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第170話 真の聖光とはいったい

こんばんは

遅くなりましたが投稿いたします

第170話どうぞ



 「これはこれは、猊下自ら遠きこの様な地までおいで下さいますとは誠に恐縮の至り。

 神聖教国を代表いたしまして御礼申し上げます。

 なにぶんにも未開の地ゆえ何もございませんが歓迎をさせて頂きます。

 当方の国王、教皇との挨拶は後ほど謁見の場を用意いたしましたのでそちらで」


 目の前に少し離れて迎える集団の先頭を率いる若い男が豪奢な金糸と朱糸で施された真っ白に光沢が輝く衣装に身を包み慇懃に頭を下げると後方に控える者達も一斉にそれにならった。




 「こちらこそ我らの為に次期教皇でもある教皇殿下自ら出迎えてくださるとは感激のあまり心と体が打ち震える思いでございます。

 この度は魔人王国を代表し老人が参りました。なにぶんにも田舎者故失礼の段もございましょうがお許しください。

 魔王様も教皇様によろしくお伝えせよとお言葉を預かってまいりました。それは後ほど」




 魔神教最高司祭は黒いビロード調の衣装に銀糸と青糸で紋様を複雑に縫い上げた衣装を身にまといこちらも慇懃に腰を折ると配下の司祭たちも習う。


 その司祭の後方助祭たちの一群の中に詰襟の祭服に身を包んだ青年がいたが教国側は全く気にする事は無かった。

 それはそうである。この場の主人公は魔神教の最高位者で有る最高司祭なのだからお付きの者などに目が行くわけもない。



 魔神王国より凶悪な顔をした魔獣にひかれる豪奢な 客車(ワゴン) を十数台連ねて険しくそして恐ろしく凶暴な魔物たちの巣を通り抜ける事20日。神聖教国へ到着した一団は魔王国、魔神教の友好交流使節団一行であった。



 友好交流使節団と銘打ってはあるが実の所最高司祭の一群の後方に控える魔王国を恐れる象徴、凶暴で凶悪な顔をしている知らぬものが見たら腰を抜かすであろうその恐ろしい生き物、魔獣達による神聖王国に対する圧力団体でもあった。


 これは魔王国の一方的な強攻ではない。

 ここ数年著しく権威と権力そして権勢を落とした神聖教国国王でもある教皇からの要請によるものであった。



 神聖教国内部は今過去に例の見ない権力分散、争いの真っただ中にあった。


 本来であれば教皇を国家元首とし頂点を成した創造神を崇め奉る宗教国家であるがその力に源は最高位に立つ者個人の資質、強力な聖魔法、無限とも思える膨大な魔力、そして強靭な肉体を誇りなさしめる力、そう言った頂点に立つ者の武威をこの国の国民全てが認め併せて世界の全てを力でまとめ上げた神、創造神を強く信仰する国家である。



 しかし近年、最高位にあった神聖王国の国王を兼ねる神聖教教皇の魔力が減衰、衰えて行くのをみてとった者達の次世代権力者争いが密かに各地で勃発し裏側では政治的混乱をきたしていた。



 本来であれば教皇の強力な聖魔法を示す事で人々、国民に安らぎと癒しを与え混乱を収める力を見せる事でその地位を保ち国家を安定させるのであるが。



 神聖教国国王の位はこの3代は世襲が行われてきた。

 それ以前は国民の中から大いなる武威を示したものが選ばれてきたが最近は他に力を持つ者が国王の血縁以外から現れる事が無かった為自然と世襲する形になってきた。


 しかし現国王の力が衰退し始めその息子である次期国王と目されていた者の力が歴代の国王や現国王に比べて著しく低い事から各地で力を持つ者達が我こそは次期国王なりと騒ぎ始めた。


