表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

158/257

第157話 報奨と贈答品  ~ 「これは!トーヤ様へ相談しなければ!」

今日は珍しく日曜投稿です。

では早速

第157話どうぞ






 パサッとデスクに読み終えた手紙を置いた知矢は 「う~ん、まあこんなものだな」

と半ばあきらめ気味ながら仕方がないと思いつつ椅子に大きくもたれながら背を反り返し両手を後方へ伸ばしながらコリを解した。



 「あまり期待通りの回答ではありませんでしたか」

 デスクの前へ控える知矢の使用人筆頭、総支配人のリラレットが様子を窺がう。



 「期待と言うより本当の意味での真相が結局何もわからない。仕方のない部分ではあるが一応命を狙われた者としてはもう少しすっきりとしておきたかったが。まあそうなるとルドマリッドの本拠地へ殴り込みでもかけて口を割らせるしかなくなる。ここいらで我慢しておくか。」




 先日知矢の店を訪れた男による毒物を使った知矢殺人未遂事件。


 知矢の使用人たちの手によって犯人も確保し関係していたと思われる者達も騎士団により捕縛され関係先の家宅捜索、証拠品の押収そして尋問も終えその結果を知矢へと報告の為書面を届けたのはこの都市の管理貴族アンコール伯爵であった。



 しかし実行犯は 「この国を貶める害虫を駆除せよとの天命である」 と訳の分からない事しか語らず拷問や魔道具を行使した如何なる尋問にもそれ以外答えようとしなかった。



 そして実行役の行動を監視していた男が駆けこんだドミワ商会における捜索では数々のルドマリッドとのつながりを示す証拠が押収されたが肝心の商会長は 「共和国など何も知らない。帝国の正規の商売をを邪魔する極悪人へ正義の鉄槌を下しただけだ」 とこちらもどんな手を尽くしても白状しないと記載されていた。




 鑑定魔法の行使でスパイや協力者である事は判明しているが彼の者達には何か魔法でその思考や発言を制限され一方的な疑似記憶の様なものを植え付けられているのではないか、と推測する事しかできなかった。



 念のため帝国本都へ移送し詳細な取り調べを今後も続けると記載してあったが知矢は多くを期待する事など出来そうにないと諦めている。



 しかしアンコール伯爵より知矢の立場を害したり利する事の無いよう十分念を押し書き送ると書かれていた。


 知矢にとってはのんびりした老後が送れればそれだけで満足であるし知矢の情報があまり拡散されることも好ましいと思わないがアンコールに出来るせめてもフォローなのだろうと受け入れるのだった。



 そして併せて公式の詫び状がアンコール伯爵、オースティン騎士伯の連名で届き帝国内に侵入した犯人を今まで自由にした事とその者達が知矢への襲撃を行った事実に対する帝国政府よりの補償金の支払い通知が示されていた。


 こちらは一般的な内容で貴族位及びその関係者が政治的な思惑により攻撃の対象とされた場合の規則に準じ ”大金貨1枚 1000万イエン”が支払われる。


 この補償金は後日帝国政府によってルドマリッド人民共和国政府へ請求される言わば肩代わりの態勢をとっており過去に請求された者は積りに積り天文学的な金額らしい。


 だが当然ルドマリッドは一切の言払いを拒否し逆に罪をなすりつけられたと損害賠償を請求してくる始末であった。


 帝国政府は戦争終結時に何としても集金するつもりであるがそれがいつの日かは誰も知らない。


 さらにその書面にはオースティン騎士伯家とし公式の詫び状と共に 賠償金として ”青金貨1枚 1億イエン”を支払うと記載されていた。


 知矢としては特に賠償を求める気も無かった。口頭での支払いを約す話が合った時もその場で辞退を伝えてあった。

 しかし公の手続き上、帝国政府としては受け取ってもらわねば困るし他の先例になってしまうと他の者へ影響するとアンコール伯爵からも願われたためそちらは受け取る事を承諾した。


 しかしオースティン騎士伯からの賠償金はかたくなに拒否を示したがこちらも

 「本物の当家の公印を使用し行われた犯罪に対し当家が何も賠償しなかったでは貴族位を持つ者として立ち行かなくなる」との懇願により仕方が無く受け入れる事とした。



 「リラレット、打ち合わせ通り賠償金が支払われた後直ぐに同額以上の価値がある各種魔道具やマジックバックを両家へ贈答品として送るよう手配を頼む」


 「ハイ畏まりました」


 知矢は個人的な考えではあるが納得できないが立場と言われては彼らの行動を無下にするわけにもいかないが同額の価値以上の物を送る事でそれらを心の中で打ち消す事で自分を納得させることにした。




