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第193話 集う者たち ~ 「あのう兄貴・・・・・」(忘れてたなこいつの事)

こんばんは

7/12月曜日です。昨日は更新ができませんでした。申し訳ありません。

ではさっそく 第193話 どうぞ






 「・・・・・・・」


 「・・・」


 「何なんだこれわあわあわあわあわあああああーーーーー!!!!」



 魔馬車を降りた3人。

 マリノスとマジコはエントランスで茫然の立ち尽くす。

 そしてガンツは何故か両手を握り締め膝を中ほどまで折り両脚は肩幅ほどに開いた状態で何かから踏ん張る様に力を込めながら絶叫していた。





********************************************




 知矢と冒険者ギルドで顔を合わせた三人。ガンツ、マリノス、マジコたちは



 『 そうだ、ガンツ今夜暇か。俺の家で親しい者が集まって今夜食事をするんだお前らも参加しないか。今回の騒ぎの慰労会ってところだな 』






 と誘われワクワクしながら知矢の魔道具商店へと足を運んだ。


 「この間食べた料理は美味かったな」


 「ええ、日頃口にすることの無い高級食材もさることながらその独特の調理方法にも驚かせられました」


 「食後のデザートも最高でした」

 マジコはうっとりその時の記憶を反芻するように思い起こしていた。



 用を済ませ徒歩で知矢の住まう魔道具商店の裏門へ到着するとそこに待っていたのは魔馬車と使用人たち。




 「ガンツ様ご一行でございますね。主がお待ちです、どうぞこちらへお乗りください」

 待ち構えていたであろうその若い女の使用人に即され魔馬車へと乗り込んだ。




 魔馬はすぐにゆっくりと動き出した。

 荷台に乗るのはガンツたち三人だけである。

 若い女の使用人は他の使用人と共に御者台に二人乗り込み無言で目的地へ魔馬車を走らせていた。



 「今日は別の場所なのか? どこかの店でも借りたのかな」


 「変ですね。自宅に親しい者を招いてと言っていたはずですが」


 「オイ、何か姦計(かんけい)でも巡らせているんじゃないだろうな」


 「トーヤさんに限ってその様なことはまずないでしょう。我々を罠にはめる理由がありませんからね」

 マリノスはガンツの言った事は杞憂(きゆう)であると言い切った。


 「確かにそうですわ。どちらかと言うと貧乏が故にいつもお世話になっているのは私たちの方ですし」


 「それを言うな。悲しくなる」



 一応子爵家の息子であったガンツではあるが今は実家からの送金も断り三人で冒険者として得られた収入だけで生活している。


 知矢からのアドバイスや三人で話し合った結果、安全マージンを最優先していた以前の立ち回りを改め効率的ではあるが少しづつ力を蓄える依頼をこなすように心がけさらにはより無駄を省いた活動へとシフトしてそれなりに生活をできるようにはなっていた。


 それでもやはり子爵家での生活レベルとは雲泥の差である。冒険者であれば当然の話であるのだが。

 以前は秘かに子爵本人より生活費を受け取っていたマリノスたちであるがガンツと腹を割って話し合いをした結果一切の援助を放棄しそれにより本当の意味での冒険者として自立した生活と活動を始めた。



 秘かに子爵家から援助を受けていた頃は個室と風呂のある宿で夕食にワインを飲むことも多かった。しかし今は三人同じ部屋でベットを並べただけの狭いただ寝る場所があるだけの安宿。食事も味より量、酒など滅多に口にすることもない生活を自身で課していた。


 そんな三人であったが特に問題も起こっていない。


 逆を言えばマリノスとミジコはガンツに対する負い目を無くし心は軽くなった。

 そしてパーティーとしての活動も順調に推移し資金の余裕も見えてきている。今後そう遅くならないうちにDランクへの昇格も見えてきた。

 このまま大怪我や依頼失敗が続くことさえなければ順調と言ってよいだろう。

 そんな状態が三人の心内を軽くし尚更パーティーの雰囲気を良くしている。




 そんな話をしていると魔馬車が減速をはじめる。

 魔馬車はそう時間をかけず目的地へとそろそろつく様子であった。



 開け放たれている木製の遮光窓から外の様子をうかがっていたマリノスは


 「ガンツ、おかしいですね」


 「どうした。やはり何かはめられたか」

 小声で御者に聞こえぬような緊張した声を発する。


 「いえ、というか・・・目的地はどこかの貴族の屋敷の様です」


 その声にガンツのミジコも外の様子を覗いてみた。



 丁度一度停止し入り口の大きな鋳物製の門扉が左側だけ内側に開け放たれたところである。

 そこには腰に剣を(たずさ)え手には短槍を持つ軽装備の門番とも冒険者とも見て取れる2人が左右に立っていた。


 

