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第207話 真実と疑義との狭間に揺れ ~「アンコールよはっきりせんか」



 活動報告にも上げましたが当小説

 【老齢オヤジが死んだけど異世界でゆっくり老後をおくりたい~チートに大金ゆっくり老後、あれ俺若返ってるけど?】

 総アクセス数(PV)が100万アクセスを突破いたしました。大変ありがとうございます。

 これもひとえに皆様のおかげです。これからものんびり執筆、投稿をしていきたいと思いますのでどうぞよろしくお願いいたします。


 では本編スタートです。






 「かの冒険者について伯爵が知りうる事を教えてほしい。ああ、勘違いされるなよ。これはわしの私心で聞いているのではない。恐れ多くも皇帝陛下直々の御下命(ごかめい)を受けわしを遣わしたのだ」


 アンコール伯爵の前に座す老人とは思えぬ眼力(がんりき)で伯爵を見下ろす様に話す男。

 伯爵の上司でもありこのギルバルト帝国皇帝の信も厚くそれに伴い広大な領地を監理監察を命じられている帝国重鎮。【バスラム辺境伯】であった。



 (トーヤ殿。ワシは目の前のお方にどう返答するのがトーヤ殿にとって最良なのであろうか)


 アンコールは目の前の上司が口にした言葉をそのまま素直に聞く事はできないと考えている。勿論(もちろん)皇帝陛下と言う帝国最大の権威者の名前を口にしたがそれが嘘であることは無い。むしろ皇帝の名を用いて嘘を口にしたとなれば如何に帝国重鎮であっても当然の如く死を賜る事になるのは明白である。

 しかし嘘でないとしても知矢の存在とその能力や知恵に目を付けたのは辺境伯も一緒であろう事は凡庸な貴族であると自覚をしているアンコール伯爵でもすぐに理解できた。


 貴族社会と言うものは騙し騙されと言えば語弊があるが伝えられた話をそのまま鵜呑みにはできないことがままある。

 話題のベクトル(方向性)が果たしてどちらを向いているのか。また誰が発し利益を得る又はその逆に不利益をこうむるのは誰なのかを少ない言葉の中から見極めることが最重要である。


 今回の場合も素直に受け取れば多大なる功績をもたらした人物が今度は帝国の危機を救う手立てを講じた。さらに従来の物とは比べ物にならない程の低価格でマジックバックを販売した事に始まる、国だけではなく多くの市民にも有意義な魔道具を広めた事が皇帝の耳に届きその人物に興味を持ち帝国にさらなる利と知を持つのではないか。そしてさらなる繁栄をもたらすのではないかと考えるのは当然のことだ。


 しかしその皇帝の意を受けた重鎮が単に同様の考えだけで子供の使いに派遣された訳もなく、自身の思惑が垣間見えるのは当然と言えば当然だ。


 その事で知矢に不快な思いをさせるのではないかと危惧しているのが今のアンコール伯爵の心中である。


 本来であればアンコールも同様の思惑を持ち知矢に接したのかもしれない。しかし最初の出会いからその後の経緯など (第53~63話、78~83話を参照ください) から高位貴族としてではなく知矢の配下のような存在に半ば望んで接しているアンコールにとっては (何としてもトーヤ殿を守らねば)という思いがあった。



 「いやはや驚きましたな。辺境伯殿どころか皇帝陛下にまで単なる冒険者にそこまで関心を寄せられるとは。あの青年もさぞや名誉な事でしょう。


 しかし以前に報告を上げました通り彼は単なる平民であり一回の冒険者であることは確認いたしました。確かに家名を持っているようですが冒険者ギルドからの情報も併せ帝国に反意を持つような人物でないことは何度か私も対面の上、聞き取った様子で明らかだと言えます。

 一応念のため配下の者に鑑定をさせましたところ特に問題も御座いません。家名を持っているのは単なる地方性の様ですがその出自も遠き北方の地方であるとのこと。

 間違っても”南の(やから)”などに関係は無いことは明白です」



 アンコールは実際の処、知矢が何者であるかなど知りもしなかった。高位貴族がそれでよいのかと言えば確かに批判のそしりを受けることもあるかもしれないが、知矢に関しては先に述べた出会いの経緯の他に次から次へと帝国の理にしかならない出来事ばかりである。そう言った事で言えばいわば盲目的に信用し知矢と接していたのであるがアンコールも含め彼に携わった人々はそういった傾向があるようだ。