 この行為自体はこの国では罰せられる事は無い。

 逆に力を示すことが出来ない者が国民を率いる事など出来ないのだから。

 だが現国王は自らの力の衰えと息子の非力さを補うため元来その様な行為は認められていなかった別の強力な勢力の力を借りる事で補おうと目論んだのであった。



 それが遠き大森林の向こう側にあり強力な力と魔獣を従える民、魔神王国であった。


 魔神王国自体は他国への侵略侵攻などは一切考えておらずましてや大森林に住む魔物や魔獣達を従え隣国へ攻め込む等有り得なかった。

 魔獣や魔物の全てではないが多くの強力な魔獣達は魔王国の人々が大事に有効に交流したり従えて利用したり中には先の少年の様にペットにする等戦力とする事など考えていない。


 勿論食料として狩る事も飼育、繁殖で数を保ち食料安定確保などの行為も行っているのだが。


 しかし他国の者としては自分たちが恐れ戦って容易に勝つことのできない戦力を保有する者に畏怖や恐怖を抱くのは当然の事である。

 時の権力者が己で武威を示すことが出来なくなったときそれを利用しようと画策する事は無理からぬことなのかもしれない。


 その強大な力を持つ友好国の最高司祭が国王と親しく交わる様子を見れば争う事を避け政権の維持が成し得るのではと勘違いする事も無理からぬかもしれないが現実はそうはいかない。


 各地で次期王位を目指す者、そして全国民も龍の位を利用するゴブリン者などを認めないのであるから。



 そして魔王国としてもそう言った権力争いを知らぬわけでは無かった。

 自らその国の版図を広げる意思は無かったが利用されるのも業腹である。しかも現国王が以前からとってきた対大森林魔獣政策も絡む。


 現神聖教国国王は魔獣に対し悪しきものと位置づけ積極的に大森林の魔物たちを排除する政策を行ってきた。

 多くの魔獣達と友として生きる魔王国としてそれは容認できる話では無かった。しかし大森林の全てを魔王国の領土としているわけでもなく大森林自体は出入りも自由であり魔獣を狩ること自体を制限する権利も持っていない自由であるとの考えもあり魔王国として神聖教国へそれを止める様に言った事は無かった。


 しかし長年憂慮は示してきた。


 そう言った経緯もあり出来る事なら不必要に魔物を狩り魔物を抑圧する現体制へ力を貸す道理も無く今回神聖教国より是非との願いでの訪問であったが神聖教国側と魔王国側の意図は全く異なるのである。



 実はこの訪問より先に魔王国としての方針が決せられた。

 当初従来通り隣国への干渉を是とせず不干渉を決めていた魔王国側であったが数カ月前その考えに大きな変革を表す存在を認め密かに魔王国側は従来にない対応をすべく行動していた。


 それは遠き隣国である神聖教国の次期国王、教皇になる者を魔王国の意図する者が着く様工作を行う事であった。


 これだけ見れば魔王国による政治工作で傀儡国王を作り上げ属国にでもするのかと思われるかもしれないがその意図は全くなかった。


 純粋に大森林安定を憂いての事である。

 大森林に生息する魔獣を確かに魔王国でも狩る事で食料として利用しているのは確かであったがそれはごく一部の魔獣であった。

 そう言った行為の是非はともかく基本的に乱獲や希少生物を狩る事は許されず他国の者が狩る事を是とはしていない。


 今回、魔王国内において長年人族でありながら王家と近かった大商人。この者に白羽の矢が立ち魔王国の意図する工作をゆだねたのであった。


 大商人としては長年魔王国、大森林の魔物のドロップ品などで莫大な財を得てきたことに併せ大商人としても大森林を荒らされるのは商売としても憂慮するとともに魔王の意を素直に受け入れての行動であった。


 しかし大商人としても単に魔王に命ぜられたからと言って元々神聖教国国民でもあり敬虔な創造神教の信者でもある。


 やはり武威を示し聖魔法の強力な使い手でなければ認められなかった。

 しかし魔王より話しを受け魔神教の高司祭より話しを受けた人物の来歴と今の力を知った事で全面的にその方針受け入れる事とした。



 魔王国より推薦のあった者は確かに神聖教国の出身であり実家は敬虔な創造神教の信徒でもある。


 教会でも長年騎士団の高位にありその立場にありながら不偏、不腐、平等を保ち続ける姿は多くの国民の知るところでもあり清廉潔白な人柄もあり人気がある。


 しかしその者はそう言った事から政治への接近を良しとしない考えも強くまた家の跡継ぎでもある息子が幼少の頃より行方知れずになっていた事から今回の国内各所で湧き上がった後継者争いの動きには一切関与せず中立を保つ家の一つでもあった。



