第175話 情報集約 ~ 『・・・(食べ放題食べ放題)』 「ニャーーーーーーー!!!!」
久しぶりに連日投稿! (未だ二日目)
こんばんは、今日は比較的左手首の痛みが緩和された様だったので一生懸命書いてみました。
未だ全快では無いので明日以降の執筆状況は不明瞭ですが・・・
ではともかく 第175話
どうぞ
『接近中のゴールデン・デス・スパイダー、1000を越えました』
「ニャーーーーーーー!!!!」
知矢の周囲に無機質な声が響くと知矢の頭にしがみついていたニャアラスが再び悲鳴を上げた。
「落ち着けニャアラス。別に敵じゃないんだし心配いらないぞ」
知矢は頭の重みに苦い顔をしながら視線を上へ向けニャアラスをなだめる。
「わわわぁああ分っているニャ、でででももももっ!!」
知矢は自分にとって歴戦の勇者たりえる獣人族きっての猛者とも言える彼がここまで過剰に反応するとは意外であった。
確かに目の前どころか周囲を見渡すと小山の頂に広がる大きな木の生えていたいちょっとした広場は今真っ黒な生き物に埋め尽くされる勢いだ。
よく見ると知矢の従魔程度の大きさから大きい者だと西瓜程度の者まで大小さまざまなゴールデン・デス・スパイダーの大群が周囲にいるのだからニャアラスの反応も過剰反応と言えないであろう。
その場で喜んでいるのは知矢の肩で両手(脚)をぶんぶん振り回して周囲に挨拶をしている従魔のピョンピョンのみである。
『・・・・・・・・(みんな!来てくれてありがとう! こちらが私のご主人様とその仲間達だよ)』
その知矢の従魔の声に反応する様に周囲を埋め尽くしている1000匹にもなるゴールデン・デス・スパイダーが一斉に前脚を上げまるで挨拶でもしているかのように見えた。
「ピョンピョン、これってみんなが挨拶をしてるって解釈で良いのか」
知矢も目の前の光景にどう反応するか迷い従魔に尋ねてみた。
『・・・・・・(ハイ!もちろんです)みんなご主人様に興味津々ですよ』
興奮する様な波長でこたえる従魔。知矢は思い切って周囲を見回しながら声をかけてみた。
「やあ、急な呼びかけに答えてくれてありがとう」と少し声を張って周囲へ届く様に感謝を口にするとすぐに反応が返って来た。
周囲を埋め尽くし前脚を上げていたゴールデン・デス・スパイダー達がそのままゆらりゆらりと体を左右へ揺らし始めた。おそらくそれが知矢の声かけに対する反応なのであろうと思いながらも知矢は少し苦笑いをしながら手を振り返すのだった。
『・・・・・・・(と言う訳なんだ。みんなの中でそんな騒ぎが起きたりしたのを見たりした事ある?)』
知矢は周囲に集まったゴールデン・デス・スパイダーへの説明を従魔に任せ少し後方へと下がりニャアラスを頭から引きずり降ろして椅子に座らせると無限倉庫からワインの容器を出すとニャアラスへ飲ませた。
「ホレ、これでも飲んで少し落ち着け」
知矢に差しだされたコップを両手で受け取ると一瞬逡巡するような間があったが知矢を上目使いに見ると微笑み返された。
それを切っ掛けにニャアラスはゴクゴクッとワインを飲み干すと
「プファーッ」と息を吐いたころには少し落ち着きを取り戻していた。
「ニャアトーヤすまニャイ。少し落ち着いた、もう大丈夫だニャ」
ニャアラスは少し恥ずかしそうにしながら詫びを口にした。
知矢はもう一杯ニャアラスのコップへワインを注ぐ。
「なに気にするな。ゴールデン・デス・スパイダーと言えば1匹でもC級の魔獣、集団だとSランクやAランクのクラウンへ討伐依頼が出るって噂も聞いたしな。これほどの数が集まると普通なら卒倒するか逃げ出して当然の話だ。下手すれば都市を担いで逃げ出すレベルのいわば厄災と言われても良い話だからな」
知矢は苦笑いを浮かべながら周囲を再び見まわしながら冗談めかしてニャアラスを安心させようとしていた。
しかし、現実問題過去、大昔の話だそうだが村へ集団で姿を現したゴールデン・デス・スパイダーを見た村人が慌てて村を捨てて逃げ出す騒ぎが有ったそうだ。
しばらくして様子を窺がうために村人の陳情を受けた騎士団が村へ突入するとそこにはゴールデン・デス・スパイダーの影も見えず静まり返った無人の村があった。
何かの見間違いだったのではないかと騎士団の説得を受け村へ帰還した人々が目にしたのは静まり返ったいつもの村の景色。そして、食料の一切、麦の一粒に至るまで全てが消え去った光景であった。
