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第148話 風よ切り裂け!  ~「あの野郎貴族なんて聞いてないぞ!」 「サッ寒気が・・・・」

こんばんは。昨日は投降が叶いませんでしたが今夜は何とか。

では第148話どうぞ






 「来たぞ!マリノス踏ん張れよ!」

 「ハイ!」

 知矢は中央に位置取るマリノスへ声を掛けながら自身は左側を大きく迂回しながら前へと進む。



 「ガンツ! マリノスが抑えている間が勝負だ。獲物の動きをよく見て一気に急所へ打ち込め」


 次は知矢の反対側、マリノスの右手を迂回しながらかけるガンツへ声をかけた。



 「わかっている。任せろ」ガンツは右の肩口から剣先を真っ直ぐ狙いへと向けながら目標の獲物の視界から僅かに逃れる絶妙な角度から一気に駆け寄る。



 「マジコ!牽制!」

 その後マリノスの後方で全体を見ながら魔力を練りタイミングを見計らっていたが知矢の声を受けマリノスへと迫るもう一つの目標物へ狙いを定めた。



 「風弾ウインドウパレット


 マジコの声とともにその手に握るスタッフから発せられた風の弾丸は ヒュッっと僅かな風切り音のみを発し目標のキリングパンサーへ迫るが単発の風の弾丸は疾風のように高い木の枝から枝へ飛び八双の如く動く対象をとらえる事は出来なかった。




 「高速で動く物体には単発じゃだめだ」



 知矢はそう言うと「水刃ウォーターカッター」と唱えると瞬時にその指先から発せられた水でできた鋭利な刃物が打ち出され即、数十に拡散して目標へと迫る。



 知矢の放った水の刃物はキリングパンサーが足場にしていた枝ごと切り去りそして素早く跳躍を繰り返すその体躯にもいくつかの傷をつけた。



 勿論牽制で放ったので相手に致命傷を与えるほどではないがそれでも高所を高速で移動する対象を地に落とし尚且つその速度を激減させるに十分だった。


 「マジコ!近づけさせるな」更なる牽制を指示する知矢はガンツとマリノス達の方へ視線を向けた。






*******************************





暫し前に時間は戻る。





 「・・・・・・・・・・・・・・・知らなかった・・・・・・・・・」

 詳細に話を聞いた知矢が愕然として地面に両膝を付き愕然としてしまったのであった。




 知矢は確かに過大な成果を上げ帝国の国力増大へ何人が並び立つことのできない程の経済的功績をあげた。



 それに対する報奨金は『くれると言うなら貰っておこう』程度の認識だったがいざ報奨が支払われる団に成ると授与式やパーティーなどおおよそ知矢が嫌いな派手な催しを行うと聞き一時は辞退まで考えたほどであった。



 しかし信賞必罰は国家の基幹と言われては周囲の者や他の者達への配慮から『自分が辞退する事が今後の前例になっては申し訳ない』と考えを改め受ける事にした。



 しかし華美な行事を好まない知矢であったが実際は貴族を始め都市へ住まう市民の代表や富裕層が一堂に介する盛大な式典であった事は既に記した。



 そこで帝国皇帝の名で与えられた報奨金や下賜された館などを素直に受け取った知矢であったがまさかその報奨の式典を主導した貴族。都市管理貴族のアンコール伯爵が”言い忘れ”た項があったなどと思いもよらない。



 しかもそれが



      『爵位に関しては当代に限る1代貴族相当権を叙するものなり』



 などと言い換えれば一番重要な点を伝え忘れる等思いもよらないにも程があると言うものだ。


 これは言い換えれば知矢が貴族になるとほぼ同意語である。




 貴族とは社会に於ける特権階級を示すそれであるが単に偉いぞとふんぞり返っている者だと言うのはごく一部の不良貴族だと思っていただきたい。



 本来の貴族とはその与えられた特権を用い皇帝(または王)などから法律の執行者としての権の一部を付託され駆使する立場を言う。



 そして有事に備える事を常としなければならずその軍備や資材、備蓄、危機管理、運用管理から実戦指揮に至るまでその他多くの事を実行しなければならない。


 貴族とはそれらの法的に明文化された役割と共にもう一つの義務を負う。

 それは



    『財産、権力、社会的地位を有する者には義務が伴う』



 とされ具体的には



  『一朝事が有るならば、つまり戦争が起こった場合はその先頭に立ち兵を指揮して敵を打ち破るべし。逃げる事、後方へ隠れ督戦するなど思いもよらぬ事』



 と命をかけることが常に義務とされていた。


 命を惜しむ事は恥と知れ。

 陣の奥で采を振るわ参謀の務め。

 

