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第171話 伏せ!!お手!おかわり! ~ 「ニャ~ン」 「いやお前がしてどうする」

ほぼ1カ月投稿が途絶えまして申し訳ございませんでした。

業務多忙と併せ諸事重なりました。


とにかく 第171話 どうぞ!


あっ勿論あまり話は進んでおりません



 「ニャあ、トーヤ。 カーネタリア様がいれば俺達いらないんじゃニャアか?」

 ニャアラスは大森林へ一歩踏み込んだ最浅部を早脚で駆けながら前方を見据えそんな事を口にする。



 「そうは言っても最終的には俺達が状況を把握してその情報を持ち帰ることが依頼内容だ。『こんな話を聞きました』 って報告するわけにはいかないだろう」

 知矢もニャアラスと歩調を合わせながら時折目の前に現れる背より高く張り出した巨木の根を飛び越えながら大森林を進み同じく前方の様子を窺がっていた。




 知矢とニャアラスは森で出会った老人と一夜を過ごしその老人の半生とも言うべき物語を聞いた。



 知矢もまさかSランクの冒険者がこんな森の中で世捨て人の様に暮らしているなど思いもしなかった。 それ以前に知矢は冒険者ランクで”S”ランクが存在するなど転移前日本に暮らしていた頃読んだネット小説の世界でしか知らなかったのであるが。



 その老人であるが知矢とニャアラスの少し前方を歩く、いや語弊があるので訂正しよう。

 その老人は凶悪な顔を持ちその体躯は遥かに見上げるほど大きく、そして地面へ下す度にズシント響く四肢を持つ魔獣の首元に乗り悠々と運んでもらっている。


 まるでアルプスの山に住んでいる少女が巨大なセントバーナードに乗る様な気楽さでそれを遥か巨大化させた魔獣の背に乗っているのであった。






 しばらく時間をさかのぼる。



 「さてニャアラス。昨日は色々あり過ぎてろくに調査が出来なかった。だから今日は本腰を入れ調査するぞ」

 昨日キャンプ地としたこの場所に設置したテントや調理台、テーブルに椅子、そして最後に防柵を無限倉庫へ収納して撤収準備を終えた知矢がニャアラスへ声をかけた。



 「ニャア、とにかく何か情報がニャイと帰るに帰れないニャ」

 ニャアラスも自身の身支度を整え腰に剣を下げながら同意する。



 知矢は緊急依頼を受けた大森林周辺の魔獣たちの動向調査にニャアラスの協力を頼みここ大森林のた物へ広がる大きな湖まで来ていた。


 昨日は前夜に森で出会った謎の老人の騒ぎもありその後長い話を聞くことになった為調査が進んでいなかった。


 しかし今日は早朝から起き出し二人と従魔、そして何故かついてくることになってしまった老人、カーネタリア・イラ・カリット・ドゥ・16世。そして世界に数少ない冒険者ギルドランク ”S”をもつ男。

 このメンバーで魔獣、魔物の異常動向の調査を再開した。



 しかし知矢もニャアラスにしても何か当てがあった訳でもなく周囲の地形を見ながら何かありそうかと思える方向、いわば勘を頼りにとにかくその健脚を最大限に発揮して走り回りその”何か”を探そうとしていた。



 「よしニャアラス。今日は昨日お前が行った方向の湖に沿って進んでからあの先に見える小山の周囲まで行ってみよう」

 知矢は数十キロは離れているように見える霞のかかった高い丘を指さし今日の方針を伝えた。


 知矢はその周囲から少し高くなった場所からなら広く様子を窺がえると思った。

 同意するニャアラスと共に老人へも声をかける。


 「カーネタリア様、じゃあ馬魔車へ乗ってください。今日は大急ぎで移動しますよ。俺達は交代で馬魔車から離れて周囲の様子を探りに出ます。一応今日の目標はあの遠くに見える丘です」


