第198話 剣技と健脚 ~『・・(必殺スパイダー斬り!)』
こんばんは。
今夜は実に変な時間に投稿となってしまいました。
それはともかくでは早速
第198話 どうぞ。
「行くぞ!!」
知矢はそう声を上げると頭上へ掲げた日本刀を振り下ろし先頭を切って駆けだしていった。
フェンリルの従魔はその姿を人型のままそして肩に小さな従魔を乗せて知矢と共に一直線。オークの集団へと疾走する。
対するオークたちは森の中から河辺へとグフグフ何か互いに声を出し合いながらのっしのっしと周囲を気にする様子もなく歩いてきた。
1000m以上先から何かが自分たちに向けて駆けてくるのも気が付かず今夜の夕食の獲物の話でもしているのであろうか楽しそうにも見えた。
そんなオークの先頭集団は3頭、後方からも続いて来るのも見える。オークたちは森から出てそのまま河辺を歩き下流へと向かう様子だ。
暫くそのまま進むと先頭のオークが突如『ブヒィッ』と声を上げたと思うと立ち止まりその場で立ち尽くした。
続けて周囲にいた他のオークも『『ブヒィッ!!』』と同様に声を上げ立ち止まる。
何事が起きたのかわからず後方から他のオークたちが近づいて肩をたたく様子が見えたがするとバターンと砂埃を巻き上げて1頭のオークが前のめりに地に伏した。
その衝撃が伝播したのか先頭の周囲におり同様に声を上げた2頭のオークたちも次々と倒れこむ。
地に伏したオークたちに共通するのは眉間に空いた穴と痺れるようにピクピク痙攣してその後すぐに生を失った。
後続の残されたオークたちは突然倒れた仲間たちをウギャギャと笑うような声を上げていたが直ぐに様子がおかしいのに気が付くと周囲を見回しながら興奮する声を上げ始めた。
疾走する知矢たち。
「フェリシア、見事だ。しかし俺たちも接近戦の練習をしたいから全部は倒すなよ」
走りながら和弓を使いオークの先頭を射倒したフェリシアは弓を背に戻すと
『了解いたしました』
と静かに答えながら今度は知矢と同じく日本刀を走りながら腰から抜き去った。
先に目をむけるとオークとの距離は既に50mもないが三人はそのままオークめがけて走りこんだ。
接近する人族にやっと気が付いたオークたちは『ブギャギャギャ』と声を上げながら仲間を殺したのが接近する人族であると理解したのか怒気を込める様に持っていたこん棒やみすぼらしい手槍を振り回す様にしながら知矢たちの方へとドスドス駆けてきた。
『・・・(次は私で)』
小さい従魔G・D・Sは口から糸をまるで弾丸のように圧縮した物を高速で飛ばした。スパイダー・ショットである。
『グフッ』G・D・Sのスパイダー・ショットを眉間に受けたオーク2匹が苦悶の声をわずかに上げただけでその場に倒れこんだ。
「ピョンピョンすごい攻撃ができるようになったな。それじゃあ今度は俺だ」
知矢は向い来るオークの集団の遅速を読み取りながら華麗にステップを踏むようにその2mを超える大きな体躯を縫うように走り去った。
知矢が走り抜けた後その場にいたオークたちは『pugyoooー!!』と声を発し首や喉回りから血を吹き出しながらバタバタと倒れていった。
知矢は背後で倒れ伏したオークを感じとると目の前に残された2匹のオークへと切っ先kきを向けた。
そのオークは他のオークに比べ一回り以上大きく3mに届こうかと言う体躯に優れ一目で上位種、おそらくオーク・リーダーであると見て取れた。
残ったもう1匹はほかのオークと同様の普通のオークであろう。こちらはすでに仲間がほとんど一瞬で殺されたことですでに弱腰のようだ。
しかしオーク・リーダーは真っ赤にした怒気のこもった顔で知矢たちを見つめながら手もつ一際大きな槍を頭上でぶんぶん振り回しながら今にも襲い掛かろうとしていた。
『主様この者は私目にお任せくださいますよう』
そう言いながらフェンリルの上位種である従魔がすっと知矢の脇から一歩前に出た。
その手にはわずかに発光する刀身の抜き身を右手に下げている。
知矢の持つ最高神から貰った日本刀は業物(小)であったが従魔の装備する日本刀もそれに勝るとも劣らない業物であることが見て取れるがそれ以上に刀身から放つ魔力が更に凄みを醸し出しているように見える。
「ああそうだな。フェリシア、お前の剣技を見せてくれ。だがくれぐれももう一匹には手を出さずに頼む」
「承知いたしました」