 魔馬車はそのまま門扉の左から敷地内へと静かに進み大きく弧を画く様に左回りでその屋敷の正面玄関に設けられた魔馬降車場(エントランス)前へと静かに停車した。



 出迎えた若い使用人の男がすぐに進み出て外側から客車の扉が開かれると腰を折った使用人が

 「ようこそいらっしゃいました。どうぞ中へお進みください。主がお待ちです」

 そう述べるのだった。



 訳も分からずとりあえず魔馬車を降りた三人。


 周囲の様子を見てもどう考えても貴族の屋敷だ。それもガンツの実家、子爵家の屋敷と同等かもしくはひょっとするとこちらの屋敷の方が格が上かもしれない。

 そう感じ取ったマリノスは恐る恐る屋敷へ(いざな)おうとする男の使用人へ声をかけた。



 「大変失礼ですが、こちらのお屋敷はどなた様の。我々はトーヤさんにお誘いを受けてこの魔馬車で案内を受けてきたのですが・・・」

 何かの間違いがあったのではないかと危惧きぐし確認をするのであった。


 「ハイ間違いはございません。当屋敷は トーヤ・ツカダの屋敷でございます」

 と、当然のように応えるのであった。



 「「「「エーーーーッ!!」」」」

 驚愕する2人であった。


 「何なんだこれわあわあわあわあわあああああーーーーー!!!!」

 そしてガンツであった。









********************************************




 ガンツたち一行は驚愕していたがその使用人にそくされるまま半ば呆然とした状態で中へ案内された。


 そのまま知矢の元へ向かうのかと思うと


 「大変失礼ですが一度お部屋の方へご案内させていただきます。その後浴場へご案内いたしますのでゆっくりご入浴ください。

 主からも 『汗を流して気持ちよく食事をしていただこう』 と申し受けてございます」



 「はあ・・・・・」

 そう答えるのがやっとであったガンツたちは促されるままに一度指定された部屋へ入り荷や装備を置かせてもらうとそのまますぐに浴場へと案内された。


 屋敷自体は年数が経っていたがここそこに手が入れられ保たれている。



 中でも案内された浴場、風呂はおそらくは最近大改修を施したのであろう床の石もピカピカでぬめりもなく一般的に貴族や豪商の屋敷によくある大きな石組の浴槽ではなくまだ香りが強く立ち込める木で組まれた大きな湯舟であった。



 壁からは当然のごとく湯がでる魔道具が取り付けられこんこんと湯が浴槽へと流れ込んでおりそれを壁や天井に配された明かりの魔道具が照らしている。



 「・・・・お邪魔します」

 「・・・・失礼いたします」


 ガンツとマリノスは何故か誰もいない浴室へ向け挨拶をしながらきょろきょろ落ち着きなく入っていった。





 カポン、ジャバアーーと湯を使う音や桶の音が響き渡る広く天井も高い女性用の浴室でマジコは一人湯船に浸かっていた。

 壁から湯船に注がれる温かい豊富な湯を手に受けながら


 「・・落ち着かない。でも気持ちいい・・・・最高」


 こちらは緊張しながらも満足の様である。




************************************





 風呂を出た三人はまたもや使用人に案内され廊下を進んでいた。


 一般的に薄暗い屋敷の中。良くて油ランプがわずかにある程度である。

 勿論ガラス窓など製作するのが困難なためほとんどの屋敷には数か所しかない。

 よって昼間は板窓が放たれて太陽の光を室内へと導かなくてはいけない。


 しかし夜間はランプまたは自身の魔法で照らし出すのが一般的だ。


 だがこの屋敷には当然のごとく各所に光の魔道具が取り付けられておりその恩恵は夜間でも昼間と同様の明るさを作り出していた。


 そんな明るい廊下をおどおどと身を寄せ相ながら使用人の後ろを歩く三人。


 「オイこの明かり、光の魔道具って一つ幾らだっけ」

 ガンツが小声でマリノスへ恐る恐る聞いてみた。


 「はしたないですよガンツ。 ですが確か一台、中金貨1枚ほどから大銀貨5枚程度はするはずです。ですが最近安めの普及品が出ましてでそれでも2台セット品が大銀貨8枚はするはずです」


