第164話 みっくちゅじゅーちゅ ~「皆さん!ご主人様がお戻りになるまで我々がここを堅持するのです良いですか! 「「「「オーウ!!」」」」」
最近では珍しく連続投稿できました
では第164話です
(注意:相変わらず話の進みは遅いよ)
「ぐびぐびぐび、クファーっ」
魔馬車の荷台で毛布にくるまりながらくつろぎ知矢から貰ったワインを美味そうに飲むその老人。
夜中に1人森の奥にて大木を背に佇む老人に出会った知矢とニャアラスであったが最初は何か困った事は無いかと気遣い声をかけたがそんな二人の思いは何とやら。
思いのほか元気で酒を好む自身を「酔いどれジジイ」とだけ名乗った謎の老人である。
酒を欲した老人へ知矢がワインを数本差しだすと大喜びでその対価に付いて行くと勝手に宣言して魔馬車へと乗り込んできたのだ。
ニャアラスは 「ニャに勝手な事を」 とプンプン文句を口にしていたがここに置き去りにするのも忍びないと知矢のとりなしでそのまま魔馬車で同行させることとなった。
それに先立ち知矢がその老人を鑑定したところ全ての項目の数値、レベルが文字化けをしており
(俺よりはるか高いレベルと言う事か)と思いながらもそれ以外の罰、犯罪履歴などの項目も無かったことと風変わりで飄々としたその雰囲気に呑まれるまま同行を許したともいえる。
それともう一つ気に成る点。先ほど一度知矢からのワインの対価に差しだした ”ドラゴンの涙” と呼ばれる朱の透明な結晶。
ニャアラスに言わせると ”そんなの偽物ニャ” と言っていたが併せて本物であったなら青金貨2枚はする物であると。
そんな高価な物の価値を知らないはずも無くその老人は持っていた革の袋に無造作に放り込んでいたように見えたが知矢にはその袋も貴重で高額なマジックバックではとも思えた。
先に述べた遺跡から見つかったり、ダンジョンから得られるマジックバックは大容量であったり時間停止機能が備わったりする高機能型の為一般の者の手にする事の出来る金額では無く、自らが発掘やダンジョンで手に入れたのでなければ白金貨以上の対価を払い購入するしかない。
一般の市位へ出回るマジックバックはそう言った貴重で高価な言わば遺構より得られた物とは全く異なり長年の研究で得られた成果で作られた、”コピー商品”ともいえるものであった。
残念なことにその長年の成果で作られたマジックバックは容量や機能の面からも劣化品とも言われるのであった。
勿論確かにマジックバックとして使用することが出来るので劣化と言う言葉はそぐわないかもしれないが事実その容量は馬魔車の荷台に軽く乗る程度以下が殆どであった。
しかも時間停止機能を付与させることは殆どできなかった事からそう呼ばれていた。
だがそれでも自身が持ち得る重さを遥かに超えた量を持つことが出来るので人気は高く購入しようと思ってもなかなか手にする事は出来なかった。
魔馬車荷台分以下の容量と言うのは実は非常に微妙な大きさであった。
担ぎ商いの商人であれば一人で担いで売り買いできる何倍もの物を運ぶことが出来るし冒険者がそれを持っていたら身軽でいざ戦いになった場合でも対応に苦慮せずもし大きなもしくは大量のドロップ品や素材を入手した場合でも泣く泣く置き捨てる事も無く帰還できるなどとても有効であるのは間違いない。
しかし商会を立ち上げ多くの商品を活発に取引する様になったり大商会になると中途半端な大きさのマジックバックより大枚を払ってでも大きい物を求める。
その為比較的容量の少ないマジックバックは流通量も多く値段も大金貨以下で購入できるのだったがただし、やはり遺構の産物と大きく異なる最大の弱点も存在する。
耐久性が悪いのであった。
一般には魔法を付与する袋が内部に施された魔力に耐えきれないと言われているが実際はマジックバックの魔法、空間魔法により素材の劣化が著しいからであった。
おおよそ3年から最大でも5年も使用すると段々物が入らなくなり容量が極端に落ち最後は中身の重さに耐えきれなくなった外革が裂けて中身を放り出して終焉を迎える。
しかし知矢が作成したマジックバックの魔力は安定して付与されており知矢の感触では殆ど生涯使える、50年以上の耐久性能があると考えていた。
その耐久性能と容量そして低価格から爆発的な人気を誇り今もって毎日購入者が後を絶たない商品となったのである。
