第208話 急報 ~ みんなで食べるとおいしいね!
お待たせいたしました。
11月に入り初めての更新です。
では第208話 どうぞ
洞窟の中にある小穴へと急ぎ取って返した知矢の目の前。正確には足元には白い艶のある糸で再びぐるんぐるんに縛られた少年が蠢いていた。
「またこれかよ。解ったヨ解ったから解いてくれよ。もう暴れないって!」
少年はもだえる芋虫の様に体をバタバタと上下左右にもがきながら訴える。
「ニャア、なにがもう暴れないだニャ全く」
猫獣人族の青年ニャアラスも傍らに立ち腰に手をやりながらあきれた様子だ。
フェリシアは表情を変えずにじっと見守っている。
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「うっせい!じじいこれでも喰らえ!!!」
少年は半ば自身の行いをからかうように説教をする目の前の獣人に自身の力を見せつけようと得意の火魔法をお見舞してやる、と片手に魔力を込めた。
魔人族、魔族であれば誰でも豊富な魔力を有し攻撃魔法などお手の物だ。
少年は即座に魔法を発動しこうるさく言葉を並べる獣人の青年へ痛い目を見せさらには自身の力を証明するつもりであった。
しかし人族の魔導士や魔法使いと呼ばれる者たちより何倍も早くしかも無詠唱で魔法を発することのできる魔族であったが猫獣人の青年に向けて『ファイヤー』と初級の火魔法を行使する直前、傍にいたG・D・Sによって魔法を発するより先に最前と同じく魔力をも封じ込める糸によってあっという間に再拘束されてしまったのである。
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知矢が洞窟の小穴の外でSランク冒険者のカーネタリア老人と今後の対応を協議していた時にその騒ぎが起き知矢も魔力で身体を強化させ一瞬で洞窟の小部屋へと戻り騒ぎを止めようとしたのであったがすでに事は済んでいた。
『・・・(まだまだ子供ですね)』G・D・Sのピョンピョンは勝ち誇ったように少年の上でぴょんぴょん跳ねていた。しかしよくよく考えるとこのG・D・Sも子供と言えばまだ幼体でありG・D・S界隈では十分に子供なのだが。
「ピョンピョンご苦労。おかげで大騒ぎにならずに済んだ」
しかし知矢は再び活躍した従魔を褒めたたえるのだった。
確かにジーオの行いは子供のそれだ。
恐らくは自分の力や考えを周囲の者、大人たちが受け入れず逆にいさめられる毎日の中でたまりにたまった鬱屈や自身の証明のために魔神王国を出奔。いやどちらかと言うと家出をし国を離れた場所で得意の【従属】(テイム)によって自分の軍団を作り上げて力を証明する夢を見ていたようだ。
だからこそそれは子供のそれなのである。
自身の力を過剰に信じそれを理解できない大人たちや周囲に見せつければ良いのだ!と思い込むこと自体が子供のころに誰しも思い描く事であろう。
しかしそれを実際行動ししかも周囲の大人たちを納得させるだけの力を本当に持つ者などはやはり先ずいない。それが子供のころの当然である。
だがこの少年ジーオは実際に行動を起こし、しかも国境を越え帝国深くにまで侵入を果たした。それだけでも帝国人の尺度で言えば大した行為であったのだが更には魔力で洞窟を拡張し従属の魔法で従えた魔物を使役して一大戦力を形成していたことは事実だ。
魔神王国では評価されない事だったのかもしれないがこの帝国で数百にもなるオークやオーク・リーダー、さらにはオーク・キングをも従えた能力・行動は褒められる行いではなく脅威でもあるが、その少年の持つ能力としては高く評価されるかもしれない。
しかしやはり平穏を脅かし一つ間違えば人命を損なう事態にまで発展したかもしれない事も事実
子供ではなく大人として認めてほしいとの行動欲求には常に責任が伴いう。そう言う大人としての行動を夢見た者に現実を知らしめなければいけないのも周囲の大人の行為だ。
