第190話 起こり ~ 歯を食いしばれ!そんな大人なんか浄化してやる!!
こんばんわ
月曜日です。昨日執筆いたしておりましたが残念ながら完成には至らず今日の投稿になりました。
では第190話 どうぞ
「よし! 忘れ物は無いですか。いない人は置いていきますからね」
数十台の魔馬車が点呼を終えて順次出立し中核商業都市ラグーンへと帰還を始めた。
冒険者ギルドから記録、現場確認のために随行していた職員が最後の魔馬車数台を残した状態で周囲にいる冒険者へと確認を取っている。
「さてわしらもそろそろ行くとするか。
G・D・Sの諸君。今回は互いに協力して事を成しえたのは非常に有意義だったと思う。
わしらは冒険者という仕事柄、魔獣や魔物は狩る対象ではあるが何も殲滅してこの大森林に覇を唱えるつもりなどない。
大地と森の恵みを分けてもらうという思いでいるし、今後も後進の指導を厳にして無駄な争いは起こさんつもりだ」
今回の作戦の責任者たる鬼神モーリスは魔馬の背中で同族との別れを惜しんでいたG・D・Sへと語りかけた。
『もちろんです。僕たちもご飯は食べますしほかの魔獣を狩ります。しかし無駄に敵対してこの森を荒らすことはしないでしょう。人族の方を襲うことは決してありません。
ほかの人族の方へ森で僕たちと出会ったら手を振って挨拶がしたいとお伝えください。』
そう言いながらG・D・Sは前足を振り上げてモーリスへ挨拶をするのだった。
「ああ、次に会ったらにこやかに大手を振って見せようぞ」
そう言うと鬼神モーリスは魔馬の背に乗るG・D・Sへ自分の人差し指を差し出してそれはまるで握手を交わす様にみえた。
帝国の大都市方向へ向けてゆっくりとではあったが確実に迫っていた厄災獣 ”ベヒモス・ゾンビ”は冒険者と森の仲介者たるG・D・S達との協力で討伐、浄化された。
数十人の冒険者すべてがかすり傷程度であり死者や重軽傷者は皆無であったのは奇跡と言ってよいだろう。
過去の厄災獣との戦いでは多くの死者や重軽傷者を出し死屍累々の凄惨な事態となっていたことがほとんどであった。
その歴史から見ると今回無事に作戦を終えた最大の功績はG・D・S達と協力しベヒモス・ゾンビの行動を阻害できた事が決め手であった。
人族だけでの作戦行動だけでは決してその様な阻止行動は不可能である。
そう言った意味でも奇跡的な僥倖であった。
知矢は隣でその光景をみながら新たな交わりに温かい気持ちになっていた。
「ご主人様、こちらも確認は終了いたしました。いつでも出立ができます」
今回使用人たちの護衛もかねて随伴してきた知矢の使用人であり警護担当の獣人の女性ミレが知矢へと報告する。
「ああ了解した。もう少ししたら出立しよう」
知矢がそんな話をしながら周囲を見回しこの4日間にわたる出来事を回想していた。
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ベヒモス・ゾンビは冒険者とG・D・Sとの協力奮闘により、そして最後にはS級冒険者でもあるカーネタリア老人の聖魔法 ”聖光浸球” により完全に浄化されその身は真っ白な粉状になって果てた。
「この残滓ともいえる粉はのうまだ浄化の力がたっぷり含まれとる。これを腐敗した森へ撒けば少しずつ侵された土地も元の姿へと戻る助けになるじゃろう。」
という老人よりのアドバイスを受け人族の冒険者を率いてきた鬼神モーリスは
「よし、全員でこの聖なる白い粉をこの腐敗した大地が一刻でも早く元に戻る様に散布をしようではないか」
その言葉を受け周辺の魔獣に対する護衛の者を除き冒険者はおろか食料や医薬品の運搬管理それに食事の準備のために後衛として動員された知矢の使用人たちも最低限の人数を除き森を歩き聖なる白い粉と呼ばれたそれを運搬、散布を早朝から夕刻まで実施した。
『なんと! この粉を撒いた後に僕たちが浄化の魔法を使うと何倍も早く浄化出来ますよ!』
