第215話 葛藤・ジレンマ ~ 「・・・わし、もう帝都に帰りたい」
なんと珍しく久しぶりに2日連続投稿
話が進んでいるとは決して言わない!
では第215話 どうぞ
魔神王国の住人であり魔人種であるジーオを連れて中核商業都市ラグーンへ帰還した知矢達は処遇に関し協議することも含めラグーンの管理貴族であるアンコール伯爵の元へ連れてこられた。
しかしそこで待っていたのはアンコールだけではなくその上司たるバスラム辺境伯であった。
バスラムは皇帝よりの緊急魔電の件を置き去りに自身が皇帝より勅命を受けたラグーンに於いて最近目を見張る活躍と功績を残した噂の冒険者への接触を任された件を優先すべきと考え対面した知矢へと唐突にその出自などを問う強攻に出た。
しかしバスラムの殺気など、どこ吹く風の知矢。しかしその殺気を主に対する敵意と受け取った知矢の従魔たるフェリシアが逆にバスラムへと圧力をかけ知矢の身を護ろう動く。
そんな事態にバスラムの配下であるアンコール伯爵は上司に対し帝国皇帝の忠臣の意を示し諫言をするのであった。
「お前が言いたのはそれだけか」
もう勘弁しろと言いたげな顔の上司に対しアンコールはそれを否定して諫言の2点目を続ける。
「いえ、実はもう一点お伝えして於かなければならない事がございます」
上司に恭しく頭を下げながらちらりと横目で知矢の方へ視線を送るアンコール。
「なんと!まだあるのか!」
バスラムは苛立ちながらも早く言えとばかりに手の甲をアンコールへ振り話をそくした。
「恐れながら申し上げます。先ほど閣下が 『貴様はなんだ』 とおっしゃった方に関してでございます」
「・・・なんだ、このじ、いや老人がどうした。この若い冒険者の単なる仲間ではないのか」
バスラムはジジイと言いそうになるのを直前で踏みとどまりかろうじて老人という言葉にとどめた。
(アンコールが言い出すくらいだ高名なAランク冒険者だとでも言うのか。そうは見えなくも無いが、しかしだからどうだと言うのだ。その程度の冒険者などいくらでも居ろう。このわしに対し気安く話しかけてくるなど・・・)
こういった考えを持つと一見傍若無人で選民意識の強い知矢の言うところの 【異世界貴族物】に出てくる典型的な高位貴族のように思われるかもしれない。
そういう見方もできなくはないが一方でバスラムは平時は貴族、高位貴族の位を振りかざし己の欲望の為に権を振るったり他者、特に貴族以外の者に対して圧力をかけたりする事は決してない人物だと擁護しておこう。
逆にそう言った自身の位、皇帝陛下の威を借る行為を否定し処罰の対象にするほどの考えを持つ人物でもある。
そう言った事から皇帝の信も厚く一般市民から批判の対象になる事も少ない。ともすれば好意的に受け止められることが多々あるぐらいであった。
しかし相手が ”冒険者”であると本人が無自覚に厳しく接する事が多いのが唯一の難点なのかもしれない。
この事は自身の息子でもあり現ラグーン冒険者ギルドに於いてギルド長を務めるガインの件が有ったからだというのはあまり知られていない。
大事に厳しく育てた息子が貴族位を家や家族を捨てて野に下り冒険者になった事に当時は衝撃を受け父として激しく動揺をしていた時期があったという話が漏れ伝わっていた。
それが逆に【冒険者】と言う職業に対する拒否感、険悪の情を心に持ってしまったのである。
そう言った個人的感情に左右されることを良しとしないバスラムであったがそれが気が付かない程息子、ガインの件は衝撃的な事柄であったと言える。
バスラムはアンコールの言い出す程度の事はその程度の話であろうと思いながらも念のため怒気を抑え話に耳を貸すのであった。
「閣下、こちらにおわす御方は・・・」