閑話休題
知矢は一先ずマジックバックの件は置いておくとして ”ドラゴンの涙” について従魔に聞いてみた。
『・・・・・(ドラゴンの涙は持っているだけでその特性を利用できると言う物です。あの朱に染まった色は火竜の特性を持ち耐火の防御性能がほぼ無限に効果を発揮すると言われています)』
従魔の説明を補足すると、ドラゴンの涙と言われるその澄んだ水晶の様な物質は種類により色が種々あり朱に染まる物は前述の通りであるが付け加えると炎のドラゴンブレス同等の火力攻撃を放つこともできる。ただし持ち主の魔力量によってその威力は制限される。
その他に綺麗な薄い藍色は水を操り河の流れも自在に動かせ水のブレスの様な攻撃魔法も放つことが出来る。
その他も種類があるが総じて言える事はその”ドラゴンの涙”を所持する者はドラゴンが敵対感情を呼び起こさずその眼前へ近寄ることが出来、ともすれば友好を交えることが出来る物だ。
それ故そのアイテムともいえる物を手にした者で中にはドラゴンへ接敵する好機と考えドラゴンキラーの称号とそのドラゴンから得られる貴重なドロップ品、牙や外殻、肉に鱗など超レアで高額販売が約束されたも同然の品々を手に入れるチャンスと欲しがる者は多い。
しかしそれだけの品でもあり市場に流通する事も無い幻のアイテムと言っても良いであろう。
もっともドラゴン、龍への攻撃が通じる力、能力が有ればの話であるが。
ではそのドラゴンの涙とはいったい何なのであろう。
「ピョンピョンはそのドラゴンの涙を知っていたがあれは一体何なんだ? 本物の涙が固形化するのか」
知矢はそのアイテムの材質、入手方法が気に成ったが自身が欲しいのではなく単なる興味で知りたい開けであったのだが。
『・・・・・・・・(あれは誰か人族が大昔に名つけたと聞いてます。でも本当はあれは・・・)』
「・・・・・ピョンピョン、俺はいらないや。さっきあのおじいさんがくれると言っていたがまた言い出してもそっと辞退しておく事にするよ」
知矢と従魔は無言で念話を交わしていたが話を聞いていた知矢はその素材、作成方法を聞いて何故かげんなりした顔になっていた。
知矢とニャアラスそして従魔を乗せた魔馬車は強引に同乗して来た老人とともに目的地への道を再び走り始めていた。
御者を勤めるのはニャアラスである。
先ほどよりはるか遠い山の頂辺りには僅かにその片鱗を浮かび上がらせる光の気配、朝日が昇ろうとし始めていた。
真っ暗闇からは僅かに薄暗い程度の暗さになってきたがやはり先ほどまでと同様魔道具の光を周囲に照らしての移動である。
「しかしこの魔道具の明かりはものすごいのう。いったいいくら払えばこれほどの魔道具をそろえられるんじゃ。おぬしたちは余程金持ちのスポンサーを持っているんじゃな。」
その老人は先ほどから周囲を照らす光の魔道具を感心しながら繁々とみていた。
「いえ、実は俺は商売もやってまして。その魔道具商店で売っている商品なんです。しかも店で売っているのは量産品なので一般市民でも最近は購入出来る程度の金額だと評判なんですよ。まあこの魔馬車に装着しているのは非売品ですけど。」
「なんとお主は若いに似合わず商売上手か。しかも量産品とな、と言う事はおぬしの店で作って売っててしかも安価とな。しばらく街に近づいておらんうちに進んだものだな」
その老人は驚く様に呟いて知矢をみていた。
「最近街へ行っていないとっしゃいますがおじいさんはこんな所でいったい何をなさっていたのですか。どこかを目指していたのでは」
「フョッフョッフョ。いや大した目的なんぞないさ。森から森、山から山をうろついて何か珍しい物に出会えないか、面白い出来事は無いか。ただふらついているジジイだ。たまに酒が欲しくなると街へ行くこともあるがそれでもおぬしらが来たラグーンなどの大都市へはもう10年もいっとらんな。わしの用は近くの宿場や村で済むからの。」
その老人は酒を買えれば良いのであってそれ以外に街へ行く用も無いと言っていた。
「ご家族やご親類などは心配しませんか」
「ううん、家族か。そうだな一応こんなわしでも大昔は妻も子もいたことがあった。だが妻は先に逝ってしまった、息子は結婚し孫も出来たがもう何十年と会っていない。ひょっとするともうあやつも孫が出来老人になって逝ってしまったかもしれんの。わしはなこう見えてとっくに100を超えておる。じゃから家族は皆遠い過去の話じゃよ、ヒョッヒョッヒョ」
