表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

206/257

第206話 「オイさっさと吐くニャ!」 ~ 「アンコール伯よどうなのだ」 「・・・・」

取り急ぎ

第206話を更新いたしました。


ではどうぞ






 「ちくしょう! だましやがって。この糸を切れ! なんなんだこれ魔法も使えねえぞ」




 知矢たちの目の前には従魔であるG・(ゴールデン)D・(デス)S(スパイダー)のピョンピョンの糸でぐるぐる巻きにされた若者がわめきながら必死に自身を拘束する糸から何としても逃れようと(うごめ)いている。

 その様子はまるで元気な芋虫の様だ。



 「ピョンピョンの糸って魔力を封じる力があったんだな。すごい能力じゃないか」


 知矢の問いに肩に乗る従魔が自慢げに胸を張る様に後ろ足で立ちながら前足を振る。その様子を見た知矢は微笑ほほえましく思いながら顔をほころばせ従魔を指で()でる。すると従魔も主に褒められ嬉しそうにもじもじと身をくねらすのであった。



 「従魔の力に感心してるところ悪いがニャ。どうすんだこれ」

 その様子を傍らで見ていたニャアラスは少し呆れながら知矢を現実へと引き戻す様に指摘しそれを親指でくいっと指す。



 「これとはなんだ、これとは。俺の事をなんだと思っている。

 国へ帰ればお前らなんぞすぐに配下の者らが消し炭にする事も出来るんだぞ。分かったら早くこれをとけ!」

 今だ洞窟の床に転がされながらも威勢を衰えさせずに喚く若者。



 見た目は未だ少年のような風貌。年のころは人族で例えれば14歳前後と言うところか。耳が微かに隠れる程度の髪は濃いブルーグレーで美しい光沢を湛えていて品性が垣間見れる。

 切れ長の細い目は喚きながら見開いてもそれほど大きくはないがその瞳はわずかに金色に彩られるところが知矢の知るこの世界の人族ではいまだお目にかかったことの無い特徴である。だが洞窟での生活の為か全体的に薄汚れている感はぬぐえない。



 しかしそれ以上に目を引くのがその頭部だ。

 それこそ知矢の知るこの世界の人族では全くであったことの無い物が明確に自己主張していた。


 「カーネタリア様。これってひょっとするとおっしゃっていた・・・あれですかね」

 知矢はニャアラスに指摘されて仕方がなく現実と向き合うことにした。


 従魔がその糸で相手を拘束した後に全員でその洞窟の部屋へ突入して真っ先に目には入ったのがそれだ。


 ピョンピョンの糸に絡み取られた若者の容姿以上に気になったのはその頭部には立派な二本の角が備わっていた。



 しかし角は知矢が思い描いていたものと異なってる。


 知矢の勝手なイメージは以前、日本で転移前にツーリングで訪れた奈良県の公園や神社の周辺を悠々と闊歩していた鹿の角の様に大きく枝分かれをした強そうな角でろうと思っていた。

 が想像とは異なりどちらかと言うとニホンカモシカのような短めの角だ。



 それは知矢が昔の記憶を思い起こしながらその昔よく見たアニメに出てきた、常に博多弁をしゃべるトラ柄のビキニを纏う鬼族の宇宙人を彷彿させる角であった。


 (思考が古すぎるかのう。しかもこの異世界で誰彼に話しても全く理解できない話じゃしのう)

 知矢はそんなことを考えながら老人の言っていた魔族で間違いないかを確認する。




 「うむ、そうじゃ、間違いない。この者は魔神王国の住人。魔族じゃな」

 老人はやはりかと心中思いながらどうしたものかと言葉少なに考えを巡らせている。


 「ニャア!カーネタリア様の言ってた通り魔族って本当にいたニャ」


 「当たり前だ。魔族がいて何が悪い。わかったら早くこの戒めを解け!」


 「何を威張ってるニャこの小僧が。お前勝手にこの帝国に潜入してこんな洞窟まで作ってるニャ。騎士団詰め所に引き渡して縛り首だニャ」

 ニャアラスはわめき散らす魔族の少年を脅す様に顔を近づけ自分の首元をくいっと締め付ける真似をした。



 「しっ縛り首だと! ふざけんなおっさん。俺を誰だと思ってんだ。もう許さないからな。国から軍と魔獣団を呼び寄せてこんな国消し去ってやるからな」

 今だ自身の立場を理解していないのか。魔族の少年はわめき散らして知矢達を恫喝する様な口ぶりを止めようとしない。


 「何が軍と魔獣団ニャ。呼べるもんなら呼んでみるニャ。その前にお前は縛り首かG・(ゴールデン)D・(デス)S(スパイダー)の餌だニャ」

 床でもがく魔族と思しき若者をニャアラスは半ば揶揄(からか)う様に脅迫している。


 「ばっばかG・(ゴールデン)D・(デス)S(スパイダー)の餌って。ふざけんなこのじじい!」

 ピョンピョンの糸に拘束されながらもニャアラスから餌にされると聞いた魔族の少年は憤慨ふんがいしその身を必死にどたばたと動かして糸から逃れようと必死だ。



 『・・・(失礼ですね私たちはもっとおいしい物が好きなんですからプンプン!)』




 「ニャアラス、それに少年、君も落ち着け。

 俺たちは積極的に君に危害を加えるつもりはない。まあ、もっとも君がこの帝国に秘かに侵入し法を犯しあまつさえこんな洞窟を作りさらには魔物を使役して戦力としていた事実は変わりないから事と次第によってはこいつが言ったように国の司直の手に委ねる必要もあるが」