(おわす御方だと! まさか何処かの貴族か。ありえなくも無いが男爵や子爵程度なら物好きの貴族冒険者もいると聞くがそれ程気にする者ではないはずだ・・・)
「――伝説のSランク冒険者でもありその自出は神聖教国の数代前の教皇様であられました【カーネタリア・イラ・カリット・ドゥ・16世】 様その人でございます」
「・・・・・・・なっ何と申したアンコール」
バスラム辺境伯はアンコール伯爵の言葉に理解が追い付いていないようで思わず聞き返してしまった。この様な失態は貴族としては恥ずべきことであったがそれを忘れる程バスラムは衝撃を受けた様子である。
「・・・オホン。伝説のSランク冒険者でもありその自出は神聖教国の数代前の教皇様であられました【カーネタリア・イラ・カリット・ドゥ・16世】様であられますと申し上げました」
アンコールは上司の高位貴族としての失態を聞かなかったことにして改めて同じ言葉を並べた。心の中では動揺する様を見て日頃頭の上がらない上司に「してやったり」と思っていたがそのようなことはおくびにも出さない。
「・・・・・・(Sランク・神聖教国・・・・教皇・・・)」バスラムは自身の中でそのセリフを反芻しながらその少しうつろで怯えの見て取れる視線を彷徨わせる様にカーネタリアとアンコールの間を行き来させた。
その視線を受けたカーネタリアは相も変わらず「ヒョッヒョッヒョ」としわくちゃの笑顔を向けるのみ。そしてアンコールへ何度目かの視線を向けると、強く頷く様に顎を引き上司たる辺境伯へ念を押すのであった。
それを受けバスラムはハタと我に返ったようにソファーから立ち上がり動揺を隠しながら必死に貴族の礼をとり
「カーネタリア・イラ・カリット・ドゥ・16世陛下とは知らず大変失礼をいたしました。伝説の冒険者でもありかの国の教皇陛下をお迎えできる事、喜ばしくこの帝国に於いて辺境伯を仰せつかるこのバスラム、陛下を歓迎いたします」
繕うように頭を下げたその顔はおびただしい汗が垂れ流され顔色は真っ青であった。
「ヒョッヒョッヒョ。そのような礼は不要ですぞ、辺境伯殿ワシは単なる一介の冒険者のジジイじゃてなヒョッヒョッヒョ」
そう言いながらもカーネタリア老人は飄々としながら微かな殺気ではなく気の圧力をバスラムへと向けていたのだが。
「まあ、わしの事は良い。それよりもこの青年じゃが、こんな素晴らしい若者は中々おらんと思うがのう。欲にも血にもまみれぬ気持のいい若者じゃて。どうか辺境伯殿も今後彼にも目をかけてやって欲しいのう」
ヒョッヒョッヒョとバスラムに圧をかけながらもおどけた口調で知矢を擁護するのであった。
(カーネタリア様も結構えげつないな。でも助かるわい)知矢は老人がバスラムへ向けた気の圧力を感じながらも年長者でもあり高位冒険者そして何より元とはいえ隣国の教皇であった者の言を帝国の臣下が無下にできないであろうと知りおかげで今後はそう言った貴族がらみの面倒が減ると良いなと考えていた。
「もっ、勿論でございます陛下。いや事実彼は当方の皇帝陛下の関心も呼び是非近くへと招きたいと仰せで臣下たる私を使わせたほどでございます。今後も彼の活躍に期待するあまり逆にその心中を知りたい一心で過剰に接してしまった事、臣、不徳の至り。心よりお詫びいたします。トーヤ殿と言ったな。君にも大変失礼をした、許して欲しい」
滂沱の汗を必死にぬぐいながらバスラムは引きつった笑顔で必死に弁明をし詫びの言葉を口にした。
「ああ、俺はそれ程気にしていない。今後とも俺に不必要な要求をしなければな。辺境伯殿」
知矢はそう言いながらカーネタリアをまねて殺気ではなく僅かな気の圧力をかけるのであった。
ブルッっと一瞬震えたような素振りを見せたバスラムは