 そう言った自ら動く事の無い人物を周囲の者から担ぎ上げる為の行動が今回魔神国より大々的に神聖教国を訪問した一団の真の意図であった。


 魔王国の思惑を全く知りもしない現教皇、国王側は魔王国の力を得ている事を大々的に各地で動き出している勢力への牽制と逡巡している者達への圧力として利用し次期国王に息子を継がせることを表明する、いわば魔王国の力をバックボーンとして友好交流使節団の歓待の場を利用この際使節団の臨席の場で皇位継承も強行しようと目論んでいたのであった。


 表向き政治的な歓迎式典や意見交換会、各所への表敬訪問など多くの歓迎行事をこなす一方で魔王国側の随行員の一部は密かにあてがわられた宿舎へ夜な夜な訪問者を迎え入れ神聖教国の新体制への根回しを行っていた。


 各地方へ在住、もしくは王都付近へ在住する各権力者を招き密かに魔王国の推薦する者を承認し今後の国家運営に協力するとの約定を求めての事であった。


 当初殆どの次世代権力の座を目指す者達は魔王国の意図を疑いやはり傀儡政権を憂いていた。それは当然の反応であった。

 しかし魔神教最高司祭は寝る間も惜しみそう言った意図が決してない事を説き理解を求めた。

 だが結局のところ最高司祭の長い説得より当の本人の武威を、聖魔法を見せつけると皆が一応にその者へ従う事を即座に確約するのだった。


 やはりこの国を平和裏に収めるのは言葉や金では無く聖なる力を如何に強力に発揮できるかそれに尽きたのであった。


 こうして多くの権力の座を目指す者達への工作は全て順当であったが1点、いや1家未だ態度を決めかねている者がいた。


 魔王国が推薦する次期教皇の生家、実の父親である現神聖教国騎士団、騎士団長であった。


 死んだはずと思っていた息子が魔王国最高司祭に伴われ密かに母国へ帰還。しかも教皇の座を得る為と聞いた騎士団長は喜ぶどころか深い憂慮を示した。


 しかしそんな父親である騎士団長の不安を他所に最高司祭言う。


 『其方が心配するのは自らの役儀、立場で国家を壟断するのかと思われる、もしくは自分たちの子供の将来を憂うその両方であろう。じゃがそんな心配は無用であろう、見て感じるが良い』


 その両者の秘密会談の席に立ち会い、感激の再開を行ったばかりの者へ合図を送る。


 その者は他の秘密会談で魅せた聖魔法を纏い父親である騎士団長へも武威を示したのであった。


 その様子を唖然とした顔で見つめていた騎士団長は息子の成長に感激をしたのかその目からはらはらと流れ落ちる物がみてとれた。


 『息、この者へ魔法障壁を何重の聖結界を施してあった事は・・・』

 父親である騎士団長は涙をぬぐいながら最高司祭へ聞く。その声はやっと聴きとれる程度の声であったがそれが何を意味するのか。

 息子へ対する何を隠しておきたかったのか。


 『なかなかの厄介な術であったと聞いていますよ。やはりあなた方の意思で処置していたと見える』

 最高司祭は優しく諭すような声音で父親である騎士団長の肩へその手を掛けまるで子供をやさしく諭すように声をかけた。



 騎士団長の息子が生まれた時に話はさかのぼる。

 騎士団長はちらりちらりと息子を横目で見つつ済まなそうな顔をしながら語り出した。


 生まれた子供は五体満足、健康そのものであった。その事を両親や当時まだ存命であったその者の祖父母も含め誕生を祝う気でいたのだがその赤子は既に生まれた瞬間から強い魔力を感じさせていた。


