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第186話 出立前日 ~ 「兄貴、あのうあっしの出番は・・・・」

 こんばんは久しぶりの2日連続投稿になります。

 では第186話どうぞ






 北門(ノースゲート)での第一陣出発を見送った知矢は獣魔二人を引き連れて帰路に就いた。


 これから向かうのは今まで住まいにしていた魔道具商店ではない。



 知矢の功績を称え、表彰を受けた際に皇帝陛下より報奨金とともに下賜された屋敷。


 下賜されて以降もろもろの都合により居を移す間がなかったためしばらく放置されていたが最近になり少しずつ使用人等を増員したかいあってやっと居を移すこととなったのである。




 親しい貴族、この場合はアンコール伯爵であるが。かの高位貴族から聞いた話では



 『新たに屋敷を設けた者は親しき付き合いのある貴族や世話になっている貴族、面倒を見ている配下の貴族や騎士、それに都市の住人代表、この場合多くは大商会や各種ギルドの代表などを招いてあいさつを兼ねたお披露目のパーティーを催すのが慣例です』



 そういう情報を聞いていた。


 しかし現在この都市の情勢下および帝国全土を揺るがす情勢下においては急を要す必要はないとも聞きお披露目会は開催しないことを決めた。


 一応各貴族や都市の代表者に対しては屋敷を構えた挨拶とこの情勢下でパーティーを開くことはできない旨をしたため、これからよろしくとの手紙を書く所へ配ることだけは指示した知矢であった。




 「知矢様のご気性ですと逆にパーティーを開催しない理由ができたとお喜びなのでございましょう」

 そんな話が挨拶状を知矢の代わりに(したた)めているリラレットたち使用人の談笑で語られていた。


 それを聞いた知矢は「皆が俺のことをよくわかってくれてうれしい」と語ったとか。



 それを傍らで聞いていた冒険者ギルドのニーナは


 「そうはいってもトーヤ君。今後は何かとそういった方面のお付き合いは増えますからね。覚悟をしておいた方がいいですよ」

 そう言って少しだけ苦言を伝え嗜めるのであった。



 知矢に言わせると

 (わしののんびり老後にそんなあったことも義理のない者相手の時間を割く必然はないのう。自由に気ままにのんびりと。それがわしの老後じゃ)


 と心の中で思ってはいたがそれを口に出しニーナへ説得力をもたらす説明をすることは転移や若返りそして最高神との関係など秘匿する事柄が多すぎるため不可能だと解っていた。


 ともすると知矢のそういった考えからの行動が他人からはわがままな若造という批判を浴びることになるかもしれなかった。


 知矢としては気にしないがいつのまにかあれよあれよという間に仲間や使用人が増え続け自儘にできない立場になっていることも自覚はしていた。


 その範囲で可能な限り自由に過ごすつもりではあるのだったが。







 見送りののちにしばらく都市を横断するように歩いて屋敷へと向かった知矢。


 肩には最初の獣魔ピョンピョンが乗り、足元には最近獣魔となったばかりのフェリシア。知矢が転移前にいた世界で愛機としていたバイクが最高神の助けを借りてこの世界で聖獣フェンリルとなり知矢のもとへ参じた。


 しかしその本来の姿は魔馬をはるかに超える体躯、そして銀色に光る美しい毛並みと微かに緑色のオーラをその身から発する姿とにじみ出る強者の発する力は人々へ恐怖と畏怖を与えるため人化の行使力スキルを用いたがそれでも僅かににじみ出るその力のすべてを隠すことはかなわなかった。


