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第150話 真実と心の中 ~「兄貴!あのおまたあっしが呼ばれてないんすが・・・」

こんばんは

週明けて月曜日。皆様ご機嫌は如何でしょうか。

では第150話 どうぞ





 今夜は知り合ったばかりのEランク冒険者グループのガンツ一行の討伐成功とその一員である魔法使いのマジコのランクアップを祝い知矢は自宅へ招いて盛大な宴を催した。




 知矢の家へ到着後風呂へ入った一行は緊張した面持ちのまま宴席に着いたがその後もしばらくは硬い表情のまま出される食事に舌包みを打ちながらも驚愕と満面の笑みを交互に繰り返していた。



 しばらく後酒が廻って場にも慣れたのかガンツが知矢へ色々問いだした。



 「美味い!! 美味いぞトーヤ。何だかわからない料理が次から次へと出てくるが兎に角美味い!

 お前はいったい何者だ。こんな料理上級貴族だって口にする事は一生無いぞ」



 上級貴族である子爵家に生まれ育ったガンツは知矢へ酔いも加わり知矢の正体を問うのだった。



 「何を言っているガンツ。確かにお前の言う通り世間では高価な食材もあるがそれは俺やニャアラスが自力で狩って来たものだし他の料理の材料だって手に入れようと思えばできる物ばかりだ。

 ただ調理の方法や使い方をいろいろ工夫してるだけだぞ」



 知矢は平然と答えるがその話を傍で聞いているニーナは

 (おおよそそうなんですけど。トーヤ君の知識が無いと決してこの国では出来ない料理ばかりなんですけどね)


 ニーナは最近ほぼ毎日と言って良いほど二日と開けずに知矢の家で食事をとっている。

 実はニャアラスも同様であった。



 そのおかげで毎回美味しい物が食べられるのだがその料理に慣れてしまいこれが如何に普通の状況では無い事を失念してしまう事が多かった。


 ガンツの話を聞いて改めて考える。


 (この食事もですけどトーヤ君て本当に何者なのでしょうね。以前聞いたときは



 『私は只の平民です。ニーナさんの名も知らない地方からこの国へやってきた。それだけです』



 って言ってましたが・・・)



 ニーナは先ごろラグーン城にて行われた知矢の功績を叙する式典やその後開催されたパーティー、そして帰路の途中での話などを思い起こしていた。


 (イラ・カリット・ドゥ教国の高司祭とか、よその大国の皇子だったりなんて話は否定してましたしね)



 ニーナは純粋に知矢と接し言っている事に嘘は無いと確信的に感じていた。

 だがそれでもなお知矢が何かを隠している事も同時に感じていた。



 しかしそれが何かは解らないが決して悪い行いを隠しているのではなく理解し得ない秘密を持っているのではと思うがその心の奥まで知り得なかった。




 「そう言われりゃそうだが・・・確かにそうだな。グレートボアにしたってその気になれば大森林まで行かなくても手に入るか」

 ガンツは何となく納得した様であった。



 「グレートボアを討伐依頼するだけでいくらかかるか・・・」

 ぼそりとマジコが呟く。



 「そうですね。依頼料として中金貨8枚から大金貨1枚は必要かもしれません」

 マリノスは冷静に答える。



 「やっぱり普通じゃねえな。まっもっとも Aランク冒険者のお前とBランク冒険者のニャアラスさんが組めば可能って事か。 俺達のチームがその域に達するのはいつかな」


 ガンツの言葉にマリノスとマジコは言葉が無い。



 今朝までは


 『俺は小僧じゃねえ冒険者ギルドEランク、直ぐにAランクへなる男。ガンツ様だ!』


と粋がっていたが今日一日、知矢の指導で依頼を完遂してみると良く分かる、いかに自分たちが未熟だったかと言う事に。そして過去の発言が恥ずかしくなった訳だ。



 確かに知矢は少し戦い方や索敵のアドバイスをしたがそれ程彼らが劣る冒険者とは思っていなかった。

 一番の問題はガンツの命大事がチームの足を引っ張る要因になっていた事である。

 これは今後も冒険者として生きていくなら致命的である。その辺りが気になった知矢だったので思い切って訊ねてみた。



 「なあガンツ。もう俺が鑑定の魔法を使えることは話したがそれによると」


 「ああ、見ての通りだ。俺は子爵家の息子だ。


 もっとも恥じかきっ子、継承権も無ければ分家するのも難しい立場だ。親父は騎士団へ入れようと思っていたみたいだがそれならと憧れていた冒険者になってやるって黙って家を抜けてきた。