「さて主様。この者の処遇はいかになさいますか。切って捨てろと言われればすぐにでも」
脇に控えていたもう一人の従魔でもあるフェリシアが目を細めながら魔族の少年を見据え自身の得物である腰の日本刀の柄頭へそっと手を添えほんの僅かに殺気をその身より湧きあがらせる。。
「ニャア、その方が面倒が無くて良いニャ。どうせ不法入国に魔物を違法に集めて国家転覆を図る重罪人ニャ」
「おいおいニャアラス、それにフェリシアも物騒な事を言ってあまりこの少年を脅すな。ほれ見ろ」
二人の脅迫とフェリシアの殺気にすっかり肝を冷やされた魔族の少年は先ほどまでの強気の発言はどこへ。すっかり恐怖に陥り顔色は顔面蒼白といった具合であった。
「ヒョッヒョッヒョ。まあその辺にしとくがよい」
後方で様子をうかがっていたカーネタリア老人が少年へと近寄ると傍らに膝間ついていつもの口調で優しく声をかけた。
「先ほどお前さんは言い淀んでおったが、お前さんがどういう立場の者かはすでに知っておる。その上でだどうじゃわしらの話を聞く気にはなってくれたかのう」
「・・・・・・・・・・」
G・D・Sの糸に縛られたままの少年は老人の声にハッとしながらもじっと見つめたまま何か考えを巡らしているのか無言であった。
「そうか、ではそのまま聞くがよい」
優しいまなざしで少年の無言を肯定と受け取った老人は視線を知矢へと向けた。
無言で頷いた知矢も少年の側へと腰を下ろしゆっくりと声をかける。
「細かい話はこんな場所でするのもなんだな。それに君も最近満足な食事をしていなかったんじゃないか。
どうだろう、我々と一緒に一度この洞窟から出てどこか気持ちのいい場所に移動してだ、食事にでもしないか。この通り俺のマジックバックには色々と食べ物も飲み物もふんだんに収納してある」
そう言いながら知矢は無限倉庫からアツアツのスープや串焼きなどを出して見せ少年を誘った。
「・・・・い、糸は解いてくれるのか」
「ああ、もちろんだ。その状態では食事なんてできないからな」
「・・・・でもまた縛るんだろ」
少年は知矢の機嫌をうかがうように上目使いに様子を観察している。
「いや、君が友好的に振る舞うならそんな目には合わせない。俺たちはあくまでもこの洞窟の状態を調査に来た冒険者だ。敵対しない相手を拘束する謂れはないさ」
そう静かに声をかけながら知矢はG・D・Sのピョンピョンに念話で(糸を解いてやってくれ)と送ると従魔はあっという間にぐるぐる巻きにしていた拘束の糸を霧散させるのだった。
(ピョンピョンの糸っていうのは魔力で生み出された糸なのか。体内で生成する物だと思っておったわい)
少年を拘束し魔力さえも遮断していた糸を一瞬で霧散させた様子を見ていた知矢は転移前に得ていた日本、地球上に生息する蜘蛛の様に糸を体内で作り出していないことに少し驚いた様子だ。
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「旨めえ!!」そう口いっぱいに食べ物をむしゃむしゃと音を立てる勢いで頬張りながらも感激するように声を上げる少年。
魔人王国から出奔、(家出とも言う)してきた少年、ジーオ・コーデリアス・アスタリスク13歳は知矢の説得にやっと暗い洞窟の奥から出ての事情聴取とも食事会とも言える提案に応じ渋々同行しながら洞窟を出てきた。
切り立った岩場や洞窟より少し離れた草原と河を見渡せる平地へ進むと知矢は
「ここいらで良いだろう」
と言うと無限倉庫からテーブルや椅子、そして数々の料理の入った鍋や容器を並べフェリシアとニャアラスも手を貸し皿を並べ杯を配り配膳をあっという間に完了させた。
その様子を見ていた少年ジーオは唖然として言葉も出ない様子で固まっていた。
それぞれ席に着くもジーオは未だどうしていいのかわからない様子で口をパクパクしつつも言葉が出ない。
「どうした。そこの空いている席に着け。まずは約束通り食事にしよう」
知矢にそう促されやっと我に返ったように周囲に目をやると唯一空いていた席、勿論ジーオのために残してあった席へと慌てて腰かけた。