 「さて最近きな臭い事ばかりで気がめいるな。他に何か良い話は無いのかリラレット」


 知矢はこれ以上政治的な話を嫌い話を閉じた。そこでリラレットにそれ以外の話題を求めるのだった。


 「はい、ご報告いたしたいことがいくつかございますが知矢さまのお気になさっている事の一つに付報告が来ております」

 リラレットは知矢の気分を変える為温めて機会を逸していた話を繰り出した。


 「実はスライムの件で思いもよらぬ成果が少し見られると報告されております」


 「おお、最近忘れていた。そうだなそれもあったな。どんな成果なんだ」

 知矢は渋い顔をして椅子にもたれかかっていたのを跳ねる様にデスクへ姿勢を戻し食い入る様にリラレットへ続きを即す。


 「はい、正直未だ多くはありませんが」と成果の状態がそう大きく無い事を先に示して

 「飼っている個体の中である一定の者が積極的に汚れと我々が認識する場所や物へ移動をし綺麗になったと思うとまた別の汚れている箇所を探す様に移動を繰り返す様子が確認されております。」




 知矢は自分が快適な生活を送れるようにと風呂やその他の施設の拡充に努めていた。

 一般にはこの世界で風呂へ入る習慣が少なく殆どの一般人や貴族でも湯あみと称し魔法で加熱した水を利用し体を拭く程度が主流であった。


 確かに風呂の文化は存在するが水くみ、湯沸かし、排水処理などを考えると高位貴族でも毎日利用する事は無かった。


 しかし知矢とそれに日本からの転生者であるサーヤにとって風呂は欠かせぬものである。


 サーヤは男爵家に転生したがやはり風呂を日常的に使用する事はかなわなかった。それが知矢と出会い水やお湯の魔道具が存在し知矢の知識で排水浄化設備も構築した事で知矢の店では使用人に至るまで毎日風呂へ入ることが出来る様になった。



 そして知矢が得られた豊富な資金の還元の一環として公衆浴場の建設や各家庭でもっと水やお湯を安易に使える様に魔道具を安く普及させるつもりでいたがネックだったのが排水の処理方法であった。



 確かに知矢の商店では高高度排水処理システムを構築し真水と変わらぬ状態にまでした綺麗な排水を浸透井戸に流し処理をしているがそれを公共浴場や各家庭などの分まで処理する規模とその維持管理のノウハウも無くそもそもそれを構築、建築するのも容易い事では無かった。



 知矢の中に閃いたのが以前から異世界小説での定番、”スライムによる排水の浄化” であった。



 しかしその事をこの世界の者へ聞いてみても誰一人スライムが汚れを分解する? スライムは湿地にいる無害な魔物で食べる事も出来ない代わりに危害を加えたり毒を持つ者なども確認されていない何も役にも立たない生き物。

 そう定義されていたのだった。



 それを確認すべく知矢は以前東の大森林近くの湿地や湖に多く生息していると言われるスライムを大量に捕獲し持ち帰って使用人へ排水処理の行動をするのか実験観察をさせていたのだ。



 「そうか成果が出始めたか」知矢は良い報告だと素直に喜んだ。


 「はい、ですがまだまだ飼育と観察を暫く続けてデータを集めるとサーヤさんが言っておりますので取り敢えずの経過報告になります」


 知矢はそれでも可能性が有るのであれば続ける価値が十二分にあると考え継続を指示した。



 「それと次にですが。デミス教のラグーン教会より孤児院を退院し当家へ就職を希望する者の人数と日程が決まったとのお手紙が届いておりました。こちらは私の方で進めるべく受け入れ準備を始め来週以降に第1弾として2施設より併せて42名を採用する事に致しました。その後教育訓練時間を置き各役へ配置を致します」


 「それも楽しみだ。皆の負担が少しでも軽くなると言いな」

 知矢は自分が次から次へと色々な事を思い付きで実行したり事業を展開し使用人たちの生活基盤の整備と併せこの都市や国の生活水準の向上や文化の促進などを考えていた。


 ただもっともその根幹は知矢ののんびりとした老後を送る為に快適な生活を欲しての事ではあったのだが。


 だがそれにより手を広げ過ぎるとサーヤから厳しい指摘を受けさらに帝国皇帝より下賜された館が放置されていることを問題視されたことを受け新たに開こうと思っていた料理屋。 ”定食屋” の開業を延期し使用人が増えるまで大人しくしている事にしたのだった。


 だが結局今の所ルドマリッドによる殺人未遂や潜入者の洗い出しの為新たに考えだした魔道具三種、 ”ガラスを作る魔道具” ”魔法陣を刻む魔道具”  高圧力処理で強化ガラスを作る ”高圧縮の魔道具”、を活用し侵入者の判別を簡易的に鑑定する魔道具を作り出したことでその生産に追われる事となった。



 これは当面ある一定数を作り上げれば事態が安定するのだが今は絶賛増産中だ。ある程度数が生産出来次第アンコール伯爵へ納品され帝国帝都へ送られそこから必要な個所への分配が行われていた。