 それがこの世界の貴族たる立場の者を指す。




 さすがに民間人の知矢へそう言った貴族の義務を課せられる事は無いが ”貴族相当”と言うのは立場が難しい。



 先に記した通り有事の備えに対する義務や戦争への参加義務は負わない。

 しかし指定された地区。この場合だと中核商業都市ラグーンを管理するアンコール伯爵から依頼があればはせ参じる必要や公式の行事に貴族相当家の主として列席を強いられる。



 そして更には下賜された屋敷。

 この屋敷を放置したり勝手に売り払う事も出来ずその規模や家の恪に応じた使用人も雇わなければならない。



 使用人を雇う事は勿論貴族相当の家柄であるがゆえにそれなりの高額な給料を払うと言う事だ。


 つまり人を多く雇い高額の給料を支給し市民への還元をする事に他ならない。

 そしてその屋敷の維持管理にはそれ相応の経費が常に掛かる。それは自らが支払い維持しなければならないのであるからそういったお金も市民へ還元される1つである。



 そういった意味も含め他にも様々にやるべき、やらざる得ない事柄や行事が発生する。



 それを知っているが故に知矢はまさか自分がそんな立場に成ろうとは思いもよらず愕然としたのであった。




 因みに正式呼称は ”貴族相当伯”立場は”準男爵”より下の”騎士伯”と同じ扱いになるが騎士伯の方は正式な貴族であるので実質は騎士伯より一歩下がる位置付けになる。



 元々 ”伯” の意味合いは一芸に秀でた物を指すことから騎士団のように戦闘に特化した貴族の有する戦闘集団の頭領を ”騎士伯”と 称する物だ。



 そう言った事から秀でた功績を残した知矢は ”貴族相当伯”となる。






 「俺は貴族になんかなりたくない・・・のんびり老後を送りたいだけだ・・・・」



 地面に膝と両手を付き愕然としたまま何かをぶつぶつ呟いている知矢から少し距離を置いているガンツ達。



 「おいあいつどうしちゃたんだ」

 ガンツは少しあきれ顔で心配しながら知矢の様子を窺がっている。



 「思いもよらぬ事で衝撃を受けているのでしょう。まさか知らなかったとは。私に言わせるとそちらの方が衝撃ですが」

 マリノスは冷静に話すがどちらかと言えば驚いているのだろう。



 「ガンツ様、子爵家のご子息であるガンツ様と貴族相当家はどちらが恪上に成るのでしょう」

 マジコは貴族の子弟の使用人に戻った様子でガンツへ問う。



 「そりゃあトーヤの方が上だ。やつは当代本人だからな。おれのおやじは子爵だが俺たち息子は単なる貴族の子と言うだけで何の法的立場を持たないからな。まあ中には親の爵位を笠に着て暴虐な事をしでかす奴が稀にいるとは聞くが。


 現実問題俺はあいつに俺は礼を取らねばならんのは確かだ。だがしかしあいつはそんなの関係ないと言うだろうがな」



 未だ立ち直っていない知矢を少し離れた場所から見守る三人であった。





*******************************




 ガンツ達へ視線を向けた知矢。


 そこにはバックラーのような小さな盾を巧みに使いキリングパンサーの口撃を交わし押し留めるマリノスの姿がありその側方から幅広の剣を狙い定めてキリングパンサーの首元へ突き刺している光景が目に入った。