 その魔力自体は歓迎すべきことである。

 この世界、この国で強い魔力を持つという事は将来を保証される力となりうるとされていたから当然であった。


 しかしその強い魔力の種類が問題であった。

 強くそして膨大な魔力が発するのは非常に強力な ”聖” の力を周囲にいる者へまざまざと感じ取らせていた。


 即座に懸念を言い出したのは神聖教国の重鎮でもある祖父であった。

 『この様な赤子の内にこれほどの聖なる武威を発していると知れると身の危険を感じざるえん』


 国を治める王位にある神聖教国教皇の身近に仕えその武威をいつも感じ取っていた祖父でなくともその赤子の発する聖の武威はタダならぬ力を持っていると理解できた。


 他者にその力を知られるとどうなるか。

 現在3代に渡り王位を継承して来た王家がどう反応するか。

 将来の国家にとり頼もしい、等と言う訳はない。その力を疎まれ今のうちにその力を亡き者とされるのではないか。そう父母、祖父母が懸念するのも無理からぬこと。


 赤子の出生から他者へのお披露目の前にと決断し古の技を幾重にも用いその赤子の力を減じる封印を施す事となった。

 その行為は純粋に家族の愛であり赤子の未来を護る物と信じて。



 他者へ知られぬまま封印された大いなる力を持つ子供は家族の不安を他所にすくすくと成長していった。

 その子供には父親が積極的に剣の道を進ませようと幼い頃から誘導する様に指導をしていたが或る時魔法を習いたいと言い出した時父母や祖父母は懸念を抱いたが施された封印は一切揺るぐ兆しも無かったことから他者へ癒しを与え守るべき魔法を特に選定して教えを許す事とした。


 その数年後その者がまさか密かに家を出て長くに渡り姿を消し、もうどこかで命を落としているかもと諦めも出ていた後にその封印を解き大いなる聖の武威を溢れんばかりに示し目の前に現れる事になるなど想像も出来なかった。


 騎士団長の息子は涙を流しながら最高司祭に優しく諭される父親が歳を取り少し小さくなったと感じながら話を聞きいつの間にか本人も滂沱の涙を流しながら父親に許しを請いながら抱き着いたのであった。










 魔王国よりの親善大使一行が大観衆の前へと姿をあらをしたのは神聖教国国王でもあり神聖教国教皇も兼ねる教皇が集まった何千もの民衆、そして眼下に控える国の重鎮や地方権力者に対し声を大きくする魔法を用いて紹介する声であった。


 教皇としては自国のはるか上をいく強力な力を誇る魔王国、その魔神教最高権威者と親しく交わる姿を周知しそれを背景に今後も権勢を誇るねらいであった為必要以上に一般市民にも広く周知すべしとこの場絵の列席を指示したのであった。



 国王、神聖教国教皇の大演説は最後まで無事終える流れであった。そしてその最後にこの場で教皇殿下たる息子への譲位を発表し自らは神性教皇となり影より権威を維持するつもりであった。


 『・・・それ故この国と創造神様の教えを維持し更に広く広める為わしはこの位を最高の後継者たる教皇殿下へと教皇の地位を譲る事とした。今後わしは最高神様の教えを堅持するべく神性教皇として一線より身を引き創造神様への祈りをささげる事と・・・・』


 熱のこもった演説が最終段階へ差し掛かったその時にそれは起こった。




 『待たれよ!』

 こちらも魔力により声を響かせ聴衆の全てにも届く。


 会場全てが一斉にざわつき 『何者だ。神性教皇様の聖なるお言葉を汚す者は!』

 先ほど新教皇に指名されたが未だ声を発していなかった若者が周囲を見回し怒りをあらわにする。



 『わしだが』 声の主は魔王国親善大使一行より進み出て来た老人より返ってきた。


 『最高司祭殿! まさか貴殿が。何故邪魔を致すのかその存念をお聞かせ願いたい』


 その若者の言葉に父親でもある自称神性教皇が気まずい顔をで息子を睨む。


 父親の様と異なり未だ世を成れる術の未熟な若者に対し父親は (馬鹿め、うやむやに話を流して場所を替えれば良いものをこの場でこたえる様に等思惑は分らんが相手の思う通りでは無いか!)

