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第151話 閑話  ~ 「俺のバイクはどうなったかな・・・ごめんなH2SXSE+」

こんばんは

今夜は閑話です

では第151話どうぞ。





 ここは異世界ではなく、知矢が暮らしていた元の世界、日本の関東地方の地方都市近辺の片田舎。




 時は203◎年、近年急速に普及したEV式自動二輪車が不快なモーター音を巻きちらしながら街を疾走している。


 周囲を走る車やトラック、バスなども今ではすっかり化石燃料動力から水素エンジンや電気モーターへと取って代わられ唸りを上げて走りガソリンを補給する方式の乗り物は過去の産物となっていた。


 現存するエンジン式車両は中古市場でしか購入できず新車は全て化石燃料を一切使用しない代替え動力のみである。


 そんな時代を知矢は観る事も無く異世界へと転移し知矢のバイクのみがこの世界へ置き去りとなっていた。


(このくだり必要か?)





今はそんな時代がすぐ目前に迫る2021年である。




 ここは知矢の自宅。


 駐車場を入り狭い裏庭へ回り込む途中に木造の小屋があった。


 この建物は知矢がDIYで制作したガレージ。



      自称 ”秘密基地”である。




 ここに知矢はバイクを収納しその脇にテーブルと椅子を置き休みの日や夜な夜なを過ごすのが好きだった。


 時にバイクを眺めたりバイク雑誌を読みながら酒を飲んだり、壁には一面各種工具類が常備され色々工作などもする場所だった。



 知矢がバイク事故で無くなり荼毘に付された後、同時に破損したバイクも九州より輸送され帰宅していた。



 電装系や外装が破損していたが駆動部分は何とか稼働した為、エンジンはかからないが取りあえず知矢の大事にしていた思い出の品だからとガレージへ入れようと家族で相談したが、ここで問題が出た。



 工作好き、凝り性の知矢はその出入り口をにも如何いかんなくその技術を発揮し知らぬものが見るとただの壁、木製の外壁にしか見えないその扉だったが特殊な操作をする事で開閉できる、いやそれでしか開閉できない構造だった。




 「母さん、これどうやって開くんだ」

 知矢の息子は訊ねえる。



 「私が知るわけがありませんよ」

 ガレージの前に佇みながら呆れるように答える。



 「夫婦だろ、知らないってなんでよ」



 「ここはお父さんしか出入りしてなかったろう。私はたまにひょこっりあの人が何やっているか覗く程度さ。それよりあんたも父さん譲りのバイク乗りじゃないか解らないのかい」



 「いやバイクと関係ないし、しかも俺もう乗ってないし」





 ガレージの扉を開けようにもドアノブやヒンジも見当たらず取っ手も無ければ開閉スイッチも無いまさに壁があるだけであった。


 どうするかと呆然とする妻と息子であった。



 「破壊するか!」


 「お前バカだね壊したら閉まらなくなるだろ。なんでお前は父さんと違って力技なのかね」


 「ひどいな母さん。俺も今じゃ一端のエンジニアだぜ。まあ最近前戦から離れているけど」



 そんな問答を繰り返しながら母子は壁のあちこちを押したり引いたり叩いたり時には呪文を唱えたりと見る人が見ると漫才の様であった。



 二人がそろそろ諦め始めた頃であった。



 「パパとばーば、何をしているの。壊したらじいじに怒られるよ」


 知矢の孫が庭で繰り広げられている漫才に気が付き家から出てきた。



 「ああいちごちゃんおはよう。壊しているのではないのよ。どうやったらこの扉を開けられるか色々考えてるのよ」



 「ばーばおはようございます。えっ、知らないのパパたち?」

 知矢の孫は驚く様なあきれ顔だった。



 「そうりゃそうさ。ここはじーじの秘密基地だろ。だから開け方も秘密だったのさ。さてどうするかね。鍵を開ける業社でも呼ぶかい」



 「えーっ私知ってるわよ」

 知矢の孫が衝撃の事実を口にした。



 「何だっていちごお前本当に知っているのか」

 知矢の息子は娘へと迫る。



 「うん。だっていつもじーじと工作したり本を読んだりおかし食べたりしていたもの知っているわ。でもじーじからは 『決して一人で入ってはいけないよ。わしが一緒の時以外決して開けてはダメだ。約束だぞ。開け方も秘密だ』 て言われてたからじーじがお空へ行っちゃったから入っていないわ」