 まあ書置きはしてきたから行方不明何て子爵のメンツもあるから捜索なんてしてないだろうから自由なもんさ」


 あっけらかんと認めるガンツだった。



 「そうかじゃあお前はこの先も冒険者として生きていく覚悟なんだな」


 「ああ勿論だ。その為に家名を捨てた、今はただのガンツ様だ!」


 とのたまうガンツだったが知矢はちらりとマリノスとマジコを見るといささかその表情は硬い。


 ひょっとしたらいつか子爵家へ帰参するのでは、冒険者を諦めてくれるのではないかと思っているのかもしれない。


 しかしそれを指摘する立場に知矢はいない。言うとするとやはりマリノス達も本当に冒険者として生きていくなら主従では無く本当のチームとして戦い方を考える必要があると言う事だった。


 その事を指摘するか言葉を選んでいた知矢だったが



 「ガンツは本気だってのは解ったニャ。でもお前らはどうなんニャ? にゃんだかチームの仲間っていうよりお付きの使用人みたいだニャ」



 野生の感だろうか。それとも長年冒険者を見て育てて来た者が感じる特有のものなのか。ニャアラスは鑑定魔法など行使できないはずだが見事にマリノスとマジコの立場を言い当てた。



 「「 !!・・・」」


 一瞬驚いて顔を上げた二人であったがニャアラスの指摘に言葉が出ない。

 やはり未だ子爵家に勤める事に対し迷いと未練があったのであろうか。それとも純粋にガンツの身と将来を心配してなのか。



 「えっニャアラスさんも鑑定魔法使えるんですか」

 ガンツは驚いてニャアラスを見る。



 「にゃんだやっぱり当たりか。俺は鑑定魔法なんか使えないニャ。匂いと見てたら解るニャ」

 少し得意そうに穴をひくつかせ尻尾をふりふり上機嫌で酔う。



 「参ったな。高ランク者ってのはそんなに凄いんですね。」


 Aランクとはいえ歳も近い知矢と異なりニャアラスは見た目も歴戦の冒険者だ。今朝までのガンツならタメ口を聞いたかもしれないがその鼻っ面を既に折られている。目上の者に素直になっていた。



 「ご指摘の通りです。こいつらは元々俺のおやじの使用人の子たちでした。俺の子供の頃からの付き合いで兄貴の様な友達の様にずっと育ってきたんです。 俺が内緒で家を出て冒険者に成るって言ったら 『自分たちも付いて行きます。冒険者になって一旗揚げましょう』 って言ってくれてそれ以来チームを組んでるんです。


 だから今は使用人では無く。仲間です、チームなんです。なっマジコ!」



 ガンツは経緯を話しマジコへ同意を求めたが急に聞かれたマジコは一瞬躊躇したが 『エエ、そう。』とだけ答える。



 「・・・・・・・・」



 辺りに急な静寂が訪れた。



 知矢の使用人たちは相変わらず楽しそうに食事をしていたが知矢のテーブル。ニャアラス、ニーナ、リラレットを始めガンツ達ゲストが集うこの場がまるで時間が一瞬止まったかのように静まり返った。



 (ガンツが彼女たちの気持ちを察したか)知矢はさてどうすると思っていると



 「お前ら・・・ひょとして後悔しているのか。俺と冒険者になった事を」


 ガンツは微かにうつむきながら何かにすがるような目を二人へ向けた。


 「後悔なんて、なあマジコ」マリノスは少し慌てたように隣へ座るマジコへ同意を求めた。



 「今は少しだけ後悔しています。」

 マジコは衝撃的な告白をぼそりと告げた。


 「何を言っているんだ君は!」焦るマリノス



 「昨日まではもっと、もっと凄く後悔してました。ですが今日・・・ランクアップをしてみて ”ああ付いてきてよかった” と本当に思いました。 だから少しだけ後悔しています」