そんな話が大昔から幾度か襲われたという話に尾ひれがつき 『ゴールデン・デス・スパイダーに襲われたら皆殺しにされ全てを食い尽くされる』 と言う悪評が定着したのであった。
だが実際はゴールデン・デス・スパイダーが人を襲って食料とする事は一切ない。あくまでも魔獣などを狩って食すのみである。
しかし先の村の話は確かにゴールデン・デス・スパイダーが集団で姿を現したのは事実であった。
たまたま村の付近で狩りをしていた彼らが追ってきたグレートボアを仕留めて食した後近くの村へ接近し目撃されただけであったのだが。
村の者が慌てて村から逃げ出した後、ゴールデン・デス・スパイダー達はグレートボアでお腹いっぱいの状態で帰路についた。
では何故村の食料の一切が消えていたのか。
この事件と無関係に処理された事件がこの後村のそばで発生していた。
村からそう遠く離れていない渓谷の洞穴に潜んでいた南の大国の工作員の集団がたまたま付近を通りかかった冒険者によってその存在が発覚。
改めて騎士団の討伐部隊が組織され洞窟を包囲、殲滅、捕獲した事件があった。
その際に洞窟にわずかに残されていた食料が実は彼の村から密かに盗み出した食料であったのだ。
村の外から様子を窺がっていた工作員が一連の騒ぎを目撃。
ゴールデン・デス・スパイダーが立ち去ったのを確認すると仲間とともに無人の村へ押し入りあらゆる食料を全て持ち去ったという訳であった。
この事は関連付けられなかったこともありその後も人々にあいだではゴールデン・デス・スパイダーの悪評が広まった。
ゴールデン・デス・スパイダー達にとっては南の大国はいわば濡れ衣を着させられた相手である。がしかしそんな事を知らない彼らは実は友好的な種族であるがそれを人族は今のところ知る由も無かった。
ゴールデン・デス・スパイダーにとってはとんだ災難である。
だが当の彼らはそんな悪評など知りもせずにいる訳だが最近仲間の一人が人族の従魔となった話が漏れ広がっていた事もあり今回の呼びかけに集まった彼らは興味津々であった。
「ヒョッヒョッヒョ。これだけの数が一堂に帰す光景何ぞこれまで見たことも聞いた事も無いのう。
ヒョッヒョッヒョやはりお前さん達についてきて正解じゃった。まだまだ面白い物を見せてもらえそうじゃ」
ニャアラスの対面に腰かけながら未だワインを楽しむ老人は愉快そうに笑う。
「カーネタリア様はピョンピョン、俺の従魔から聞いた話だとゴールデン・デス・スパイダーの王、キング様には会った事があるという話でしたが」
知矢はこんな光景は既に経験済みではと問うてみた。
「ああ、その昔あやつらの王と出会った事は確かじゃ。じゃがその時もこれほどの数はとてもとても、精々数十匹が王とともに行動しとった程度じゃ。まあもっともその王の存在がこの数を凌駕するほどの存在ではあったがなヒャッヒャッヒャ」
千年を超す年月を経ていると思われるゴールデン・デス・スパイダーの王、キングはその名に恥じぬ大森林の巨木と匹敵するほどの巨体を持ちその攻撃力は古龍さえも叶わぬ力を持つ。さらには知恵と慈悲を兼ね備えたこの大森林を守護する存在である。
人族で知矢の知る限りキングと邂逅したものは知矢とこの老人、そしてキングが若い頃に一緒に旅をしたと語っていた剣士だけであった。
千年を超える時を生きる大森林の王の一角、それがキングゴールデン・デス・スパイダーであったがそれ存在と知己を得た者がこの場に二人同時に存在する事も非常に稀有な事であった。
そんな話を知矢と老人がしているうちにすっかりニャアラスはワインのせいも有り落ち着きを取り戻していた。
「フーッ、トーヤだいぶ慣れたニャ」そう言いながらニャアラスは落ち着いた様子で改めて周囲を見回す余裕が出てきた。
「しかし改めて見ても凄い光景だニャ。トーヤ、今はピョンピョンが話をしているところかニャ」
知矢の従魔と思われるゴールデン・デス・スパイダーが一匹岩の上から周囲へ身振り手振りで何かを訴えているかの様子がみてとれる。
「ああ、俺もピョンピョンの声しか伝わってこないが情報収集の真っ最中だ。これだけの人数から聞き取るんだしばらくかかりそうだな」
そう言いながら知矢は
(せっかく集まってくれたから何かお礼をしたいが・・・無限倉庫の肉で足りるかのう)