 「1台100万イエンから最低5万イエンか。・・・数えきれないほどあちこちで煌々と光っているな」

 何かあきらめたような顔で呟くガンツ。


 「部屋の天井、ベットサイド、それにドレッサーにも付いてました」

 マジコは澄ましたように囁く。


 「「・・・・・・・」」再び何かあきらめともつかない顔をしたガンツたちは無言で使用人に付き従うように歩いて行った。







 「おう!来たな。こっちに席が用意してあるさっさと座れよ」


 大食堂とでも表現すればいいのであろうか。広い部屋に数多くのテーブルと席が配された部屋へと案内された三人は部屋へ入るとすぐに声がかかった。


 「トーヤ!」

 ガンツは小走りにテーブルの間を走り抜けると知矢の席へ詰め寄った。


 「お前、俺たちに元々大貴族だってことを隠していたな! もしや侯爵とか伯爵クラスなのかお前の親は」

 知矢に迫りながらまくし立てるように問い詰めるガンツ。



 「いや、何を突然。 お前も知っているだろう俺はこの間、皇帝より功績を称えるってやつで表彰を受けてそのついでに俺を1代貴族相当ってやつにさせられたってことを。

 この家はその時に下げ渡されたやつだ。まあせっかくだから最近居をこっちに移したってわけだ。


 お前に家を引っ越した事を伝え忘れたんで使用人に頼んで連れてきてもらったという訳だ。


 俺は貴族どころか単なる平民の出に過ぎないのは前に言ってなかったか。まあそういう訳だから友人の家へ来て一緒に飯でも食おうってだけだから気にするな。


 何なら気が向いたときにいつ来てもらってもいいし部屋も用意してあるからいつでも泊まれるように言っておくぞ」




 知矢は興奮して迫ったガンツへ何のことは無いといつもの調子で答える知矢であったが後ろにいたマリノスとマジコも少々引き気味であった。



 「うっかり失念しておりましたがとーや様は貴族相当権の地位をお持ちでした。扱いは【伯】と同等。つまり騎士伯であるオースティン様と同列に相当する扱いでした」

 と呟き申し訳なさそうに頭を下げ礼をとるマリノスとマジコであった。



 「オイオイ、よせ、以前も言ったがそう言うのはやめてくれ。偶然今朝使用人たちにも話をしたところだが俺はあくまでもいち冒険者だ。ひょんなことから人を雇い商売にも手を染めいつのまにかこんな屋敷に住む事になったが、まあ偶然と奇跡が入り乱れて俺のところに落っこちてきたってところだな。だから気にせずこれからも気軽に遊びに来てくれ」



 そう言う知矢であったが三人はそう易々とその言葉を真に受ける訳にもいかないと思っていた。


 そこへ


 「ニャア、そうだニャ。そんなの気にすることニャイニャイ。早く席に着くニャ」

 知矢の隣の席にいた猫獣人族の冒険者、ニャアラスは酒の入った金属のコップを大きく掲げながら三人へ早く席に着けと即す。


 「ニャアラスさん!」

 ガンツは興奮していたため知矢しか目に入っていなかったが先輩冒険者で知矢とは違い年上であるニャアラスがそこにいて声をかけられては後輩冒険者としてガンツもおとなしくなるしかない。