そう言いながらどこか寂しげな顔を一瞬した老人はそれを隠す様に再びワインをあおるのであった。
「ごめんなさい。余計な事を聞いてしまいましたね」
知矢は初めて自分より年上のこの老人の歳月を思うと自分も寂しさが少しこみあげて詮索が過ぎたかと反省した。
「いや何、気にする事は無い。もう大昔の話じゃ。この20年程は特に話すものもいなかったで久しぶりに昔を思い出させてくれたんじゃ。ありがたいのはこっちだ」
そう言いながら知矢へくしゃくしゃの皺顔で目一杯の笑顔を魅せてくれた。
そんな話をするうちに周囲はだいぶ明るくなって高い木々の上部は陽の光に照らされ始めている。
だがまだ森の木々の下にその明かりが届くのはまだだいぶ先の様子だ。
「トーヤもう少しこの先行った辺りが湖だニャ。水の匂いがして来たニャ」
御者台のニャアラスが鼻を虚空へひくつかせる様にして感じ取ったようだ。
「じゃあもう少しこのまま進んで湖のほとりで朝食にしよう。今の所怪しい気配は感じ無さそうだ。その辺りにキャンプを張って周囲の探索をする事にしよう」
「ニャア!」
しばらく進むとやっと目的の湖が見えてきた。
丁度湖面には朝陽が斜めに照って眩しさで辺りが見えない程だった。
「ニャア、この辺りなら視線も確保できるし丁度開けていて使いやすいニャ」
魔馬車をゆっくり停車させたニャアラスが周囲を見ながら言う。
(ここをキャンプ地とする! なんてセリフを言っても誰も解らんな)などとふと知矢は日本の話題を思い出すのだった。
「ああ、良さそうな場所だ。じゃあここに拠点を設けるか。先ずは魔馬の世話と朝食の準備だな」
そう話しながら荷台を出た知矢は無限倉庫から必要な資材をどんどん出してはニャアラスと手分けをして準備を始めた。
「おお、お主たちはこんな街から離れた場所にキャンプ地を設けると言うのになんじゃあこれは!」
老人は知矢とニャアラスが次から次へと無限倉庫から取り出したテーブルや椅子、調理台に火の魔道具を利用した焼き窯に水の魔道具を利用した洗い場、巨大なテントには中に簡易なベットも置かれ、その施設の周囲にはあらかじめ太い丸太を組んで作ってあった仮の防柵等をどんどん設置していく光景を見ながら口をあんぐりと開け目を丸くしていた。
「・・・最近の若い奴はこんな装備で辺境の森へ出向くのか」
驚きのつぶやきを漏らす老人だ。
「ニャア、トーヤは特別だニャ。だけどこれだけ装備が充実していると街にいるのと変わらない生活が送れるニャ」
ニャアラスは老人に対し自慢げに語っていた。
「おじいさん、直ぐ朝食にするのでこのテーブルに座って飲み物でも飲んで待っていてください」
そう知矢は言うと老人に椅子をすすめ目の前の金属製のコップへ水筒から出したオレンジ色の飲み物を差し出した。
半ば呆然と進められるがままに椅子へ腰かけた老人は思わず出された飲み物をふと口にすると
「ああん、なんじゃこりゃあ、つい飲んじまったが甘いような青臭いような美味しいような不味いような。いったい何を飲ませたんじゃ」
「ああ、すみません、慣れないと飲みにくいかな。
おじいさんは旅暮らしが長いようなので栄養補給に野菜と果物などをミックスした手作りジュースですよ。健康にいいですからワインだけでは無く飲んでみてください」
知矢は老人の体を気遣い野菜やビタミンカロチンなどを効率的に摂取できるよう用意しておいた野菜ジュースを飲ませたのだった。
「こんなものが健康、体にいいだと。ほんに最近の若い奴のやる事はついていけん」
老人はそう言いながらもコクコクと野菜ジュースを飲み干すのだった。
「まあ慣れれば不味くはないが。わしはやはり酒の方が良いの」
「まあそう言わず。朝からお酒は少し遠慮いただいて、なんたって俺やこのニャアラスも依頼中は酒を我慢しているんですから昼間はおじいさんも付き合ってくださいよ。夕食にはお酒を出しますから」
そう言いながら知矢はてきぱきと朝食の準備を終えニャアラスへ声をかけた。
「オーイ、準備で来たぞ」
「ニャア、すぐ行くニャ」
魔馬の世話をしていたニャアラスは食事をしている魔馬の首のあたりをポンポンと軽くたたくと戻って席に着いた。
