側の定位置へ座り居を定めた。
もう一人の従魔フェリシアは少し離れた扉の脇に立ち警護の様子だ。フェリシアは基本的に寡黙で余計な言葉を口にせず微動だにもしないで控えていることが多い。
一度知矢が椅子に座り楽にしていてよいとか自由に過ごしてよい、と言った事があったが、
『主様御心配には及びません。この状態が楽に自由にしているとお思い下さい』
との弁である。それ以来知矢は自由にさせている。
もう一人知矢に次いで部屋へはいって来たリラレットは知矢とデスクをはさんで前へと進み出た。
「改めましてお帰り成しませ知矢様」と丁寧に腰を折り頭を下げつつ主の帰還を労うのだった。
「今回は土産は無いが厄介ごとだけ拾ってきた。まあこれ以上の厄介は貴族様に任せて終了だ。留守中、店や屋敷に変わりは無さそうだな」
知矢は簡単に依頼の様子を語ったがやはり【魔族】の話が出るとリラレットも驚愕の声を上げた。しかしリラレットの判断基準は主が無事に帰還し店や使用人への影響がない出来事は些末な事の様で話は商売の報告や現在進行中の指示内容の達成などリラレットが差配する知矢の配下の出来事へと移っていった。
「――よって現在うどんの屋台に加えそばの屋台も順調に運営が進んでおります。それもこれも新たに雇い入れました孤児院からの人材が思いのほかヤル気に満ち覚えもよく、お客様の評判も上々という事で指導する者たちも高く評価をいたしております」
知矢は転移前の日本で言うところの【ラーメン】の麺の製法を入手し今は【そば】と名を付け屋台での試験販売を始めさせていた。
なぜラーメンがそばと呼称するのかは【第210話】を参照願う。
「うどんとそば。先ずは順調だな。この調子で暫く、そうだな数か月は調理や接客等を身に着け併せて材料の原価管理や売り上げ、経費計算や帳簿の付け方などを身に着けさせるところまでは予定通りに進めてくれ。人材が不足するようならばそれは別途考える」
「はい委細承知いたしました。使用人の人数は孤児院からの60名の採用者に加え冒険者をからの転身やその他臨時雇い迄含めますと暫くは十分に機能する人数がそろっております。知矢様が考える将来を見据えますと今後も随時採用をしても宜しいかと」
そんな商売や知矢が新たに得た屋敷の維持管理等の人員の話を暫く続ける二人であった。
そんな中、知矢のレーダーにしばらく前から屋敷の敷地へ潜入した者の様子が映し出されていたのであった。
実は・・・・・
屋敷への帰路の途中で一行を尾行する気配を感じたのは知矢そしてフェリシアであった。
(フェリシア、後をつけてくる者がいる)
知矢は従魔との主従ラインで秘かに会話を行える能力を使いニャアラスやカーネタリアへ聞かれることなく情報の共有を行っていた。
(はい主様、冒険者の形をした男が1名の様です。押さえますか)
(いや、殺気も無いし俺のレーダーでも黄色のままだ。目的が解らん。しばらく様子を見る。しかし俺の周囲に危害が及ぶようなら即拘束しろ)
(了解いたしました。しかしカノ者は並の者にしては魔力が少々では御座いますが多いと思われます。注意するに越したことは無いかと)
(何かあったら私の糸で動けなくしてあげますよ)
(ああピョンピョンも頼む。ともかくこのまま様子見だ)
((解りました!))
さて魔人ジーオの件が知矢の手を離れたというのに今度はいったい何者が何のために知矢の周辺へ近づくのであろうか・・・・・。
(フォッフォッフォ、何やらまた新たな楽しみが起こりそうじゃなヒョッヒョッヒョ)
知矢はニャアラスやカーネタリアは気が付いているなど思いもしなかったが流石Sランク冒険者。最初から当然のごとく付けて来る者、いや実のところこの老人は既に冒険者ギルドの扉を一歩入った時から
(ハテ、この魔力は・・・・何者かのう。まあ良いわい)
と察知していたが脅威を感じなかったため放置していたのであった。
2022年2月2日
早い物で年が明けて1月があっという間に過ぎました。
どんどん中国ウイルス感染者がそうかの一途で東京は東陶初の1日2万人の大台を突破してしまいました。
皆様、慣れや気の緩みにご注意下さり自身や周囲の方の安全を守りましょうね。
慶応大学性が数百人規模のパーティーで感染を拡大させたとニュースになっていましたが・・・
若いな(-_-;)
偏差値高いけど・・・・馬鹿だな
ではまた次話にて。




