第183話 モフモフ ~ 「姐さん!!!!」
こんにちは
2021年6月19日
今日は出勤日でしたが何故か今朝からpcへ向かい執筆をしておりました。
朝食も食べず、未だ昼食に手も付けずひたすら1話分を書いた次第です。
(無断欠席ではありませんよ)
では第183話 どうぞ。
バーン!
『主様、怪しい者を見つけましたがどう対処すればよろしいか、御裁可を願います』
知矢がニャアラスやカーネタリア老人、そして使用人達を交えて任務からの帰還を祝して開いた宴会。
その場には新たに加わった聖獣フェリシアの姿が見えないと思ったら突然厨房の裏口を押し開いて登場した。
唖然とする周囲をものともせずフェリシアはその細身の体躯からは想像できない膂力で肩へ人を軽々と担いだまま姿を現したのだ。
立ち尽くす使用人の間をスルスルと音も無く通り抜け知矢の前へと進み出たフェリシアはその肩へ担いでいた人と思しき物を目の前へと静かに下した。
『お屋敷の周囲を確認しておりましたところ、通り向かい家の屋根に潜む怪しい者を見つけました。
私が背後より接近し 【ここで何をしている】 と誰何すると僅か一瞬の間の後持っていた剣を向けて接近を試みたものですから無力化を致しまして御座います。そのまま放置するのもどうかと思い御裁可を願う為、持ち帰った次第でございます』
一連の経緯を簡潔に報告したフェリシアは片膝を付きながら上目遣いに知矢の指示を待っていた。
(これってあれだよな・・・)
知矢がどうしたものかと思案していると、
「アッ! マキノではないか!」そう叫びながら使用人の群れの中から1人フェリシアの足元で気を失っている人物へと駆け寄った者がいた。
「マリー、知った者か」
知矢は(やはり)と思いながらマリーへ確認のため声をかけた。
その人物を見知った様子のアンコール伯爵の娘マリエッタ、今はマリーと名を変え知矢の配下の1人として店で使用人待遇で矯正労働中である。
「ハイご主人様。私の幼少の頃から見知った者でございます。しかし何故この様な事に」
マキノと呼ばれた濃い絣状の装束に身を包み顔も同様の布地で覆っていた者をマリーは様子を気遣う様に改めながら顔の覆いを取り払った。
絣状の布の下から現れたのは20代後半の女性であった。
『軽く当て身を与えただけですので命に別状はないと思います』
未だ片膝で知矢の足元に控えるフェリシアはちらりと顔が現れた女の報を一瞥すると知矢へ顔を戻し報告する。
「参ったな。フェリシアまあご苦労。
だがこの女性は俺達に敵意を向ける者では無い。どちらかと言うとこの店を見守ってくれていた者だ。今後は手出し不用だ」
そう言いながら知矢は他の使用人へ声をかけると未だ気を失ったままの女性をそっと隣室のソファーへ運び介抱するように指示した。
「マリー、すまないが暫く付き添っていてやってくれ。そう遅くならない時間で目を覚ますだろう」
「ハイご主人様。是非ともそうさせてください」
「僕たちも手伝いまーす」
そう答えたマリーにシンゾウ達が申し出て他の使用人の手も借りながらマキノと言う女を運び出した。
(かつてのマリーなら直ぐに激高してフェリシアに斬りかかっていったであろうな。大分落ち着きを見せ短慮も減ったと言う事か。良い傾向だ)
知矢は以前なら近くにいる者の剣を奪ってでも敵意を向けた相手に激高しながら問答無用で斬りかかっていった頃の姿を思い出しながら良い方向に教育が進んでいる事を実感して安堵した。
(さてそれは置いておいてっと)この場はマリーの成長具合の件はさておきと知矢は虚空へと視線を向けた。
「すまない。いるのだろう」
そう知矢が口腔へ声を発すると瞬時に知矢から見てフェリシアが控えている場所と反対方向の空間に先ほどのマキノと呼ばれた女と似た衣装に身を包んだ男が音も無く現れた。
一瞬フェリシアが無表情のまま現れた者へ反応しようとしたが直ぐに思いとどまり静かにその場に控えたままの姿勢を維持していた。
だがもしその者が怪しい動きをしたとしたならば一瞬で制圧もしくはその生命の炎を瞬時に消されていたかもしれない。
だがその様な行動や態度を微塵も見せずに男は静かに知矢へと膝まつくと頭を垂れながら
「お騒がせを致し恐縮でございます。ご理解の事と存じますが我ら敵意は一切なく・・・」
男が知矢へ詫びの言葉と敵意が無い事を重ねて伝えようとしたが知矢はそれを制したのだった。
「ああ十分理解している。 逆にこちらが迷惑をかけてしまった様だ。怪我はないと思うが十分に養生させてやってくれ。そして気が付いた時には申し訳ないと俺が詫びていたと伝えてほしい」
そう言いながら知矢は無限倉庫から小さな革袋を取り出すと目の前の男の前に腰を下ろして相手の手を取ると皮袋を掴ませた。