「昨夜はシチューだったがニャアラスは何が良い」
知矢の目の前にはいろいろな皿や器に入ったすでに出来上がっている食事の数々が並べられていた。
「半分徹夜で少し疲れたからうどんとおにぎりにしとくニャ」
そう言うとどんぶりに入った熱々のうどんを手に取り皿へ盛られたトッピングを何種類かうどんの上へのせると「いただくニャ」とフォークを手に取り食べ始めた。
「おじいさんは何が良いでしょう。彼が食べているのは最近ラグーンで好評販売中の ”うどん”です。食べてみませんか」
知矢はそう言うと器のうどんに揚げた薄切りボア肉や野菜天等をのせ老人の前へ置いた。
「全くおぬしたちと一緒にいると驚くことばかりじゃな。初めて見る料理だが見た目も匂いも良さそうじゃ。頂くとしよう」
そう言うと老人は先に食べ始めているニャアラスを横目で見ながら同じようにつるりつるりとうどんを食べ始めた。
「おお、思った以上にこりゃあ美味いな」そう言いながらどんどん食べる老人。
「良かったらこのお米のおにぎりも併せてどうぞ」
と皿に盛ったおにぎりを目の前へ差し出し知矢もニャアラスも一緒に手を伸ばしどんどん食べ始める。
「ふぁー、いやこんなに夢中で腹いっぱい食事をする等何年振りかの。いやうまかった」
老人は十分に満足した腹をさする様に椅子へと体重をかけ空を見上げる。
「満足いただけて良かった。」
そう言いながら知矢はてきぱきと片付けを始め流しで洗い物を始めるのだった。
ニャアラスは昨夜の戦闘で使った武器の手入れを始めている。
「それでお主たちはこれからどうするんじゃ」
その光景を見ながら老人が尋ねる。
「ニャア、この場所を起点に湖の左右や少し森を奥に入り込んで魔獣や魔物の動きに異変が無いか見て回るニャ。それが依頼だニャ」
「おじいさんは俺達が出ている間このベースキャンプで留守番をしていてください。 おいピョンピョン、おじいさんとお前もここに残っていてくれ。もし仲間の姿を見かけたら情報が無いか聞いてくれると助かる」
『・・・・・(ハーイ了解です。ついでにおじいさんも守ってますね)』
従魔は未だ食事の最中であったが一度顔をあげ手を振りながら答えた。
「ああ、頼むぞ。 おじいさん、そんな訳なのでここを頼みます。お昼頃、そうですねこれから2刻程で一度戻って情報のすり合わせをしたらまた午後も同じように行動します。」
「ああ、じゃあわしはここでのんびり待つとしよう。なあに魔物が襲ってきたら撃退しといてやるから安心しろ」
そう言うと老人は再び椅子へどっしり腰かけ背中を預ける様に休む様だった。
「じゃあニャアラス気を付けてな。何か危険が有ったらとにかく逃げてこようと思う。この一帯は深入りは禁物だ。まあ最悪困ったら・・・」
「森の仲介者様に助けを求めるニャ」ニャアラスは半ば自虐的に苦笑いをする。
「まあそれが間違いないがなるべく迷惑をかけない様にするつもりだがな。だがどうしても情報がつかめない場合は話だけでも聞かせてもらおうと思う。とにかく昼に一度戻ろう。じゃあまた後でな」
「了解だ、任せるニャ」
そう言い合い互いの拳をぶつけ合うとそれぞれ反対方向へ湖の縁を駆けだしていった。
「おお速いの速いのお前の主達は。もう見えなくなっちまった」
老人は半分寝ころびながら二人が駆けだした方を代わる代わる見ながら従魔へと話しかける。
『・・・・(だってご主人様ですから)』嬉しそうに返す従魔であった。
「そうかそうか良い主と巡り合えて良かったの。じゃがさっき言っていた森の仲介者とは・・・お前の王の事かもしかすると」
『・・・(そうですよ。良く知ってますねおじいさん・・・・えっ言葉聴こえるの?契約者じゃないのに????)』
「はっはっはー。長く生きとると色々器用になるんじゃて。そうか森の王と知古か・・・益々興味深い若者じゃなフォッフォッフォ」
まだ太陽は昇りきったばかりの朝靄がゆっくり湖面を包む光景の中を走る冒険者の二人。
この森でいったい何が起きているのか。それとも気のせいであるのか。
それを早く調べる為二人は全力で走りながら周囲の様子を窺い異変を探すのであった。
昨夜の更新あとがきで週末に長命寺の桜餅を買いに
と記載いたしました。
日曜、雪マークなのですが・・・・・ば、バイクは無理かな・・・