「わっ、分かった。む、勿論だとも。【冒険者よ自由であれ】は帝国はおろか近隣各国共通の認識である。トーヤ殿の邪魔や行動の制限など決して行わないと誓おう!」
滂沱の汗は途切れることなく、さらに青い顔から滝のように流れ落ちながら床を濡らす。その様子を脇で見ていたアンコールは
(ここで助け舟を出しておくか。一応上司であるからな)と、
「バスラム辺境伯閣下。どうやら帝都からの長旅の疲れがお出になっているご様子。この後は臣が話をまとめます故お部屋へお戻りになりご休息あそばせては如何でしょう」
そう言うと老執事とモンドールへ目配せをした。
「ああ、そうじゃな。カーネタリア様、トーヤ殿申し訳ないが歳のせいか体調が思わしくない。失礼して下がらせていただこう」
そう言うと二人に頭を下げおぼつか無い足取りをモンドールと老執事に支えられるようにしながら部屋を出て行った。
「フーッ」
バスラムが部屋を出ていき分厚い一枚板の大戸が閉じられるとアンコールはソファーへ身を預けるように腰を落とし大きく息を吐くのであった。
「伯爵閣下も上司に気を使いますな」
いたずらな笑みを浮かべる知矢であった。
「よして下さい。いやぁ、生きた心地がしませんでしたぞトーヤ殿。 そうじゃ」
知矢へ苦笑いを浮かべて気を抜いたアンコールは即座に背を預けていたソファーから身を起こし背筋を伸ばすとカーネタリアへ身を向けた。
「陛下、ご挨拶が遅くなり大変失礼をいたしました。お初にお目にかかります。この近隣都市群を統括する管理貴族を仰せつかっておりますアンコールと申します。陛下を当地へお迎えできた事、最高の誉れと名誉でございます。お時間の許す限りごゆっくりとそしてご自由に都市をご見学あそばせ末永くご滞在くださいます様」
アンコールはカーネタリアへと歓迎のあいさつをする。
アンコールは冒険者ギルドや配下の者から元教皇が来訪中であると情報を早々に得ていた。しかし知矢と行動を共にし今は冒険者として活動する事を鑑み余計な手出しは不要であると部下にも通達を出していたほどである。
半分は通達の通りであったが半分は(余計な事をしてトーヤ殿をまた怒らせてはいかん)と言う思いが強かったことも事実だ。
今回の様にイレギュラーが起きなければ・・・。
「ヒョッヒョッヒョ。伯爵閣下、一介の冒険者にそんな礼は不要じゃてヒョッヒョッヒョ」 そう言うとカーネタリアは席を立ち先ほどまでいたニャーラス達のいる席へと戻っていった。 知矢の背後に控えていたフェリシアも同様に知矢へ頭を下げると位置を戻すのであった。
「さて、邪魔なうるさい奴がせっかく居なくなったんだ。本来の話をしよう」
知矢はそう言うと冒険者ギルドからの指名依頼の経緯から洞窟で魔人の少年と出会った時の状況。ジーオから聞いた国を出奔してきた経緯などをざっと話した。
それを黙って聞いていたアンコールは今度は自らの元へ送信されてきた魔電を示しながら緊急の命が出ていたことを語った。
「偶然とはいえトーヤ殿が依頼で魔神王国の少年を保護してくれて助かりました。下手な者が遭遇していたらどんな騒ぎになったかと思うと・・・」
「まあ、たまたまだ。そんな事より今後の対応はどうするんだ。魔神王国の国王の要求通り直ぐにでも国境まで連れて行き相手国へ引き渡すという事になるのか」
知矢は国家間の依頼に一回の冒険者が同行できるわけもないと解っていたが心残りはやはり結果的にジーオを半ば騙して連れて来た事になってしまい彼が、彼の心内をまた乱すのではないかとの思いだ。
出会った当初は攻撃的であった少年が食事を当してそしてその後のんびりと歩きながら話を聞くうちにだんだん穏やかな顔つき、話振りに変わって言った事を思い出していた。しかし都市へ到着直後、急に兵士や騎士に囲まれ魔力を封じられて投獄された彼の事を思うと知矢の心も痛む。