従魔は落ち着いた声音で静かにそう答えるとすっと右足を音もなく前に半足出しその指先に重心を軽く載せて踏み込む体制をとった。
オーク・リーダーは目の前のやり取りなど解らないが怒りの矛先を向ける相手が定まったのか刀を構える従魔へ向けてドカドカと駆け出しながら頭上で振り回していたこん棒のような槍を力いっぱい振り下ろした。
『ブギャー』叫びながら獲物の頭をめがけて渾身の力で振り下ろした槍が当然相手を仕留めたつもりでいたのだろうが
ばごーん!っと地面へ槍をその勢いのままたたきつけると地面はその馬鹿力で土屋草を飛び散らせながら周囲へと飛散した。
しかし
『gyagua?』
目の前には地面しか見えず自分が一撃で打ち据えたはずの相手が見えないことに困惑している様子だ。
『どこを見ているのです。お前の相手はこちらですよ』
従魔の涼しげな声が背後から聞こえる事に気が付いたオーク・リーダーはすぐさま振り返りながらその本能に任せて再びその手荷物こん棒のような槍を振りまわした。
すると妙な違和感を感じ己の手へ視線を向けるオーク・リーダー。その視線の先には自らが握っていたこん棒のような太い槍、それが握っていた部分しか残されてはいない。
『Byuhihihiii』
なぜ自分の武器がなくなっているのか理解が付かないオーク・リーダーは何故だと言わんばかりの叫び声をあげた。
そんな事は意に返さず従魔はつかさずオーク・リーダーの懐へ音もなく飛び込むと音もなく軽く刀を一閃、そしてその大きな体躯の脇を風の如くすり抜けていった。
背後にオーク・リーダーを残したまま従魔は刀を血振りの様に虚空で振るとカチリと鞘へ納刀。
知矢へと向き直り軽く頭を下げた。
「見事な踏み込みと剣筋。まるで達人のような捌き見事だ」
『お言葉ありがたく』
そう言うと従魔は頭を上げオーク・リーダーへと振り返る。
まるで、そう戦いをすでに終えているかのように。
ふりかえった直後、フェンリルの従魔がその脇をすり抜けて言った直後に固まるように動けなくなったオーク・リーダーだったが見守っていた怯える様子のオークの前で突如その身が”ズッズ”と音がしたように上半身が斜めに下半身からずり落ちていった。
ずどーんとその大きな体躯の上半身も相当の重量であった様子で落ちた瞬間、音とともに地面が大きく振動した。
『bububuuuuugyaa!!!』
それを見た最後に残されたオークは叫び声と共に慌てて転びながらも必死にその場から逃げ去っていった。
「よし、じゃあ少し間をおいて追跡しよう。上手く巣へ案内してくれると良いのだが」
知矢は逃げ去ったオークへ感知レーダー上でポイントを個別指定しながらゆっくりと後をつけようとしていた。
「その前に・・・」
と知矢がやり残したことを思い出し従魔たちへ声をかけようとしたときである。
少し前からレーダーに映っていた急接近するものが知矢たちに追い付いてきた。
「ニャー! トーヤ!」
知矢の友人。猫獣人族のニャアラスさんの登場である。
「ようニャアラス。どうしたこんなところで」
従魔フェリシアに騎乗し疾走中、知矢のレーダーにニャアラスの反応があったのは気が付いていたがまさか追いかけてくるとも考えていなかったためそのまま従魔を走らせていた。
「ニャアニャアニャア」肩で息をするニャアラスである。
「ニャア。脇間道から外れたところで狩をしてたにゃ。そしたらフェンリルに乗ったお前を見かけたニャ。何か楽しい事がありそうだとこの自慢の足で追いかけたニャ・・・でもフェンリルが早すぎて早すぎて・・ニャアニャア」
そう話しながらいまだ息を整える途中のニャアラスである。
確かに俊足を誇る猫獣人族の戦士であるニャアラスだが基本的な能力値の差もさる事ながらそもそも猫獣人族の走りは短距離ランナーのそれであり最高速で長距離を移動するには向かない能力であった。
もし0-400mのレースであったならニャアラスもフェリシアにそれ程後れを取ることは無いであろう。
しかしフェンリルの変異種である従魔フェリシアはスタートダッシュから高速巡行迄自在にその力を発揮できる。
フェリシアが新たな裑を最高神からもらい受けさらに元々の姿、過給機内蔵のバイクであった時の力をそのままに発揮できる能力も授かったのだ。
本来の生き物であるニャアラスが敵うはずもなかった。
そもそもフェリシアが以前バイクであった頃の能力は、街乗りからツーリング。そしてサーキットまでも幅広く走れるをコンセプトとして設計開発された 【スーパー・ツーリングSS】であったのだから。