数千匹にも及ぶG・D・Sの窓口となってくれている知矢の従魔より少し大きなG・D・Sは自分たちが手分けして浄化の魔法を駆けまわるよりももっと早く効率的に大地や森に広がっていた腐敗・腐食の状態が改善されていく様子を目の当たりにして大喜びだった。
先ずはベヒモス・ゾンビが浄化された場所を起点にどんどん森の奥へとその軌跡をたどりつつ冒険者たち人族は一生懸命に聖なる白い粉を運搬、散布しながら進んでいった。
白い粉は散布するだけでもすぐに効力を発揮しじわりじわりと侵された土壌を浄化する。
そこにG・D・S達が浄化魔法を行使するとその速度は爆発的に早く広がり見る見る間に大地が浄化され異臭やただれている様子が消失していったのである。
これに気をよくした冒険者とG・D・S達。
その軌跡をたどり続けどんどん森の奥、ついには大森林へと足を踏み入れた。
「オイ」
「ああ、これがうわさに聞く大森林か」
ほとんどの冒険者は大森林と呼ばれる森に踏み込んだことは無い。
それを感じるのはまず植生が極端に人族の周囲に広がる森や林と異なることだ。
木々は太く空を覆うように枝葉を広げ、地面に生える草花も何もかもが大きく背が高い。
そして何か濃密な生き物の生を感じずにはいられず少し足を踏み入れただけでも何か見えない強者から威圧されているような感覚を受けた。
一瞬躊躇し始めた冒険者達であったがそこへ
『Gyrururuguuuuu』
その背にS級冒険者のカーネタリア老人を乗せ、最近は騎獣と認識されてきたギガント・ポメラニオンがのっそりと姿を現し周囲を睥睨すると一鳴き低いうなり声をあげた。
するとそれまで異様な雰囲気と見えない威圧感に支配されていた空気がすっと軽くなったと思うと冒険者たちに対する何かの圧力も開放されたように霧散していった。
「ヒョッヒョッヒョ。皆よこやつが睨みを聞かせておるでのう、安心して作業を進めると良い」
その言葉に冒険者たちはほっと安どの息を漏らすとともにギガント・ポメラニオンに改めて視線を向けると
「慣れてきたせいか大きな猫のような気がしていたが・・・」
「ああ、やはり大森林の強者だな」
「俺、昨日余り物のスプラッシュゴーンの骨付き肉をさあいつにやったんだよ。そしたら喜んで骨ごとバリバリ食うんだ。そして嬉しそうに俺にもすりすりとその大きな顔を寄せてきてさ思わず可愛いなあと鼻先を撫ぜてやったんだ」
「お前勇気があるってお言うか怖いもの知らずだな」
「・・・でも可愛いだろ・・・・」
「・・・・・・・まあそう見えなくなっているのが不思議だな」
そんな会話がなされている最中もギガント・ポメラニオンは老人を背に乗せ周囲を見回しながらのそりのそりと冒険者たちから少し先行して腐敗した大地に沿って大森林を進んでいった。
それを見た冒険者たちは無駄話を中断し慌ててギガント・ポメラニオンを追う様に聖なる白い粉の運搬とそして散布を再開するのだった。
知矢もほかの冒険者たちと同じく袋に詰めた聖なる白い粉をマジックバックに偽装した無限倉庫へどんどん収納して森を走りながらどんどん大森林を進み袋を一定間隔で置きながら進んでいった。
その置いた袋は後からくる冒険者や知矢の使用人たちが散布する。
そして知矢を追従するのはフェンリルの姿へ戻り知矢を警護するフェリシア。
そしてその背にはもう一人の従魔が乗りさらにもう一人のG・D・Sもフェリシアの乗り、時折ほかの同族へ声をかけながら森をどんどん浄化していくのであった。
『主様お待ちください』
突然フェリシアが声をかけ、停止を即した。
「どうした?」
『この先およそ1000m、巨大な力を感じます。非常に強力です』
フェリシアはそう言うと知矢の前へ進みでて守るような体制をとった。
知矢も感知レーダーを確認。
相手を探るのであった。
「・・・フェリシア、敵ではない。見知った者だから安心しろ」
そう知矢が言うとフェリシアはいぶかしそうな顔をするが主の弁だ、反論をすることはしないが念のため秘かに警戒は続けている。
(このような巨大な力を感じるものはそういるものではない。私と同等程度はありそうだがいったい何者)