 「gyugyugyuuuuuu!!!」


 言葉にならない苦しそうな声を上げるキリングパンサーはほぼ致命傷と思われる傷を負いながらやはり強靭な肉体を持つ魔獣だ。


 必死に剣を抜き去り距離を置こうともがいていた。



 ガンツも先のクレイボアとの戦いで同様に剣を打ち込んだのだったが相手の逆襲にあい振り飛ばされた苦い経験があった。

 今回は知矢からのアドバイスもあり重心を落とす様に腰に力を込め体ごと剣と共に魔獣へと打ち込んだのだった。



それが功を奏し必死に暴れるキリングパンサーの動きにも耐え未だ剣を保持したままさらにその剣へ体重をかけ魔獣を切り裂こうとしていた。



 その様子とマリノスがさらに片手で己の剣を下方から付き指す様子に「こっちは大丈夫だな」と任せることにした。



 一方知矢からもう一体の魔獣へ牽制攻撃を行い仲間の元へ近づかせない様奮闘中のマジコ。



 もう一体のキリングパンサーも必死にその魔法攻撃の間隙をぬって仲間の救援へ接近しようと試みるが果たせていない。



 その全身艶のある真っ黒な体躯は激しい魔法攻撃により傷つきどす黒い血が滲んでせっかくの美しい真っ黒なビロードの毛は見る影も無かった。



しかしその生命力と攻撃力は今も健在で必死にその身を左右へ翻し魔法攻撃の間隙を窺がう様に鋭い視線を向けていた。



 だが残念なことに知矢から受けた牽制攻撃の水の刃は本来の強靭なばねを生かした俊敏な動きは損なわれていた。


 油断はできないがこのままマジコの魔法で上手く追い込むことが出来れば致命弾を与えることが出来るかもしれない。


 そう思いながら知矢はマジコの攻撃を後ろから見守るのだった。




 「よっしゃあ!」少し離れたガンツからキリングパンサーの一体を仕留めたと思われる声が上がった。



 「ガンツ!喜んでいる場合か。直ぐにマジコの応援へ入るんだ」知矢の檄が飛ぶ。



 「オウッ、わかった」喜びに沸いた気持ちを知矢の言葉ですぐに切り替えガンツとマリノスは剣を持ちマジコの左右から大きくもう一体のキリングパンサーを包囲する様に接敵する。



 左右から接近する敵の動きを感じたキリングパンサーは状況を思考する様に一瞬周囲を振り返る様にその動きを止めた。



 その行動を知矢は心の中で(今だマジコ)と叫んだが言葉には出さなかった。



 しかしマジコはその瞬間をチャンスと気が付いたのか知矢の心の言葉だ届いたのか即座に


 「風のウインドランス」と風魔法の中級位魔法を発した。



 『ヒュヒュヒュヒュヒュー!』鋭い高音の風切音とともにマジコがキリングパンサーへと向けたスタッフから目に見えない風の槍が高速で打ち出された。



 ドギャーン!とキリングパンサーの正面からその首元へ当たった風の槍はそのまま体内へと一気にまさに風穴をあけ後方へ突き抜け魔獣は声も上げる事無くドスンと横たわり絶命した。




 「やった!マジコ一人でキリングパンサーを仕留めちまったぞ!」



 絶命を確認する様に走りながらそのまま接近したガンツとマリノスは魔獣が生を終えたことを再度確認してマジコへと振り返り叫ぶ。



 マジコはスタッフを握る両手を何か信じられない物を見る様に見た後「ウッ」と声を微かに上げその身を両手でつかみながら膝から地面へと崩れそうになった。



 「マジコ!」その様子に慌てて駆け寄る二人だったが知矢が「待て」と手で遮った。

 「レベルアップの様だな」知矢は静かに優しく言葉をマジコへかけた。




 魔獣や魔物と戦い勝利した者は神の恩恵を授かり相手の力に見合った経験値を授けられその恩恵の蓄積で更なる新たな力を得ることが出来る。

 それがレベルアップだ。



 対人戦でも得られるがその恩恵は殆ど無い。

 そして自分よりはるかに弱い力しか持たない相手を倒した時も僅かしか恩恵を得る事は出来ない。



 今日、今ここで僅かに知矢の力を借りたとはいえその攻撃の殆どを一人で行い倒したマジコは大きな恩恵を授かることが出来た。


 マジコの力に比べキリングパンサーは1ランクも2ランクも強い魔獣だ。その為さらに多くの恩恵を授かりそれがレベルアップへとつながったようだ。



 「私・・・・」マジコは何か未だ信じられない気持だった。



 マジコはハーフエルフである。その秘めた魔力は人族のそれを大きく凌駕すると言われたエルフ族の力を持っていた。


 しかしエルフ独特の容姿と異なり見た目は人族のようにしか見えない事で他者からもそして自分自身でもエルフ族の血を有するとは思えなかった。



 しかし魔法の訓練を積むに従いそのエルフ族である事の片鱗は見えてきていた。


 だがこうして冒険者としてガンツと共に多くの戦いを繰り広げて経験を積んではいたが最近は全くと言って良いほどレベルアップをしていなかったのだ。



 その為『やはり私はエルフの出来損ない人族としても半端なのか』と思い悩むことも多かった。


 しかしそんな中思わぬレベルアップを果たしたマジコは自身でも信じられない思い出その恩恵を体へ受け止めたのだった。




 仲間のレベルアップに3人して喜び合う様子を温かい目で見守る知矢はそっと鑑定魔法でそのステータスを確認する。






マリル・マジカル・マコーミック (15)

 帝国子爵モレルス家 魔導士長マコーミック家 3女

 ・身体 LV21

 ・種族 精霊族 ハーフエルフ(人族とエルフの子孫)