 マジコは正直な思いを告げた。


 「でもやはり少し後悔しているのか」


 ガンツは勢いを無くしまるで少年がしょげているように見える。


 産まれてから一緒に過ごし主従と言うより友人と思い心を許してきたつもりの仲間が後悔していると言うのだ、ショックだった。



 「でもガンツ様。もっともっと冒険をしましょう。そうすれば私の中の後悔は無くなり希望に満ち溢れる様になると思う。」

 マジコは顔を上げガンツを見つめながら決心を正直に告げた。


 「マジコ・・・」

 ガンツも顔を上げマジコを見つめる。その目は微かに涙が浮かんでいるようにも見えた。



 するとマジコは

 「マリノスさん」と急に改まる様にマリノスへその視線を向けた。


 「なっ何でしょう」

 マジコの決心を聞きいつもはぼそりと話すマジコが強い口調を向けるとマリノスは少しうろたえた様子だ。


 「子爵様。ご主人様から頂いているお給金をお断りして籍も抜いていただく様にお手紙でお願いしたいのですが」



 「・・・・・」マリノスはその言葉に驚愕し今目の前にいるガンツへ横目で窺がう様に視線を向けた。



 「そう言う事か。・・・・マリノス、お前たちは親父に言い含められて俺について来たんだな。遺書に冒険する気も無く、ましてや冒険者のみで生きていく気も無く親父から給料をもらって片手間で俺の遊びに付き合ってた訳か・・・・」



 

 「・・・・・・・・・・」

 マリノスは言葉に詰まる。


 確かに親の雇い主、そして現状だと子爵本人に命ぜられ直接雇用の提示を受けと言うよりは命じられ確かに給金や経費なども支給されているのは間違いない。


 しかし元々ガンツから 『俺は屋敷を出て冒険者に成る』 と打ち明けられた時 『お前らも来ないか!』と誘われ結果として同行したのであったが、それがマリノスの意思であったのかそれとも子爵の息子の命だったからなのか非常に微妙な所であった。



 正直マリノスは父である子爵の家令を継ぐ兄の元で働くことになるのだろうと漠然と思い育ってきた。事実その様に教育を受け最近では実際仕事を任される場面も少ないがあった。


 それが嫌だと言う訳では無かったが屋敷の外の世界を見てみたい、他の都市や街へ自由に行けたらと言う思いも少しはもっていた。


 そんな不安定な状態であった時にガンツから誘われ断り切れず承諾した時は


 『まあ暫く冒険者ごっこをして満足するかくじけて帰ると言い出すのでは』


 と高をくくっていた。

 しかし実際活動してみると思いのほかガンツは冒険者として水が合ったのかそれともマリノス達のサポートが良かったのかあっと言う間にEランクへ上がってしまった。


 そんな時にガンツに内緒のギルド口座へ入金がありそれを利用し現在の収入より少し良い生活や買い物ができるこのせいなのだろうな、とも思っていた。


 魔馬車にしてもそうだ。貴族が特別に誂えた馬車である。乗り心地も良いし魔馬も良くしつけられた上質な魔馬だ。


 そんな事は知らないガンツは 『直ぐにAランクへなる男。ガンツ様だ!』 などと気楽に言うのを見た時マリノスは疲れを感じていたのだった。



 「どうなんだマリノス。ハッキリ言っていいんだぞ」



 ガンツはじっとマリノスを見つめる。

 その目はきつく詰問するものの目では無く何かにすがるような目をしていた。

 それがマリノスには重荷に感じていた。




 「・・・・・ガンツ様 」



 姿勢を正し声音をいつもよりはっきりさせたそこには冒険者の仲間、マリソスでは無く

 子爵家の使用人 マリノス・ミグリッド がいた。








緊急事態宣言が2021年2月7日までを延長し3/7までとの報道が出始めました。

ここはもう少し我慢して何としても中国ウイルス感染者を0に出来るよう頑張りましょう!

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