知矢の言葉におとなしく従う素振りながらも警戒しフェリシアは知矢の脇を疾走する。
『・・・(あっキング様だ)』
『おおその通りですね。という事はあの辺り迄は浄化が進んでいるという事。もう一歩ですね』
従魔やG・D・Sの言う通り進んだ先にはその巨体で一目瞭然。キング・ゴールデン・デス・スパーダーがこれまた数千の同族を従えながら森の浄化を行っていた。
「キング様!」知矢が手を振りながら大きな声で呼びかける。
『・・・(おおーい!)』
『どうやらもう少し頑張ればなんとかなりそうですね』
『うむむ。おお、お前たちか、それにトーヤ殿迄。こんなところで奇遇と言うにはいささか剣呑ですな』
「キング様お久ぶりです」
知矢は大きなキングG・D・Sの足元で見上げるように声をかけた。
『トーヤ殿一別以来。しかし従魔になった眷属、そして先に送った眷属が一緒という事はやはり目的は一緒ですな』
「ええ、しかし森を腐らせる原因の魔物は我々の仲間が対峙し浄化しました。
今は奴が通過したルートの浄化のため人族とあなたの眷属が協力しながら浄化を進めています。
キング様たちがここまで来ているという事はこの奥は浄化が進んでいるという事ですか」
知矢はキングたちが来た方を覗くように見ながら話す。
『ああ、なんとか皆で協力をしながらやっとここまでは来たものの、やはり眷属の皆もわしもだいぶ魔力を減らしてこれ以上は浄化がなかなか進まなくなっているとこでのう』
『キング様、僕たち先行隊はこの先まで既に浄化を完了しております』
少し従魔より大きなG・D・Sがキングに向けて元気よく報告した。
『なんと、それはいったい。先行させた者たちは1000を少し超えた程度しかおらぬであろう。人族の浄化魔法はそれ程か!』
思いもよらない浄化速度に話を聞いたキングは驚きを隠せない。
その背後や周囲にいたほかのG・D・S達も驚いた様子だ。
「いえ実は思わぬ方法がありまして」
知矢は聖魔法の使い手がベヒモス・ゾンビを浄化したこと。その浄化後に残った聖なる白い粉と呼ぶ物を腐敗した森へ撒くことで著しい浄化効果がありその上でG・D・S達が浄化魔法を行使すると単独で魔法を行使する何倍もの浄化効果が発揮されるという一連の話を語った。
『なんと! そのような効果が。素晴らしい、これでこの森は死なずに済む。それに灰燼に帰する必要もないわけだ』
安堵の様子を見せるキングであった。
「灰燼にって燃やすおつもりでしたか」
『ああ、そうだ。我々が死力を尽くしても浄化範囲より汚染が広がる方が早いとみた。それならば一層の事、高火力を持つ 火龍族へ頼み汚染された場所を燃やし尽くしてでも森を守ろうと水龍の奴と話をしていたのだ。
いや未だ火龍たちは来ておらぬので心配はないが。いやしかし、良かった良かった』
そう喜びの声を上げると周囲にいる眷属達へも
『そういう訳である。お前たちも困憊であろう。しばらくこの場で休むが良い』
そう周囲にいるおびただしい数の眷属へと声をかけると知矢たちの方へ視線を向けた。
『トーヤ殿、実はのう話しておくことがある・・・・・』
キングは脚をたたみ姿勢を低く知矢の方へと近づけると語りだした。
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「オーイ!!君!!」
その声を聴いたG・D・Sは
『あっ、まずい』
そう言うとそのG・D・Sは魔馬の背で慌てわらわらし始めた。
「君!探したよ」
そう言いながら駆け寄ってきたのは先発隊でこの地に入り探索、斥候と陣地築造を指揮し、さらには一番最初、ベヒモス・ゾンビを発見、ギルドへ報じた ”暴風”事、冒険者ギルドランクAのすらりとした体躯の女性冒険者カスティーヌであった。
「なんだい、あたしかを避けることないじゃないかい。考えてくれたんだろ、あたしんとこ来れば食事は毎日おいしい物を保証するよ。
新鮮な肉を毎日毎日好きなものを狩ってくるし。毎日風呂も入れるしベットも専用のを用意しておくからさ、あたしと一緒においでよ!」