 心中罵声を浴びせたい衝動にかられたがそこは息子と異なり慣れた物。支ぐに表情を取り繕い落ち着いた声音で優しく何事も無かったように声をかける。


 『これお二方、意見を交わし合う事はとても大事な事、大いにすべきでございましょう。ならばお二人で場所を替えれば済むこと。この場の多くの国民が戸惑いながら見守っておりますよ。さあさあお前もお話をお聞きするのだ、ご案内をするが良い』


 何とか当事者をこの場から去らせ取り繕いたい自称神性教皇は微笑みを絶やさぬ様にしながらも目で息子に訴える。


 しかし

 『いえいえ。場を変える必要などございませんよ、逆に丁度良い。 多くのここ民の皆様にも問いたい。私は隣国の司祭であるから詳しくはないが聞き及ぶところによるとこの国を治める者は ”武威を示さねばならぬ” と聞き及んで負いますが、はてこの若者は武威を示したのであろうか』


 (マズイ)自称神性教皇は一瞬の間に一番触れられては困る点を一気に突かれ一瞬動揺した。が、しかし


 『魔王国最高司祭様、その様な話を今ここで隣国の方であるあなたがなさるのはいささか内政干渉と言わざる負えません。お控えください。 オイ、使節団の方はお疲れの様だ控室へお下がりいただきなさい』

 壇上の袖に控えている騎士団団長へ(こいつらを放り出せ)と言わんばかりの顔つきで指示を出す。


 しかし騎士団団長はおろか脇に控える団員の誰一人も命に従い動き出す様子が無かった。


 訝しむ自称神性教皇は怒気を込め騎士団を睨むがその様子に変わりは無かった。

 (何だ、何が起こった。こやつらは今までわしの命に背いた事など無かったはずだ)

 自称神性教皇は未だ動かぬ配下の様子に急な不安を覚えたが今までそんな事が一度たりともなかったことで対処に戸惑い動揺した。


 『教皇殿よ、どうじゃな先ほどのわしの問は』動揺を見せる自称神性教皇へ魔神教最高司祭は続けて問う。


 『国家の先頭に立ち国民を率いる立場の者が率先し武威を示す事で国民の信を得る。素晴らしくもあり全国民に非常にわかりやすく誰が国家を率いるべきか一目瞭然でございますな。

 ならば後継たる若者を指名したのですから勿論この場で武威を示すおつもりなのでしょう。いやいや貴重な場面に出くわすことが出来友好交流使節団として帰国後魔王様へ有意義な報告が出来ますな。これは楽しみですのう』


 盛大に魔法による拡声で聴衆をあおりながら問う最高司祭は余裕の表情であったが対する自称神性教皇と息子である自称教皇は声にもならない怒りの表情で最高司祭を歯を食いしばる様に睨みながら対峙する形となっていた。


 周囲の国家重心たちや地方の権力者たちは何も語らず静観の構えを取っていた。

 ざわついているのは何も知らない民衆たちのみ。

 この期に及びやっと何か異変が起こっていると感じた自称神性教皇は半ば怒りと共に言い放った。


 『隣国の者に言われるまでも無い。だが良い機会だ。ささ新教皇様大勢の臣下や国民へ武威をお示しなさい。そうすればだれがこの国を治めるに値するか皆が理解する事でしょう』

 そういいはなった。


 言われた息子は驚愕の顔を父親に向ける。

 それはそうである。この若者は武威を発する事は出来る。それは出来るだけであり国家を先導し国民を求心する武威。聖なる武威を発現など出来はしないのを本人が一番理解しているのだから。


 『ささ新教皇様こちらに』

 驚愕し困惑したままの息子を舞台中央へと誘いながら小声で「お前の武威に併せわしの武威を併せて発現させる。大丈夫じゃ歳はとってもお前の武威の倍以上はある。併せて発動している事など平民には理解出来んだろ、さあやれ」


