第180話 へーんしん トゥ!! ~ 『なんニャそのバッタみたいな仮面は』
こんばんは
今日は昨日に続き投稿が出来ます事をご報告申し上げます。
(-_-;)いやあ・・・ギリギリっす
では第180話 どうぞ
『我が主へその様な物言いは許されるものではありません! 控えなさい!』
大声ではないが荘厳な声がギルド長室へ響き渡る。
「えっ、おっおい主様って、このお姉ちゃんは何だよトーヤ」
元Aランク冒険者で現ギルド長、そして司法貴族でもあるガイン。この男の胆力は実戦を離れたとは言っても長く鍛え上げられた精神に基づき強固である。しかも貴族社会に於ける人と人の化かし合いも数多く経験しギルド長として海千山千の冒険者たちを統括できるのだからおいそれと揺るぐものではない。
しかし目の前にいる見知らぬ女性から感じられる気を受け少しだけ動揺を見せるのだった。
(何者だこの女。なまじの者ではないぞ・・・)
そう思いながら知矢へと視線を向けやむなく助けを求めるのだった。
「まあ待てフェリシア。お前にはまだ詳しく話していないがそもそも今回俺達が受けた緊急調査の依頼の原因は恐らくお前だ。そう言った意味でもこのギルド長を始め多くの冒険者や貴族、騎士団へ迷惑をかけた事についてこれから話し合う予定だ。俺の事を思う気持ちはわかるが暫く大人しくしておいて欲しい」
知矢は今回の騒ぎの発端を状況証拠だけで考えると聖獣となった知矢のバイクが知矢を懸命に探そうとした行動によるものであると半ば確信していた。
だが他の冒険者の帰還が未だであるためこの場は今まで自分が得た情報のみを話し後に他の冒険者の持ち帰ったっ情報とすり合わせてから考えようと思っていた。
(だが話すとしてどこまで話そうかのう)
知矢は最高神や転移者である話を避けこの聖獣となり転移して来たフェリシアの事をどう説明するかを思案していた。
『主様、失礼いたしました。ではこちらにて控えさせていただきます』
フェリシアは知矢の言葉に素直に応じると再び黙って知矢の背後へ静かに立つのであった。
「ああ? おいトーヤ何か気になる事を今言ったな。説明しろ」
ガインが気を取り直し再び知矢へ詰め寄ると
『・・・・・』
フェリシアが黙って鋭い視線をガインへ向けた。
するとガインがぶるっと微かに身を震わせそっと横目でフェリシアを確認すると一度視線が絡み合ったが即座に視線を外すのだった。
(何なんだこの女は。まるで大森林でSランクの魔物に出くわしたような気配を出しやがる)
ガインの推測は実に正鵠を射ていた。
フェリシアは魔獣の形態の時には聖獣フェンリルを模して最高神によりその姿を与えられた。
フェンリル自体は確かに高位の魔法を操る聖獣でもあり一般的にAランクと呼称される魔獣だ。
しかしフェリシアが最高神に望んだ能力を全て内包した時その身に宿る力は一般的なフェンリルのそれを遥かに凌駕する力を備えた。
よって大凡フェリシアの魔獣としての評価はSランクに充分相当する力を有していたのであった。
では今、姿を人型へ変じる人化の行使力を使っている現在の状態ではどうであろうか。
基本スペックはやはり魔獣形態の方が高い。これは純粋な筋力量などの要素が多く影響している。
しかし自身の持つ魔力を内包する作用でかなりの部分は補っているようだ。
これにより人型形態の場合は大凡ではあるがおそらくAランク、その中でも中位以上の力を有していると考えられる。
しかしガインを震わせた様に内から湧きだす力の根源はやはりSランクのそれであった。
「ああ、先ずはその報告と思っていたんだが、俺以外の冒険者は未だ帰還していないのか」
知矢と同時に ”鬼神モーリス” ”暴風のカスティーヌ”が仲間を率いて大森林方面へ調査へ向かった。その事を確認したのだ。
「そうだ。帰還しているのはお前だけだ。だがお前の帰還が速かっただけで他の二組が遅れている訳ではないからそろそろ帰還しても良い頃だろう。で報告ってやつを聞かせてくれ」
ガインは知矢をせかす様に促した。
「まあ最終的な判断は他の冒険者からの報告と併せなければ確信できないだろう。俺からは”スタンピード”の兆候は確認できなかったと言っておく」
「うむ、そうか。だがさっきの話はどう繋がるんだ。」
ガインは知矢の背後に立つフェリシアをチラリとだけ見るとすぐに知矢へと視線を戻した。
「それなんだが・・・・・ああもう言ってしまうか」
知矢はフェリシアの事を秘しても説明の合理性が確保できない。
それに既に門外での出来事を騎士団や多くの冒険者などに目撃されているのだから隠したところで意味がないと。
「実はなこの後ろに控えている女性。名をフェリシアと言うんだが・・・人ではないんだ」
その知矢の言葉に一瞬ウッっと詰まる様な声を出したガインは
「やはりそうか。俺には解っていたぞ。獣人だろう。しかも獣人族の中でも最強を誇る象族だったんだな。そうかそうかならば納得も出来る。かの種族は人族最強との評判だ、そうかそうか」
何か1人合点して納得顔のガインであった。
「ニャア、ギルド長。象族の奴らと会った事があるニャ」
呆れながらニャアラスが口を挟む。
「いやこの付近では非常に珍しい種族だからな。お会いした事は無い。お初にお目にかかる私は冒険者ギルドのギルド長でガインと申します。どうかよろしくエレファント族の方」
ガインは勝手な思い込みで話を進めるのであった。