やっと席に着いた少年を確認すると知矢は
「じゃあ早速いただこう。頂ます」と合掌して声を発すると箸を手にし皿に取り分けてあった根菜と菜、そしてローストした肉を細かく細切りにして知矢の使用人謹製。知矢からの知識とアドバイスで作り上げた生姜のような香りが微かにする温かいドレッシングのかかった温野菜サラダから手を付けた。
他の者も知矢に倣い「いただきます」と声を発すると大皿や木皿に盛りつけてある料理を銘々好みでとり分けながら食事を始める。
因みに知矢とフェリシア以外はナイフやフォーク、それにスプーンを使用して食べる。知矢もそれらを勿論使うがメインはやはり箸になる。
これは最初皆から好機の目で見られたがその後サーヤやササスケ達が加わりさらにはうどん等の箸を用いて食べる文化がだんだんと浸透すると知矢の周囲では当然となっていった。
しかし未だなかなか上手に箸を用いてうどんを食すものは少ない。知矢やフェリシアが箸を用いて小さな豆なども器用に掴むのを見て真似をする者もいるがそこまで上手に使いこなすようになるのは当分かかりそうである。
しかし元々日本からの転生者であったサーヤは生まれ育った環境なのか箸を使えはするが多くはフォークやスプーンを使うことが多いのは生まれ育った環境が身に付いているからであろう。
因みに転移前は工業機械、大型自動二輪の Kawasaki H2SXSE+ であり最高神の力で異世界の知矢のもとに現れた時には聖獣フェンリルとなっていたフェリシアであるが人型に変化しているときは何故か箸を上手に、しかも優美に使いこなす。
元々使える知矢よりも実に上手な箸使いであった。
(俺よりも上手いな)と知矢は感嘆しその様子を凝視してしまうほどであった。
『主様、どうかなさいましたか』
知矢の視線が自身の手元に向けられている理由を察せられなかったフェリシアは自分が何かまた不始末をしでかしているのではないかと心配したほどであった。
そんな皆が食事を始める中、魔神王国の少年ジーオは席についたものの周囲に視線を送るのみで料理に手を伸ばそうとしない。
そして隣に座るカーネタリア老人がうどんの器を手に取りフォークで掬い上げながら口にする様子をぽかーんと見つめている。
「はぐはぐ、スススススー。ハーっ、このうどんと言うのはいつ食べても上手いのう」
うどんの麺を食し出汁の効いた汁をすすり飲む老人は本当に美味しそうに食べていた。
「・・・それってそんなに美味いのか、のですか・・・」ジーオは恐る恐るカーネタリアに声をかけながらごくりと喉を鳴らしていた。
「ああ美味しいとも。わしも長く生きておるがこの国に最近来たばかりじゃが初めて食べた味じゃて。じゃが、もううどんの虜じゃわい」
ヒョッヒョッヒョーと顔をしわくちゃにしながら笑みをこぼし如何に美味しいかを少年へ力説する。
「君もどうだ。初めて食べるから最初はこれくらいで、気に入ったらお代わりをすればいい。他にもグレートボアの焼き物もあるしこっちのスープ。これはミネストローネって言うんだがこれは野菜たっぷりで中には塩気の効いた乾燥肉の旨味が溶け出して美味いぞ」
知矢はジーオヘ小鉢に入れたうどんを少量差し出し更には目の前へ好きに食べるようにと取り分けた種々の料理を並べてみせた。
「・・・・・」未だ心を開き馴染むほどの時間を共有していない為かそれともフェリシアから受けた殺気を忘れられないのか遠慮気味の少年であったが目の前に並べられたいかにも美味しそうな料理の数々、そして差し出されたうどんの器から湯気と共に立ち上る初めてかぐ香ながらも食欲を刺激し口腔には唾液があふれ出すのを止められない状態に我慢ができなくなり知矢の手からさっと小鉢をひったくるように受け取りとテーブルにあったフォークを掴んだ。
小鉢を顔へ近づけるとさらにうまそうな香りが鼻からどんどん流れ込むのが解る。一瞬小鉢を顔の前で停止させたのもつかの間、何か覚悟を決めたかのようにフォークで一気にうどんを掻き込んだ。