国家間の話と知矢と少年の心情を同じ次元で語ることはできないのは転移前の社会で十分に痛感していた。
個人の感情と国家の行く末そしてそれに多大なる影響を受ける国民たちがいるのは事実である。誰かを犠牲にして国家が成り立つ等と軽々しく言うのは政治家の常であるが知矢は相反する事柄を簡単に割り切れるものではなくジレンマに陥るのであった。
決して回答が出せない問題でもあるが故に人類は多大な犠牲の上に集団生活を余儀なくされるのである。
今回の件は単純に法に照らせば国境を不法におかし潜入してきたものを拘束し、相手国に引き渡す。単純な話だ。
確かに国境線を厳密に監視し往来を禁止しているのは”南の大国ルドマリッド人民共和国”に対してだけであるのでそれ程強硬に不法入国だと騒ぎ立てる必要も無いのがこれまでの慣例である。
しかし相手国の元首がこちらの国家元首に対して正式な拘束と引き渡しを要求しておりまたその相手国と敵対関係にもないことから拒否をする人道的理由も見つからない現状では引き渡しを拒むことはできない。
唯一あるのは当人が拒否する点だけであるが知矢としてもそれだけでは引き渡しに強硬に反対する事は出来ない。そう、どう考えても単なる子供が起こした騒ぎなのだから保護者へ引き渡すのが一番である。
「そうですな。一応今後の流れとしては帝都の皇帝陛下へ保護した旨を報告しその後の指示を仰ぐとなるでしょう。特に問題もないのでその後はやはり魔神王国へ向けて移送という運びになるかと。しかしトーヤ殿には何か問題やお考えがあるやに感じますが・・・」
「まあそれが当然の対応だろうな。俺は特にそれに異をはさむつもりはないんだ。だがな」
知矢は少年と短い時間であったその間に約束した事を反故にする結果になったことをジーオに申し訳ないと思っていることを話した。
「トーヤ殿はお優しいですな。確かに約束をしてしまった手前それが果たされなかったことの相手の失望とトーヤ殿の後悔。理解は致します」
そう言いながらアンコールは少しだけ知矢の顔色を窺いつつもやはりそこは帝国の規範と皇帝の臣として受けた命に準じる立場を告げるのであった。
「ああ、勿論だ。伯爵や帝国皇帝の邪魔をしようなどとは思わないし今回の場合どう考えてもジーオが悪い。帰国してから存分に叱られるべきだ」
そう言いつつも知矢は何か別の方法で双方が納得できる術はない物かと思案するのであった。
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「ちくしょー!!!!
出せ!!!ここから出しやがれ!!!!
俺をだましやがってあのやろ!!!!!!!!!!!!」
薄暗い騎士団の管理する地下に設けられた牢獄ではいつまでもジーオの罵声が響き渡るのであった。
本夕刻、帰社途中の出来事。
複合五差路には左折路が2本あります。私より先に前から来た車が右折して私の進路より手前の道へ曲がっていきました。
私がその後を曲がった瞬間身の右端に自転車が倒れる映像がそしてドン!という鈍い音が。
事故に気が付き急ぎ停車後事故現場へ向かいました。
バンパーの下に挟まれた中年男性。急ぎ意識を確認、生きてる。呼吸もしているが意識があまりない。
救急車を要請。
車をバックさせてバンパーの下から出した後意識が戻ったので皆で協力路肩へ移動。
確かに確認を怠った車が悪いのですが歩道を爆走してそのまま横断歩道へ突っ込んだチャリダーも悪いと思います。
しかもこの自転車右側走行をしていたし。
どっちもどっちですがまあ法的には車が悪いのですけど。
チャリダー(スポーツサイクル)の人は無謀な自己中心的な運転がひじょうに多いのも事実。
困ったものです。