 知矢はニャアラスをいさめる風を装いながらニャアラスには目線で合図を送り目の前の魔王国の少年へは更なる圧力をかけて話を聞き出そうとしていた。


 「えっ・・・」

 知矢の思い通り魔族の少年は知矢の話を聞いて先ほどまで激昂して強気であったのが一気に消沈した。

 それは知矢の『司直に手に委ねる』と言う言葉に敏感に反応したのである。

 そんな事を知矢は薄々感じたが未だ何も情報が得られていない為まずは落ち着いたところで話を聞き出すことを優先するのだった。


 (司直や法に関するワードに敏感に反応するという事はただの子供では無い様じゃな)

 そう考えつつ



 「だが、君の話次第ではこちらも態々(わざわざ)騎士団や司直しちょくに君を引き渡す事は一考(いっこう)しよう。しかし何も話さない、もしくはいつまでもこちらに敵対の意思を示すようであれば・・・」

 知矢は見つめていた少年から傍にいる従魔でもあるフェリシアへ視線を送った。


 それだけで主の意思を感じ取ったフェリシアは半歩魔族の少年に近づき細い切れ長の眼差しをさらに鋭く光らせ微かな威圧を発しながら腰の刀の柄をこぶしでコツコツと鳴らすのであった。



 「うわぁわぁわわっ」

 おそらく膨大な魔力を有し帝国の一般人族いや、低ランクの冒険者では相手にもならない程の身体能力をもった魔族でもある強気の少年であったがフェリシアが僅かに発した威圧だけで相手の力量がとてつもない物であることを本能的にか瞬時に悟り冷たい汗を拭きだして口が震えた。



 「だから敵対する行動を見せず、話をしてくれるならこの戒めもとるし、君を害したりしないと約束しよう。話してくれるかな」

 そう少年へ優しく声をかけながら知矢はフェリシアへ手を振り威圧を解かせると同時にピョンピョンへも合図をして魔族の少年を拘束していたスパイダーロープから解放させる。



 Sランクの聖獣であるフェリシアの威圧から解放された魔族の少年は同時にG・(ゴールデン)D・(デス)S(スパイダー)による拘束からも解き放たれた瞬間、ホッとし脱力して洞窟の床に寝そべるように身を横たえた。



 「うううっ生きてる・・・・・じっちゃんごめんよ・・・・」

 そう微かに呟く少年へ知矢は無限倉庫から果汁を絞った知矢の使用人特性フレッシュジュースが入った水筒を差し出した


 「果物のジュースだ。良かったら飲みな」


 知矢の言葉が一瞬理解できなかった少年は差し出された水筒と知矢を交互に見つめながらハッとした瞬間パパっと知矢の手から水筒を奪うと飲み口を開き口に流し込もうとした。


 しかしそこで動きを止めわき目で知矢をちらりと見る。


 「毒なんか入ってないさ。匂いをかいでみろ」


 そういう知矢の言葉に小さい鼻をクンクンと動かしたと思うと水筒に口をつけフレッシュジュースをゴクゴクと美味しそうに飲んだ。


 「ニャア、何だか妙に美味そうな飲み方だニャ。今まで飲んだことニャイのか」


 「プッハー美味い! 変なこと言うな。俺だって国へ帰ればいくらでも美味い飲み物だって食い物だって食べられる。


 ・・・・だけどこんなところに住んで魔物に食料を取りに行かせても毎日毎日肉肉肉・・・肉ばっか。しかも狩ってきて丸のままとか料理なんてしてない生肉なんか食えるか! 仕方なく俺が焼いたって塩も無けら何の味もありゃしない・・・・こんな事なら家出なんか・・・ハッ!」


 そう思わず呟いた魔族の少年はハッとして周囲を見ると知矢をはじめニャアラスや老人、そしてフェリシアまでもが生暖かいまなざしで見守っていた。


 「そうかそうか、お前家出息子ニャ。どうりでなんか無計画でこんなところに洞窟作ってしかも薄汚れて臭いニャ」



 「っちっ、違うやい。俺は自分の力で配下を増やして俺の国を興して俺を子ども扱いした奴らを力でねじ伏せてやるために、その第一歩としてここに秘密の砦を作ったんだ。今はまだ準備の真っ最中だからちょっと何も無いけど・・・。

 今に見てろ、魔物たちを何万と従えて軍隊を編成し国家の王としてそいつらを率いて俺は行くんだ!」



 家出少年であるとばれてしまった魔族の少年はそれを否定するため自分が如何に壮大な計画を実行しようと行動しているかをひけらかすのだった。



 「王?国家? ニャんだそりゃ。お前ひとりで食べ物もろくにない、自分ではどうすることもできない小僧がか? 夢はそれぐらいにして魔王国へ帰れ。帰って魔王様にお尻をぺんぺんしてもらうニャ。少しは夢が覚めるニャ」