 その為さらに変化(へんげ)を行使し今の姿はかわいい子犬の姿そのものである。


 今知矢の足元をその短い脚を必死に動かす様に付いてくる(さま)は都市を行きかう人々から

 「うわー可愛い」

 との評判であった。



 フェリシアとしては納得できないことではあったが主である知矢から

 「都市内そして多くの市民がいる場ではその姿でいるように」

 と厳命されては従う他なかった。



 しかしフェリシアにも子犬の姿になって良かったことがある。

 夜、くつろぎの時間になると知矢はベットやソファーに寝転がり本を読むことが多い。


 そういったときに先輩獣魔のピョンピョンとともにフェリシアは子犬の姿で主の足や腹の上でくつろいだり時には一緒に寝ることも許されていた。


 フェリシアとしては思いもしなかった望外の喜びである。




 知矢が事故で亡くなる前。

 自宅の裏にあった知矢の秘密基地という名のガレージで週末ともなると知矢は酒を飲みながらフェリシアのもとの姿”バイク”の傍らでゆったりとした時間を過ごしていた。

 フェリシアはその頃の時も幸せであったが今はさらに主の傍にいられることができるのだ。


 『 子犬の姿も悪くない 』と思っていた。



 通りを歩く三人の視線の先に新たに下賜され引っ越しが済んでいる”屋敷”が見えてきた。


 周囲を高い石垣を塀として囲まれ大きな鉄柵門を構えた正面から中を見ると幅の広いアプローチが少し遠くの屋敷の玄関前へと弧を画いて伸びている。


 その弧の中央には丸い大きな池と植物が鎮座し門から屋敷の玄関が直視できないように作られていた。

 敷地の外から見てもその屋敷は大きく立派に見える。がしかし豪奢で贅を尽くしたと言うほどの造りではなかった。 


 建物もそれなりに大きく部屋数も多い。使用人の住まう別棟を備え魔馬車の馬房や御者や庭師の住まいも離れにある。

 しかし質実剛健という帝国の気風をそのまま体現したかの様な屋敷であった。

 知矢はどちらかというとそう言った華美を廃し実用的なものを好むので下賜された屋敷としては好印象であった。



 知矢が鉄柵門へ近づくと軽鎧に身を包み短槍を構えた門番兼警備担当の使用人が人の気配を感じて視線を向けた。


 すぐに主であると認識すると門の中へ

 「ご主人様のお帰りだ」

 と声をかけた。


 閉められていた鉄柵門が内側に開かれると門番が 「お帰りなさいませ」 と軽く腰を折り頭を下げる。


 「ああ帰ったよ。ありがとう」軽く声をかけながら門番に見送られてそのまま玄関の方へ歩いていくとそこには多くの使用人たちが並べられた数台の幌付き魔馬車の周囲へ集まっており


 「「「「「お帰りなさいませ」」」」」

 一斉に知矢へとあいさつの大合唱であった。


 それに軽く手を上げ答えながら「みんなご苦労様」とねぎらいながら作業を続けるようにと即した。


 「知矢様お帰り」

 ぼそっとした声で近づいてきたのは知矢の秘書役であるサーヤであった。


 サーヤは元々子爵家の娘であった経験から知矢の魔道具商店の経理担当を兼務しながら屋敷の方でも知矢の肩腕と位置付けられて活動している。


 「おう帰った。冒険者の第一陣はさっき出立した。こっちも準備は進んでいるようだな」

 知矢は使用人たちが大勢行き来しながら準備をする様子を見ながら明日の出発に問題がなさそうだと確認した。


 「食料や医薬品、かさ張るような施設資材はすべてマジックバック。予備の武具なども同様。今乗せているのはすぐに出し入れが必要そうなものや荷台で利用するマットや毛布などがほとんど」


 サーヤは手に持つリスト表などを確認しながら答えた。



 知矢は冒険者ギルド長のガインからの要請があった攻撃魔法として利用できそうな魔道具に関しては否定していたがこう言った兵站や衣食病理にかかわる運搬のリスクと負担軽減に関しては積極的に自分の店で販売している魔道具類やマジックバックを惜しみなく提供している。



 特に衛生状態を確保するためのきれいな水を供給できる水の魔道具は必要な数を収納して積み込ませているがそれとは別に常時使用できるように魔馬車の荷台の両脇にも設置されいつでも新鮮な水を使用することが可能だ。