「詫びの代わりだと言っては失礼かもしれないが黙って受け取って欲しい」
そう言って知矢から渡された革袋の正体を察知し受け取りを拒む言を発する前に知矢は優しく語り掛けた。
「・・・・お気持ち十二分に頂きました。ありがとうございます」
と男はさらに深々と頭を下げるのだった。
片膝のままその様子を窺がっていたフェリシアは周囲に知られる事も無かったがその内では又しても己の行動により主が詫びの姿勢を見せてしまった事にその実愕然としていた。
だが先刻の様に心を乱しながら主に許しを請うような行動に出なかったのは高度な知性による行動学習の成果であろうか。
知矢は男に事後を託し使用人へ隣室へと案内をさせた。
男は静かに頭を軽く下げると現れた時とは異なり静かな歩みで案内の使用人の後ろに従い隣室へ消えていった。
「さあ、少々余興のような騒ぎが起きたが気を取り直して宴会を再開しよう。カーネタリア様ワインの追加をお持ちいたします。今夜は十二分に召し上がってゆっくりお休みください」
そう老人に声をかけた後使用人にも再開の声をかけた。
「ああ、皆。そのまま聞いてくれ」
知矢は思い出した様に再び全員へと声をかけた。
「さっき現れたこの女性はピョンピョンに続く俺の新たな従魔だ。そうは言っても信じられないとは思うが行使力で人型へ変身できる力を持っている。
オリジナルの姿は”聖獣 フェンリル”だ。その姿は少々大きいのでこの場で変化を解くことはしないがその内見る機会もあるだろう。だが驚かず、恐れず接してやって欲しい」
そう知矢が全員に紹介するとフェリシアへ視線を送る。
『皆さま先ほどはお騒がせを致しまして失礼を致しました。この度主様へ使えさせて頂く事になりましたフェリシアと申します。主様のお言葉通り私は皆さまと同族である人族ではございません。状況に応じその姿を変える事もございますがどうぞご理解の上よしなに願います』
そう挨拶をするとその場にいた使用人達へ丁寧に頭を下げるのだった。
「まあそういう訳だ。これからよろしく頼む。それと聖獣たるフェンリルの特性かいささか覇気や強い畏怖が漏れ出す事もある。フェリシアはそれを十分注意してくれ。皆は無理ならその場を離れて心を休める様に。
決して無理はしないで欲しい」
そう双方へ注意を促す知矢にフェリシアが
『主様。大変申し訳ございません。どうもこの姿ですと本来の躯に比べ能力を抑える半面、勝手に湧き出すものもあるようです。もしよろしければ聖獣の姿に戻りその上で全ての能力を限定させる方へ方向を転じる事も出来ますが如何でしょうか』
「そんな事が可能なのか。いや、だが都市内や室内であの大きさでは恐怖を思える者もいるであろうし第一狭い室内では不便だろう」
『では体躯を少々小振りにいたします。ご覧ください』
そうフェリシアは言いながらその微かに緑がかった切れ長の目をゆっくり念じる様に閉じるとその身の周囲が薄い金色に発光を始めた。
大きい金色の光が瞬く間に小さくなり知矢の目の前で足元へと消えていった。
すると眩しい光が消えうせそこに現れたのは
「「「「「うわー可愛い!!!」」」」」女性の使用人達やシンゾウの声も入交り歓声が室内へと響き渡る。
そ子に現れた新たな姿のフェリシアは確かに聖獣フェンリルの様な魔獣の姿へ戻ったがその大きさは子犬ほどの大きさに変じており、いやどう見ても体毛も柔らかそうにフワフワ感を出し恐ろしく見えていた顔つきもどこかあどけないどう見ても子犬のそれであった。
『どうでございましょう主様』
子犬が知矢の足元で主人を見上げながら声を発した。
残念なことに声は以前のままであり可愛い子犬のイメージから少々外れている事を知矢は心の中で残念に思ったが口にする事は無かった。
「あ・・ああ。それなら皆を怖がらせることは無さそうだな。みんなもどうだ、恐怖や畏怖を感じないと思うのだが」
知矢は周囲の使用人たちへ振り向くとフェリシアに使用人が殺到し
「わーフワフワして気持ちい」
「可愛い!」
「お手ても小さくなるのね」
「僕今夜一緒に寝たいです」
既に多くの使用人達にもみくちゃのフェリシアであった。
『オイ!止さないか。私はぬいぐるみでは無いぞ』
そんな拒否の声を上げるが興奮した使用人たちの耳に届かないのかそれともその姿で言っても畏怖を与える事も出来ずに抱えあげられて皆の手から手へと渡っていくのだった。
『主様ー!たっ、助けて下さーーーい!!』
可愛らしい聖獣、子犬の姿になりもみくちゃのフェリシアを見ていた知矢は従魔の助けを求める声に黙って微笑んでいるのだった。
****************
ズズズズズ、ズズズズズ。ベキベキベキ!! ズドーン!!!