「何言ってるニャ」とあきれるニャアラス。
象族は帝国の市民として人数は少ないが古くから定住する種族であった。
帝国西部方面に多く住まい一族の強者は一騎当千と吟遊詩人にも謳われる剛の者達である。
しかしその一族の特徴は、多くの人族などと比べ身長や体格などはるかに大きく象族の子供がすでに人族の大人を凌駕するのが当然なほどである。
その体格の大きさでも有名な種族と目の前にいる細身の女性をみて間違う事があるのかとニャアラスは呆れて何も言えなかった。
「いやその象族の方を俺は知らないが彼女は全く違う。彼女は”聖獣”だ」
呆れるニャアラスの隣で真剣に答える知矢。彼は象族を知らないから無理もない。
「はっ?お前何を言ってるんだ。聖獣ってあのユニコーン等の神の化身とか神の使いと言われるやつだぞ。この女性のどこに角が生えているんだ。ばかばかしい。大森林に行って余程恐ろしい目にでもあったのか。疲れているなら今日は仕方がないからさっさと休め」
何だとつまらなそうに椅子へ背を預ける様にしながら手を振り知矢の話を信じないガインに対し、
「フェリシア、ここで元の姿へ戻れるか」
後ろを振り返りながら声をかける。
『ハイ主様。ご要望でしたら何時なんどきでも可能です』
そう静かに答えるのであった。
じゃあ頼むとそっと言う知矢に無言で頷くとフェリシアは身をひるがえし音も無く数歩進むと再び静かに振り返りうつむき加減に目を閉じる。
すると
「何だなんだ。トーヤ何が始まるんだ」
椅子へ背を預けたままのガインは意味が解らないと苦情を訴えるが知矢はそれを無言で手で制しじっとフェリシアを注視していた。
すると・・・
先ほど門での前の光景と同じく全身を緑色に発光させたと思うと金色に輝く光に包まれた。
「ワッ!何だ何始めやがるトーヤ!」
目も眩む様な激しい光を放つ光景に驚くばかりのガインが叫ぶ。
激しい金色の発光が静かに止むとそこに姿を現したのは聖獣フェンリルの巨体であった。
「ウオー!!!ッななななんだ!!!縺▲ェュ縺◎ェュ繧√k?繧√k?」
余りの衝撃的な出来事に混乱するガイン。
「俺でもあんなにビビんなかったニャ」と落ち着いた様子のニャアラス。そして
「ヒョッヒョッヒョ」相変わらず笑みを浮かべるだけの老人である。
「落ち着け!ガイン。言っただろう彼女は聖獣フェンリルだ。そして俺の新たな従魔としてこれから一緒に暮らす。このピョンピョンに次いで2番目の従魔だな」
そう言いながら知矢は静かに肩に乗る従魔を指で撫でるのであった。
『・・・・・(フェリシアさん私にも変化の方法を今度教えてね)』
『ピョンさん、残念ですが私も良く分からないのです。ごめんなさいね』
そう知矢の肩に乗る小さな仲間へ優しく伝えるフェリシアだった。
フェリシアは元々フェンリルでは無い事は前述してる。一般的に聖獣と言えども人化の法を使えるものではない。
フェリシアの場合既に基本スペックが純然たるフェンリルの能力とは次元が異なる。
そしてフェリシアから最高神へ願った事一覧の1つに
『主様の傍らに於いて支障のない様に』
との要望も含まれていた。
しかし最高神へ願った当初は
『再び主をお乗せし』
そう言っていた事から4足歩行の魔獣などの候補から力や機敏さ耐久力内包する魔力などどんどん最高神へ対する要求が増えていきやっとの思いで聖獣フェンリルを選定したもののその大きな体躯は戦いや騎乗には適していたもののやはり一緒に生活するのは困難であるとの更なる要望により
「ならば」と最高神の最後の一手個体特殊能力 ”行使力”によりその身体を自由に変化させることのできる”人化”の魔法能力を授けたのであった。
実際は未だ最後の強い要望、”スーパーチャージャー”を実装するのであったが。
「・・・・・・・・アワアワアワ・・・・・ふぇふぇふぇえええええ!! フェンリルだとおおおお!!!!」
「あら、何かいまギルド長の叫び声が聞こえた様な? 気のせいね」
自分のデスクへ腰かけ忙しく働くニーナは一瞬何か異様なガインの声が聞こえた気がしたような気がして一度虚空を見上げたが直ぐに空耳だと思い目前の業務へ気持ちを戻した。
ラグーン冒険者ギルドの3階は特殊な魔力防壁でシールドしてある。
その一つが外部に内密な話が漏れぬ様遮音の防壁であった。
「ぜいぜいぜい・・・」
息を整えようと必死に呼吸するガイン。
目の前には相変わらずとぼけた顔をしながら優雅にソファーへ腰かける若い冒険者がいる。
そしてその後背には、少し褐色ながら銀色に光る美しい毛並みをたたえ狼にも似た風貌で薄く緑色に光る眼光、そしてその頬には疾風を体現するようなきれいな緑色のラインを三本流し入れた聖獣が静かに立っていた。
「どうニャ。落ち着いたかニャギルド長」
ニャアラスはガインへ気を使いカップに紅茶を注ぎ入れてデスクの目の前へ置いた。
無言でカップを掴むとグイッと一息に飲み込んでガシャンとカップを置くと暫くじっと俯いていた。
しばらくすると僅かに肩が震えるように見えると
「くくくっくくくくくく・・・・・・」何やら笑いを堪えている様である。
するとガバッとその顔を起こすと
「ふざけるな!!何故聖獣がここにいるんだ。しかも従魔だと!! だいたいゴールデン・デス・スパイダーを従魔にするって事自体常軌を逸してんだぞ!! それが今度はよりによって聖獣だと!!