「・・・・・なんだこれ!」そう一言漏らすと残ったうどんの麺を再度口に掻き込みついには出汁の効いた汁も小鉢を持ち上げてのどへ流し込む。
「旨めえ!!」
小鉢から顔を見せた少年は驚きの表情で素直な気持ちを口にした。
「どうだ美味いだろう」そう言いながら知矢は今度は大きめのどんぶりに入ったうどんに肉のてんぷらや薬味を乗せて再び少年の前へと置いた。
「うどんも美味いがその他にもいろいろ美味い物もある。慌てなくていいからゆっくり好きなだけ食べろ」
その知矢の言葉にジーオは険のある表情をすっかり緩め少し素直で優しい顔つきになっていた。そして「ありがとう・・・」と少し小さめの声、しかしはっきりとした口調で礼を口にするとうどんを始めスープやパン、焼き肉や魚の串揚げなど次から次へと食べ始めた。
「旨めえ!!なんだこれ何でもかんでも美味過ぎるぜ!!」
その様子を皆は生暖かい目で黙って見守るのであった。
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ところ変わって中核商業都市ラグーン。
今まさに上司である辺境伯からの強いプレッシャーを受けながらアンコール伯爵が知矢の存在をどううまく説明したらいいのか冷や汗を背中にかきながら対面中であった。
そこへ
「閣下!大変失礼をいたします。火急の事故ご無礼をお許しください」
上級の事務官の一人が辺境伯と面会中の部屋へノックをしつつも許可を受けずに入室してきた。
普通であれば決して許される行いではなく礼を失することとして叱責を受けるのは当然であったが事務官の『火急』という言葉とアンコールにしてみれば救いの言葉にも聞こえ即座に部下の行いを肯定し傍へ寄ることを許すのだった。
一度辺境伯へ礼を取った事務官は静かにしかし速やかにアンコールの元へ足を進め手にしていた書付を手渡しながら耳元で何かを一言ささやくと一歩下がり姿勢を正して主の指示を待つ体制をとった。
上司であるバスラム辺境伯に軽く頭を下げるとこれ幸いと思いながら渡された書付へと目を落とす。
「・・・・・・」
そう思ったのも一瞬の事である。
無言でその紙を読むアンコールは再び滂沱の汗を流すことになりその思考の中で(なぜ次から次へと騒ぎが起こるのだ)と何かに向けて呪いの言葉を吐く。
しかしつい先ほどまではその眼光に射すくめられていた上司であるバスラム辺境伯が目の前にいることを僥倖だと考え直した。
事実このような事例を扱ったことの無いアンコールではどう対処してよいのやらと途方に暮れていたかもしれない。
しかしこの帝国で皇帝の懐刀とかご意見番ともいわれる老練の高位貴族であればすぐにでもどう対処するべきかを即決して指示を受けられると考えた。
それに併せ先ほどまで詰問を受けていた件もうやむやにできるのではないかとも・・・・。
「辺境伯様。帝都の皇帝陛下よりの至急電です」
そう言うとアンコールはその魔電を恭しく両手で捧げるようにバスラムへと差し出した。
眉間にわずかなしわを寄せ何ごとが起きたのかと訝しみながらも皇帝陛下直々の至急電と聞きバスラムも姿勢を正してアンコールからその魔電を受け取った。
「・・・・・・・・」
すぐにその内容を一言一句見落とさぬようにと言う様に真剣な目で文字を負うバスラム。
先ほどまでに緊張とはまた違う空気が部屋を支配するのであった。
既に私は年末進行に向けて業務スケジュールの調整を終えていたはずでしたが・・・
まあいつものことでスケジュールの微調整は結局最終日まで続くんですよね。
(-_-;)
小説の方は申し訳ございませんが一切のスケジュールも当初から存在すらなく。毎回行き当たりばったりでPCに向かいながら一文一文を生み出す非効率な書き方をしております。
よって作者もこの先どうなるかは全く持って解りません。
そんなお話でよければこれからもお付き合いを願います。
ではまた次話にて。