カスティーヌはすっかりG・D・Sを気に入った様子で先日から何度も自分と一緒に来るよう勧誘していた。
『いやああぁ、あのう何度も言いましたが僕たちには森の仲介者としてこの広大な大森林を守る仕事があるんですから無理ですよ』
そう言いながらその身を必死に知矢の従魔の後ろへ隠そうとするがそもそもこのG・D・Sは従魔の倍ほどの大きさであるので隠れる訳もない。
「大丈夫さ問題なんかありゃあしないよ。トーヤんとこのG・D・Sだって来てんだ。何も問題ないさ」
『いえいえこの子とは状況が違います。僕は数百の兄弟を代表している立場です。それを放り出していける訳もなく。あっそうそう、そういう訳で僕は急いで兄弟の元へ帰らねば。
では皆さんまたいつか!!』
G・D・Sはそう捲し立てるように言うと魔馬の背から一足飛びにぴょーんとモーリスやカスティーヌを飛び越えたと思うとあっという間にその行使力瞬発と俊足を使い森の方へと消えて行ってしまった。
「えっ、ちょ。待ちなよー!!! 逃がしゃしないよ。お前たちついておいで!!」
暴風のカスティーヌは近くに控えていたモヒカン軍団に声をかけるとG・D・Sを追って森の中へ駆け込んでいった。
「「「「「ヘイ!姐さん!!」」」」」
するとモヒカン軍団も躊躇せずその後をついて走り去ってしまうのであった。
「暴風の奴あんな性格だったかのう」
その様子を見守っていた鬼神モーリスは茫然とした様子でぼそりと呟いたのだった。
既に知矢の使用人の半数はすでに資材等を持ちほかの魔馬車と共に出立している。
今この場に残っている魔馬車は先ほど森へ走り去った暴風達の物を除けば知矢のグループそして今回のリーダーでもある鬼神モーリスとギルド職員たちのグループのみであった。
「よし、じゃあモーリスさん我々もラグーンへ帰りましょう」
「そうじゃな。しかし今回はこれで済んでよかったわい。死者どころか怪我人も殆どおらんこんな厄災獣討伐なんぞ聞いたこともない。
それもこれもトーヤお前とお前の従魔たち、それにカーネタリア様のおかげだ。感謝する」
鬼神モーリスは当初若く見える知矢の力を過小評価していた。
それは転移にて若返ったその容姿を見、今まで来たこともないぽっと出の冒険者という認識であったのだから致し方ない事だ。
しかし従える二匹の従魔を存分に活用ししかも自身も大魔法と言ってよい魔法を行使しつつ接近戦でも存分にその剣を振るう姿を見ては評価せずにいられない。
ましてや知矢が従魔を得たことがこの事態を収拾する大きな力。数百以上のG・D・S達との共闘が成された事が大きな役割を果たしたのは純然たる事実である。
そう言った総合的な評価もモーリスの中ではるかに上げていた。
「よしてくださいよ、こんな若造に。さあじゃあカーネタリア様も準備良いですか」
「ヒョッヒョッヒョ。わしは付いていくだけじゃ。準備も何もこれがあれば問題ない」
既に騎獣ギガント・ポメラニオンの背に座り膝の間にはワインの入った樽。手には大ぶりのコップを持って呑み始めていた。
「ニャア、カーネタリア様。まだまだ都市まで数日かかるニャ。呑みすぎないでくださいニャ」
「ヒャッヒャッヒャ。解っとる解っとる。それに戻ったらまた宴会じゃしな」
あくまでもマイペースな老人であった。
ガタゴトギシギシ音を鳴らしながらそれなりの速度で森の間を進む魔馬車。
荷台に乗る者たちも警戒要因を除き皆がそれぞれ横になったり寄りかかるなどして寝ているようだ。
先行して帰路に就いたグループが露払いのように遭遇する魔獣などを狩っているのだろう。
もしくはこのグループに同行しているギガント・ポメラニオンのおかげか魔馬車の進路をふさぐものは出てくる様子がなかった。
知矢は魔馬車の屋根へ設けられている高見台に寝ころびながら考え事をしていた。
従魔のピョンピョンと子犬の姿に変化しているもう一人の従魔フェリシアはその傍らで静かに寝そべっていた。
「トーヤ、寝ていると思ったら何ニャ。難しい顔をしてるニャ」