お前はいったい何者で何を考えているんだ!!!」
ガインの罵声を気にする風も無く知矢は相変わらず静かに紅茶を飲むのであった。
「総支配人」
店で接客をしていたアンドウが奥のデスクで書類に目を通していたリラレットへ声をかけた。
「ハイ、どうしましたかアンドウ君」
顔を書類から起こし眼鏡を直しながら声をかけたアンドウへ顔を向ける。
「いま店にお使いの小僧さんがいらしてこれを支配人へ渡してほしいと言いつかりました。小僧さんにはお礼の小銭は渡してあります」
ニコニコ顔で報告する手代のアンドウである。
「あら、ありがとう。気が利いて来ましたね」と丁稚から手代へ昇格した若者を褒めるのであった。
「では仕事に戻ります」と嬉しそうに店先へと戻っていった。
「はい、頑張ってください」
そう声をかけアンドウを見送るとリラレットは封をされた手紙を裏に返し差出人を確認した。
そこには 一文字だけ ”t” と記されていた。
サインを確認したリラレットは慌てて引き出しからペーパーナイフを取り出すと丁寧に慎重に手紙を開封する。
真剣な顔で手紙を読んだリラレットはすぐに行動を開始する。
奥向きの使用人たちに声をかけ食事と風呂の支度、そして空いている客間の準備などを指示した。
そして階上の知矢の執務室へ向かうと
「サーヤさんこれを」
知矢の執務室に置かれた専用のデスクで書類作業をしていたサーヤへ先ほど届けられた手紙を渡す。
「・・・」無言で手紙を読み終えたサーヤが顔を上げ口を開く。
「ご無事のご帰還の様でよかった。客が有るのは分った。しかし新たな人型の従魔が増えるとは?」
手紙は知矢からである。
知矢は都市へ入りすぐに冒険者ギルドへ向かうと先ずニーナへ帰還の挨拶をした後その場で知矢の帰還を待っている使用人達への手紙をしたためニーナへ小銭と共に託して店へ配達を頼んだ。
この国では郵便制度は存在しない。
高位貴族や帝国の公正書類・書簡の類は専門の役人により安全確実に届ける仕組みがある。
しかし庶民の手紙は都市や街村間ではそこを通る商人や冒険者に料金を払い託すのが一般的である。
そして都市の内部では商店に勤める下働きの小僧や丁稚などに小遣を渡し配達を頼む仕組みがあった。
商店主は余程忙しい時でなければすぐに応じるし客との付き合いや自身が用がある時にもそう言った制度を活用するなどお互い様の慣例である。
下働きの子供にとっては絶好の小遣い稼ぎにもなる為早くてしかもまた依頼が来るように確実に届けるのであった。
これも一種の郵便制度なのかもしれない。
「この文章だけでは詳細を理解できませんがともかく知矢さまがご帰還され人数が増えるのだけは確かです。他の者には指示を出してありますのでサーヤさんも準備を願います」
「わかりました」
サーヤは帳簿や書類を片付け始める。
リラレットはすぐに取って返し準備に不備が無いかを確認に入るのであった。
こうして知矢の帰還の報に慌ただしくなった魔道具商店である。
しかし知矢は何時に帰宅するのか・・・
それはこの後の冒険者ギルドでの話次第であった。
暑いですね(^_^;)
今日からオフィスのエアコンが作動していました。
帰社して自分のデスクに座り涼んでいたところどんどん寒くなって来てとても座っていられませんでした。
風向きをリモコンで変えようとしたのですが
「ダメ!私たちに直接あたると冷える」
と女子事務員に言われてしまいました。
「ええええ俺も冷えるんだけどな・・・・・」
OLさん達にはには勝てません。
さて夏にはもう一歩ですね。
では次話にてまた。