 そう受け止められるように知矢が接し行動していたわけではない。

 単に知矢は ”のんびり老後”を送るために。そして生活の基盤を整えてこの国に根ざす思いだけで行動していただけである。その過程で転移前の地球で得た知識や倫理性からの行動が結果としてこの世界の人々から好感を得ていた。

 そしてその知識と最高神から与えられた転移前にはない”魔力”を用いて作成した魔道具もほとんど自分の快適な生活の為であった。


 しかしその魔道具を広めることで()()の資金にする事だけでなく一時期衆人観衆の耳目を集めた魔鉱石発見者としての自身の存在を霞ませる為の考えであっただけだ。


 確かにその甲斐もあり魔鉱石発見者として知矢を煩わせるような小物は減りはしたがそれ以上に知矢には注目を集めるような出来事が多すぎて別の意味で名が売れたのではあったが。



 「ですから辺境伯殿やましてや皇帝陛下の関心を集めるような者ではありませんぞ」

 アンコール伯爵は何一つ説得力を持たないセリフを精一杯信憑性と説得力を込めて言い切ったつもりであった。


 「(けい)(いささ)か勘違いをしているようだ。皇帝陛下もわしもその冒険者が南の間者などとは全く考えてはおらん。


 逆にこの帝国に訪れた新たなる賢者であるのではないかと皇帝陛下は興味を持たれたのだ。

 わしも同様に考える。 それは先の南の潜入者を発見し捕縛するための魔道具を見るだけで、いやその前に魔鉱石の新たな大鉱床をこの国にもたらした事だけでも十二分に我が国に為になる物であることは確かだ。


 だからこそ、そう言った事柄から陛下は今後も我が国に新たなる知と技をもたらしてくれる者であるとの考えから出来れば帝都において陛下のお声がかかりやすい場所に招きさらなる知恵を産み出してはくれまいかとのご存念だ。

 そこで問題になるのがやはり出自(しゅつじ)であり何者であるかという基本的な事である。

 どこの誰かもわからぬものを陛下のお傍へ寄せる訳にはいかぬからな。ああ、これはわしの考えであるが。そう言った事から卿に直接面談し詳細を聞いてみたかったのだ。


 どうじゃ伯爵よ、そろそろ腹を割ってはくれまか」

 丁寧な言い回しであったがアンコールにとっては心臓を掴まれた様な息苦しさと共にやはり長く貴族社会を生き抜き今や最高位貴族の列に連なる老人の言葉に真っ向から向かい合い迎撃できる胆力を残念ながらアンコール伯爵は持ちえなかったことを痛感するのであった。





********************************



 商業中核都市ラグーンにおいてそんな貴族同士のやり取りが行われていたころ。ここ帝国首都の皇帝居城にも思わぬ事態が起きていた。



 「陛下、ご心中をお騒がせし申し訳ございません」


 帝国皇帝の側近の一人が慌てふためく様に執務室で書類を処理していた皇帝へ面会を求めた。


 「最近お前がそんなに慌てている姿を見るのは珍しいな。またあの南の馬鹿どもが侵入でもしてきたか」

 皇帝は軍務担当者が来たわけではないのでそんな内容ではないとはわかっていたが側近の慌てぶりがそれほど深刻でないことも感じ取っていた。


 「いえ、軍務関係ではございません。外務関係におきまして急報・・・申し訳ありません。急を要するほどでは無いのかも知れませんが、非常に珍しい魔電(までん)が届きましたので急ぎご報告をと」

 当初慌てた様子で入出してきた側近は皇帝が笑みを浮かべながら自分の慌てる様子を揶揄った事で一度落ち着きを取り戻し姿勢を改め皇帝の前へ落ち着いて進み携えていた魔電の紙を恐れ入りながら執務机へ差し出した。


 魔電。紙に書いた文章を魔道具と魔力を用いて離れた場所においてある特定の魔道具へ送ることのできる、知矢の世界で言えばFAXの様な魔道具であることは以前記述したが。冒険者ギルド間だけではなく勿論国家間、国家機関同士等各所にその魔道具は配置され情報の送受信が行われている。


 一見便利な魔道具であるが致命的な欠点があった。 それは送る文章が精々A4用紙程のものが1枚。しかも送り先の距離が遠ければ遠いほど膨大な魔力を必要とするため運用にはそれなりの魔力量を有する専門の魔法使いが必要であった。