周囲のゴールデン・デス・スパイダーの数と知矢の懐具合を勘案する知矢であった。
『agyaawawawa』
老人の後ろに控える様に香箱座りを続けるギガントポメラニオンは先ほどから一切この数のゴールデン・デス・スパイダーを意に介さずしかも欠伸をしているのであった。
『・・・・・・・・・(ご主人様!)』
知矢の従魔が群れの方から振り返り知矢へと声をかけた。
「どうしたピョンピョン。上手く情報が得られたのか」
知矢はしばらく黙って待っていた席を立つと従魔へと歩を進め小岩の上でぴょんぴょん跳ねながら主を呼ぶ従魔へ膝を折り顔を近づけた。
『・・・・・・・・・・(ハイ! みんなが色々な事を教えてくれました)』
そう言いながら仲間を振り返る従魔に周囲のゴールデン・デス・スパイダー達が一斉に手を振る。
知矢は膝を付きながら周囲を見回し「ありがとうみんな!」と手を振り返すのであった。
『・・・・(でね、ご主人様)』
従魔は今仲間から聞いた情報を語り出した。
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「・・・成るほど。うん!こりゃあ大手柄だ! 良し! お前の仲間たちに報酬をあげないとな」
しばらく従魔の話を聞いていた知矢はかなり確信的な情報を得ることが出来たことに満足し従魔を撫でると共に集まってくれたゴールデン・デス・スパイダーへ考えていた礼をする事にした。
「こんな物しかないけど、どうだろう。良かったら食べてくれないか」
知矢は立ち上がるとマジックバックの出入り口に偽装してある無限倉庫の中へ手を入れると次から次へと以前狩りをしたり接敵して倒した魔獣の解体肉をどんどん草むらの上へと順に並べていった。
「えっとここいらに並べたのがクレイボアだろ、そしてお次がグレートボア、アリガッターヤも何匹かあるし、少々小振りだが一突きウサギなら結構数もあるからな、最後が突撃シープだな。足りなかったらまだ有るからな、みんな情報を教えてくれたり態々集まってくれたお礼だから遠慮無く食べて欲しい」
そう話しながら知矢は周囲へ広がる従魔の仲間へ食事を提供したのである。
ずらりと並べられた肉を目の前にゴールデン・デス・スパイダー達は暫しじっと見つめて微動だにしなかったが
『・・・・・・(オーイ!みんな。私のご主人様からのお礼だから遠慮なく食べて食べて!)』
知矢の従魔がそう宣言するとびくりと一瞬動いたゴールデン・デス・スパイダー達はその後、堰を切った様に一斉にそれぞれの肉へと群がり始めたのである。
大小さまざまな大きさのゴールデン・デス・スパイダーが肉にとりつき食事を始める光景は圧巻であった。
少々小振りの一突きうさぎ等はあっという間に骨だけになったと思うとその骨も見る見る間に消え去っていった。
超大型の魔獣グレートボア等も同様である。
大小散りばめて50個ほどの肉塊は見る見る間に消え去ったのであるからとてつもない食欲である。
しかし知矢が以前従魔に聞いたところによるとゴールデン・デス・スパイダーは基本毎日食事をとるわけでもないそうだ。
知矢の元で十分な食事を与えられているピョンピョンであったが他の仲間たちは一度の狩りでお腹いっぱい食すと数日は食事をとらなくても平気らしい。
その話を聞いたのちでも知矢は量を相談しながら従魔には毎日食事を与えているのであるが。
千匹にもなる集団が一斉に食事をする光景は知矢とニャアラスにとって初めての光景だ。
二人は少し唖然としながらも
「この様子を他の者が見たらやっぱり恐ろしさを感じるかな」
「いやいや感じるどころじゃないニャ泡食って逃げ出すニャいや失神するニャ!」
少し余裕が出てきたニャアラスではあったが食事風景を見て少しだけ恐怖した事を思い出した様であった。
知矢は半ば唖然としながらも消え去った肉を空いた場所に補充して回りながら
「まだ食べるか、まだまだあるから遠慮しないで良いぞ。ありがとうな」
そんな言葉をかけながら従魔の仲間たちの隙間を縫い歩き踏みつぶさないように気を付けながら新たな肉塊を無限倉庫から出しては並べるのを暫く繰り返していたのだった。
「ヒョッヒョッヒョこれはまた珍しい光景だわい」
ワインに顔を赤くしながら老人は楽しそうに新たな杯を重ねるのであった。