「そりゃあ悪いことしたな。まさか追いかけてくるとは思わなかった。だが丁度いい手を貸してくれ」
そう言うと知矢は辺りに倒れ伏しているオークたちを見回し
「とりあえずの獲物は確保した。解体は冒険者ギルドの職員さんにお願いするとして少し間がある。魔石だけでも回収しておこうかと思ってな」
そう言うと知矢は無限倉庫から以前武器屋のガンテオンから購入していた解体用のナイフを2本取り出し一本をニャアラスへと差し出した。
息を整えたニャアラスはナイフを受け取りながら「ニャア、それなら任せるニャ」とさっそく目の前に横たわるオークの中でも大きな個体の心臓付近の脇を切り裂き、血抜きをしながら心臓付近を切開し慣れた手つきでナイフの先ですぐに魔石を取り出した。
「こいつは上位種だニャ。そっちより少し魔石が大きいニャ」
知矢も解体ナイフで普通のオークから魔石を切り取って差し出し比べてみた。
「確かに。わずかだが大きいな」
オークの魔石は親指の爪ほどの真っ青な宝石の原石の様であった。
かたやオーク・リーダーと思われた個体は色味は同じだが一回り大きい。
「でもオーク・リーダーじゃあまり高く買い取ってくれないニャ。オークジェネラルならよかったニャ」
少し残念そうなニャアラスの話を聞きながら知矢は無限倉庫へオークの死骸をどんどん収納していった。
「そう残念がらなくても良いかもしれないぞ」
「ニャニャ! ジェネエラルがいるかニャ!」
「かもしれない。先ほど狩った集団から1匹逃してある。今は必死に駆けて、多分住処へ向かっているんじゃないか」
「ニャア! トーヤ頭がいいニャ。そいつを追いかけて行けば」
「ああうまくするともっと多くの集団や集落に出くわすかもしれない。それにこのオーク・リーダーの武器。槍に加工してある、って事はだ」
「ニャア、最低でもジェネラル。ひょっとしたら」
「ああ、キングが生まれているかもな」
「ニャア!トーヤ早く追いかけるニャ!逃げられる前に俺たちで一網打尽、1群れ金貨いやひょっとすると青金貨ニャ!」
ニャアラスはさらに上位種が率いる集団だと聞くとがぜんやる気を出す。
一般的には先に記した通りそれだけの上位種や下位のオークが集団を形成していた場合100頭以上にもなる場合が想定される。
そんな集団を討伐、狩るには数十人の冒険者を集める必要があった。
しかし知矢は勿論のことニャアラスも今この場にいる2人と2匹。4人での討伐になんらの不安を持ってはいなかった。
それはそうである。
知矢は本人曰く『偶然ポイントを得ただけの駆け出し冒険者だ』と言っているがニャアラスは数々の冒険で知矢の実力は十分理解していた。
それにニャアラスも冒険者ランクはBではあるがその実力と経験は十分にAランクと言って問題は無い。あと必要なのはギルドへの貢献ポイントだけである。
そして知矢の従魔。G・D・Sのピョンピョン。この従魔も小さいながら単独でクレイボアを狩る力を持っていた。
しかも冒険者たちでさえクレイボアを単独で狩れるのは最低でもCランク。推奨討伐ランクはBである。なのでそれだけに十分実力を有しているのは間違いなかった。
そして最後に控える最近知矢の従魔になったフェンリルの上位種であるフェリシア。
この従魔はまさに特別であった。
一般的なフェンリルはAランク相当の力を持つ。さらに上位種という位置付けとその身から溢れる魔力を感じればSランクと称して十分であると実感できた。
身に着けている武具による遠近両戦闘にも長け魔法を操れば各属性の高位魔法を使う事は当然でさらに広囲殲滅魔法も行使できる。
しかも人間形態から本来のフェンリルへ戻った時にはその力と魔力は計り知れない物である。
そう言った点からもニャアラスはどんなにオークたちが集団でいたとしても引けを取ることは無いと確信していた。
「オイオイ気が早いぞ。まだ集落どころか群れを補足したわけじゃないんだからな。それにあまりに大きな集落だった場合は調査だけで引き上げることも頭に置いておいてくれよ」
知矢はニャアラスに比べ少し慎重だった。
「ニャア問題ニャイニャ。100匹いようがジェネラルが居ようがこの槍と知矢の剣でギッタンギッタンにゃ」
そんなニャアラスを「おいおい」と諫めながらも知矢も戦力としては十分であるとは考えていた。