 よって運用は重要事項や急報などが中心であり気軽に挨拶をする様な訳にはいかなかった。


 「珍しいとな・・・・・」

 側近より差し出された文章が記された紙を受け取り黙って目を通す皇帝。


 そう長い文章ではなかったがその目は数度繰り返して内容を確認するようにみえた。


 「・・・・・」

 皇帝は受け取った魔伝の内容が書き込まれた紙を無言で見つめながら軽く嘆息するように息を吐いた。


 「これはそのままの意味として受け取っていい物なのか。何か隠された意味でも含まれているのか」

 


 「大変申し訳ございません。私にはお答えする立場にもございませんし私しごときでは恐れ多いことながら分をはるかに超えた事でありますれば・・・」

 側近は呟くように発した皇帝の言葉ではあったが無視することもできず恐縮しながら皇帝からの質問に窮する様に返答した。


 事実、数いる側近の一人ではあるがそれは事実を伝え命じられたことを成す立場であり、通常意見を求められることは無かった。

 皇帝からじかに意見を求められる。それは大いなる名誉ではあったが逆にそれだけの知識と経験をもとに的確な答えを出せる者だからこそ言える事である。

 通常ならば老練な側付きの補佐役や役付きの高位貴族でもある辺境伯などに意見を求めるのであったがたまたま誰もこの場にいないが皇帝はつい、いつもの様に意見を求めたに過ぎない。


 「ああそうだな、気にするな。うむ・・・外務担当の者を呼べ、それとジイはどこだ。ジイも呼んでまいれ」

 皇帝は自身の間違いに気が付くと側近を諫める事無く人を呼びに行かせた。


 皇帝の執務室を慌てた様子で出て行った側近に構わず皇帝は再び送られてきた魔伝の内容を読み返すのだった。


**********************





 「ニャア、お前どこに行くニャ。カーネタリア様の質問に答えるニャ!」

 少年が振り返ると背後には先ほど脅すようなセリフを吐いた猫獣人の男が行く手を遮るように立っている。


 周囲を見回せば左右はジュースをくれた青年。そしてその反対側には先ほど自分を威圧してきた恐ろしい女剣士。

 少年は最初に見せた強気はどこへ行ったのか顔色を青くしながら冷や汗を流しだした。

 「俺は・・・俺は・・・・・・」


 少年はその場で立ちすくむと俯きその両手のこぶしは強く握りしめられ肩は微かに震えているように見えた。

 魔族、魔神王国の者であると明らかになっているのにそれ以上の事を話そうとしない少年。そしてカーネタリア老人の口から出た『それなりの階位に近そうだ』との推測。


 それを黙ってみていた知矢は(仕方がないか)と考え(鑑定)と無言で少年へ向け鑑定魔法を行使した。






  ジーオ・コーデリアス・アスタリスク (13)

  種族:魔人 魔神王国人 魔王13番目の孫

 ・基礎身体 LV25

 ・種族 魔族

 ・知性 D級

 ・耐力 C級

 ・成長 C級

 ・武力 C級

 ・幸力 C級+(魔神の加護(微))

 ・筋力 B級+

 ・速力 B級

 ・魔力 S級

 ・特力 魔神魔法、基礎生活魔法、火魔法、土魔法、水魔法

 ・行使力 従属(テイム)LV35、物質硬化・強化LV32、身体強化魔法LV3、槍術LV10、体術LV5、

 




 (想像以上というか、微妙なやつだな)

 知矢は鑑定結果が想像とはいささか異なる物の魔王の孫と言う項と13番目の孫という点に対応の微妙さを感じた。

 それを受けて知矢は傍にいるカーネタリア老人へ視線を向けるとちょうど目が合い互いに困惑の表情をしていることに気が付き身が笑いを浮かべるのであった。


 「カーネタリア様、ちょっと良いですか」

 それを受けて知矢は洞窟の小部屋から先ほどの大広間へとカーネタリアを誘った。



 「あの子を鑑定してみたのですが・・・」


 「・・・そうか。ヒョッヒョッヒョワシも鑑定したわい」


 「やはりそうですか。魔王様の孫、しかも13番目。どうしたものでしょう」

 知矢はこの異世界の国家間の関係や外交対応について全く知識が無いので素直に世情に広く老練の老人へ匙を投げた。


 「ひゃっひゃっひゃ率直に言ってワシも今はすぐに妙案が浮かばんのう。それにあやつが何をもってこの遠き帝国迄来たのか。まあ先ほど口を滑らした話から断片的には想像がつくが」