 何故か意気投合しているように知矢の従魔と戯れながら知矢達の支度が整うのを待っていた老人へ声をかける。


 「ああ分った。わしは大人しく付いて行くだけじゃヒョッヒョッヒョ」

 知矢の従魔を頭に乗せたままの地面へ座っていた老人はゆっくりと立ち上がり魔馬車へと乗り込むのだった。

 その際に従魔は老人の頭の上からヒョンと軽く跳び知矢の肩へと音も無く降り立った。


「・・・(そう言えばご主人様、あのおじいさん昨日姿を現した水龍に何か聞いてましたよ。森に騒ぎは無かったかって)」

 知矢の従魔は昨日起こった水龍との遭遇時の出来事を思い出すように主である知矢へと伝えた。



 「水龍から情報を聞き出していたって? それで何か異変の情報はあったのか」

 知矢は肩へ乗る従魔を指先で撫ぜながら話を聞くが横目で老人を見やり(何かを知っていて敢えて言わない?それとも・・・)と老人を訝しみながら従魔の話を聞く。


 「・・・・・(見た事の無い4脚の魔獣が入り込んで他のものと争いになったという騒ぎが少し前からあちこちで聞かれるそうです。水龍さんは他の仲間や他の魔物から聞いただけで詳しくは知らないそうです)」


 「見た事の無い魔獣か。この周辺にはいない種が入り込んで騒ぎを起こす・・・それだけでスタンピードへは発展するとも思えないが」


 「ニャンだって」

 従魔と知矢の話へニャアラスが入り込んできた。


 「たった一匹が騒いでもスタンピートにはニャらないニャ」

 従魔の話を通訳してもらったニャアラスも知矢の考えに同意する。


 「ニャア、でもニャ」

 「でも、何だ」

 ニャアラスは御者台で魔馬を操りながら何か思い出す様に黙り込んで考えだした。


 「スランピードかどうかはわからないニャ。でもその一匹がとてつもない強者だったらどうだニャ。自分の縄張りに入り込んだ奴を叩きだそうと襲い掛かって逆にやられて種族揃って逃げ出す事もあるかニャ? 大森林のたもと辺りならそれ程”強者”ともいえニャイけど相応の力を持つ魔獣達が群れを構えて居るニャ。そいつらが自分たちが束になっても叶わない奴に襲われて逃げだす。そしたら逃げ出した先に住んでる別のもっと弱い魔獣が追い立てられて大森林から出てきた。今度は森に棲むものがその追い立てられて出て来た奴らに住処を追われて移動する。ってのはどうニャ」


 ニャアラスの考えはスタンピードでは無く強者にはじかれた魔獣がどんどん次から次へと押し出されて移動をしているのではないかと推測していた。


 昨日この湖のたもとへたどり着くあいだもそれ程大きな騒ぎや異変、その兆候さえ見る事は出来なかった。

 しかし実際に森の魔獣や魔物の普段は見られないような大きな移動の様子は目撃されている。


 ならばやはり 集団暴走 (スタンピード) と言うものとは様子が異なる単なる森の騒ぎともいえる。


 これがスタンビードと言われるほどの規模であったなら既に数千ひょっとすると数万の魔獣、魔物が狂気を纏い暴走している事であろう。


 知矢はそんな事を想像しながらも周囲に異変が無いか気配を探りさらに探知魔法のレーダを存分に活用しながらニャアラスと共に御者台に座っていた。


 今現在に至り知矢の探知魔法のレーダーは半径約数キロの範囲を索敵できる程にレベルが上がっていた。

 そしてそのレベルアップの過程で付帯する新機能が実装されレーダーに表示された任意の箇所を別ウインドウで拡大したり個別に指定した者を追尾探知する機能は以前から実装されていたが最近では指定した対象者の名前やレベルを探知する事も可能になっている。



 いったい最高神より与えられたこの力はどこまで進化するのか知矢は少し引き気味でもある。

 そして何よりその機能を十全に使うことが出来ない自分もおり

 「何でもかんでも機能を実装すればいいってもんじゃ無かろうに」

 と苦情を口にしていた。



 だがともかくレーダー機能は十二分に役に立ちある程度は安心して周囲を調査出来る事には感謝していた。

 その探知レーダーに新たなポイントが表示され併せて警告も発せられる。



 『”ピーン” 警告します。10時方向距離2850、強大な反応、数3、急速接近中 このまま進行するとクロスライン到達まで約10分』

 コナビから聞きなれる警告が発せられた。



 「コナビ!相手は何だ」知矢は即座にレーダーを確認しながら問う。

 因みに同行者のニャアラスへ情報説明の手間を省くためコナビの発する音声を他者へも聞かせられないかと聞いてみたところ知矢が指定した者へ同時に伝達が可能との事で最近は同時通報を許可している。