大森林の一角で地面に伝わる重い何かを引きつるような音が伝わるとその後巨木がその重い音の根源によりへし折られて地面へとなぎ倒された。
「チッ! 止まりゃしねえ。オイお前ら前線をもっと下げろ。魔力の尽きた者はどんどん後退だ。盾役の奴は危険だ。決して触れるな!!」
暴風の異名を持つ女の指示が叫ぶように飛ぶ。
その女も仲間へ指示を出しながら得意の風魔法を唱えながら目の前へ迫る敵の進行を少しでも抑えようと苦慮していた。
「暴風よ荒れ狂え」
Goooooo!!!
目の前へ迫る敵に向け強力な風魔法を行使する暴風の異名をもつこの女。
知矢と冒険者ギルドで顔を合せ
【「坊や、じゃあ早く帰ってきた方が好きな店でご馳走になるって事で良いわね。じゃあね~」】
と軽口を聞きながらも知矢の力を認めていたAラン冒険者のカスティーヌであった。
カスティーヌの最大魔法を受けた敵は一瞬ひるむ者の大きくその耐久力を減らしたり外見に怪我を折った様子も全く見えず魔法の脅威が過ぎ去ると一時停滞していた進行を再開始めた。
「ったく。全く効きやしないね、相性が悪すぎる」
カスティーヌは歯がみしながらさらなる魔法を行使しながら仲間に声を掛けながら後退戦を継続させるのだった。
「風の乱刃」
さらなる魔法は敵の外皮に微かに傷をつけたものの相手にとっては全く気にする様子も無くその進行速度に変化はなかった。
「姐さん!!他の奴らは後退しました。姐さんも離脱してください!」
モヒカンの男が焦りながらスティーヌに焦るように声をかける。
「・・・仕方がないね。このまま殿をしながら後退するよ。嫌がらせで程度でも何でもいいありったけの魔具でも魔法でもぶち込むんだ!」
そうカスティーヌの周囲にいた仲間へ指示をするとカスティーヌ自身も持っていた炎を爆裂させる使い捨ての魔具を数個的に放り投げながら取り残された仲間がいないかを確認しつつ森の中へ姿を消していった。
風魔法に比べれば多少は行動を抑制出来たようだがその敵にとっては一瞬の足止め程度にしかならなかった。
炎が静まるとすぐに進行を再開したのであった。
辛うじて幸いだったのはその敵の移動速度が極めて遅く、巨大なその身に比べその進行速度は人がゆっくり歩く程度であったことである。
その結果、暴風のカスティーヌとその一派は一人の脱落者も出すことなくその場を脱して行った。
「ハアハアハア」
「ここまで来れば取りあえず一息は付けるな。全員無事かい」
カスティーヌ達は数十分森の中を走り抜け敵との距離を取れたことを確認すると確認のために休息をとった。
「へい姐さん。先行して脱した奴らも含め全員おりやす」
先ほどとは別のモヒカン巨体の男が報告する。
「よし。ここに至っては仕方がないね~。このまま一気にラグーンへ戻りギルドへ報告して体制を立て直すよ」
「姐さんそりゃあ良いっすけどアイツの監視はどうしやすか。いくらのろまだって言ってもそのうち姿を隠されると面倒っスよ」
また違うモヒカンが敵の行動監視について進言する。
しかし何だ。暴風のスティーヌのグループは女性であるカスティーヌ以外は数十人いる仲間がほぼ全員モヒカン姿であるのは何故であろうか。
・・・・・今は触れるまい。
「ああそれは大丈夫さ。逃がしやしないの魔法だけ置き土産に打ち込んでやった。1月くらいなら大体の方向は知れるさ」
それはともかくと言いながらカスティーヌは周囲を見渡しながら思案に入る。
「・・・・・」
周囲の仲間は脚が遅い者や防御力の低い者達を班分けしながら順次グループごとに後退をさせていった。
「姐さん、ここに残るもの以外ラグーンへ帰還を開始しました。どうしやすか」
モヒカンが思案中のカスティーヌへ遠慮がちに声をかけた。
「ああ了解した。じゃああたしたちも続くぞ」
もうここにいても成すべきことも無いとスティーヌは残った仲間を統率しつつ少し離れた後方にいるであろう敵の位置を確認しながら遠くを見つめ
「この借りはたっぷりと利子付けて返すからな!」
仲間に聞こえない程の声で怨嗟を込めた視線をその姿が遠く見えない敵に向け奥歯をきつく噛み締めながら誓う。
「良し!脱落しないでついておいで!」
「「「「オウ!!」」」」
仲間へ振り返ると全員を引き連れてその場を後にするのだった。
雨ですね
一昨日から大宮の漫画喫茶での立てこもり人質事件は犯人確保で終了。
お巡りさんご苦労様でした。
待機していた救急隊員の方も大変でしたね。
周囲のマスゴミの方々も大勢歩道や歩道橋を占拠し路上にはエンジンをかけっぱなしの中継車や取材車両を無許可路上駐車で排気ガスを撒きまくる等映像では見えない大変な苦労が散見されておりました。
いやはや