 戸惑う息子の尻を叩く様にそくす父親はどうやってでもこの地位を守り抜こうとあがく。



 『者ども、これが新教皇様のお力である。ありがたく受けるが良い!』

 そう言うと父親はそっと息子の後背へ回り込みその姿を息子の背に隠しながら豪奢な衣装のたっぷりとした袖に隠しながらその手に魔力を集め息子へと送り始めた。



 大きく両手を上へ広げ虚空を見る様な素振りを作った息子は父親の魔力を背に感じながら己の中の精一杯の武威を発現させるのだった。


 その身から光り輝く淡い光を身にまとい始めた息子の姿に観衆は 「おおお!!」 と声を上げた。



 『これこそが我が神聖教国を率いる者だけが纏える聖光である』



 そう宣言する様に魔力で大声を響かせるのは息子の陰で必死に魔力を送る父親であった。

 息子の方は武威を示すだけで精いっぱい、何も言葉を生み出す余裕も無かった。





 その淡い光が静かに消えた時観衆が大きく声を上げた 「うおー!新教皇様だ!」「私たちの新しい指導者よ」 「新国王万歳!」

 と声が上がり始めた時


 『静まれ!!』

 またもや魔力拡声で声を出した者がいた。


 今度は誰だといい気分にしたっていた息子が不機嫌そうに声の方向を見やると一人の地方権力者が、いや一人だけでは無い周囲に列を成して控えていた地方権力者や豪族たちが与えられた席を立ち壇上の親子に対し今にも詰め寄らんばかりの雰囲気を出していた。



 『教皇殿、まさか今のが国を治める者の武威と言わぬでしょうな!』

 1人が声を上げると次々に立場ある者が声をあげ親子を糾弾し始めた。


 『そんなものは武威とは言わぬ、ただ魔力を押し出しただけではないか』


 『その程度ならわしの孫でも遊びながらできるわい』


 『そんな程度の力で国家を主導するなど認められん』


 その他次々と威儀を訴え中には罵倒する言葉を投げかける者まで出始め会場は大混乱であった。


 一般の国民は ”武威” の事はもちろん知っている。市井にも中には聖なる魔力を強く発現できる者も少なからずいる。

 しかし国家を率いる武威とはそんな程度の物ではない。


 ”その力に接した時知らず知らずのうちに跪きこうべを垂れてしまう ”


 そう言われていた。


 だがこの数十年以上吐出した武威を示すものが現れなかった事と現教皇も若い頃はそこそこではあったが聖光を放つ武威が少しはあった事。

 そしてここ最近大きな戦乱も無く施政が安定していた事でそれ程の武威を見せなくても反意を示す者がなかなか現れなかった事。そしてごく一部の教皇親派の者による裏工作もあって最近は安定していた。



 しかし事態は大きく動いた。

 ことある毎に聖光の武威を示すべしと言い募る者が増え始め息子に迫った事が度々あった。


 『聖光とは軽々しく発現するべきものでは無い』等と言いつくろいその場を逃れていた息子であったがさる激しい論戦を交わした会議において相手が武威を示した折本来なら 『この知れ者め』と武威を示す、又は聖光の武威で相手を抑え込める者がこの国のリーダーであった。


 だがこの時息子は言葉を言い募り誤魔化し逃げたのであった。

 その事に依り国家の重鎮や地方権力者たちに不信を買っていた事で新たなる権力者の座を求める動きが全国へと広がったいきさつがあった。


 それを他国、しかも隣国で最強とうたわれる魔王国との親密な関係を見せる事で躱そうと浅慮を企てたのであった。




 『静まれ! 何を騒いでおる。 この場は友好交流使節団でおいでになった魔王国の方を歓迎しお送りする場であるぞ!』

 父親はもう何を理由にしてでもこの場を納める事しかできなかった。

 しかしそれは自らの滅びを呼び込むセリフでもあった。



 『これはこれは教皇殿。忘れ去られていると思っておりましたがご紹介ありがとうございます』


 にこやかな顔で魔神教最高司祭は再び壇上の中央へと顔を出した。勿論魔法で拡声しながらである。


 『忘れる等有るはずもございません。しかし恥ずかしい場面をお見せいたしました事はお詫びいたします。お国へ戻り魔王様へよしなにお伝えください。近いうちにこの度の使節団の返礼にてこちらからも友好団をお送りいたしますので』