 知矢の妻は脱力してしまった。


 「そういや二人して時折ごそごそ隠れて何かやってたわね。 まあ良いわ。いちごちゃん済まないけど開け方を教えてくれるかい」

 そう言いながら孫の前に腰を下ろす妻がだ



 「ばーばそれがね、教えられないの。じーじとの約束なの。 『もしどうしてもばーば達が中に用があって開けようとしても開け方を教えちゃいけないよ』 っていう約束もしたのよ」



 「いちご、もうじいさんはいないんだ。その約束はもう無効さ。さあ教えてくれ」

 知矢の息子が迫るが孫は決して教えようとはしなかった。



 困り果てた妻と息子。すると息子の嫁が後ろでその様子を窺がっていたのだが口を開いた。



 「じゃあ、いちごちゃん。こうしたらどうかしら。」

 知矢の息子の妻は娘へ優しく解決案を提示する。


 「なあにママ」



 「いちごちゃん以外の誰も開けるところを見ないのよ。開け方はいちごちゃんとじーじの秘密。

 だからみんながお家に入って隠れているわ。その間にあけてくれる。そうしないとほら、このじーじの大事なバイクを仕舞う事も出来ないわ」



 優しく諭すように話す母親のその目を見つめていた孫はしばし考えた後。


 「うん、わかったわ。開け方はないしょだけれどなかにはいるのはだいじょうぶよ。じゃあばーば、パパそれにママもお家に入っていてね。あけたらおしえるわ」



 家族が家の中へ入った事を入念に確認した知矢の孫は扉の前へ近づくと各所を色々操作したり引いたり知矢に教えてもらったギミックを正確に操作するのだった。




 「あなた! だめよこっそり覗こうとしては」

 知矢の息子は窓の陰に隠れて娘が行おうとする行為を密かに確認しようとして妻から注意を受けていた。



 「いやだが知っておかないといざという時困るだろう」



 「何を言ってるんだいお前はあそこにいざ急に必要な物など無いさ。お前はそんな事だからあの子からの信用が低いんだよ。」

 母にまでダメ押しをされ仕方が無く引き下がる知矢の息子であった。



 「ええと次はここをおしながらあっちをまわして、そのあとはここをひくと・・・!


  あいた! ママ、ばーばあいたわよ秘密基地の扉」




 知矢の孫が知矢から教えられていた操作方法を正確に覚えていた孫が重い扉をその小さな体で押し開けながら家族へ報告するのだった。




 「まあ、このの中ってこんな風になっていたのね」

 知矢の息子の嫁は娘がスイッチを入れ煌々と明かりがともされた小屋の中を見回しながら驚きの声を上げた。



 「全くよくこんなものを作ったなオヤジは。でも懐かしい物も飾ってあるな」

 知矢の息子は壁一面に作られた棚を見たりしながら何が置いてあるのか興味津々だ。



 「お母さま、どうしました」

 知矢の妻は皆が周囲を観察している中でじっと一箇所、壁を見つめていた。



 そこには知矢が写したであろう家族の写真やバイクの写真、弓術会の弟子と撮った写真、そしてセピア色に成ってはいるもののいまだ綺麗に映っている大学時代の写真などが一面に張り出されていた。



 「あらこれ全部お父様のお写真ですね。凄いわ、時代時代の写真が全部飾ってあるみたい。っていうかお母さま、お父さんの若い頃って!!!」


 「ああそれな。俺も驚いたわ。この写真があんなに変わるんだってね」


 「私と結婚したころはほれ、こんな感じでさまだ若い頃の面影が強く残ってたさ。全く騙されたね」


 知矢の高校、大学の頃の写真を見ながら大人たちは言いたい放題であった。



 「でもねママ、いちごの写真はあんまりないの」

 知矢の孫が苦情を訴えた。


 「あらそんな事は無いわ。ほらこの辺りは全部いちごちゃんよ。可愛いわね」

 知矢の息子の嫁は娘へその写真群を指し示す。



 「でもそれはんぶんいじょうわたしじゃないわ。よくみてよそのあかちゃんおとこのこよ」

 そう言って一枚の写真を指さす孫。



 そこには裸ん坊の男の子の赤ちゃんが満面の笑みで口には何か食べている最中の様で緑色の物体を付けて微笑んでいた。

 


 「ハハハッ。いちごちゃんこの男の赤ちゃんはいちごちゃんも良く知っている人だよ」

 知矢の妻は懐かしそうにその写真を見ながら説明する。



 「ええっわたしそのこしらないわ。それにこのあかちゃんずいぶん大きいのね。いすからはみだしてるくらいおおきいわ」


 「・・・いちご」


 「何パパ」


 「その赤ちゃん、パパだ」


 「うわーワハハハハッ。パパなんだワハハハハ」


 「そんなに笑うなよわっはっはっはー」



 