 知矢とニャアラスに言われてはその場で立ち尽くしている訳にもいかず指定された席へ腰を下ろした三人。

 それでも妙に神妙な顔になるのは仕方のない事であった。



 「よおし、もうゲストは全員揃ったな。リラレット、今日参加予定の使用人の方はどうだ」


 隣のテーブルに控えていたリラレットは知矢の呼びかけにすぐに席を立ち答える。


 「はい、予定していた者は全員揃っております」


 知矢からの通達でなるべく仰々しい態度をとらない様にという事もありリラレットは軽く頭を下げる程度にとどめた。


 「そうか、じゃあ早速始めよう」


 そう言うと知矢は席を立ち周囲を見渡す。



 そこには盟友ニャアラスをはじめ、Sランク冒険者のカーネタリア老人、そして冒険者ギルドサービスマネージャーのニーナも席についていた。


 そして今回初めて招待された者もいた。


 オースティン騎士伯配下の騎士でこの世界における知矢の剣の弟子ともいうべきマジェンソン・ボドーそしてジェシカ・エクワドルの両名も招かれていた。



 マジェンソンなどは

 「トーヤ様と席を同じくするなど不敬なのでは」とおどおどしていたが逆にジェシカの方は


 「師の誘いを断る方が不敬だ」

 と言い切り二人してこの場へと参じたのだったが知矢から



 「気楽な宴会だから平服で来るように」と言伝手(ことづて)られていたが渡された地図を頼りに屋敷に着き門の前でそれを見上げた見た段階でジェシカは


 「しまった。この格好で来るべき場所ではなかったか」と言ったとか。


 しかし到着を知矢の使用人に見つけられ少し遠慮をして抵抗を見せたが使用人たちも

 「主は普段着のお姿の方を好まれます」

 と言われたのだった。


 ちなみにマジェンソンは麻のズボンに上はポロシャツのような襟付きのシャツで靴は軽装の革くつであった。


 ジェシカは丈の短めなワンピースのような姿に腰には太めの革のベルトをしめ靴はパンプスの様ではあったが固めの革くつであった。


 両者とも何かあった場合に備え動きやすい服装なのは仕事柄なのだろう。ちなみに二人はそれぞれ小さめのバックやポーチを携帯しているが中には鞘付きのナイフを携行していた。

 これも何かあった時のためと常日頃からの用心である。





 ここでこの世界における武器の携行、携帯について少し記す。


 基本的には不要なものが武器の携行、携帯を常時していることは禁じられている。


 武器を持っていて良いのは貴族や騎士、兵士等であったがそれでも業務外に不用意に持ち歩くことは憚られる。

 勿論貴族の護衛などは除くが。

 公の建物。特に貴族の屋敷や館、城などでは入り口で大きな武具や魔道兵器マジックウエポンの類は預けるのが通例だ。


 一般市民でも武器の携帯ができるのは護衛や警護の仕事をしている者、それに冒険者であった。


 ただ冒険者が仕事以外でも日常的に武器を携帯しているのはあくまでも黙認されているだけで厳密にいえば常時携帯は咎められる。


 しかしほとんどの冒険者がその線引きを明確に行えないほど朝から晩まで日常的に装備を纏い武具を持つことが当たり前の状態であった。

 そう言ったことから都市の中でも冒険者はいつでも鎧や籠手など防具を身に着け帯剣しながら生活していた。

 であるから多くの冒険者が装備をすべて身から離すのは湯あみの時と寝るときだけかもしれない。




 そして知矢の屋敷では基本的に武具を入り口で預かる等の処置は成されていない。

 だいたい等の主である知矢が四六時中刀を手放さずにいるのだから。


 そう言った事から今日のような()()の場合席の後方などにその物の武器などを置く場所が用意されているのであった。


 もっとも知矢の場合一見何も身に着けていないように見えても空間魔法によって作られた”無限倉庫”と知矢が呼ぶ物がありそこには予備の武具から各種ポーション類、薬草からテントに寝袋、食器にはたまた調理台まで常時入れているのであるから武器を相手に預けることの意味をなさなかった。


 しかし知矢もエチケットの範疇で武器を預けることはあった。


 ただ自分の家、屋敷に来てくれた親しい者へそれを行うことは無い。そう決めて使用人へ周知していた。





 そんな騎士伯配下の騎士である二人はいつも以上に緊張した面持ちで席に座っている。


 そしてその二人とは大きく異なり落ち着いた様子で席へ着きながらも少々挙動の怪しい人物が1人いた。

 奴隷取引商会長ザイード・ギムベルグであった。


 ザイードほどの立場であれば常日頃から貴族との付き合いも多く屋敷に出向く機会も多い。

 そう言った意味ではこの場で一番貴族との付き合いの経験が豊富だと言ってもよいのかもしれない。


 (子爵の息子であったガンツたちは除く)