 ・知性 B級

 ・耐力 D級

 ・成長 D級

 ・武力 D級

 ・幸力 D級

 ・筋力 D級

 ・速力 D級

 ・魔力 B級

 ・特力 基礎生活魔法LV8、風魔法LV22、光魔法LV5、火魔法LV20、土魔法LV13、礼儀作法LV10、周囲警戒LV5

     教養LV11、品格LV8、儀礼儀式LV8

 ・行使力 短剣技LV9、料理LV5、遠きえにしへの邂逅

 ・加護 精霊の加護(微)、

 ・冒険者ギルドランクE





 (ほう、身体レベルと風魔法も一気に3段階上がったか。そして何より魔力がB級とはこの若さとレベルでこれは凄い事だ)と感心しながら見ていくと



 (だが何だこの行使力は・・・遠き縁への邂逅 だと?)



 何のことかわからなかった知矢だがそっとしておくことにした。

 知矢の想像ではマジコのハーフエルフであることが何か関係していると思われたがあまり興味半分で他人のステータスへの干渉はマナー違反だと強く思うのだった。



 「おめでとうマジコ。凄い攻撃だった。そして上手く状況を利用して致命弾を撃ち込む技術は素晴らしかったぞ」



 仲間三人が喜び合う所へ知矢も近づき祝福を伝える。



 「ありがとうございますトーヤ様。ですがこれは皆とそしてトーヤ様のご指導で得られたものです。本当にありがとうございました。」



 寡黙な印象のマジコであったが余程嬉しかったのであろう。いつもより饒舌にそして明るい表情を見せるのだった。






*******************************



 余りの事実に衝撃を受けた知矢がやっと立ち直って後の事・・・・・



 


 「醜態を見せて済まなかった」


 知矢は自分がまさか貴族の籍に列する事に成るとは思いもよらず驚きのあまり茫然自失になった事を皆に詫びた。



 その件でガンツ達から質問が出たが知矢は

 「今はその時ではないだろう」と依頼の遂行中であると話を元へ戻すのだった。



 ただ知矢は触れてほしくなかったのか未だ現実を直視したくなかっただけなのかは定かではないが。




 「じゃあ話を戻すぞ。」

 知矢は三人へちぐはぐな行動を指摘し門と純粋に依頼をこなすため役割を変えることを提案した。


 特にマリノスの気配感知魔法とマジコの周囲警戒魔法の使い方を指摘し純粋に獲物を捕らえる為には役割を変える様にと話したのだった。



 「トーヤお前鑑定魔法を使えるのか!」ガンツだけでなくマリノス達も驚きの顔を見せた。



 「ああ、正直に話そう。その通りだ」



 「・・・って事は俺の事も」

 ガンツは当然自分の正体を知られたと確信した。



 「・・・まあそこは依頼内容に関係ないだろう。今は」


 知矢は子爵家の息子であることを知っているが今この依頼を達成するについてその事は置いておこうと暗に提案した。



 「・・・・・ああそうだな」


 ガンツはその提案に同意しマリノスとガンツへ向き直った。



 「おいお前ら。いまはトーヤの言う事が正しい。それにAランク冒険者としての知矢の提案も俺は間違っていないともう。


 お前たちの俺に対する気持ちは十分理解しているがこれは依頼だ。冒険者としてこれからもやっていくなら越えていかなけりゃならない場面だ。


 そんな時にお前らが依頼より俺の身の安全を優先する・・・気持ちは嬉しいがそれじゃチームを組んでいる意味がない」



 マリノスとマジコは微かにうつむき加減でガンツの提案への返答に迷いを見せていた。




*******************************



 「マリノス、そしてマリル。お前たちを読んだのは他でもない。日頃からお前たちはガンツによく仕えてくれている。それは感謝している。


 だがお前たちの雇い主は誰だ。お前たちが息子ガンツと共に計画を練っている事を私は知っている。


 安心しろ。あの子がこの子爵家から必死に独立を考えているのは喜ばしい事だ。応援したいぐらいだ。



 しかし冒険者はいかん。あんなのは死にに行くようなものだ。私はあの子の行く末を心配し騎士団への道を諭してきたが・・・。


 まあその話は良い。


 だが逆に私がガンツの計画を知ったからと言って強権を持って阻止する事は出来てもそれはしたくない。だが易々と死なせる訳にはいかない。


 そこでだお前たちを呼んだのはその計画へ同行するつもりなのは解っているがおそらく使用人の延長で友達感覚なのではないか。いや怒っているのではないむしろ感謝したいほどだ。