 もっとも最初ニャアラスは突然見えない者から発せられる声に驚きを隠せなかったが知矢が

 『俺の固有 行使力(スキル) だ』と言い含めて納得させてある。



 『魔獣、ギガントポメラニオンです』



 ギガントポメラニオン: ライオンの様な鬣を持つ魔獣。風の魔法(ウインドカッター)を操り相手を切り裂きさらに強靱な前脚の一撃と口腔からそそり出る鋭い牙で相手を食いちぎる魔獣。ただし百獣の王と言えるほど強くはない。Aランク相当の魔獣である。だがその凶暴さは人族で対抗するのは生半可な人数では不可能。



 「ニャア!知矢、進路を変えるニャ!!」ニャアラスはその名を聞くと叫ぶように知矢を振り返った。


 「コナビ、進路を避けるにはどっちの方角が良い」


 『9時方向が最適です。ですが相手の感知範囲を躱せない場合察知、追撃されると思われます。』



 3頭の魔獣が接近しこのままだと進路が交錯する。避けたとしても魔獣の感知能力に察知され追われる事とになる。

 では戦うか?それとも別の方向に新たな可能性を模索するか又は巨木の陰に隠れてやり過ごすか。一瞬の判断が命取りになるこの状況で知矢は

 「魔馬車を捨てる、ニャアラス魔馬を切り離してきた方向へ向けて追いやれ、上手くすれば逃げられるだろう。おじいさん!荷台を捨てて走ります。可能ですか」


 知矢は重荷になる荷台を放棄しさらに魔馬を自由にして逃がし自分たちは身軽になり相手の動きと感知から逃れる決断をした。



 ニャアラスは即座に対応し魔馬を荷台から切り離し顔を後方へ向けさせると殺気をぶつけて逃走させた。


 元々魔獣の仲間である魔馬は飼いならされているとはいえ魔獣である。見えない背に殺気をぶつけられると本能から即座に全力での逃走を図るの。その脚力は荷台を切り離したことと殺気を受け野生本来の力を存分に発揮した健脚であっという間に木々の間を駆け去り姿を消してしまった。


 荷台から降りて来た老人は

 「ヒョッヒョッヒョ~ 何も心配いらん。あやつらは可愛いもんじゃ」

 老人はそう言いながらあっけにとられる知矢達をしり目にそのままゆったりとクロスラインの方へと歩いて行った。


 「ばっ、バカニャ。いくらSランクといってもカーネタリア様、歳を考えるニャ!」

 接近する魔獣を相手に一戦する様に魔獣へ向かう老人をニャアラスは半ば悲鳴のような声をあげ制止する。


 「ヒョッヒョッヒョ。まあ見物しとってくれ」

 まるで散歩でもするようなおっとりとした様子の老人が知矢達を振り返りニヤリとその深い皺をさらにしわくちゃにするように笑顔を向けてさらに歩き出した。


 (ピョンピョン、ギガントポメラニオンの動きを止められるか)

 知矢は小声で従魔へ問うてみた。

 「・・・(無理です、大きいし重いんですあの子たち)」


 以前自身よりはるかに大きなグレートボアを仕留め、引きずってきた事のあるさすがの従魔もお手上げな相手らしい。



 知矢とニャアラスが制止するのも構わず老人はひょこひょこと散歩でもする様に森を進み、やがて強者の気配と遅れて地面に響く重い足音と共に強大な木々の間から姿を見せたのはコナビの通知通り3頭の巨大で凶暴そうな顔を見せる魔獣、ギガントポメラニオンのそれであった。