 戦術的なことや戦略的なことの以前に基本的な衛生概念を広め軽微な怪我でもばい菌や細菌の繁殖で重篤化するような事態にならないように配慮し指導していた。


 こういった後方といった言葉もなく、兵站部隊や衛生部隊の機能や概念は騎士団とてほとんどない。

 ましてや通常ほぼ個人が活動するだけの冒険者にその知識も知恵もなく自身の背負う入れ物や腰にぶら下げた袋に入る程度の乾物のような食料や精々が解毒薬(ポイズンポーション)体力回復薬(ヒールポーション)のみだ。


 チームを組んで活動する者たちも数や種類は少々増えても持てるもには限りがある。

 しかも魔物を狩り得られたドロップ品などを持って帰らねば換金し収入を得ることができなくなる。


 そう言った事により目先の必要最低限に限定されるのは仕方のない事だった。


 そして冒険者や旅の商人、騎士や兵士に至るまで皆がもろ手を上げて喜んだのが知矢の魔道具商店で発売を始めたマジックバックである。


 しかも遺跡から発掘される太古の知恵で作られた遺物や迷宮の奥深くの宝箱から発見されるマジックバックと異なりはるかにその価格は安く抑えられており今まで見たこともなかった一般の市民や冒険者でもなんとか購入できるものが売り出されたのだからその衝撃はすさまじい物であった。


 その話は以前に書き記したので割愛するが、これにより特に今回書き記す冒険者の荷物に余裕と付加価値が増大した。


 それに合わせて今までは川や沢、清水を見つけ出して補給していた飲料水も小さな板状の魔道具一つで自らの微量な魔力を流せば好きなだけ出てくるのだ。

 実際は知矢が込めた魔力を張り付けているだけであるから有限であったがそれが感じられないほどの量を供給することができた。


 もちろん水系統の魔法が使えるものであったなら魔力があり続ける


 こういった一連の新たな便利道具の販売普及に併せて知矢たちが広報したのが衛生概念である。



 ・ 食事をする前にはきれいな水で手を洗いましょう。

 ・ 傷を負ったらきれいな水で汚れを洗い流してから回復薬を使いましょう

 ・ 手や顔そして口内は日に何度もすすいだり洗ったりしましょう

 ・ 汲み置いた水はお腹を痛める原因です。止めましょう



 まるで日本の小学生や保育園児に指導するよな文言が並んでいた。

 だがその意味を細菌感染や接触感染、菌の繁殖などを説いても決して理解して受け入れられることは無いであろうと考えこういった表記にとどめた。


 一応冒険者ギルドの初心者講習や騎士団の教育にも同様の内容をもっと具体例を示しながら周知する旨知矢から願った。


 細菌の概念がないこの世界の者は少し訝しんで聞いていたが貴族などの立場になるとそう言った衛生概念の基礎の基礎は昔から伝わっていたため今後は具体例を教える事例を知矢たちから管理貴族へて供した。