御者台から立ち上がり声をかけてきたニャアラス。
「なんだニャアラス。お前も起きていたのか」
上体を起こした。
「めでたしめでたしニャ。でもトーヤは昨日の話を考えているニャ」
そう言いながらニャアラスも高見台の上へ登ってきた。
「まあそうだな、しかしニャアラスは俺の考えも読むんだな」
「ニャア、これでも人生経験豊富なんニャ」
ニャアラスは自慢げに胸を張りしっぽを立たせる。
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『トーヤ殿、わしらは常にこの大森林に目を光らせておる、とは言っても今回のような事態をここまで広がる前に感知できない程度だ。自慢できるものではない。
そしてあの腐り者の起こりも気づけなかった。
じゃがあのような者は中々自然と生み出されることは無い。それに元々人族がベヒモスと呼ばれるあやつの種族はもっともっと西へ行き遥か南の山々の先に住んでおる種族じゃ。
そいつがこの東の大森林におることも異常だ。しかも腐り者。
何か特別な理由があるやもしれん。
今までは森の浄化で手がいっぱいであったが事が落ち着き次第一族の者を各地に旅立させて事の起こりを探ってみようと思う』
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「トーヤはベヒモス・ゾンビが生まれたわけは解ったニャ?」
「いや全くだ。それどころかゾンビなんかが存在することも見たのも初めてだ。お前は見たことあるのか」
「ニャア、あるニャ。特にアンデットは南の奴らとの大きな戦いが起こるとよく現れるニャ」
ニャアラスは何でもないように言う。
「そうなのか。だがどうやって戦う。聖魔法の使い手を呼ぶのか」
「それが一番いいニャ。でも聖魔法の使い手は中々いないニャ」
「じゃあどうするんだ」
「ぶっ叩く! 奴ら骨だけの存在ニャ。核となる魔石はわずかに小さいのがあるニャ。それ事骨まで粉砕するニャ。そうすれば二度と立ち上がらないニャ。
でも失敗するとまた起き上がるし集団で襲い掛かられると面倒だニャ」
「そうなのか。それも大変だな。しかし何で戦争の後現れるんだ。アンデットって言うくらいだから骨だけなんだろう。死体が腐って朽ち果てて骨になってから起きだすのか?」
「よく解ってないニャ。でも大体が戦って敗れた南の奴の死体がアンデットになるニャ。だからなるべく戦いの後は死体を燃やして司祭様が祈りをささげて浄化するニャ。そうすればアンデットは出てこニャイ」
知矢はアンデットの生み出されるシステムがいまだ理解ができていないが、この世界の者もその根源は理解できていないのかもしれない。
しかし知矢はふと気になった。
「なあ、そのアンデットって帝国人の死骸からは生まれないのか」
「ニャア、そうニャ。南の兵士たちが戦いで敗れ死んでいってたまたま放置された奴らがアンデットになるニャ。
だから戦いの後、その処理を冒険者ギルドがアンデットになる前に始末を請け負うと低ランクの冒険者の良い収入になるニャ。もっとも収入は良くても嫌がるやつも多いニャ」
知矢は今ニャアラスから聞いただけでは判然としないが ”南の兵士が死ぬとアンデットになる” その点が非常に気になるキーワードなのではないかと漠然と感じた。
もっとも為政者でもなければ国に研究者でもない知矢がそれを調べる道理は無いのであったが。
それを心にとどめながらキング・ゴールデン・デス・スパーダーが語ったベヒモス・ゾンビの起こりも何か関連があるのかと特に理由もなかったが思ったのであった。
「ご主人様、今夜の野営ポイントはこの辺りで如何でしょう」
御者台の使用人が知矢に尋ねる。
「ああ広さもあるし大きな木の根元は平らな場所も多い。良いんじゃないか」
そう知矢が答えると使用人は周囲、前後の馬車に声をかけながら今夜の野営地を決め準備に入るのであった。
知矢は一度思考を途切らせ魔馬車から飛び降りると自らも無限倉庫から野営のための道具を出し準備に入るのであった。