そんなことを話している間に先ほど逃げ去ったオークがそろそろ知矢の感知魔法の圏外へと迫っていた。
すぐに知矢は周囲の血や狩の痕跡をクリーニングで一応清め追撃へと移った。
知矢とニャアラスを先頭に後方から人型のフェリシアとその肩に乗るピョンピョンとが続く。
知矢の感知魔法のレーダーは大凡2000m程を感知できる。いまはその範囲の少し手前1500m程先をオークが移動している。
それを注視しつつも周囲に別の魔獣などと遭遇しないかも含め確認しつつ4人は河辺と木々の間を疾走していた。
「思ったより遠いな。それにさっきから時々止まっているのは何だ?疲れて休憩か。それともまさか道に迷っていないだろうな」
知矢は感知レーダーでオークの動きを確認しながらつぶやく。
「ニャアあいつらは頭は良くニャイだけど巣を見失うことは無いニャ。鼻も利くニャ」
そんな事を話しながら追撃する一行は次第にその距離を縮めていった。
『少し岩が多くなりました。この形状では集落には不向きかと』
従魔のフェリシアは森の中に集落を作る習性のオークが岩場を目指す様子に疑問を呈した。
「岩山を超えた先の森じゃニャアか」
「いやそうするともっと手前から右手の森を抜けた方が早いだろう。それにオークは岩場を移動するに不向きな魔者だ。態々こっちを目指す理由はなんだ・・・」
それぞれが疑問を持ちながらもオークを追走をつづけた。
すると
「少しスピードを落とせ。他のオークの反応がある」
追っていたオークとの距離が200m程に迄縮まった頃、知矢の感知レーダーに新たなオークの反応が現れた。
4人はその位置が見渡せる様岩場を河とは反対方向へ登り岩の陰から様子をうかがった。
みると棒切れを槍のように持ったオークが2匹知矢たちが追ってきたオークと何やら興奮気味に話をしている様子が見える。
「ニャア仲間がやられたことを話しているんだろうニャ。でも集落は無さそうだニャ」
ニャアラスの言う通り辺りには大きな岩場と切り立った崖、反対側は河である。とても百匹にもなるオークが集落を設けているような場所には見えなかった。
「ああそうだな。おれのレーダーにもほかの集団は近くに見えない。お前たちは何か感じないか」
同じく周囲で岩の陰から様子をうかがっている二人の従魔へ確認する。
『・・・(私もとくには)』
『申し訳ございません。私もあの者たち以外は存在を検知できておりません』
従魔たちの能力でも知矢のレーダーと変わらない結果の様だった。
すると
「ニャアあのオークが消えたニャ」
その声に目を向けると先ほどまで3匹で何か話していた光景が今は槍の代わりに棒を持った2匹だけになっていた。
「うん?どこへ消えた。反応も消えたぞ」
知矢はレーダーの表示を詳細に確認するがやはり先ほど追ってきたオークの姿は確認できない。
『・・・(??いませんね)』
『わたくしも見失いました、申し訳ございません』
「ニャア岩の向こうに何かあるのかニャ。洞窟の入り口でもあるかニャ。でもあいつら穴の中で生活する集団じゃないニャ。草原のくぼ地とか森の広場とかにしか住まない。洞窟や洞穴は暗いからあいつらは行動できないニャ」
ニャアラスの言う通り。オーク種は夜目が利く生き物ではないため人族と同様に基本的には暗い場所や時間に行動することは無い。
よってその行動も日中に限定され巣や集落も日の当たる場所に設けるとされている。
冒険者ギルドの資料室にある冒険者図鑑のオーク種の特性や生態を詳細に記した項にもそう記載され冒険者には常識として周知されている。
「ともかくここからでは確認できないな。河辺は潜む場所も限られる。仕方がない一度岩場を大きく迂回して反対側を目指しながら確認できる場所を探そう」
そう知矢が提案すると4人は音と気配を消しながら静かにそして素早く移動を開始したのであった。
眼下には先ほどのオークが2匹知矢たちに未だ気が付いた様子もなくだが周囲を警戒するように立って辺りを見回しているのであった。
オークの焼き肉大会はまだ始まらない。
お盆休みを皆さんはいかがお過ごしでしょうか。
せっかくの休みですが今年も昨年に続き中国ウイルスの猛威がオリンピックでさらに拡大し
追い打ちをかけるように各地に大水害も併せて発生。
とんでもないお盆になりましたね。
病に伏している方々、そして災害に合われた方。早い復帰と復興を切に願っております。
ではまた次話にて。