 ただこれまでの歴史であまり衛生概念が育たなかった理由はある。


 この世界で当たり前、常識としての話、 ”魔法”である。


 日常に多くの者が当然のように使うのが”クリーン”。これは自身の身体や身に着けている服など狭い範囲をきれいにしてくれる魔法だ。

 クリーンの上位魔法が ”クリーニング”。これはさらに広範囲にクリーンをかけるイメージである。


 これらの魔法は一般的に 「綺麗になった」 と人は認識する。

 もしこの世界で顕微鏡や菌の培養という知識・技術などがあればどれくらい綺麗になったかを検証できるかもしれないが今はまだそういった技術は無い。


 知矢がこの世界で魔法による衛生状態を保つ方法があるにもかかわらずなぜ衛生概念を広報し洗うという基本概念を植え付けようとしているのか。


 それは人々があまりにも魔法に頼りすぎて根本的な概念を無視していることを知ったからである。


 何でもかんでも汚れたらクリーン、クリーニングすれば終わり。傷を負ったら回復魔法や回復薬で終了。


 実はこの結果クリーンを行わず回復魔法で傷を治し内部に残った細菌が繁殖し悪化、四肢を失うなどの例も少なからずある。


 また料理をする前に手や道具を清める事がなぜ必要なのかを知らないものが汚れた手で料理を作り感染症や食中毒なども発生。


 綺麗にできる事となぜそれが必要か、その結果どういった利点があるか。

 根本から広報しなければならないのであった。


 そう言った事を含め知矢は自身も冒険者として活動するのだから冒険者の中に衛生概念を広めることにした。


 水魔法の使えない者にも魔道具で手を洗う習慣を、そして食材や器具も使用前使用後に洗うなどを実践しながら広めるつもりだ。



 今回ギルドから運輸、輸送部隊の編成を請け負った知矢たちであったがそもそも兵站の意識もないことからそう言った事と衛生観念も織り交ぜて運用していくことになった。


 運用には知矢の使用人たちが20名ほど参加するがその他ギルドに雇われ派遣され者にも指導を行う。


 単なる魔獣討伐作戦であったがその内情は過去に例のない規模と編成になっていた。




 知矢がサーヤと一緒に使用人たちが準備を整えている様子を観察していると思いもよらない人物が目に入った。

 「うん? おれはミサエラ達じゃないか。あいつら迄準備に駆り出されたのか」

 

 そこには知矢の使用人に紛れて魔馬車へ荷を運び入れる二人の女性がいた。


 南の大国の元工作員で知矢たちの説得により帝国へ亡命をするために連れてこられた者たちだった。


 本来であればとうに情報提供や協力の見返りで帝国への亡命手続きを終えているはずであったがミサエラの持つ能力、”精霊使い”を利用しすでに逮捕拘禁されている別の工作員が持ち込んでいた ”精霊魂石(せいれいこんせき)”に封じられている精霊を怒らせることなく無事に解放することを条件に知矢は帝国と交渉する予定だった。


 しかし、国家の法ではなく”皇帝勅令”にて帝国内において 『精霊魔法の仕様を禁ずる』 との令の存在がその交渉を初っ端から停滞させていた。


 その交渉の進展に時間を有することから亡命希望者のコルサミルとミサエラの二人は知矢預かりという事になり知矢の魔道具商店へ寄宿していた。



 「あの二人、コルサミルは護衛待遇、ミサエラは使用人待遇で同行する」

 隣にいたサーヤが説明してくれた。


 「ええっとそうなのか。なんでまた、まあ人手は欲しいから構わんが」


 「あの二人もそろそろのんびり養ってもらう生活に飽きてきた。そう言うので臨時で雇ってみた」


 「まあ構わないか。じっと吉報を待つよりたまに活動するのもいいだろう」


 そう言うと知矢はサーヤの事後承諾へ賛意を示し了承した。



 知矢は引き続き準備の方はサーヤに任せ屋敷へと入っていった。


 「知矢様お帰りなさいませ」

 玄関を入るとそこには魔道具商店の総支配人であるリラレットが待っていた。


 「ああただいま。すっかり屋敷の方も整ったようだな」

 知矢は玄関ホールから周囲を見渡しすでに居住の支度が完璧に整っていることを感じ取った。


 そしてその玄関ホールの天井にはひときわ大きなシャンデリア風の光の魔道具が吊るされ窓の少ない屋敷の中を高所から煌々と照らしていた。


 「ハイ、おかげさまを持ちまして委細終了してございます。使用人の割り振りは仮のものとなりますので暫くは商店とこちらを行ったり来たりとなるやもしれませんが」


 すっかり商売が軌道に乗り当初からいた使用人たちもすっかり慣れたところに新たな使用人の増員が繰り返され大所帯になった知矢の配下達。


 そしてこの度新たな仕事。屋敷の管理運営を担うこととなったが主力となるのはやはり屋敷奉公が長かったリラレットをはじめマイ、マク、ミミの元貴族の屋敷のメイドだった者たちである。


 そこに商家の奉公人であったワオン、ティレット、モネ、イーシャ、マレルが加わるが彼女たちも今ではすっかり貴族風の教育が行き届きすっかり明度として十分な力量を獲得していた。