 こうして知矢のバイクは元の住まいである知矢が作った秘密基地へと格納されたのであった。









 後年





 Bu-n、Buuuuun、Kyurukyurukyuru-


 街にスーパーチャージャーのインペラ音がこだまする。




 「あっあの音は。来た来た・おーいいちご!」



 そう叫びながら走ってくるバイクへ手を振る女子高生。

 その子の前に颯爽と停止した大型バイク。



 フルフェイスヘルメットのミラーシールドをガシャリと跳ね上げ覗かせた顔。

 「おっはよー寒いね」



 「寒いのに相変わらずのバイク通学とは恐れ入るよあんたには」

 友人と思しきその女子はシールドから聞こえる声にこたえながら言う。

 


 「あははは、でも電車で来ると2時間はかかるのよ。この子なら30分で来るわ」



 バイクで現れた声の主。

 そう知矢の孫である女の子である。



 知矢がこの世から消え失せ既に10年以上の月日が過ぎた。

 残された知矢の愛機、H2SXSE+はその歳月を知矢の秘密基地でひっそりと過ごしていた。



 しかし知矢の孫の熱い情熱と祖父への想いから親と祖母を説得。

 

 知り合いの手を借りすでに生産が終了していたこのバイクを復活させていたのだった。



 小柄な女の子は普通自動二輪の取得も困難を極めたそうだが無事免許を手に入れそく大型へ挑戦。

 艱難辛苦を乗り越えて夢の大型自動二輪免許を手にしたのであった。



 これより先に女の子は地方都市の進学校へ入学していた。

 実はこの高校は知矢の母校であり知矢も2時間かけて通学していたのだった。



 知矢の生家と女の子の住まいは全く別方向であったが奇しくも通学時間は同様であった。



 私鉄の駅まで歩いて15分、電車で10分乗り換えのJRまで歩いて15分、さらにそこから電車で30分乗り換えてまた電車で7分、最後は駅から歩いて10分程だ。結局なんだかんだと2時間の通学に成る。


 バイクだと女の子の自宅からR16を快走し産業道路経由で公称45分。だが何故か女の子は30分で到着する。




 「それは知ってるけどさ。しっかし良くもまあこんな重くて大きな古いバイクに乗るよね。

 今Yamahaから可愛いEVスクーター出てんじゃん。私さアレ欲しいんだよね。いちごもあれにしようよ」


 

 「何言ってんの!! いい、良くお聞き!

 このバイクはね



 KAWASAKIの世界に誇るスーパーチャージャーエンジン搭載!

 ナント!驚異の200馬力を唸り出すスーパーマシーンでその最高速度は299km/hのスーパーツーリングSSなんだよ!


 更にそのお値段!本体価格2,827,000円、そしてパニアケースも装備、しかもトリックスターのスリップオンマフラー(チタンカラー)にステップはBEET工業のアルミバックステップ、その他諸々で300万(※2019年発売当時の価格です消費税は含まれません)



 と言う高性能高スペックのスーパーマシーンなのよ。


 私はこれで今年の夏は九州ツーリングに行くんだから。毎日が特訓よ! 」





 「ハイハイ、その説明100万回聞いたし。おじいちゃんの形見だからってのも解るけどさ。まあ良いわ。でも気を付けてね事故なんか起こさないでよ」



 「了解了解! 安全運転、安全運転。 事故起こしたら学園長が 『免許を取り上げます!』 って約束だからね気を付けるよ」



 「そういえばあんた。だいたいこの進学校でバイク通学の許可どうやって取ったのよ」


 「・・・・えへへへ。 おじいちゃんがここのOBで OB会役員だったし、参与役員もやってて、校長先生はおじいちゃんの後輩だし、おばあちゃんも色々話を付けてくれた・・・えへっ」



 悪びれる風も無く笑いながら告げる女の子であったが同級生は驚愕していた。

 (あんたの家どんだけ政治力持ってんのよ・・・さすが有名企業の会長の孫)





 かくして知矢の孫は毎日の通学を利用し知矢の形見ともいえるこのバイクを日夜乗りこなすべく練習に励むのであった。




  「絶対行くぞ九州! 待っててねじーじ!」




 この熱い思いを胸に女の子は毎日を元気に楽しくそして懸命に生きるのであった。











 そして女の子は知らない。

 いつもどこかに女の子を見守る多くの存在がいる事を。


  『ワッフ!』 『キッキッ』 『ニャア』 『パオーン!』?? 



最高神 「異世界へ持って行ってほしいと言う願いはどうなるんじゃ?」



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[一言] アイエエエエ!?象!?ぞうナンデ!?
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