 だからあえてお前たちへわしから頼みがある。この子爵家の使用人としての籍は残しておく。お前たちの給料もそのままださらに手当置付ける。さらに息子と同行するための経費を加算しよう。


 これらは全て定期的に冒険者ギルドの口座へ入金するから自由に使ってくれ。


 その代わり同行するなら友人や使用人では無く、冒険者の仲間として行って欲しい。つまり同じチームとして行動し息子をあの子を守ってもらいたいんだ。わかるな」





*******************************



 マリノスとマジコはガンツが出奔する以前に雇い主である子爵に呼び出されたときの事を思い出していた。


 確かにガンツとは以前から中の良い関係だった。


 貴族の子供として暴虐に振る舞う事も無く友人の延長のような親しい関係だった。


 時に剣を交えたり魔法の訓練もするし街へ買い物に出たりハイキングや釣りもした。

 こっそり夜な夜な集まり酒を隠れて飲みながらガンツの冒険の夢を語り合ったり。



 そう言った関係からガンツが密かに家を子爵家を出ることを計画していると打ち明けられた時思わず


「我々もお供します」と申し出たほどだ。



 確かに使用人として陰ながら支えたいとも思ったがそれ以上に友人として一緒にこの狭い貴族世界から旅立てたらどんなに楽しいだろうとも夢を皆で語り合っていたからこそどうしても同行したかったのだった。



 しかしいざ出奔し冒険者になって感じたのは ”死は目の前にいつもある”という現実だった。



 その事を目の当たりにした後マリノスとマジコは二人だけで話し合った。



 「ガンツ様を死なせる訳にはいかない」と。



 その事が今までの活動の中でのフォーメーションと依頼内容の選別であった。



 実はマリノス達は自分たちの力を大きく上回る依頼を極力避けてきた。


 そして実際外で魔獣と遭遇する時も周囲警戒魔法や気配感知魔法で安全第一を主眼に行動してきた。


 勿論ガンツはその事に気が付いていない。


 時折「この依頼を受けよう」と自分たちの力では届くかどうかギリギリの依頼を望んだこともあったが上手く誘導しなるべく危険のない確実に生きて帰れ依頼を達成できる者を厳選してこなしてきた。



 その結果逆に依頼失敗が全くなくマイナス要因が無くギルドポイントを着実に積み重ねていけたことは幸運だった。



 そしてそれがガンツの自信につながったが増長の気配も見せていた。



 少し危ういかとマリノスが考えていた時に今回の依頼”キリングパンサー討伐”をガンツがどうしても受けようと二人を説得したのだった。



 マリノスの感覚では何とか注意すれば依頼を達成できると考え了承したが実際は知矢の掴んだ感覚の通り”危うい”依頼であった。



 そしてこれまでの依頼の受け方で最も弊害を受けていたのがマジコであった。



 マリノスによって厳選された達成可能な依頼=強者との戦いを避ける者であったが故他の二人以上にレベルが上がりにくいとされる”ハーフエルフ”のマジコは全くレベルアップを果たせずにいたのだった。



 結果として上位の魔獣を討伐。しかも一体は殆どマジコ一人で討伐できたことにより経験値、神の恩恵を多く受けられたため今回のレベルアップへと繋がったのであった。




 最終的にガンツの強い希望とAランク冒険者の知矢の話、説明を受け今までと異なり積極的な攻勢へと転じるスタイルへ変える事に同意したのだった。




 その結果2体のキリングパンサーを狩ることが出来しかもレベルアップのしにくかったマジコがレベリアップをしたことは本人も僥倖であったが仲間にとっても素晴らしくそして嬉しい出来事であった。



 「良し!無事依頼達成だ! トーヤお前のおかげだ。都市へ帰ったら祝杯をあげようぜ。ひょっとしたらDランクへの昇格もあるかもよ」



 喜びに沸くガンツと仲間たち。


 知矢も微笑みながら「そうだな一杯やるか」と同意したがその心の中には一抹の不安があった。




 (依頼は討伐とドロップ品の納入だったよな。これどうなんだ?)





 喜ぶ三人のかたわらに於かれたキリングパンサー二体の亡骸。



 その一体は切り傷で毛皮はぼろぼろ。


 もう一体は前から後ろまでこぶし大の穴が見事に貫通し風魔法で切り裂かれたその穴の周囲も無残にも引き裂かれていた。



 (ドロップ品って多分毛皮だよな・・・・・)



 喜ぶ三人をしり目に知矢はギルドの鑑定士の苦い顔が浮かぶのだった。




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