 彼女たちが主力として後輩の使用人たちを統括しながらこの新たな屋敷と商店に別れ時に人を入れ替えながらその者たちの資質を考慮し配属を決めていくこととしていた。



 「ご主人様お帰りなさいませ。お待ちしておりました」

 奥の部屋から出てきたのは魔道具商店警備主任のサンドスであった。


 サンドスは着慣れない軽鎧を着こみ後ろには新たに雇い入れた警備担当を数人連れていた。


 「サンドスなかなか似合っているじゃないか。これなら当家の騎士団長としてもやっていけるな」

 知矢はサンドスの格好を見ながら口にする。


 「よしてくださいご主人様。所詮格好だけで中身は野暮な冒険者上がりです」

 謙遜なのか照れながら否定するサンドスであったが知矢は冗談めかして言っていたが半ば本気でもあった。


 「まあそう言うな。お前には悪いがもう冒険に行かせてやる暇はなさそうだ。覚悟を決めてこっちで頑張ってくれ」


 「ハイ勿論でございます。粉骨砕身(ふんこつさいしん)務めさせていただきます」

 がしゃりと軽く鎧を鳴らしながらサンドスは軽く頭を下げるのだった。




 実のところサンドスはもう冒険者には戻れないのであった。

 サンドスが借金奴隷になったきっかけでもある最後の冒険。

 依頼内容はそう難しい物であったわけではなかったが結果的に失敗をしその際負った傷が原因で闘病生活を送ることになった。

 そう言った費用と依頼失敗の違約金で奴隷落ちになったわけだがサンドスにとってそれ以上に衝撃的であったことは負った怪我が回復しても以前のような俊敏さが欠けていたことだった。


 実際走ったり飛び上がったりと一見身体能力に大きな問題があるように見えなかったがその実、命のかかった魔物と対峙し紙一重での命のやり取りをするだけの動きができなくなっていた。


 その現実を突きつけられたときサンドスは知矢により奴隷として買われ警備を担う使用人としての職を与えられた時、冒険者としての廃業を心したのであった。


 対人戦を主とする警備担当の仕事は全く衰えを感じさせることは無かった。それ以上に長年培ってきた経験を後身へ伝えながら警備という新たな人のための学びと研鑽(けんさん)を積むことが新たな生き甲斐ともなった。


 「ほれほれ!正面の敵に気を取られて脇を抜けられては警備としての役は果たせんぞ。そおれ!」


 「ハッハイ!でござる」


 同じように奴隷商から買われてきた若い者への指導も板についてきたサンドスは来年に年季が明けても主に願いここで生涯を務めさせてもらいたいものだと考えるようになっていた。