 しかしザイードはそう言った不慣れな場で緊張をし挙動が怪しいのではない。


 彼のその挙動は次から次へと現れる思いもしない知矢の交友関係を知りそれに目が行っていたのであった。


 勿論ザイードは鑑定魔法の使い手ではあるがこういった場でその魔法を使用することはタブーとされているためそんなことはしなかった。

 しかし己の目で見ても多彩な立場の異なる者たちが集まっているこの場所へ自身も招かれたことに非常に喜んでいた。



 ザイードは数日前すでに一度この屋敷を訪問していた。


 「トーヤ様、この度のご栄達、誠におめでとうございます。そして新しいお屋敷を構えると聞き失礼とは存じましたがささやかなお祝いをお持ち致した次第でございます。よろしければお納めくださいますよう」


 玄関の近くに設けられている客間にて面会した知矢はザイードから大きな鉢植えを受け取った。


 それはこの世界で祝い事の際に送られることが多いと聞かされた花の咲く低木の鉢植えであった。



 「態々(わざわざ)ご訪問いただいた上にお祝いの言葉とそれにこんな立派なものまでいただき恐縮します。ザイード様ありがとうございます」

 知矢はなるべく丁寧な言葉で礼を述べ素直にその鉢植えを受け取るのだった。



 「トーヤ様その様な事はおやめください、いつものようにザイードとお呼び下さり何でも申し付けてくださいませ」


 知矢はこれが今までぞんざいな態度や口調で接してきた者が手のひらを反す様に媚び諂うのであったなら即座に屋敷から叩き出し以後の付き合いを禁ずるであろう。


 しかしこのザイードは別であった。


 本心から知矢の能力と人柄に敬服し、いや言わば崇拝する勢いであった。

 だからと知矢がこの人物を受け入れているわけではない。


 知矢もこのザイードの人柄もさることながら奴隷取引商会長として清廉潔白とした筋の通るまっとうな商売をしていることを知っているがためである。



 仕事上の付き合いとは言って既にザイードから奴隷を購入すること4度。最初の出会いから知矢を見た通りの若輩者という態度ではなく一人の商売相手、客としてきちんと対応してくれてきたことも忘れてはいない。



 残念なことに今までこういった(わたくし)の付き合いは無かったがこうして祝いに訪れてくれたことにも感謝しそう言った意味で今回初めて()()に招待したのだった。



 (トーヤ様のお付き合いは多彩で面白いですね。しかも騎士伯ではなく配下の騎士、しかも若く役職の無い者をプライベートで招待するというのはなかなか。それに今回は幻のSランク冒険者も隣にお座りと言うこれまた興味が尽きませんな)


 そう心の中で周囲の人物を見ながらザイードは益々知矢へと傾倒していくのであった。





 「さてとじゃあ皆さん。今日は態々私の屋敷まで足を運んでくださって大変恐縮です。まあこの場にいる皆さんはごくごく近しい者ばかり、楽しく食事をしながら大いに飲んで語らいを楽しめれば幸いです。


 では乾杯と行きますか。


 初めての方もいらっしゃいますからご紹介します。


 Sランク冒険者のカーネタリア様です。


 カーネタリア。様乾杯をお願いしてもよろしいですか」

 知矢はごく短く挨拶をすると隣にいる老人へ話を振る。



 「ひょっひょっひょ、わしにか。何十年ぶりかのうひゃっひゃっひゃ。ならば、乾杯!」



 「「「「「カンパーイ(ニャ!)!!」」」」」

 「乾杯!!!」×使用人多数



 知矢以上に短い老人の乾杯の音頭でその場に列した皆が金属製の盃を大きく掲げて唱和する。

 するとそれを合図に衝立の後ろに隠されるように開いている扉からデシャップに準備してあった料理が次々と運ばれてきた。



 知矢は基本的にざっくばらんである。

 これは日本にいた頃から変わらない。



 会食にしても自身が主催する場合、大皿からそれぞれが自由に取る形式を好む。


 これは宅盛りとも卓袱しっぽくとも言うが和気あいあいと気兼ねなくそれぞれのペースで飲食をしながら語り合うのを好む知矢が好きなスタイルだ。


 貴族でなくとも知矢のいた世界で会食と言えばやはり




  日本で懐石や宴席というと


ご飯(一口ほど)