 そのれに人員を割いている為余録は殆ど無い状態であった。


 それに加え先ほど話に出た下賜された屋敷の件も進めなければならず今後も使用人の確保が先決である。



 そんな話をリラレットの報告を受けながら協議していると執務室のドアをノックするものがいた。


 「ミミです入ってもよろしいでしょうか」

 知矢が入室を許可するとメイド服姿のミミが入室し深々と頭を下げたのち報告する。


 「只今奴隷商会の商館長のザイード様のお手紙を持った商会員の方がおいでになりこれを」とリラレットへ手紙を渡し受け取ったリラレットはきちんとその差出人や封じを確認した後知矢へと差しだした。


 「・・・・・」知矢は黙って開封した手紙を読むと少し考え込んだのち

 「ザイードが何か困った事があり是非相談に乗って欲しいとの事だ。ミミ、使いの者に数刻内に伺うと伝えてくれ。ああ、あとお駄賃も忘れずにな」


 「畏まりましたご主人様」

 知矢の指示を聞いたミミは踵を返し部屋を出て行った。


 「何でございましょう」

 リラレットはまた何か知矢へ面倒が振りかぶることを警戒していた。


 「簡単に言うと、いま手元にいる奴隷たちが何かおかしい。そしてその奴隷だけでなく過去に扱ったルドマリッド系の奴隷に共通する不審な点があり俺にそれを鑑定してほしいと言う依頼だ。勿論依頼として正式に支払いを起こすとも書いてある。

 受ける義務は無さそうに聞こえるがどうも気になる点は俺も感じていた。いい機会だから行ってくる。後は頼んだ」


 「了解いたしました。ですが知矢様出来ますなら警護の者を一人なりお連れ頂きたくお願いいたします」

 リラレットは主が言い出すことを不用意に否定はしないが心配をする。

 知矢のただのAランク冒険者以上の力が備わっている事は十分に理解していたがそれでも心配は心配なのだ。


 「リラレットは心配性だな。まあ誰か連れて行けばお前の気が休まるなら言う事を聞こうじゃないか。丁度下にボンタとニャアラスがいるから彼らに警護依頼を正式に出して先に依頼料を支払っておいてくれ。俺は準備が出来次第下へ降りる。」


 知矢の返答に安心したリラレットは「余計な申し出申し訳ありません」と頭を下げ部屋を出て行った。



 (さて、気に成る点か・・・。)

 知矢は準備をしながら思い起こすことがあった。


 以前南の工作員の仲間として帝国へ潜入し知矢とニャアラスによって亡命へ意思を変じた二人の女性。

 彼女たちを都市へ連れ戻ったの後日の事である。

 食堂で夕食後のデザートに驚喜していた二人がぼそりと呟いた話があった。


 「なんかさ初めてパンケーキを食べた時にすっごい感動が溢れてきてさそれと同時に何かモヤモヤした感情って言うか思考、頭の中が霧に覆われていたのがパーッと晴れ渡った様な気がしたんだよね」

 のちに語ったコルサミルの言葉であった。


 「ああそれ何かわかる。私もそうデザートを食べてて夢中だったけど食べ終えた後お腹は苦しいんだけど何かすっごい気分爽快になったんだよね。美味しいデザートって気持ちもすっきり晴れ渡るんだね」


 とのんきにしゃべっていた時知矢はある可能性を感じていた。


 事前からルドマリッドの移民者や亡命者それに捕らえられた戦争捕虜など全ての者達がどんなに再教育をしても話をしてもかたくなな意識を持ち続けている。という事実であった。


 その話を聞いたときはさして考えもしなかったがコルサミル達の話を聞いたとき (深層意識に何か処理されているのか?)などと洗脳の可能性を考えたのであった。


 その後そう言った話を考え実行する時間的余裕も無くトラブルに見舞われていた事もあり失念していたのだった。



 そして今日ザイードからの手紙を読んだ時その事を思い出し調べてみたくなったのであった。





 「おうトーヤ依頼ありがとうニャ。ばっちり警護してやるニャ」

 階下で準備万端、知矢を待っていたニャアラスが機嫌よく出迎えた。


 「兄貴、あっしも依頼として依頼料を貰いましたが良いんすか?あっしはその資格があるっすかね」

 ボンタは少し戸惑う様にリラレットから受け取った報酬を気にする。


 「二人ともすまないな。暫く俺の警護についてくれ。ボンタ、お前も冒険者なんだ。正式な依頼としてギルドにも通知してある。ギルドポイントにも加算されるんだ頑張ってくれよ」


 そう言って知矢は魔道具商店の裏玄関から使用人たちに見送られながら出かけるのであった。


 「兄貴! 了解っす!」

 慌てて知矢を追うボンタは知矢がギルドポイントを稼ぐ機会まで与えて報酬もキッチリ払ってくれたことに感激しながら仕事をきっちりこなすと心に決め知矢とニャアラスに付いて行くのであった。




 目的地は ”ラグーン奴隷取引商会” である。





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