 「じゃあ俺はしばらく自室にいるから用があれば声をかけてくれ」

 そう言い残し幅の広い周り階段を昇る知矢へその場にいた使用人たちは

 「ハッ」と返事をし頭を垂れて見送るのだった。



 知矢が階上へ上がり廊下を進むと板窓しかない廊下は開け放たれていたがやはり太陽光が燦々と差し込むガラス窓とはかなり異なる。

 知矢はガラスを加工するための魔道具を作り出していたが対外的にガラスをふんだんに使用することは過度の嫉妬や軋轢を生むような気もして

 「その代わりに室内の各所には十分な光の魔道具を配置しよう」

 と廊下を始め各部屋にはこれでもかと言うほど魔道具が設置されているのだった。


 そう言ったわけで板窓しかないこの屋敷であったが昼夜を問わず必要な場所は常に明かりをはなち快適に利用することができるのだった。



 廊下を進み一番広く中央に位置する部屋へと知矢は入っていった。

 後に続くフェリシスは


 「主様、室内では変化を解いてよろしいでしょうか」と子犬の姿で知矢へと嘆願するのであった。


 「元の姿、ああ聖獣の姿か。構わないぞ、ただし誰か来たらすぐその姿へ戻れよ」


 その言葉を受けフェリシアはすぐにその身をまぶしい光に包み込むとシルエットが光の中で膨張し現れたのは聖獣フェンリルであった。


 大きく伸びをするようなフェリシア。


 「やはり小さな姿は苦しく窮屈なのか?」


 「いえ特にそういうわけではありません。しかしやはり器が小さいと心持抑え込まれているような気分を覚えます」


 「すまないな。窮屈な思いをさせて。一層の事庭にギガント・ポメラニオンの様な小屋でも作るか」


 「滅相もない、今の状態で十分でございます。ハイ本当に!」

 知矢の提案に慌てて否定するフェリシアであった。

 フェリシアにとって知矢の傍に控える今の状態こそが最良の望んだ状態なのであるから。




 しばらく知矢は自室のデスクで明日以降の工程の確認と作戦内容を改めて見直していた。


 作戦自体はそう難しい事ではない。


 大戦力をもって半包囲し遠距離より魔法を放ち相手の力と防護力を削ぐ。これに尽きる。


 相手の防御力の疲弊を確認したのち高位戦闘力を有する者が一斉に接近にてその命脈を断つというものだった。


 おいては巨体でありゾンビ化したその体は非常に行動が遅く全く俊敏な様子がないとの報告があった。


 ただしその腐敗した体から発せられる臭気に毒気が混じりこちらがそれによって疲弊する恐れもあった。


 しかし聖光の魔法が使えるカーネタリア老人の参戦によりそう言ったものは魔法で浄化ができる。

 うまくするとゾンビ化したベヒモス事態を聖光の浄化効果で一掃できるのではとの期待もあった。


 知矢は「うん穴はないだろう」そう呟くと書類をまとめ無限倉庫へと収納した。


 もうそろそろ夕食を兼ねた出撃前夜の宴が開催される時間だろうか、知矢がそう考えていると。


 「トーヤ!来たニャ」

 知矢の部屋のドアをノックもせずに友人ニャアラスさんの登場であった。


 「ハアハアハア」そのあとを息を切らせた使用人の若い女性が入ってきた。


 「ハアハア・・・ご主人様申し訳ございません。こちらのお客様があっという間に駆けて行ってしまいまして・・ハアハアハアア」


 どうやらニャアラスは使用人の案内を待たずに勝手に駆けてきてしまった様子だ。

 慌てて追いかけてきたその女は知矢に頭を下げて詫びる。


 「ああ問題ない。ニャアラスが来たときは自由に通してやってくれ。すまなかったな」

 苦笑いの知矢は友人の方をちらりと見たのち使用人を下がらせるのだった。



 「にゃあトーヤもう準備は終わったか」

 そんな知矢と使用人の会話を意にも返さずニャアラスはソファーへ腰かけると知矢へと振り向く。


 「ああもう準備万端だ」と言う知矢にいつのまにか子犬へと変化いていたフェリシアが問う。


 『主様、荷などは用意が済んでいるようですが武具の手入れはよろしいのでしょうか』


 「ああ、まあ俺の日本刀はほとんど手入れはいらないからな。だがせっかくの申し出だ、まだ食事にいささか時間がある手入れをするか」


 「ニャア、俺もやる。道具を貸してほしいニャ」


 そう言うと知矢とニャアラスはソファーに座りながら互いの武器を丁寧に手入れを始めるのであった。






 「じゃあ明日からはしばらく晴れそうなんだな」


 「ニャア、快晴ニャ。毛がフワフワ喜んでるニャ間違いニャイ」


 「そうかじゃあ予定通り出発する事になるな」


 「今度の相手は雨の時には遭遇したくニャイな」


 「ああ、腐ったやつが雨に打たれてさらに臭気と腐ったものを流しだしたら地獄絵図も真っ青だな」


 「俺たちは特に鼻がいいから大変ニャ」




 二人は明日からの事を話しながら時にたわいもない言葉をかけあいのんびりとした時間を送りながら武具の手入れを続けるのであった。







 ベヒモスゾンビが都市周辺に到達するまで残す処およそ・・・・・7日






 ええと今日は特にありませんね


ではまた次話にて



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