 まるでもういいから帰れと送り出すような言葉を紡ぐ父親へ最高司祭は

 『わかりました、魔王様へ良くこの国の事をお伝えいたしましょう』と周囲や集まった聴衆へ声を向けた。


 その言葉に聴衆は恐ろしい魔王国の逆鱗に触れたのではないかとしーんと静まり返った。


 『では最後に』と最高司祭が別れの言葉でも述べるかと言う素振りを見せると父親は少し安堵し黙ってさっさとしゃべらせて帰らせようと話を聞くそぶりだ。



 『私が今回同伴した者の1人にこの国の生まれの者がおりますので紹介しましょう』


 出てくるが良いと優しく自国の集団へ声をかける最高司祭


 父親は(何を言っている?)と訝しんだが分らずそのまま見守った。


 親善使節団一行の中から現れたのは詰襟の黒い祭服に身を包んだ若い青年であった。


 その若者へ最高司祭が頷くと若者はサッと身をひるがえし来ていた祭服を一瞬で脱ぎ去るとそこに現れたのは白地に金糸と朱糸で彩られた神聖教国の高位者が着ると定められた祭服を来た若者であった。



 『なっ何を!』 その若者と魔神教最高司祭へ向け口を挟もうとした父親の言葉は阻まれた。


 阻んだのは青年である。


 青年は白い祭服の姿を見せるや否その身の周囲へ輝く光を放ち始めたのであった。

 その光は先ほどの親子が力を合わせ魅せた淡い光などと全く次元が異なる大きく強い光、いや輝きを放ちその身の周囲へどんどん拡張しまるで会場全体が金色に輝く光に飲み込まれたかに思う様だった。



 何秒であろうか。その場にいた物全てが時間の感覚を失った。

 そして気が付いたときその会場、その場にいた物全てが誰に強要されたわけでもなくその場に跪きこうべを垂れその青年へ臣下の礼をとっていた。



 その中で唯一跪く事を拒否できたのは父親。現教皇ただ一人であった。だがこれはかつて自分がこの数十分の1にも満たないが一応成功の武威発現者であったことと言うだけでありその膝はがくがくと震え今にも膝から倒れ伏しそうであった。