 「ニャアアアア!!」まだ少し距離がある者のその姿を見たニャアラスは知矢の背後へ隠れブルブル震えていた。

 知矢も既に感知圏内へ入ってしまっているこの状況、そして先を歩く老人と魔獣を見てなすすべも無く状況を見守るしかなかった。


 「ニャアラス、おじいさんはSランカーだ。ひょっとして勝機があるのか」あまりにも余裕の姿でのんびり歩く老人の背をみて知矢は (Sランクと言う位だから一撃で叩きのめすとか、大魔法を繰り出して次元の彼方へ放り出すとかするつもりか?)などと相変わらず日本にいた頃読んでいた異世界転生小説に毒されている思考は変わらなかった。


 だが知矢もその身の中で精いっぱいの魔力を練り上げ指先へと集中させ最近覚え、鍛錬中の土魔法”ストーンバレット”をいつでも放てる準備をしていた。



 ストーンバレット :土属性の魔法で生み出した高硬度の石を弾丸の様に発する魔法。知矢が持つ膨大な魔力を込めるとその弾丸は大砲のような大きさと威力で飛ばすことが可能。ただしその威力では連射が効かず1発放つ毎に魔力を練り上げる必要がある。

 弾丸程度の大きさなら数百発を連射。機銃掃射の様に放つことも可能だ。



 その魔獣達は老人を気配どころか既に視覚の内に入れる距離まで迫っていた。その足並みはドスンドスンと一歩一歩を同道と踏みしめる様に接近し今にも飛び掛かりその凶悪な牙の餌食にするかはたまた風属性の魔獣故その身から放たれる鋭利な刃物同然の風魔法を行使するかの間合いに近づいている。


 知矢は額から汗をしたたせながらいつでもストーンバレットを撃つべく集中し見守っている。


 しかし知矢達に背を見せている老人は一向に攻撃の為の挙動や魔力集中の気配も見せずに相変わらずひょっこひょっことのんびりとした歩調のまま魔獣へと進んでいく。


 そしてその魔獣と老人の距離がほんの10m程に接近した時、両者の歩みがピタリと止まり互いに見つめ合いながら間合いを探っているのかそれとも攻撃の機微を窺がっているのか矮小な1人の人族と巨大な3頭の魔獣の間に今にも爆発しそうに張り詰めた空気が漂うように見える。


 その時間はどれくらいであったか。数秒かそれとも数時間か。

 知矢の背後から様子を窺がいながら微かに震えているニャアラスにとっては無限の時を感じていた。


 そしてその時は来た!



 先に動いたのは3頭の魔獣、ギガントポメラニオンであった。

 その巨大な体躯の3頭の動きはまるで同調しているかの如く同時に同じ行動に出た。


 知矢も指先に力が入った瞬間!




 その3頭は



    ”ドシーン、ゴロロ~ン”



 その巨体を肩から地に伏せ四肢を空へと向けながら関節を折り曲げ身をちぢこませる様な姿勢へと転じ凶悪な顔は ”ハッハ・ハッハ” と舌を出し甘えるような視線を老人へ向けたのであった。



 「おうおう、そうかそうか。ういい奴じゃなヒョッヒョッヒョ」


 そう言いながら老人はその巨大な魔獣へと平常に近づき巨体に見合う大きな両目の間へ手を伸ばすとスリスリと撫ぜる様に触れ始めたのであった。



 「「・・・・・・・」」


 知矢とニャアラスは今の状態が瞬時に理解できなかった。


 しばらく二人が呆然と見ていると相変わらずその老人は3頭の顔や首元をさする様に撫ぜ廻しそれにこたえるかの如く魔獣達も「gurugurururu」とまるで気持ちが良いのか喉を鳴らしているようにも見えた。




 「・・・・・ニャア・・・アッ!! ニャんだそれ!!!!!!!!!」




 巨大な木々に覆われる大森林の最浅部へ響き渡るニャアラスの声。


 知矢もその声を聴くとその身に纏っていた魔力を霧散させながら脱力していく自分を感じてはいたが言葉は出てこなかった。


いやあ重ねて申し訳ありません。

そして今後も更新が不定期、時間がかなり空くかもしれません。

連載は今後も継続しますがのんびりとしたものになると思います。


のんびり執筆させてください。


ではまた次話にて。

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