 呆れかえった顔で魔族の少年へシッシッと手を振り相手にもしないニャアラスだ。



 「何を言う! 既に俺の配下は数百にも及ぶ強力な奴らがそろっているんだぞ。もうすぐ奴らが帰ってくればお前なんかな! それに・・・・じっちゃんの折檻はホント痛いんだからな! ぜってえそんなの嫌だから俺は帰らない」

 魔族の少年はぷいっと横を向いて拒絶を示す。



 「君、配下の数百にも及び奴らって言うのはひょっとしたらオーク達の事か。だとしたら残念だがもう君を助けには来れないな」

 知矢は郊外で接触したオーク達をすべて討伐したことを告げた。



 「・・・・っえ? はあ? お前何言って。嘘つくな、有り得ないだろう。何匹いたと思ってんだ。

 だいたいオークジェネラルも何匹か育てたしやっとこの間オークキングまで進化させたんだぞ。俺がこの戦力を作り出すのにどれほど苦労したと思って・・・・。えっ本当!」


 知矢がオーク討伐のあらましやキングをも倒してしまったことを克明に聞いた少年はやっと事実であると知り、自分が必死に増やした戦力があっという間に消し去られてしまった事にも愕然がくぜんとしてしまった。



 「・・・・・」カーネタリア老人は黙って魔族の少年の話を知矢たちから一歩引いたところで聞いていただけであったが何か気になったのか静かにスッと身を乗り出してきた。



 「カーネタリア様どうかしましたか」知矢の問いに顔を向けた老人はいつものしわくちゃの笑顔ではなく難しそうな表情で眉間にしわを寄せ口元に力が入っている様子だ。


 「魔族、魔神王国の少年よ」ゆっくりと老人は魔族の少年へと語りかけた。


 「お前さんひょっとして国王、魔王様の近し者かのう。いやいやそう警戒するでない。

 わしは大昔、若い頃にな魔神王国で暫く世話になっていたことがあってのう。

 ほれ魔神教の最高司祭様のボンデック様にもお会いしたことがあるぞ。・・・いやもうあれから数十年。ボンデック様もお亡くなりになっているかもしれんな」

 日頃あまり語ることの少ない老人が魔神国の少年へ懐かしむように優しく語り掛ける。



 「教皇のじっちゃん知ってんのか。ってかまだ生きてるぞ。

 じいちゃんも『あやつは妖怪化化け物かもしれん。あと100年、わしが死んでもおそらく元気に生きながらえるわい』って言ってたぞ」


 少年は突如語り掛けてきた老人に最初は警戒を示していたが見知った者の名をその口から聞かされると途端に警戒を解き配下の魔獣たちが狩られたショックを忘れたかのように饒舌じょうぜつに話し始めた。



 「おお教皇様はお元気であったか、それはそれは。ならば近いうちに一度あいさつに出向くかのう」

 ヒョッヒョッヒョっと老人はいつもの口調で相好を崩すのだった。


 しかしその直後表情を改め魔族の少年へ再び向き合うと

 「やはりのう。少年よその口ぶりであるとやはりそれなりの階位に近そうだのう。ひょっとするとひょっとかもしれんが・・・・。お前さんは何者じゃ」


 先ほどまでしわくちゃの顔でニコニコとしていた老人が急に態度を改め真剣な顔で自分へ迫ってきたことで少年は何かまずいことを言ったかとドキリとしながら未だ洞窟の床へしゃがみこんでいたままの姿勢でわずかに後ろへ後ろへとその身を守るかのように後退していく。


 「ニャア、お前どこに行くニャ。カーネタリア様の質問に答えるニャ!」

 その声に少年が振り返ると背後には先ほど脅すようなセリフを吐いた猫獣人の男が行く手を遮るように立っている。



 周囲を見回せば左右はジュースをくれた青年。そしてその反対側には先ほど自分を威圧してきた恐ろしい女剣士。



 少年は最初に見せた強気はどこへ行ったのか顔色を青くしながら冷や汗を流しだした。



 「俺は・・・俺は・・・・・・」









2021/10/01の更新よりあっという間の2週間。

最近はいつもいつも更新が遅く申し訳ございません。【五体投地ごたいとうち


最近仕事し過ぎで(本人の感想です。事実を確約する物ではありません)疲れて疲れて、時間もなく執筆活動が途絶えがちです。お許しください。


とか言いつつ先週三日はトミンサーキットでWith Me レーシングの講習会に入ってましたけど。

さらに来週は三度目の(財)日本自動車研究所城里テストセンター での0-400大会に参加。

来月には同会場でのトリックスターレーシング主催 最高速チャレンジ にも再び参加を予定してます。


ハイ。遊んでばかりです。(仕事はしてますよ)

大変申し訳ございません。


こんな具合でのんびりと投稿しておりますがいつも読んでくださる読者の皆様大変ありがとうございます。

これからもゆるりとお付き合いをお願いいたします。



では次話にてまた。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