 因みに魔王国から来た魔神教の一行は聖光の武威の影響を事前に聞き最高司祭が結界を張っていたので影響は少なかった。

 少なかったがほとんどの者が頭は垂れずともつい膝を付いてしまっていた。




 『見事な聖光の武威ではないか! そうは思わぬか騎士団の者達よ、そして国家の重鎮たち、列席の豪族方いやいや神聖教国の国民の皆さん!』



 しんと静まり返った会場に響く魔神教最高司祭の言葉で我に返った者達が気が付いたら膝をちていた事に気が付き改めて壇上の青年を凝視した。


 そこには先ほどのように強力な武威は見られなかったが明らかに輝かしい聖光を纏う青年の姿があった。

 何者かわかっておらずとも理解できた。



 『真の指導者が現れた!』


 『新しい教皇様だ!』


 『国家の指導者が降臨された!』


 『我々を導いて下され!』







 興奮する声を皆が発し涙する者、喜び合う者、驚喜する者その場は興奮のるつぼと化していた。


 その興奮の声の中必死に魔力で拡声し異議を訴える者がいた。

 勿論現教皇である父親である。

 息子は跪き頭を垂れたまま固まったように動かなかった。


 必死の訴えに誰も耳を貸さなかったが唯一傍に寄った者達がいた。


 『教皇様』そう声を変えたのは神聖教国騎士団団長とその配下の騎士達であった。


 『おお、お前たち。何をしているあのインチキ者をひっ捕らえよ!』

 その声に騎士たちは一斉に行動を起こすと教皇並びにその息子を後ろ手に押さえつけたのだ。


 『貴様何を!!』


 『教皇様、いえ既に実はありませんね。元教皇様、貴方とご子息及び周囲の者達を国家財産隠避、横領及び恐喝恫喝の罪で拘束いたします。 連れていけ!』


 騎士団長を睨む教皇であったが団長の言葉に黙り込み顔面蒼白になってしまった。


 わあわあ喚く元教皇を引きずり去っていく騎士を見送り振り返った騎士団長は観衆の声援に戸惑いながら聖光の武威を未だ発しつづけている息子の姿を見てふっと息を強く吐くと意思強く1人頷き踵を返し国家に巣食うゴミ無視退治をせねば。と勇んでその場を後にするのだった。





 その後話は遥か30年程進む。


 『タッ大変です!!!』


 神聖教国は30年の時を経て安定した国家運営を達成し経済的にも順調に発展をしていた。30年前電撃的に現れた新教皇の元、隣国の大国、魔神王国と強いつながりと積極外交により地位を高め属国などと言われぬ立場も確立を果たした。


 人々は教皇を敬愛し、教皇も国を愛した。

 そして過去の過ちを繰り返す事の無いよう法を定め


  ”国家を主導する者は誰であれ成功の武威を示してこそ”


 そう定義したのである。




 これにより歳を理由に退位を申し出た教皇に変わり新たに選出された新教皇が即位すると前教皇は一線からきっぱりと手を引き28年前にめとった妻、そして4人の子、そしてそれらの妻や孫たちと幸せに暮らしていた。





 しかし騎士団へ急報が届いた




 『 私は心残りもあり元の立場へ戻る。家族にも理解を得た。探さないでほしい

         カーネタリア・イラ・カリット・ドゥ・16世 』




 そう書き記した手紙を残し前教皇は神聖教国からその姿を消したのであった。









 「まあそう言う訳でな。冒険者を暫くしとったがそっちも人に譲ってなあとはそれ魔獣を友としこの大森林に塒を設け時に魔神たちと酒を飲む。そんな生活をこの何十年気楽にしとったわけだひゃっひゃっひゃ」




 知矢とニャアラスが身分を明かせと迫り冒険者証を見せられたことでこの老人の正体が判明した。



 カーネタリア・イラ・カリット・ドゥ・16世。


 神聖教国の数代前の教皇であり退位後姿をくらました彼は以前から冒険者として登録をしていたBランクから再度活動を再開し数十年前に Sランク 認定を受けた冒険者の伝説的存在であった。



 その名と活躍を知っていたニャアラス。しかもギルド証には輝くSランクの文字があり思わず頭を垂れてしまったのだった。

 知矢はSランクに目が行かなかったこともあったのかニャアラスの態度に驚くばかりであった。



 その後持ち直したニャアラスを交え知矢が提供した料理と酒を味わいながらカーネタリア老人の話を聞いていたのだった。



 「でおじいさん。その話どこまで信じていいんですか」知矢は余りにも荒唐無稽な印象を受けつい聞いてい待った


 「ニャに言ってんだトーヤ失礼だろ!!」

 ニャアラスは驚いて知矢を制止する


 「ひゃっひゃっひゃ。まあ適当に聞いておいてくれ」老人は気にする様子もかった。




 こうして老人の話を聞きながら知矢とニャアラスは長い長い夜を過ごしたのであった。









 何だか本当に訳が分からない話をだらだら書いてしまいました。

 次回からまた戻ります。

 



昨日はバイクの指導講習会へ参加してまいりました。

ひじょうに厳しい状況で進展、進歩はあまり見られませんでしたが多少は得る物がありましたかね。

今朝は筋肉痛で一日きつかった。

バイクを本気で乗るとずーっとつま先辺りでステップに荷重をかけ全身を左右に体重移動を繰り返すんですよね。

日頃はだらだら乗っているだけなのでコンなざまです。(-_-;)



再来月もチャレンジしてきます。

次回はもっと頑張れると良いな。

膝擦りキャンプ

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