 しわくちゃの顔で困惑しながらもおおよそを察した様子の老人であった。


 「単なる一般人の子供なら家出で済むでしょうが13番目とはいえ魔王様の孫ですからね。孫を過剰に溺愛して大騒ぎする爺さんの例を最近観てますから特に・・・」

 知矢は自身の孫を周囲が呆れるほど溺愛していたことなどすっかり棚に上げ龍水湖で遭遇した古龍(エンシェントドラゴン)の事を思い出していた。






 『ブッ!ハーックショーン!!』

 ドバーン!!突如湖面に水撃が高く打ちあがった。


 『じーちゃんなんだ!驚かすなよ』


 『すまんすまん。なんだか急に鼻がむずいてのう』

 湖の中で過ごす水龍の古龍と孫であった。






 「ともかく我々の手には負えないでしょう

。一つ間違うと国家間、種族間の争いの原因にもなりかねません。ラグーンへ急ぎ戻りそれなりの地位にある者に任せようと思いますが」

 知矢はラグーン管理貴族のアンコール伯爵と同じくラグーン冒険者ギルド長のガインの顔を思い浮かべながらそう進言する。


 「そうさのう。大騒ぎにしたくは無いが放置するわけにもいかんし。致し方ないかのう」

 カーネタリア老人は現状での対応案に賛意を示した。


 本音で言えば静かに人知れず国へ帰す方策を思案していたが遥か大森林の先にある国家故そうそう気軽に送り届けるという訳にもいかなかった。

 Sランク冒険者の老人であれば送っていくことは不可能ではないと考えたが魔族の少年が素直におとなしく従うかという不安とその際に行方をくらまされても困ること、それに知矢の言う国家間の関係も考慮し正式に政府側で保護し国家間で話し合う事こそが筋であると賛同したのだった。


 「では、その方向で。急ぎあの子を連れてラグーンへ戻りましょうか」

 知矢がカーネタリア老人と意見を合わせ小さい洞窟へ戻ろうと振り返った時。



 「うっせい!じじいこれでも喰らえ!!!」

 少年とニャアラス、ピョンピョンそしてフェリシアがいる洞窟の小部屋から魔族の少年の罵声とともに大きな魔力反応が感じられた。


 「しまった!」

 知矢は脚に魔力を瞬時に込めながらその小さな洞窟へ一足飛びに駆け寄った。





**********************



 「それでお前たちはこの魔伝をどう読む」

 老齢の側近や外交を担う高位貴族を呼び率直に意見を求めた。


 困惑顔の両者であったが外交担当の初老高位貴族が恐れながらと口を開く。


 「陛下、そもそもこの十年程魔人王国との直接な魔伝を交わす機会は皆無であったと記憶いたします。全ては冒険者ギルド関係で情報が得られる程度。もしくは神聖教国からの魔伝に記載されている程度。真偽も含め内容の確認をいたしませんと何とも言いようがございません」


 外交担当の高位貴族であったが大昔ならともかく近年外交関係の途絶えて久しい魔人王国からの魔伝に困惑を示す。


 「そうは言っても卿。魔伝が偽物と言う可能性はまずなかろう。受信した者の魔力感知でもそれははっきりしておる」

 長く皇帝の傍にいる老齢の側近は公邸に代わり率直な意見を述べた。


 「確かに偽物という可能性はまずないかと。しかしいきなりのこの内容を素直に受けるのもどうかと・・・」

 外交担当の高位貴族は側近の意見を否定はしなかったがやはり困惑気味に魔伝の文章の中身に疑義を訴えた。



 皇帝は何度目になるのか送られてきた魔伝を手に取り再度読み直す。



 『 わしの孫であるジーオが家出をしおそらくは貴国へと足を踏み入れていると考える。

   何を仕出かすかわからない為見つけ次第完全拘束の上、魔力封印も施し即時連絡を乞う。

   国境まで運んでいただければ礼として万金の財と引き換える所存。

   迷惑をかけてすまなく思うが何卒協力を願う

         魔神王国 国王 ミハエル・コーデリアス・アスタリスク』




 魔伝を読み終えた皇帝はそれを机に放ると何度目かの嘆息を吐き出すのであった。




 



 またまた更新期間が空きまして申し訳ございません。

 なんとか雨の日曜日を利用し書き上げました。

 今日は衆議院選挙の投票日でしたね。私は早々と期日前投票を終えていましたが皆さんは投票なさいましたか。

 20時までですのでまだ間に合います。ぜひ投票をw


 冒頭でもお伝えしましたがなんとか皆さまのおかげで100万PVを突破、読者数も11万人を超えることができました。

 実にのんびりとした更新に我慢してお付き合いしてくださる皆さまに感謝しかございません。

今後とも知矢ともども私浪人者をどうぞよろしくお願いいたします。




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