汁物(味噌汁)

向付(むこうつけ。刺身かなますが多い)

椀物(懐石のメインで、具沢山)

焼物(焼き魚。ここまでで止めることもある)

強肴(しいざかな。ちょっとした料理)

小吸物(箸清め、口を漱ぐ意味)

八寸(一辺八寸の器に海のものと山のものが盛り合わされる)

湯桶(ゆとう。おこげにお湯をかけたもの)

香物(漬物)

  最後に濃茶と主菓子、締めに薄茶と干菓子など。

 である、



 フランス料理などでは


アミューズ(突き出し)

オードブル(前菜)

スープ

ポワソン(魚料理)

ソルベ(シャーベット。口直し)

アントレ(肉料理)

サラダ

チーズ

アントルメ(甘い菓子)

フルーツ

カフェ・プティフール(コーヒーと焼き菓子)


 などが一般的であろう。



 一般的に日本ではあまり知られていないがフルコースと言う概念はイタリア料理が元祖である。

 日本人になじみが深いのはフランス料理だが歴史的にみるとイタリア料理のマナーをフランスが取り入れたことになる。


  アンティパスト(前菜)

  プリモ・ピアット(第一メイン、パスタ)

  セコンド・ピアット(第二メイン、魚か肉)

  サラダまたは温野菜

  チーズ

  デザート

  コーヒー(エスプレッソ)



 最後にコーヒーで〆るか茶で仕舞うかの違いはあれど世界の3台会席料理とするならこういったものが一般的である。

 これらは全て意味を持ち順番に供される料理スタイルであった。

 しかし知矢は庶民的だと言われるであろうがそういった会席よりも大皿料理を各自で取りながらの食事を好んだ。



 因みに、知矢の両親はこういった大皿料理を好まずコース料理を好む傾向にあったようだが。



 閑話休題




 「ボドー様、お飲み物のお好みは何がよろしいでしょう」


 食事が始まってすぐ目の前へ次から次へと出される料理に驚愕しながらも目移りをさせていたマジェンソンへ声がかかった。


 ハッとしたマジェンソンが脇を振り向くとサービスキャビネットを引いた使用人の若い女が声をかけたのであった。


 「あっええと・・・」慣れない場に戸惑うマジェンソン。すると


 「彼にはビールを、私にはワインを頂けるかしら」

 マジェンソンの隣にすわるジェシカ・エクワドルが慣れた様子で使用人へ願った。


 「畏まりました」と流れるような手配で即座に二人のもとにビールとワインが供された。


 ちなみに先ほどの乾杯の時はそれ専用の小ぶりな盃で白ワインが用意されていたのであったがそれは飽く迄も乾杯用であった。


 「たっ助かった」マジェンソンがちらりと横目でジェシカを見ながら小声で礼を口にする。


 「いえ気にしないで。私、姫様付が長かったから色々こういった場所も経験済みなのよ。直ぐになれるわ」


 そう言いとワインを口にしながらつまみであろう小皿にあった乾燥木の実を頬張る。



 「俺はこういった場所ではいつも背後に控えて護衛としていただけだからな。自分が席に着くのなんか初めてだよ」


 二人は騎士でありその自出は一般の市民であった為あまりこういった席に馴染みがない。

 騎士団の宴席と言えば安酒をあおり呑みながら骨ごと丸焼きの獣の肉を取り分けるどころか各自が帯剣する剣で切りながら食べるという豪快な物ばかりである。



 女性でもあり幼少のころからさる切っ掛けでアンコール伯爵の令嬢マリエッタ付に任じられたジェシカも騎士団へ配属してからは似たようなものである。

 もっとも女性騎士団の方はもう少し上品であったようだが。





 暫く宴席は銘々が好きな酒を飲みながら好きな料理に手を伸ばし少し腹が満たされてくると話は先日の厄災、ベヒモス・ゾンビにかかわる話へと自然と移っていった。





 まだまだうたげは始まったばかり





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